日本共産党の畑野君枝衆院議員は26日、文部科学委員会で東京五輪・パラリンピック問題について質問しました。

 畑野氏は、国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ調整委員長が「緊急事態宣言下でも大会を開催できる」と発言した点について、「政府も同じ考えなのか。抗議すべきではないか」とただしました。

 丸川珠代五輪担当相は「日本政府は国民の安全安心が第一」「今後、協議が続くのでIOCには考え方を伝えたい」と答弁し事実上、コーツ氏の発言を否定せざるを得ませんでした。

 畑野氏は、21日の調整委員会で明らかになった1万人の医療従事者を3割削減した問題について、「7千人だとしても日本の医療に負担になるのではないか」とつめよりました。

 丸川五輪相はその点には答えず、7千人の内訳についても「組織委からどういう分野の人が確保されているか伝えられていない」と答えるにとどまりました。

 畑野氏は、選手のけがなどの治療にあたる都内9カ所、都外20カ所の大会指定病院のうち、現在コロナ対応にあたっている病院はどのくらいあるのかをただしたものの、政府ははぐらかした答弁に終始しました。

 畑野氏は、五輪と地域医療への負荷を検証する上で、「これらは不可欠な情報だ。組織委や政府が基本情報を明らかにしないで五輪開催は許されない。知らされないから国民の不信も広がっている。情報を開示すべきだ」と強く求めました。

 丸川五輪相は「(国民に)理解を得られる情報は、組織委員会に共有するよう、こちらからも相談したい」と答弁しました。

(しんぶん赤旗 2021年5月27日付)

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【議事録】

○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
 まず初めに、東京オリンピック・パラリンピック大会について伺います。
 IOCのジョン・コーツ副会長は、五輪東京大会の準備状況を監督する調整委員会の委員長でもありますが、組織委員会と調整委員会との三日間の合同会議後の五月二十一日の会見で、東京に緊急事態宣言が発令されていても大会は開催するかと問われ、絶対にイエスだ、緊急事態宣言下であってもなくても十分安全で安心な大会を開催できると助言を受けていると答えました。
 緊急事態宣言下でもオリンピック、パラリンピックをやるというのは、国民の健康、命よりもオリンピック、パラリンピックが大事だということではありませんか。日本政府も同じ考えなのか、丸川珠代オリパラ担当大臣に伺います。
○丸川国務大臣 日本政府は、日本国民の安心、安全が第一です。
○畑野委員 丸川大臣も、これまで様々な場で、地域医療に負担にならないようにしたい、医療現場に負荷をかけないことは前提だとおっしゃってこられました。こうしたこととも矛盾するこのコーツ氏の発言ですので、きちんとIOCに抗議すべきだと思いますが、いかがですか。
○丸川国務大臣 今後、協議が続いていきますので、IOCにはしっかり私どもの考えをお伝えをしたいと思います。
○畑野委員 しっかりと抗議をしていただきたいと思います。
 政府の基本的対処方針分科会メンバーの舘田一博東邦大学医学部教授は、五月二十一日、報道陣に対して、東京で緊急事態宣言が出されている状況でオリンピックができるとは思わないし、やってはいけないというのがみんなのコンセンサスだと指摘されました。五月二十三日のNHKの番組に加藤勝信官房長官とともに出演した際も、同様の発言をされています。
 組織委員会は、こうした政府の専門家の御意見を聞いているのでしょうか。
○丸川国務大臣 組織委員会は、大会の運営のために講じる具体的なコロナ対策の助言をいただくために、東京二〇二〇大会における新型コロナウイルス対策のための専門家ラウンドテーブルというのを先月設置しました。この構成員の中に、政府のコロナ政策分科会、またコロナ対策調整会議のメンバーが含まれています。
○畑野委員 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長も、東京オリンピック・パラリンピックの是非について、大会期間中の地域医療への負荷を検証した上で判断すべきだと様々な場で発言をされています。
 そこで伺います。
 大会に必要な医療従事者を一万人から七割に削ったと聞きました。しかし、今、ワクチン接種でも、医師、看護師不足に対して各地で悲鳴が上がっております。私も、地元に行きますと、本当にどうなっているんだ、どこに行ったらいいんですかと、もう毎日訴えられるわけです。
 コロナ対応で医療崩壊となっている地域もあります。七千人の医療従事者であっても、それは日本の医療の負担になるんじゃないでしょうか。
 具体的に伺います。
 七千人の内訳として、医師、歯科医師、看護師、理学療法士、検査技師等、それぞれ何割なのか、お示しいただきたい。
 また、医師でも専門は様々あるんです。特に、こうした大会に必要な医師は、救急対応ができる医師が必要だと聞いています。こうした救急対応のできる医師の数について、組織委員会として、本来必要な人数はどれぐらいと見ているのか、今確保されているのはどのぐらいなのか、伺います。
○丸川国務大臣 見直し前の内訳というのは分かっておりまして、医師、歯科医師がおよそ三割、看護師がおよそ四割、そして理学療法士がおよそ一割で、検査技師等が一割弱程度ということでございますが、組織委員会の中で相当見直しを行っておられて、数としては、当初計画の三割程度削減しました。そのうちの八割ですから、〇・七掛ける〇・八ということになりますが、そこは確保されているということなんですが、それがどういう分野を確保したかというのは私どもにはまだ明確にはお伝えいただいておりませんで、まだ削減できる余地があるのではないかという調整をしながら、一方で、スポーツ外傷、整形外科分野の先生方というか、スポーツドクターと言われる分野の先生方に御相談をしている。
 私どもの方からは、そういう先生方でも、地域医療の方から接種協力のお声がけがあったときには是非応じていただけないかということについては、お声がけしていただくようにということを申し上げております。
○畑野委員 あわせて、組織委員会は、指定病院について、これまで都内十か所としていました。その後、調整委員会後の会見で、橋本聖子会長は、九つの病院に内諾を得たとおっしゃっています。うち、現在、コロナ患者を受け入れている病院は幾つですか。都外に設けるとしている二十の指定病院についても伺います。
○十時政府参考人 お答えいたします。
 アスリートへの外傷等を中心とする治療に当たるため、大会指定病院を確保することとしており、現在、都内九か所の病院からおおむね内諾をいただいているほか、都外二十か所の病院とも組織委員会が調整を進めていると承知をしております。
 大会時のコロナ対応については、各自治体が行っている入院調整の仕組みの中で御対応いただくことを基本として、現在、組織委員会がそれぞれの自治体の意向も踏まえつつ丁寧に調整を行っているところと承知をしておりまして、コロナ対応を大会指定病院に限定せず、また、アスリート専用の病床の確保も求めるものではないというふうに伺っております。
 政府といたしましても、地域医療に支障を生じさせずに必要な医療体制を確保できるよう、引き続き、関係者と連携を図ってまいります。
○畑野委員 ちょっともう一つ確認なんですけれども、これらの指定病院に合わせてどれぐらい病床確保を依頼しているのか、その数は分かりますか。
○十時政府参考人 お答えいたします。
 ただいまも申し上げましたとおり、大会指定病院の確保に当たりましては、組織委員会が、現在、都内、都外、それぞれ調整を行っているところでございますが、アスリート専用の病床の確保というものを求めるものではないということで、こういった数字については、ないというふうに承知をしております。
○畑野委員 尾身会長も、地域医療の負荷を検証した上で判断すべきとおっしゃっているわけですね。だから、今現に国内のコロナ感染の対応をしているのかどうかを含めて、これは必要な情報なんです。だから、組織委員会も政府に明らかにする責任があると思います。
 それで、こういった基本的な情報を明らかにしないで開催することは許されない。不安に思っている国民にも当然知らされるべき情報です。こういうことを知らされないまま、安心、安全な大会だと言われても、国民に不信が広がるのは当然だと思うんですね。私は、国民に理解されないオリンピック開催はあり得ないと思います。それは、競技する選手を不幸にすることにもなります。
 私たち日本共産党は、この夏の大会は中止以外にないと考えますけれども、早急に、国民的な議論をする上でも、こうした情報をしっかりと開示することを求めたいと思うんです。丸川大臣、どうですか。
○丸川国務大臣 まだ作業しておられるということでもございますが、しっかり理解を得られるような情報というのは組織委員会が共有してくださるように、こちらからも御相談申し上げたいと思います。
○畑野委員 是非、情報公開ということを、議論のベースですからね、どうなっているのかということですから、しっかりと示していただきたいということを求めておきます。
 丸川大臣、御退席いただいて結構です。ありがとうございました。
○左藤委員長 では、御退席どうぞ。
○畑野委員 続いて、健康に関わって、児童生徒の歯科矯正に対する保険適用を求める声について、政府の対応を伺います。
 子供たちの健やかな成長、発達にとって、心身を健康に保つことは欠かせません。学校教育の中で行われている健康診断では、歯科健診も実施されています。
 全国保険医団体連合会の二〇一九年の調査によれば、歯科健診で要受診となった三二・〇%の子供のうち、未受診が五七・〇%にも上るといいます。今日、子ども医療全国ネット国会内集会で、「今こそ国による子ども医療費無料制度の創設を」と、御要望もいただいてまいりました。
 家庭に学校から届けられた歯科健康診断結果のお知らせという通知には、要受診の欄に、虫歯、歯肉の病気、検査が必要な歯、顎関節、歯列・咬合、歯石の沈着など、その他あるんですけれども、今日は、歯列・咬合について伺いたいと思います。
 歯科矯正治療の医療保険適用は、先天性疾患に起因する咬合異常について歯科矯正の必要性が認められる場合に限られておりまして、当初は唇顎口蓋裂に限定されていたと伺いました。
 その後、保険適用の対象範囲はどのように推移してきたのか。二〇一八年には三歯以上の永久歯萌出不全も対象になっていますが、その理由は何でしょうか。厚生労働省に伺います。
○横幕政府参考人 お答えを申し上げます。
 医療保険制度でございますけれども、疾病や負傷の治療等に対して保険給付を行うということを目的としております。この中で、歯科矯正治療につきましては、審美的な要素も大きいため、原則は保険適用外というふうになっております。
 一方で、今御指摘いただきましたとおり、唇顎口蓋裂などの先天性疾患に起因する咬合異常、あるいは顎変形症などによる歯列の不正、こういったところが保険適用となっております。
 この保険適用となる疾患につきましては、二年ごとの診療報酬改定の際に、関係学会との議論を踏まえまして、重度の咬合異常を引き起こす可能性等を考慮して、その範囲の見直しを行ってきております。最近では、平成二十年度の診療報酬改定以降は二年ごとに適用の拡大を行ってきているという経緯でございます。
 また、これも御指摘ございましたとおり、平成三十年度の改定におきましては、前歯三歯以上の永久歯萌出不全に起因した咬合異常、これに対する治療につきまして適用拡大を行いました。これは、関係学会からの御提案を踏まえまして、中央社会保険医療協議会で審議をいただきましたけれども、三歯以上の永久歯萌出不全、これが著しい歯列の不正、あるいは咬合異常の原因となり、また、そしゃく機能の障害も引き起こす可能性が高い、こういったことを踏まえて保険適用されたものでございます。
○畑野委員 歯並びを矯正するような歯科矯正は保険適用がないということで、初診料、検査診断料、装置装着料、治療費、保定装置料、保定観察料など、約五十万円から百万円かかるというふうに伺っております。
 文科省の学校保健統計調査によれば、直近の二〇一九年度と五年前の二〇一五年度を比較すると、学校健診で、歯列・咬合と診断された児童生徒は、小学校で四・三六%から五・〇四%、中学校で四・九九%から五・三八%、高校で四・〇二%から四・五三%と増加しているんです。にもかかわらず、経済的負担の大きさから、一人親世帯や低所得者世帯の場合、治療を断念することが多いと伺っています。
 歯科矯正治療の経済的負担を軽減しようと運動されている、保険適用拡大を願う会の調べでは、今年三月末日時点で、全国十五道県議会、六百五十六市区町村議会で、子供の歯科矯正への保険適用を求める意見書が採択されています。
 国としても、児童生徒の歯科矯正の保険適用を検討するべきではないでしょうか。厚生労働省、そして萩生田大臣、いかがでしょうか。
○横幕政府参考人 お答えを申し上げます。
 学校健診におきまして、歯並びなどのことで相談が必要として受診勧奨を児童生徒が受けて、これで歯科医療機関を受診した場合がございますけれども、対応は様々だと思いますが、矯正治療に至る前に、まず、こういった勧奨を受けて歯科医療機関を受診された場合、疾患や異常の有無を確認するための必要な診察、検査等、これは保険診療として行われております。また、この一環として、例えば、歯並びが悪くて磨き残しが多い部位があって、これに対する歯磨きをどういうふうに行うかといった指導、こういったものも保険診療の中で行われているということでございます。
 その上で、先ほど申し上げましたとおり、その先の歯科矯正治療につきまして保険適用となる疾患の範囲につきましては、二年ごとの診療報酬改定の際に、関係学会との議論を踏まえて、必要に応じて適用範囲の見直しを行ってきているところでございます。
 今後も、国民に対して適切な歯科保健医療を提供できるよう、関係者の意見をよく聞きながら、適切に取り組んでまいりたいと考えております。
○萩生田国務大臣 歯科矯正に係る保険適用の範囲については、厚生労働省において定めているものと承知しております。
 委員御指摘の子供の歯科矯正については、厚生労働省によると、特定の疾患により歯科矯正が必要な子供に対しては健康保険が適用されるものと承知しております。他方、疾患によらず、審美的な要素も含まれる歯科矯正治療に健康保険を適用するかどうかについては、今御答弁がありましたとおり、健康保険を所管している厚労省において十分に検討されるべきものと考えております。
○畑野委員 是非検討を進めていただきたいと思います。
 次に、教科書の適正価格について伺います。
 紙の教科書の定価の算定方法について、文科省は、前年の定価をベースに、物価指数等の変動要素を適切に反映して価格を改定していると言います。しかし、根拠とされる前年の定価自体が原価と大きく乖離したものであれば、物価指数などの要素を反映したところで、原価との乖離を埋め合わせるような改定にはなりません。これは昨年も質問をいたしました。元々、原価計算は一九六〇年頃に行われたままだ、過去十年間の引上げ率は毎年一%だということです。
 出版労連などからは、教科書価格がそもそも安過ぎるという訴えがあります。関連企業の多くは中小零細企業で、デザイナー、イラストレーター、校正者など個人の事業主も多く、教科書発行者同様、生活も脅かされ、撤退や廃業などが相次いでいるということです。文科省として、こういう声を聞いていますでしょうか。
 文部省が文部科学省に改組されたとき、それまで教科書発行者の意見を聴取する教科書価格小委員会が廃止されたと伺っています。
 価格決定のプロセスに発行者の意見を反映できるような仕組みを改めて設けるべきではないでしょうか。いかがですか。
○塩見政府参考人 お答え申し上げます。
 教科書価格に関する御意見につきまして、労働組合などから直接にお話を伺ったことはございませんけれども、例年、概算要求前の時期に、一般社団法人の教科書協会から教科書価格に関する要望書を受領させていただいております。
 また、平成十三年の文部省から文部科学省への省庁再編までは、教科用図書検定審議会価格分科会におきまして定価改定につきまして協議を行っておりましたけれども、省庁再編に伴う審議会の整理、統廃合の後は、この分科会は廃止されております。
 その後は、毎年度、教科書発行者から製造原価に関する資料を文部科学省に提出いただきまして、それを基にした増減要素に加え、物価指数の変動を反映するとともに、学習指導要領の改訂時には、ページ数の増加に伴う製造原価の上昇を加味するなどして、定価の改定を行ってきたところでございます。
 今後とも、文科省として適正な価格の改定に努めていきたいと考えております。
○畑野委員 関係労働者や中小企業など含めて聞いていただいて、そもそも教科書価格が安過ぎて、採択されても赤字になることを懸念して発行を断念せざるを得ない発行者もいるというふうに伺っております。現場の声を丁寧にすくい上げて価格決定をしていただきたいと申し上げておきます。
 最後に、歴史教科書問題について伺います。
 四月二十七日に送付された「従軍慰安婦」等の表現に関する質問主意書への答弁書は、一九九三年の河野談話を継承していると述べています。
 河野談話は、次の五つの事実を認めています。
 一つ、「長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。」二つ、「慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。」三つ、「慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。」四つ、「慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。」五つ、「戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。」とあります。
 内閣府に伺います。河野談話を継承するということは、これらの事実認定を継承するという理解でよろしいですか。
○安中政府参考人 お答え申し上げます。
 平成五年八月四日の河野内閣官房長官談話におきましては、先ほど委員が御指摘いただいたようなことが記載されているところでございます。
 政府の基本的立場でございますけれども、この平成五年八月四日の内閣官房長官談話を全体として継承しているというものでございます。
○畑野委員 大事な確認をさせていただきました。
 重大なのは、今回の答弁書で従軍慰安婦という用語の使用を不適切だとして、教科書を書き換えさせようとしていることです。
 そこで確認します。
 二〇一四年の教科書検定基準では、「(5)閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解又は最高裁判所の判例が存在する場合には、それらに基づいた記述がされていること。」とあります。
 大臣に伺います。
 政府の統一的な見解と最高裁判所の判例、どちらを採用するかは教科書会社の判断に委ねられるということでよろしいですか。
○瀧本政府参考人 お答えを申し上げます。
 慰安婦についての政府の統一的な見解と我が国の最高裁判所の判例が異なるようなことについては承知をしておりませんが、申請図書の記述あるいは関係する政府見解、そして最高裁判所の判例の具体的な内容を踏まえる必要があるため、一概にお答えすることは困難だと思っております。
 いずれにしましても、教科書検定調査審議会において、欠陥のない記述となるよう、適切に判断がなされるべきものと考えております。
○畑野委員 この基準の中に、「それらに基づいた記述」というのがあるんですが、基づいたというのはどういうことでしょうか。一言一句同じでなくても、内容を踏まえていればいいということですか。
○瀧本政府参考人 お答えを申し上げます。
 委員御指摘のとおり、教科書検定基準の中では、閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解又は最高裁判所の判例が存在する場合は、それらに基づいた記述がされていることが基準の一つとされております。
 これは、政府の統一的見解や最高裁判所の判例を必ずしもそのまま記載することまで求めるものではありませんが、それらの内容を踏まえた、それらに基づいた記述となっているかどうか、教科書検定調査審議会において確認をしていくことになります。
 以上です。
○畑野委員 それでは確認ですけれども、最高裁の判決では、いわゆる軍隊慰安婦、又は軍隊慰安婦という用語をしているものがありますが、御存じでいらっしゃいますか。
○瀧本政府参考人 お答え申し上げます。
 最高裁判所の判決において軍隊慰安婦という言葉が存在をしていることについて承知をしているかということについてですが、済みません、私としては承知をしてございません。
○畑野委員 そうなんですか。
 じゃ、内閣府、分かりますか。
○安中政府参考人 お答え申し上げます。
 今の御指摘に関してでございますが、私としても承知をしていないところでございます。
○畑野委員 ちょっと、委員長、ここから先、議論が進まないんですが。
 それでああいう答弁書を書いているんですか。大丈夫ですか。ちょっと誰か答えられませんか。大臣は、この間御答弁されたんだから、お分かりなのでは。御存じですか、今の。
○萩生田国務大臣 軍隊慰安婦というワードは存じ上げません。
○畑野委員 いや、困りましたね。
 二〇〇四年十一月二十九日のアジア太平洋戦争韓国人犠牲者補償請求訴訟の最高裁の判決で、そのように言われております。ですから、こういう事実があるんですよね。
 驚きました。
 それで、この教科書検定基準、皆さんが作ったんですけれどもね、文部科学省が。それで、大臣の答弁も、この最高裁というのは言わずに、政府の統一見解だけ言うんだけれども。この検定基準そのものは批判がいっぱいありまして、東京弁護士会から、もうこれは撤回しなさいという声も出ているんですよ。
 でも、あなたたちが作った基準の中に最高裁の判例というのが入っているんですから、それを知らないでいるというのは本当に問題ですよ。
 これはしっかりと調査して答えてくださるように、委員長、お願いします。
○左藤委員長 調べさせていきます。
 理事会でも協議させていただきます。
○畑野委員 それで、今回の答弁書の基になっている吉田清治氏の証言問題なんですけれども、これもとっくに決着がついていて、二〇一四年十月二十一日の参議院内閣委員会で日本共産党の山下芳生議員が、当時の河野談話に吉田証言は根拠にされていないということを当時の菅官房長官に確認しているんです。大臣も御存じだと思います。
 こう言っています。「国会で菅官房長官自身も、吉田証言と河野談話の関係性については、根拠にしていないということをお認めになりました。それは間違いないですね。」と質問して、当時の菅官房長官が「ええ、そこは認めております。」というふうに御答弁をされています。
 破綻済みの理屈を今更持ち出して、従軍慰安婦という用語は軍の関与や強制性があったと誤解を招くなどと言っても通用しないんです。
 紙智子参議院議員が質問主意書を出した答弁で、日本軍「慰安婦」問題に関して、慰安婦問題への日本軍関与を示す資料などを内閣府が二〇一七年と二〇一八年に新たに入手したことも明らかになっております。詳しく述べませんけれども。
 ですから、私、委員長にも資料を出してもらうようにお願いをいたしましたけれども、教科書検定基準、こういったものをやはり撤回すべきだと。そして、今回の答弁書で言われている、「単に「慰安婦」という用語を用いることが適切である」とした部分、これを撤回するように求めたいと思います。
 いや、驚きました。これでは駄目だと思います。
 以上で質問を終わります。