衆院消費者問題特別委員会で11日、特定商取引法改定案についての参考人質疑が行われました。陳述した池本誠司弁護士は「契約書面の電子化に関する議論は消費者被害を拡大する恐れが極めて強く反対せざるを得ない」と述べました。

 池本氏は、契約書の電子化に関して、「関係者の議論も行われないまま一気に導入が提案された」と指摘。「全国の消費者団体や弁護士会から反対の意見が相次いでいる」と強調しました。

 質疑で日本共産党の畑野君枝議員は、政府が契約書は書面交付を原則とし、電子交付はあくまでも例外と弁明していることについて質問。池本氏は、「訪問販売や電話勧誘販売など事業者が主導的に勧誘する場合は、消費者が受け身の契約を迫られる」と指摘し、「本体の契約と同時に契約書の電子化の承諾を取ろうとすれば原則は電子化に流されてしまう」と強調しました。

 また畑野氏は、政府が契約書面の電子化について、「消費者の承諾を得た場合に限る」としていることについて質問。消費者生活相談員協会の増田悦子理事長は、「虚偽・誇大な説明により契約にいたることが多い。契約内容の実態さえ理解していない状態で真意の同意が取れるのか大変疑問だ」と答えました。

 石戸谷豊弁護士は「ジャパンライフ事件でも、会社側の契約データが消滅した際には契約状況の把握に困難を極めた」と電子化の問題点を指摘しました。

(しんぶん赤旗 2021年5月12日付)

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【議事録】

○永岡委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律案及び川内博史君外十名提出、消費者被害の発生及び拡大の防止並びに消費者の利益の一層の擁護及び増進を図るための消費者契約法等の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
 本日は、両案審査のため、参考人として、東北大学・東京大学名誉教授、青山学院大学客員教授河上正二君、弁護士・日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員石戸谷豊君、弁護士・日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員池本誠司君、公益社団法人全国消費生活相談員協会理事長増田悦子君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。
 それでは、まず河上参考人にお願いいたします。
○河上参考人 河上と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日、このような形で意見陳述の機会をいただけたということで、お礼を申し上げます。
 私は、消費者庁で開催されておりました預託法・特商法等の在り方検討委員会というところで座長を承っておりまして、報告書を取りまとめました。本日、この内閣提出の法案につながっているということもございますので、そのような立場から意見を述べさせていただきます。
 まず、意見書の核になっているものについて簡単にお話しいたします。
 第一は、これは共通の敵というものを想定いたしまして、この共通の敵である悪質事業者を市場から排除するために、報告書では、あらゆる手法を総動員せよということを求めました。特に、消費者の脆弱性というものにつけ込む巧妙化、複雑化した悪質商法には、断固とした対応をするということが必要であると考えております。
 具体的には、法執行の強化はもちろんでございますが、消費者利益の擁護それから消費者取引の公正確保推進のために、消費者被害を発生させ続けている悪質事業者に共通の敵という名前をつけて、これをターゲットに絞った実効的な規制等を新たに措置する抜本的な制度改革をお願いしたということでございます。
 それから、もう一つ核になるのは、具体的な方策と狙いの要点というところがどういうところにあるかというわけですが、特に、新型コロナの感染拡大防止ということのために現在も自粛が要請されているわけでございますが、そうした消費者の新たな日々、新たな日常の中で、消費者が巻き込まれやすいトラブルというものに対応して、消費者を支援するということを求めました。
 具体的には、幾つもあるんですが、七点ほどございまして、第一が、詐欺的な定期購入契約、これは、お試しのつもりで契約をしたら実は定期購入になっていたというようなタイプのものですけれども、そこに申込取消権制度を創設してほしいというのが一点目。
 第二点目は、通信販売、これが非常に活発に行われているわけですけれども、このときに、場合によっては契約解除の妨害行為というものがありますので、これを禁止していただきたい。
 第三番目が、いわゆるネガティブオプションと申しますけれども、物を相手に送りつけて、嫌なら返してくれ、そうではなくて黙っていたら買ったことにするという送りつけ商法というものが広くあったわけでして、これに対抗するための規定を整備して、顧客が送りつけられたものをいつまでも保管しなくちゃいけないという状況から救い出す、結果として、もう送りつけられてもそれを保管する義務はないというところまで持っていったらどうか。
 第四番目が、行政処分等を更に強化する必要があって、そうした悪質業者を市場から追い出すというか撤退させるということのための行政処分をしっかりやってほしい。
 第五番目が、預託販売行為と言われるものを原則的に禁止する、それは私法上も無効だということを明らかにした上で、これに違反する事業者に対しては罰則を科することによって実効性を担保してほしい。
 六番目が、預託法の対象が今は後追いで、特定のものに限られていたということなんですが、そうした指定商品制といったものを撤廃するということで、預託の対象を拡大するということが六番目。
 七番目が、消費者裁判手続特例法でもって行政処分をした官庁で作成した書類等を適格消費者団体がうまく利用できるように配慮してほしいというようなことを要点として求めたところでありました。
 改めて、預託取引に対する対応について、もう先生方には釈迦に説法かもしれませんが、申し上げたいと思います。
 物を預ける、預かるという行為との関係で、今、問題になっている不当商法がこの預託取引をめぐって存在しているわけであります。
 かつて、豊田商事事件というのが世の中を騒がせましたけれども、あの豊田商事事件では、金地金、これを販売するんだといいながら、現物を交付しないで、そしてその金を預かったということにして、預かり証、これはただの紙切れですけれども、ファミリー証券という紙切れですが、そのような紙切れだけを交付して、更に別の顧客に対して同様の手口で販売と預託を繰り返した。そして、二万九千人という多数の被害者に二千億円という莫大な損害を与えたわけであります。
 このペーパー商法、あるいは現物まがい商法というふうに呼ばれたものでありますけれども、この事件を契機として、特定商品の預託に関する法律という預託法、これが制定され、同法で規定する形で預託等取引というのが規制されていったわけでありますが、この法律は、三か月以上の期間、対象の物品を預かること、又は施設利用権を管理することというのが一つの要件、それからもう一つの要件は、当該預託若しくは施設管理に関し財産上の利益を供与すること、又は三か月以上の期間経過後に一定の価格で買い取るということを約束する、そういう定義がなされたわけであります。これは預託法の二条の第一項。
 こうした販売と預託取引、つまり、預託といっても寄託とか賃貸借とか組合出資とかいろいろなものがあり得るわけですけれども、そういうものを組み合わせるということをしたときには、事業者が消費者に物品等を販売すると同時にそれを預かるわけですから、運用と称して配当金を払っているというときには、何となくシステムがうまく動いているかのように見える。そして、被害の顕在化が遅れる中で、次々と被害が発生し、やがて倒産という形になったわけであります。
 預託法の制定後も、安愚楽牧場事件とか、これは和牛のレンタルオーナーですけれども、それからジャパンライフ事件、これは磁気治療器だったわけですが、ケフィア事業振興会事件、これは健康食品だったわけですが、それぞれ何千億円という形での被害が発生しております。特定の物の預託のみに着目した預託法では、被害抑止の機能を果たすことができなかったということが言えます。
 高い利率による利益還元、あるいは後からの買取り、つまり実質的な元本保証になるわけでしょうが、そういうものをうたって高齢者を始めとする消費者から多額の金銭の拠出を募るわけですけれども、実際にはそのようなものを運用する事業は存在しないし、消費者から拠出された金銭の一部を別の消費者の配当に充てて問題の発覚を遅らせるということをやっていたわけであります。
 こうした販売預託商法は、物品を販売すると同時に預かるんだというふうに説明しながら、実際には物品等がない、それを運用する事業実態もない、早晩破綻することが明らかにもかかわらず、高い利率による利益還元とか、あるいは販売価格と同額での買取りという元本保証のような説明をして取引に顧客を誘い込むという点で、消費者を二重、三重に欺いているということになるわけであります。
 これは、主観的にも経済的実質においても、ある種の投資取引、しかも不当な投資取引の勧誘であるということでありまして、その形態は恐らく無限連鎖講に匹敵するような危険性を持っているということであります。
 にもかかわらず、契約締結時に示されるこうした高利率の利益還元あるいは元本保証といったようなものを見ると、消費者は、小さいリスクで高い利益還元を確実に受けられるというふうに思って、次々と取引に引き込まれていく。出資者には他の出資者が拠出した金銭の一部が原資になって配当金が支払われるというわけでして、表面上はスキームは正常に機能しているかのように見えますために、被害が顕在しにくかった。しかし、結局はこうした事業が破綻に至る。
 こうした販売と預託というものを組み合わせた取引は、取引の仕組み、内容面での違法性と、契約締結、勧誘方法の欺瞞性、これを併せ持つものでありまして、およそビジネスモデルとして成り立ち得ないというものでありますだけに、その問題性については、これはもう早くから消費者庁あるいは国民生活センターなどが警鐘を鳴らしてきたわけでありますけれども、結局、被害は収まらなかったという現状がございます。
 少なくとも、販売預託商法が違法かつ無効であるということを法律の上で明言し、実質的には不当な投資勧誘取引であることを正面から認める、そして、各種の金融商品規制とか投資ルールなどと平仄を合わせて、民事、行政、刑事、こういったあらゆる手段を総動員の上で、これを市場から駆逐するということが必要であるというふうに考えております。
 委員会報告書はこの点を明確に論じ、この委員会自体、消費者団体とか事業者団体、皆さんが参与してなされた取決めでありましたけれども、全員の一致を見てこのような形での報告書になったということを申し上げたいと思います。百点満点とは言い難いかと思いますけれども、私の見るところ、八十五点ぐらいにはなっているというふうに思っておりまして、とにかく一日も早い成立をお願いしたいというふうに思います。
 内閣の方から提出されている法案を拝見したときの感触ですけれども、意見書の趣旨をよく酌み取っていただいて、法案化に尽力してくれておりまして、そのことに関しては、立案の担当者の方々に心からお礼を申し上げたいと思います。もちろん、意見書でも書いてありますように、残されている課題も結構あるんですが、これについては速やかに検討を継続していただきたいというふうに考えております。
 預託販売取引については、被害の拡大が続いていますので、法律が成立した後の施行の時期、これは成立後一年以内という形になっておりますけれども、悠長なことを言っている場合ではないので、できるだけ速やかに施行を、期日を決めていただくというか、施行していただくということがお願いしたいことの一点であります。
 残された課題はいろいろありまして、例えば、通信販売にクーリングオフを導入するかどうか。返品権というのは今でもありますけれども、返品特約というのがないものとあるものがあったりして、よく分からなくてトラブルになります。
 それから、適格消費者団体が相手を訴えていこうというような場合、特定適格の場合は損害賠償になりますが、そのときに、相手の財産をいち早く差し押さえないと、その財産がいろいろなところに散逸してしまっているという事態があります。それで、適格消費者団体による破産申立て権の承認をお願いしたい。
 それから、もう一つは、フリマアプリなんかもそうなんですけれども、中にデジタルプラットフォーマーが入る、そして、そのデジタルプラットフォーマーを介して、実は事業者なのか消費者なのかよく分からない人が物を売ったり買ったりしているという状況が現在ございます。
 事業者対消費者に関してはBツーCと言いますが、消費者法の射程の範囲に今まで入っていたんですが、消費者対消費者というところになると、このCツーCのところまで消費者法が出ていくかどうかというのは、これは、実は消費者法そのものの体制を改めて考え直す契機になる問題であります。そのことは、やはり、しかし避けて通れない問題なので、今後の国のそうした議論の環境整備を求めたいと思っております。
 それから、インターネットの普及に伴いまして、様々な不当広告とか勧誘というものが見受けられまして、トラブルに巻き込まれる消費者が増加していますが、これに対する対処というのはなかなか難しい。結局、それぞれの広告をちゃんとモニターして、たたいていくというためには、人的、物的な費用というものが壁になっていますので、そこは、やはり消費者庁に一定の人的、物的な支援をお願いできればということであります。
 最後に、デジタルプラットフォーマーの責任との関係で一言申し上げておきたいと思います。
 今回の内閣提出の法案では、DPF、つまりデジタルプラットフォーマーの責務というのは、単に努力義務というふうにとどまっております。これで十分であるかということに関しては、私は疑問を持っております。協議会を設置して、そこでやっていこうというのは一歩前進なんですけれども、やはりデジタルプラットフォーマーに一定の民事の義務を構築する、私は、システム構築責任というものを模索すべきであろうと考えております。
 それから、もう一点。契約書面の電子化、それからクーリングオフ権行使をする際の電子化の問題、これがにわかに関心を集めているところであります。
 契約書面というのは、実は、契約の目的あるいは条件を一覧するための確認をさせる機能、あるいはクーリングオフ権の起算点になるといったような重要な機能を有しておりますので、これを安易に電子化をするということは確かに危険なことであります。もっとも、消費者が、自分は紙は要らないから電子情報で欲しいというふうに言っているときに、どうしても書面でなければ駄目だということを言うのは、これは難しい。
 書面主義というのは、これが原則であることは確かですが、消費者がどうしても電子情報の方が自分は管理がしやすいから欲しいというふうに言っているときには、これを認めるということが適切だろうと考えているわけであります。問題は、やはり、消費者が本当にそういうことを望み、実質的に電子情報の提供に同意したかどうかという点の確保にあるんだろうということになります。
 それからもう一つ、来年四月からいよいよ成年年齢の引下げが施行されるわけでありまして、これもやはり何らかの対応が必要だということはいろいろなところから言われているわけでありますが、若いからというだけで介入の根拠にするのはちょっと難しいという点があるんですけれども、消費者の持っている脆弱性、誰にも脆弱性はあるわけですが、そうした脆弱性が著しく顕在化するというのは、やはり高齢者、それから若年成人ですね。十八、十九だけじゃないでしょう。恐らく、子供、さらに大学生でも二十一、二あたりになるとやはり経験が未熟だというようなことで、そこにつけ込んだ形で不当な利益を貪ろうとする不当勧誘行為について、何らかの形で、消費者取消権、これを例えば消費者契約法などに装備するということは是非必要なことであろうというふうに考えております。
 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)
○永岡委員長 ありがとうございました。
 次に、石戸谷参考人にお願いいたします。
○石戸谷参考人 弁護士の石戸谷です。
 本日は、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。
 これまで預託商法問題に取り組んでおりまして、現在は全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会の代表をしております関係で、意見は預託法改正法案を中心にしております。資料を配付していただいておりますので、ポイントについて述べてまいります。
 まずは、紆余曲折ありましたが、抜本的な預託法改正法案の審議を迎えることができたことをうれしく思っております。特に、法案の確認制度は優れた仕組みであると高く評価いたします。
 ただし、せっかくの制度も、適用対象に隙間がありますとそこで悪徳業者が暗躍しますので、重要な論点となります。
 そこでまず、第一に、適用対象について意見を述べます。まず、役務と権利の関係です。
 確認制度の対象となる取引は販売を伴う預託等取引ですので、前提として預託等取引に該当することが必要です。特商法の場合には適用対象が商品、役務、権利と幅広くなっていますけれども、預託法案の場合には物品と特定権利で、役務が入っておりません。また、特定権利も二種類に限定されており、狭く見えます。
 そこで、例えば、アプリケーションをUSBに読み込んだものを預託すると物品に該当するけれども、データそのものを送信するような場合に適用できるのか等が問題になります。
 この点について消費者庁は、大西議員の質疑で、適用対象となり得ると答弁しております。この積極姿勢は歓迎いたしますが、この点に限らず、万一運用の過程において適用に疑義が生ずるような事態があった場合には、速やかに法改正するなどして対応していただくことが必要になります。今回の法改正まで約三十五年の期間を要したという経緯を踏まえますと、迅速な見直しにつきまして附帯決議等で明確にしていただきたいと思います。
 次に、ケフィアの類型と預託等取引の定義の関係について述べます。
 法案の預託等取引は、内閣府令で定める期間が要件とされており、現在、この期間は三か月とされています。この関係で、ケフィア事業振興会のオーナー契約のような事案に適用できるのか、また、金融商品取引法の集団投資スキームに該当するのではないのか等が問題となります。
 ケフィアの破産管財人は、このオーナー契約について、経済的な実質は資金調達であったと報告しています。そうすると、この実質を捉えれば、集団投資スキームに該当し得ることとなります。
 集団投資スキームについて金融庁は、金銭の出資ないし拠出を原則としているとしつつ、脱法目的で物品拠出の形態を取る場合には集団投資スキームに該当するとしていますが、具体的な適用関係は明確でなく、むしろ、物品が絡む場合は消費者庁が対応すべきとしているようです。
 この点について消費者庁は、預託等取引に該当するかどうか実質的に判断すると答弁をしています。この積極姿勢は評価いたしますが、預託期間は内閣府令で定める事項ですので、その期間を定める際に買戻し型の類型と商品を返還する類型を同一の期間とする必要はなく、その特質に応じて区分することによってより明確にできること、預託の概念についても同様であること等につきましては、配付資料四ページ以下で述べておりますので、御参照ください。
 いずれにしましても、預託法と金商法の集団投資スキームとの間に隙間がないように、消費者庁と金融庁が調整ないし連携して対応していただくことが大変重要になります。しかし、省庁間の関係というのは難しいところがありますので、この連携の関係を附帯決議等によって確認していただきたいと希望いたします。
 出資法との関係ですが、買戻し型の場合には出資法に該当する場合が多いと思われます。しかし、刑事捜査は時間がかかり、あくまで事後的制裁となりますので、破綻時の処理は、その対応は業法によることが重要です。
 配付資料六ページで、巨額な被害が続いている実態にもかかわらず、出資法の罰則が軽過ぎる点も指摘しております。出資金、預り金に対する罰則は、出資法を制定した一九五四年以来、改正されておりません。これに対して、同法の金利規制に関しては、二〇〇三年改正、二〇〇六年改正で必要に応じて罰則が見直されてきました。この点につきまして、法務省は当委員会の質疑で業務実態等を直接把握していないと答弁していますので、出資法の罰則の引上げの検討を求める次第です。
 第二点目として、悪質業者の破綻処理に関連する問題について述べます。
 ジャパンライフの事案では、消費者庁は四回にわたって業務停止処分を行いましたが、破産申立て権がなく、被害の拡大、財産の散逸を防ぐことはできませんでした。また、VISIONについても、業務停止処分中であるにもかかわらず営業を継続していることが問題とされています。このような事態というのは、法治国家として絶対に許してはいけないことだと思います。この問題につきまして、牧原議員の質疑において停止の期間を二年に延長した等の答弁がありましたが、それでは不足だと考えます。
 そこで、この点につきまして、業務停止命令違反における捜査当局との連携をまず指摘した上で、第二点目として、消費者庁の破産申立て権と解散命令申立て権について意見を述べます。
 現行預託法では、業務停止命令違反に対する罰則は二年以下の懲役等となっています。ジャパンライフの事件において、コロナ禍の困難な状況下で捜査を遂げて、山口隆祥を詐欺で起訴し、その他の者を出資法で立件したことについては敬意を表しているところです。
 しかし、それとは別の問題として、業務停止命令違反の罪に関して言えば、捜査当局は消費者庁と連携して速やかに対応すべきです。それがまた、業務停止処分の実効性を確保することになります。
 関連して言えば、改正法案では、行政処分違反の罪の罰則に関して三年以下の懲役等に引き上げております。引上げには賛成ですが、確認を得ない勧誘や契約については五年以下の懲役等であるところ、業務停止命令に違反して営業を継続する行為の悪質性とその弊害はそれと何ら変わりはない、したがって、本来、同等の罰則に引き上げるのが適当だと考えます。また、そうすることによって、捜査当局の優先度が高まることにもなるというふうに考えます。
 次に、消費者庁の破産申立て権です。
 業務停止命令にも従わないようないわば極悪な不法業者というものは、法人格を否定する以外にないと思います。その一つの方法として検討課題とされているのは、消費者庁の破産申立て権です。
 この問題については、平成二十五年六月に行政手法研究会の報告で検討課題とされたままになっております。早急に検討を遂げるべきです。現状では、法人を解散させて社会的に有害な活動を封じる役割を被害者に担わせていますが、本来、これは公益的な役割であって、行政が担うべきです。
 また、被害者からの申立ての場合、予納金も大きな問題です。ジャパンライフの場合、申立て予納金は一千万でした。被害者がこうした多額の資金を拠出することは無理であり、緊急に全国の弁護団、研究会に志ある資金の拠出を呼びかけて、幸い用意して破産申立てすることができましたが、このような形で準備できるのは例外です。
 さらに、解散命令について述べます。
 私見としては、行政の公益的立場からは、解散命令の申立て制度を検討すべきだと考えております。会社解散命令については、会社法八百二十四条に一般的な規定があり、法務大臣その他利害関係人に申立て権を認め、裁判所に判断を求める仕組みですが、抽象的な規定であって、調査権限等の手続規定もなく、実際には使われていません。
 これとは別に、行政庁が解散命令を発出するという類型の法律もありますので、資料十ページを御覧いただきたいと思います。
 行政庁が解散命令を発出するというのではなくて、行政庁が裁判所に解散命令を申し立てる権限を持つという類型もあるわけでして、そういう類型で実際に運用されている例を見ますと、宗教法人法八十一条があります。裁判所は、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により若しくは職権で、一定の要件で解散を命じることができるとするものです。
 業務停止処分にも従わないような極悪な業者については、公的インフラとしての会社制度の利用を許すべきではありません。しかし、会社法の解散命令の制度は、取締り法規における主務官庁の申立て権限が明記されていないばかりか、解散事由も具体性に欠けております。実際にも使われておりません。
 そこで、主務官庁に申立て権があること、及び業務停止命令に違反して営業していること等を解散命令事由となることなどを明確にするという意味から、会社法の解散命令の特別規定として新たに創設することができると考えます。
 預託商法の歴史を見れば、業務停止処分に従わない極めて悪質な業者が現実に存在するということが明らかなので、このような解散命令規定の必要性を示していると言えると思います。
 また、解散命令は行政庁が公益目的で申し立てるもので、破産手続と違って私人間の権利関係に行政が介入するのはどうかといった問題は生じませんし、清算過程で破産原因が判明すれば破産手続に移行すればよいという関係になりますので、整理ができると思います。
 破産申立て権については、特定適格消費者団体に破産申立て権を認めないと消費者裁判手続特例法が実際問題として使えないという点について資料十一ページ、それに関連しまして、違法収益吐き出し制度が消費者庁創設以来の宿題であり、MRIインターナショナルの事件では米国において違法収益吐き出し制度が実際に成果を上げているという例が具体的に見えまして、その必要性はますます明らかになっているという点について十二ページに記載してありますので、御覧ください。
 最後に、三点目として、契約書面の電子化問題について述べます。
 契約書面の電子化は、預託法改正法案にも規定があります。しかし、預託法の改正法案は、多大な被害を出してきた販売を伴う預託等取引被害を根絶するために、不適正な勧誘や契約をあらかじめ排除する仕組みとしていますので、こうした条件の下で消費者の承諾があるのであれば、特商法分野のような具体的な懸念は想定されないと考えます。これに対して、特商法分野の場合、事前確認制度を持つ預託法の場合と契約に至る前提条件の面で大きな違いがあります。
 デジタル化社会あるいは経済の活性化との関係ですが、デジタル化によって利便性が向上し、しかも消費者被害も解消されるということは、条件を整備すれば十分実現可能と考えます。
 金融分野の例を挙げてみます。
 FX取引、外国為替証拠金取引は、今では顧客口座数がおよそ七百万口座という巨大な取引市場となっております。しかし、二〇〇四年三月末当時、わずか八万六千口座にすぎませんでした。そして、直接適用する業法がない状態で、電話、訪問勧誘によって消費者被害が多発し、社会問題化しており、消費者にとって避けるべき取引だったという状態でした。
 そこで、同年十二月に金融先物取引法を改正して、不招請の電話、訪問勧誘の禁止ルールを導入いたしました。これによって、被害が解消したばかりでなく、取引が急激に拡大し続けて、今日に至っております。つまり、オンライン取引をビジネスモデルとする事業者が多く新規参入し、取引の信頼性と利便性が向上したことを背景に、自ら主体的に取引に参加する顧客が急増してきた、こういう経過です。
 これに限らず、オンラインの金融取引は、自らオンラインで申し込むということから、勧誘起因のトラブルというのは聞きません。したがって、オンラインの取引への承諾というのは、こういう局面で客観的に判断されると思います。したがって、この意味では、第三回成長戦略ワーキング・グループで事業者から要望されている、完全オンライン型における英会話教室の書面デジタル化という点は理解できるところであります。
 しかし、それ以外の、不当勧誘による被害が問題となっている訪問販売等というのは全く場面が違います。
 消費者トラブル額、被害額は、二〇一九年では、契約購入金額ベースで約六兆円、既払い額では四・七兆円と推計されていて、極めて巨額です。こうした巨額な資金が健全な事業者による良質な商品、サービスに向かう、そういう仕組みを構築することが真の成長戦略と考えます。
 その意味からも、デジタル化社会ということであれば、デジタル化社会に対応した特商法の在り方の全般的な見直しが求められているのであって、古い体質を温存したまま契約書面だけ電子化するというような部分的な対応では、真のデジタル化は推進されないばかりでなく、逆に弊害が際立つことになると指摘して、意見陳述を終わります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
○永岡委員長 ありがとうございました。
 次に、池本参考人にお願いいたします。
○池本参考人 御紹介いただきました弁護士の池本と申します。よろしくお願いします。
 私は、一九八五年の豊田商事事件の被害者弁護団に参加したのを手始めに、様々な訪問販売被害事件あるいは預託商法の事件などに取り組んでまいりましたし、消費生活センターの相談処理、アドバイザーの役割も長く務めてまいりました。昨年は、消費者庁の特定商取引法、預託法の検討委員会の委員としても参加させていただきました。
 こうした経験や議論を踏まえて今回の改正法案を見た場合、検討委員会の報告書で提言されていた中身については、本当にすばらしい法案が作られたということで高く評価しております。その立案担当者の御尽力については、本当に心から敬意を表したいというふうに思います。
 もちろん、その枠組みの中で、政省令、通達などを具体化する作業、ここが重要でありますので、引き続きしっかりと取り組んでいただきたいし、この委員会の場でも、皆さんにも議論をしていただきたいところであります。
 ただ、しかし、昨年の暮れ以降、急遽登場してきた契約書面の電子化に関する議論は、これは消費者被害を拡大するおそれが極めて強いということで、反対せざるを得ない中身であります。承諾の要件を実質化することによって歯止めをかけると言われていますが、それは構造的に難しい、無理だと私は考えます。何よりも、関係者による議論を全然行わないで一気に導入を提案されたことで、全国の消費者団体とか弁護士会、司法書士会、地域団体あるいは労働団体、幾つかの地方議会からも、反対の意見が次々と出されている状況にあります。私は、この書面の電子化の部分については、本当は、やはり一旦削除して、引き続き検討の場を設けるという形をお願いしたいと思っております。
 あと、もう一点、クーリングオフの通知を書面だけでなく電子メールでの方法も認めるという改正案、この部分は賛成なのですが、電子メールの場合に、発信したときに解除の効果が発生するという規定が、わざわざそこだけ抜けて、欠落した状態になっています。そこは是非修正をしていただきたいというふうに思います。
 預託法については、もう既にお二人の参考人から議論がありましたので、定期購入と送りつけ商法については検討課題を簡単に触れ、あと、クーリングオフの発信主義の問題と書面の電子化を中心に議論してまいりたいと思います。
 まず、詐欺的定期購入の問題ですが、提案された中身、これを見ますと、悪質商法に対する抑止効果が相当に期待されるものであるというふうに私も評価しております。
 もちろん、問題は、政省令、ガイドラインで中身をどう具体化するかということですが、今起きている問題は、申込確認画面の中でも、初回のお試し価格を強調して、二回目以降が目立ちにくくする、特に、金額の確認欄、数量の欄も初回の分だけを書いていて、二回目以降をわざわざ欄外に注意書きのような形で分離して表示するという手口が横行しています。一つの契約ですから、総額、総量をきちんとまず書くということ、これを政省令、ガイドラインなどにおいて明記していただきたいということです。
 実は、今回の改正の直接の課題ではないんですが、広告画面でも同じことが起きています。初回お試し価格だけがどんと大きく出て、二回目以降は小さな注意書きでしか書いていない。もうその段階で誤認をしているわけです。したがって、政省令、ガイドラインの見直しのときには、広告画面についても明確なルールを打ち出していただきたいというふうに思います。
 次に、送りつけ商法の原則禁止の点です。
 これも、送りつけ商法は即時に返還請求権を喪失するという形で明記されたということで、民事効果の点では十分に評価できます。
 ただ、問題は、そういうルールを知らない消費者はたくさんいるわけで、そこに対する啓発も一方では必要なんですが、他方で、そういったことを繰り返す悪質業者に対して行政処分権限の規定が欠けている、この点が残念でなりません。この点、直ちに行政処分の規定を今回入れなければ反対だというところまで申し上げるつもりはありませんが、民事規定の改正の効果を、きちんと推移を注視した上で、必要に応じて更なる見直しが必要ではないか、この点は是非確認しておいていただきたいと思います。
 次に、クーリングオフの通知の点です。
 書面による通知のほかに電磁的記録による通知を認めた、この点はもちろん賛成であります。
 実はこれは、従来から判例、学説の中で、書面でなくてもクーリングオフの意思表示が他の証拠で明らかであれば有効であるというふうに解釈、運用されてきました。
 消費生活センターでも、相談処理の場面ではそういう解釈で処理をされてきたし、一般の訪問販売業者あるいはクレジット会社などはおおむね対応してきたというふうに評価しています。
 ただ、一般消費者に対して、書面じゃなくてもいい、口頭でもいいよというふうな啓発をしてしまうと、どうしても電話に流れてしまう、その結果、言った言わないの問題を誘発してしまうので、啓発の場面では、必ず書面によりましょうというふうな広報をしてきた、こういういきさつがあるわけです。
 今回、電磁的記録の場合については効果があるというふうにきちんと枠づけをして条文に明記していただいたという点で、これは評価できるわけです。
 ところが、同じ問題の中の第二項で、現行法では、書面を発したときに解除の効力が生じるということが明記してあるわけですが、改正法案では、書面を発したときと、電磁的記録を媒体に記録して発送した、例えばUSBメモリーに入れて郵送するとか、その場合だけを掲げて、それについては発信主義だという規定になっています。言い換えれば、電磁的記録を電磁的方法で発信、つまり、電子メールとかSNSとか、これで送信した場合は条文がない状態になっています。
 特別法がなければ民法の一般原則に従うというのが、これは法律解釈の原則です。民法九十七条の一項は、「意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。」こういうふうに明記してあるわけです。
 だとすると、例えば、消費者がクーリングオフの行使期間内に電子メールで解除の意思表示を発信した、ところが、事業者のメールサーバーがプロバイダー側の何らかの原因によって期間内に到達しない、つまり、消費者にも事業者にも責任がない場合には、クーリングオフの効果は発生しないことになってしまうのではないか、こういうことが危惧されるわけです。
 この点、消費者庁は、先般の四月二十七日の本委員会での質疑の中で、電子メールは発信と同時に到達して効力が生じるものである、クーリングオフは電子メールの発信をもってその効力が発生する、こういう解釈を答弁されております。
 もちろん、そういう解釈であってほしいわけですが、実は、クーリングオフは発信日に効力が生ずるというのは、特商法にそういう明文規定があるからそう言えるわけであって、電磁的方法だけわざわざ外してしまうと、消費者庁のその答弁どおりに将来裁判所が採用してくれるかどうか、これは非常に不安定になります。
 民法であれば、いわゆる類推適用という対処によって、明文はないけれども趣旨は同じであるということで同じ解釈を取るということができますが、悪質商法対策のこの特商法では、行政処分とか罰則も併存するわけです。だとすると、特商法には明文規定が必要なのではないか。
 現実の問題としても、例えば、ある悪質業者が、クーリングオフのメールが期間内に届いていない、これについては効力を認めない、こういうふうに主張したりあるいは契約書に明記した場合に、一般の消費者はそこで事実上諦めてしまう。あるいは、それに対して行政処分とか罰則をかけることができるか。この辺りで、例えば罪刑法定主義との関係でも疑念が生ずるわけです。
 消費者庁の解釈を明確に確認するためにも、書面又は電磁的記録を発したときに効力が生ずる、こういうふうにしていただきたいというふうに思います。
 そして、書面の交付義務、電子化の問題です。
 これについては既にたくさんの反対の意見書も出ておりますが、訪問販売などのように不意打ちで勧誘する、消費者は不本意な形で受けてしまう、あるいは、連鎖販売取引のようにもうけ話で誘い込む、不本意な形で契約をしてしまう、そういう場面であるからこそ、契約した直後に契約書面を交付して、その中でクーリングオフという規定が見えやすい形で赤字、赤枠で記載してあって、それを見て契約内容とクーリングオフ制度を知って、考え直す、クーリングオフをするという機会を与える、これが特商法の最も重要な役割のはずです。
 書面の電子化を認めてしまうと、その詳しい契約条項が手のひらに載るスマホの上に移されるわけですが、果たして、その中から大事な情報を探し出して、クーリングオフに気づいて確認できるでしょうか。結局、気づかないうちに八日を過ぎてしまうということが最も危惧されるところであります。
 消費者庁は、この点について、書面の交付があくまで原則である、電子交付は例外であるということを強調しておられます。
 確かに、条文の形式はそうなっています。が、勧誘方法がそもそも不意打ち勧誘であったり利益誘引勧誘、こういう取引場面を規律したものについて、事業者が本体の契約の勧誘とともに、じゃ、書面は電子データでいいですねと言われれば、両方含めて何となく、はい、そうですかということになってしまうんじゃないんでしょうか。結局、実態としては電子交付が原則になってしまうということがほぼ予想されます。
 消費者庁は、もう一点、真意による承諾をしたことが明らかな場合に限る、承諾の要件を実質化するんだというふうに言われています。
 しかし、これまた、本体の契約について不意打ちの勧誘であったり利益誘引の勧誘である場面で、書面の電子化の部分だけ真意で承諾をするということは、そもそも場面としても想定できないんじゃないでしょうか。本体の契約と電子化の承諾は、同じ場面で同じ流れの中で承諾を取得してしまうということになるわけです。私は、これでは歯止めにならないというふうに言わざるを得ません。
 それから、消費者庁は、電子交付を積極的に希望する消費者のニーズに応える必要もあるんだということも言われています。
 これも、先ほど石戸谷弁護士の発言の中にもありましたが、消費者が最初からオンラインで本体の契約についてアクセスして契約するかどうかを判断する場面であれば、電子データについても自ら積極的に選ぶということは想定し得るかもしれません。しかし、不意打ち勧誘、利益誘引勧誘で、受け身の立場で本体の契約を承諾させられる、そういう場面で、積極的に希望する消費者というのは果たしているんでしょうか。
 もちろん、一部にはそういう消費者もいるかもしれません。しかし、想定している取引の構造からすれば、受け身の立場で仕方なく承諾する消費者が多いということを前提にしなければいけないし、そもそも、デジタル機器に不慣れな脆弱な消費者、これを切り捨てないというのが消費者庁の責任であるはずです。消費者保護法の本質的な役割もそこにあるはずです。
 最後に、消費者庁は、デジタル社会の推進という政府全体の方針であるということも、四月二十七日の審議の中でも強調しておられました。
 しかし、デジタル社会を推進するのであれば、オンラインによる英会話指導契約、特定継続的役務提供ですね、こういうものに絞ってまず導入するというのであれば、まだ理解できます。訪問販売、電話勧誘販売、マルチ商法、これはデジタル社会の推進とは直接つながらないし、逆に弊害を招くおそれがあります。
 先月、四月六日ですか、衆議院で通過しましたデジタル社会形成基本法案の第七条にこういう条文があります。「デジタル社会の形成は、」「被害の発生の防止又は軽減が図られ、もって国民が安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与するものでなければならない。」こういう規定であります。
 消費者保護の司令塔役である消費者庁です。是非この基本理念に沿って見直しを受け止めていただきたいし、政府全体としても、真の意味でのデジタル社会の形成に向けて、この基本理念に沿った形での見直しを是非皆さんの中で検討していただきたいと思います。
 以上です。(拍手)
○永岡委員長 ありがとうございました。
 次に、増田参考人にお願いをいたします。
○増田参考人 全国消費生活相談員協会の増田と申します。消費生活相談員の団体でございます。よろしくお願いいたします。
 本日、このような場で意見を述べさせていただく機会をいただき、大変ありがとうございます。
 この度の改正法につきまして、消費者庁の御尽力に心から感謝申し上げたいと思います。
 まず初めに、預託法改正により販売預託取引が原則禁止されることに賛成します。
 豊田商事事件以降、ジャパンライフなど、販売預託商法による事件が多数発生してきましたが、消費生活相談の現場では、預託法を活用して交渉することはほぼできませんでした。訪問販売や連鎖販売取引などに該当すれば、その規制や民事ルールによって交渉をしてきましたが、契約者が主に高齢者であり、複数の契約をして多額の現金を支払ってしまってからの相談であることが多く、交渉は大変難航してきました。
 消費者は、勧誘者の説明を信じ、契約したい気持ちがあるものの、漠然とした不安があり、信用性を知りたいと思い、消費生活センターに相談することがあります。この度の改正により、販売預託取引は、無限連鎖講と同様に重い刑事罰をもって禁止されている取引であり、契約をしないよう明確に助言ができる、これが非常に有益だと考えております。
 消費生活相談の現場で長い間苦い経験をしてきました消費生活相談員は、原則禁止の実現に期待しております。
 二番目に、特定商取引法改正についてです。
 詐欺的な定期購入契約の規制強化に賛成します。
 消費生活相談のあっせん交渉では、定期購入契約について、たとえ分かりにくくても一応の表示をしていると、事業者からは表示していると主張され、解決は困難を極めています。
 資料に事例を御紹介させていただいております。
 表示事項義務と、虚偽誇大表示を禁止し、不実表示、不表示で誤認して契約した場合、購入者に取消権が付与されることに賛成します。
 また、申込みはいつでもインターネットで可能とし、解約時には電話に限定した上で電話がつながらないなどは、解約を拒否していることと変わりありません。契約解除について、妨害とみなされる行為を禁止することに賛成いたします。
 そして、送りつけ商法の規制強化も賛成いたします。
 そもそも、申込みもしていないのに、一方的に送りつけられた商品を一定期間保管しておかなければならないこれまでの規定は、消費者にとって非常に不本意なものでした。おかしいと思いながらも、事業者から請求された場合、多くは少額であることから支払ってしまうケースもあったと思います。
 保管期間をなくし、直ちに返還請求権を喪失することに賛成します。今後、この改正の内容について、消費者、事業者へ広く周知していただくようお願いいたします。
 三番目に、電磁的方法によるクーリングオフの通知について賛成いたしますが、メール送信も発信時に効力があることを明確化していただきたいと思います。
 悪質な事業者の場合、クーリングオフの通知が届いていない、メールでは効力がないなど主張する可能性があります。
 これまで事業者交渉をしてきて、特商法を理解していない事業者がいることを知っています。政省令やガイドラインまで理解している事業者がどれだけいるのか、非常に懸念があります。
 クーリングオフは、消費者が簡易な方法で契約を解除できる強い権利です。それは、消費生活センターが介入せずとも、消費者自身によって実現できる必要があります。事業者からメールでは効力がないと言われた場合、消費者は諦めてお金を払ってしまうことも考えられます。
 消費者にも事業者にも分かりやすくするために、メール送信も発信時に効力があることを明確化してください。
 四番目として、契約書面の電磁的交付を可能とする改正に反対いたします。
 デジタル化の有益性、必要性については、十分に理解しています。しかし、脆弱な消費者に対し、攻撃的なアプローチをすることの多いこの分野において、電磁的書面交付を可能とする改正は新たなトラブルを増加させると考えます。
 反対理由を五点申し述べます。
 一点目は、高齢者の見守りが機能しなくなるということです。
 高齢者は自らを守ることが困難なため、消費者庁は見守りネットワークの構築を最重要課題とし、やっと福祉部門との連携ができてきました。高齢者の自宅にあった書面を家族やヘルパーが早期に発見して通報してくれることで、被害回復につながることが多くなっています。
 被害に遭っている意識が乏しい高齢者が、自らスマホを見てほしいと申し出ることは考えにくく、ヘルパーはもちろん、家族であっても、スマホを見せてもらうことは簡単ではありません。
 例えば、母親が独り暮らしで、最近は物忘れがひどいため、自分と妹で身の回りの介助をしている、今日、自分が屋根工事の契約書を見つけた、母に確認すると、点検に来ていた事業者に、屋根がひび割れして雨漏りしている、工事をしないと大変なことになると言われたらしい、契約金額は四十万円でまだ払っていないようだなどの相談が寄せられます。
 たとえ法律、施行規則、ガイドラインで消費者保護を手当てしても、違反する事業者がいます。消費生活相談員は、行政処分と違って、事業者とあっせん交渉して返金してもらわなくてはなりません。
 家族やヘルパーが早期に契約書面を見つけてくれれば、クーリングオフにより解決できる可能性が高いですが、クーリングオフ期間を過ぎると、勧誘時の説明が虚偽だった、強引だった、契約当事者の判断力が低下していたなど、いろいろな問題を指摘しての交渉になります。もちろん、言った言わないになりますし、認知症の診断書がないケースも多くあって、交渉は難航します。
 早期の発見で、まだ払っていない段階でしたら解約交渉はしやすいですが、悪質な事業者の場合、現金での支払いが多く、一度払ってしまうと返金は困難を極めます。
 生命保険を勧誘されて、タブレットで入力したようだが、契約した覚えがないという相談が寄せられます。生命保険会社による説明がなかったとは思えませんし、実際、タブレットで申込みをして、後日、書面も郵送されていたことが分かりました。突然訪問されてタブレットで契約しても、契約した意識が低いのだろうと思います。
 電話勧誘販売の場合は、特に契約した意識が低く、書面が郵便で届いて初めて、契約が成立していることや契約内容を理解する人が少なくありません。在宅率の高い高齢者が、電話で光回線契約を勧誘されて、よく理解しないままに契約してしまい、書類が届いて初めて家族が気づくということが起こっています。
 許認可を受けている金融商品取扱事業者や電気通信サービス事業者が説明してもトラブルになっているのが現状です。
 二点目は、契約書面の電磁的交付についての同意取得についてです。
 書面の電磁的交付の同意について、明示的な同意がなければ承諾とは認められないということですが、元々、不招請勧誘され、虚偽、誇大な説明等により契約に至ることが多い分野であり、契約内容の実態さえ理解していない状態で、真意の同意が取れるのか大変疑問です。
 訪問販売で、タブレットによる申込みを受け、その流れの中で、電磁的書面交付の同意をタブレットで得るということが想定されますが、そのような同意が真意の同意とは考えられません。
 契約の申込みが消費者の真意かどうか争うと同時に、電磁的書面交付の同意が真意かどうか消費生活相談の現場で争うことになり、更に交渉が困難になります。また、違法な方法で同意取得をした事業者に、書面交付したとはみなされません、クーリングオフとして返金してくださいと言っても、認めないことが容易に推測できます。
 三点目は、若者の連鎖販売取引についてです。
 連鎖販売取引において、SNSによる勧誘、オンラインによる説明、オンラインによる契約が既に行われていますが、それに加え、オンライン書面交付と、取引が全てオンラインになることで、勧誘が活発になる可能性があります。
 連鎖販売取引の法定書面は、数十ページにもわたります。その法定書面をスマホで受け取り、スクロールしてクーリングオフの記載を一目で捜すことは困難です。消費者は、元々クーリングオフができる取引であることを知らないことが多いため、スマートフォンに検索機能があっても、クーリングオフの規定を捜すこと自体しないと思われます。結果的に、クーリングオフの機会を失うことになりかねません。
 そして、若年者の場合、消費者金融から借り入れて支払っていることがありますが、消費者金融への返済のためにアルバイトをしなくてはならず、就職活動に大きく影響しているのを見てきました。
 さらに、成年年齢引下げにより、現状の被害が十八歳、十九歳に発生することは容易に想像できます。
 勧誘が活発化し、匿名性の高いインターネット上での連鎖販売取引等の行政処分が迅速にできるのかも大変疑問です。
 四点目は、消費者のITリテラシーがまだ十分ではないということです。
 オンライン化が急速に進んでいるとはいえ、スマホによるネット検索やSNSの利用程度という人が多くいます。そのため、書面を受領しても、保存方法を知らない、スマホを買い換えて紛失する、あるいは、スマホの設定により添付データを受け取れないという現実に対処してきました。また、プリンターを持っていない消費者も多く、印刷できないということもあります。消費者が書面の重要性を理解せずに電磁的交付に同意をすることが考えられるため、保存するということに注意を払う意識が低いと考えられます。
 最近では、電気代やスマホの料金を払えず、スマホが使えなくなったという相談もありました。
 インターネット上の定期購入の問題から分かるように、普通の判断力を持った消費者も、オンラインにおいては脆弱な消費者となっています。
 五点目として、インターネット機器の不具合、通信回線事故についてです。
 機器の不具合により書面が消失してしまったり、通信回線の事故で書面が受け取れなかったり、そういうことが想定されます。回線の不具合の責任はどうなるのか、機器の不具合は消費者の責任になるのかなど、新たなトラブルの要因となり、消費生活センターでの課題が増えます。
 最後に、消費者からの苦情、相談を受け止め、特定商取引法を広く活用している、消費者被害の回復を目指しています消費生活相談員として、電磁的書面交付に反対する意見としたいと思います。
 以上でございます。(拍手)
○永岡委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
 特定商取引法、預託法等改正案について、参考人の皆さんに伺いたいと思います。
 河上正二参考人、石戸谷豊参考人、池本誠司参考人、増田悦子参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、ありがとうございます。
 最初に、増田参考人に伺います。
 先ほどのお述べになった中で、消費生活相談員は消費者からの苦情、相談を受け止め、特定商取引法を広く活用して、消費者被害の回復を目指して取り組んでおられるということでした。私も、現場で皆さんからお話を聞いてまいりました。そして、その立場から、電磁的書面交付を認めることに反対ですという御意見をお述べになりました。
 私も紙の書面の役割というのは結構こだわっていまして、後でそれぞれの参考人の方に伺いたいのですが、増田参考人は、消費者庁は高齢者の見守りネットワークの構築を最重要課題とし、福祉部門との連携をされてきたということでした。私、特商法の世界、とりわけ消費生活相談員の皆さんは、これを使っていろいろなあっせんや相談に乗っていらっしゃると思うんです。その特殊性という、この世界について、もう少し事例をお示ししていただければと思います。
○増田参考人 訪問販売というのは、いきなり家に来られて、玄関口でいろいろな説明をされるわけですね。そういう状態の中で、帰ってくださいとか必要ありませんという言葉を発することができないというのが一般の方です。今、時間がないですのでとか、曖昧な言い方でしかお断りすることがしにくい状態なんですね。
 あと、電話勧誘であっても、電話だからそばにいないので、電話を切ってしまえばいいじゃないかというような感覚も冷静に考えるとありますけれども、やはり、電話ではっきりと、いきなりがちゃんと切るということがしにくいのが、日本人の特性というのがあるのではないかというふうに思いまして、やはり、丁寧に断りたい、相手に悪く思われたくないという心情から、なかなか毅然とした態度が取りにくい状態にあると思います。
 そういう中でついつい契約してしまうということがありますので、相手からのアプローチがあったときに、やはり電磁的書面交付のことについても、これが便利ですよというようなことを言われたときにはっきりと断ることができるのかどうかというのは非常に疑問であるというふうに思っております。
○畑野委員 そうはいっても、紙の契約を例えば家族とかヘルパーさんとかが見守り活動を通じて見つけた、そういうことで相談につながったことが多いと思うんですけれども、その辺りはどうですか。
○増田参考人 最近は、家族の方とかヘルパーさんから、直接、消費生活センターの方に御相談いただくことがあります。
 以前は、本人でなければ相談できないというようなところから、そういうことに受付側もなかなか積極的に介入するということが難しかったんですが、それは、本人の生活を守るという視点から、そういう周りの方からの通報もしっかりと受け止めるということが行政の立場でもきちんと理解が進んだというところから、そういう連携ができているというふうに思っております。
○畑野委員 それで、その点に関わって、契約書面の電磁的交付についての同意取得についてお述べいただきました。増田参考人は、元々、不招請勧誘され、虚偽、誇大な説明等により契約に至ることが多い分野であり、契約内容の実態さえ理解していない状態で、真意の同意が取れるのかが大変疑問ですというふうにおっしゃっていただきました。
 これは、具体的に現場でいうと、先ほどちょっとお述べになりましたけれども、どういう流れになってしまうんでしょうか。
○増田参考人 いろいろなアプローチがあるんだろうと思うんですが、先ほどお伝えしたとおり、タブレットでの勧誘というのが進むと思います。その際に、ぽちっ、ぽちっと押すということが、本人が、押してくださいと言われたときに、そのとおりに誘導されるということがあるので、事業者が例えば金融商品に関して、保険に関しても、悪意がなくても、やはり受け止め側が慣れていないというところから、十分な理解がされないという可能性はあります。やはり、その人のデジタルに関する適合性というのをきちんと把握していただかないと、そこのところは難しいかなというふうに思います。
○畑野委員 増田参考人にもう一つだけ伺います。
 消費者のITリテラシーがまだ十分でないとおっしゃられました。普通の判断力を持った消費者も、オンラインにおいては脆弱な消費者になってしまう、これは大事な指摘だと思います。具体的にどのようなことが考えられますでしょうか。
○増田参考人 顕著なのは、定期購入の問題があります。一定の表示をしていたとしても、やはりその表示を見過ごすということがあります。
 最近はコロナ禍でインターネット通販が非常に広く活用されるようになりましたけれども、やはり不慣れな人は、必要なところを見ないとか、それから、重要な、ここは大事だというようなところを確認しないということが多くありますので、それは非常に問題、まだまだリテラシーが低いんだなというふうに思います。
 それと、スマートフォンといっても、やはり、PDFを保存する方法であるとか、それを、例えばパスワードがついていたら、そのパスワードを解凍して見るというようなアプリを入れるとか、そういうこともできないという状況もあります。
 ほとんどの方は、プリンターを持っていない方なんですね。そうすると、印字して保管するということができませんし、スマートフォンというのは結構買換えが多いと思いますので、その際にどうなるのか。五年間ぐらいやはり保管しておくべき必要があると思います、クーリングオフの通知を出したということとか、そういうのは保管しておく必要があると思いますので、そういうところの書面の重要性ということが理解できていないと、やはりそういうところに思いが至らないのかなというふうに思います。
○畑野委員 ありがとうございます。
 池本参考人に伺います。
 池本参考人は先ほど、消費者庁は、書面の交付が原則であり、電子交付はあくまで例外であると述べているが、特商法の契約類型は事業者が主導的に勧誘するものであり、事業者が積極的に勧めれば、多くのケースで電子交付が原則になってしまうというふうに述べられております。
 現場から見て、その実態はどのように考えられますでしょうか。
○池本参考人 条文上の原則、例外の定め方と、この取引構造について原則がどうなっていくかということは、やはり明確に区別する必要があると思います。
 訪問販売、電話勧誘販売、あるいは訪問購入、これは定義そのものからして、事業者が主導的に勧誘し、消費者は受け身の立場で契約の承諾を迫られる、そういう場面を想定しているわけです。それから、連鎖販売取引と業務提供誘引販売取引も、利益を収受し得ることをもって誘引しというのが定義ですから、まさにそういう場面を想定しているわけです。特定継続的役務提供だけは、役務の性質論から始まっているので、そこだけちょっと区別されるのですが。
 定義からして、それは条文にどう原則、例外と書こうとも、実際の中では、本体の契約の勧誘と同時に書面の電子化についての承諾も得るやり取りをすれば、結局、原則はそちらに流れてしまうであろう、こういうことです。
○畑野委員 池本参考人にもう一つ伺います。
 先ほどの御意見の中で、消費者庁が、消費者が真意による承諾をしたことが明らかな場合に限るから不利益は生じない旨答弁しているが、訪問販売やマルチ商法、事業者が不意打ち勧誘や利益誘導型勧誘により消費者に不本意な承諾をさせる取引類型においては、本体の契約を承諾することと書面の電子交付の承諾は不可分一体であるというふうにおっしゃいました。
 これはどういうことか、もう少し具体的にお話しいただけますか。
○池本参考人 御質問ありがとうございます。
 これもやはり具体例で再確認した方がいいと思うんですが、マルチ商法の事例で、大体、先輩とか知り合いから紹介をされて業者の説明会に行って、勧誘をされて契約をする。業者側の勧誘で、これはこうこうこうでもうかるんだよ、会員になってこうやればどんどんもうかるんだよということを説明されます。まあ半分は、本当かな、自分にできるかな、嫌だなという警戒心があるんですが、脇にいる紹介者、先輩であったり、その人が、一緒に頑張ろうよといって、まさに背中を押すわけです。そうすると、何か断りにくい雰囲気の中で承諾をしてしまう。そのときに、タブレットを出し、あるいはあなたのスマホで、はい、じゃ、ここでアクセスして、自分でここへチェックを入れてと言われたときに、そのことの重要性というんですかね、分からず、結局チェックをして、サインをしてしまうのではないか。
 まさに、一つの勧誘場面の中で不可分一体に手続が進んでしまう、こういうことだと思います。
○畑野委員 ありがとうございます。
 石戸谷参考人に伺います。
 ジャパンライフ事件でも大変お世話になりました。
 紙の契約書があったことで、周りの人が気がつく、重要な証拠にもなってくるということがあるというふうに思います。
 特商法の方の話を先ほどからしているんですが、この点で、契約書面の電子化が認められた際にどのようなことが危惧されるのか、伺います。
○石戸谷参考人 預託に関しては確認制度が適用されるということなので、現行の預託の場合であれば、連絡を地域包括支援センターの方からいただいたり、うちに来ている高齢者がこういうのがいるんだけれども、それはもう当然ながら、紙ベースの契約書や何かを見つけて、これは相談した方がいいんじゃないか、こうなるんですけれども、スマホを出してくださいとはちょっと言えないと思うんですよね。中身をちょっとチェックしますとは言えないと思うんですよ。だから、当然、表面化しないということと、現状の取引でいえば、仮に電子的に持っていたとして、短期契約の場合は六年ですので、その間スマホや何かを買い換えたり、タブレットとか、長期は二十年ですので、データそのものがなくなっちゃうというのが多分現状だろう。
 それと、ジャパンライフの例でいいますと、今度は会社側なんですが、破産管財人が入っていったときに、既にプロバイダーとのリース契約や何かが不払いで、リース契約が解除されていて、データが消滅しちゃっていて、非常にその管財人が契約状況を把握するのに困難を来したということがあります。ですので、金融分野なんかだと参入規制がありますので、データ管理や何かというのは当然ながらその辺の規制もあるわけですけれども、そういうのが全然ない領域において、そっちの方面からもちょっと問題だなというふうに思います。
○畑野委員 ありがとうございます。
 最後に、河上参考人に伺います。
 預託法、特商法等の在り方検討委員会の座長もされて、その場では契約書面の電子化の議論はなかったというお話でしたけれども、先ほど、安易な電子化は危険だ、そして、鍵は消費者の実質的同意の確保になるというふうにおっしゃっていました。具体的に少しお話しいただいてと思います。
○河上参考人 今、いろいろな参考人の御意見も聞きながら、やはり、なかなか、実質的な同意を取ることの難しさというものを痛感しておりますけれども、理屈の問題だけから申しますと、電子化というものは、通常の意思表示を書面化しているものと、技術的に進歩はしましたけれども、変わらないということでして、一般論としては、電子化というものを正面から否定するのは難しいんじゃないか、理屈の上で。
 そこで、やはり、実質的な同意をどうやって確保するかということでして、一つは、教育、ITリテラシーを高めることによって、それぞれの人がきちんと同意をするときに、どういう意味があるのか、これはほかのことでも何でもそうです、真の同意があって契約をしているかどうかというのはほかの問題でも全て問題になりますから、そうしたものが必要でありますし、もう一つは、書面の保管とかああいう問題に関して、実は、立証の問題としては事業者側にあるわけでありますから、事業者にどこまでのことをやったのかということをきちんと立証負担を負わせておくということ、これが必要であろうというふうに思います。
 紙の契約書があることで周りの人が監視ができたり気がつくというようなことは確かにあるかもしれませんけれども、大体、妙なものは隠してあるもので、周りの人はなかなか気がつかないというようなことでありますから、問題としてはイーブンじゃないかという気がするのですね。イーブンといいますか、電子化というものをまず認めるかあるいは認めないか、認めるとした場合に実質的なものをどう担保するかという、その分かれ道になるわけで、立法政策としては、私は、現在の内閣での出した法案でやれるところまでやってもらいたいというか、きちんとした形での政令を作っていただきたいということであります。
 おっしゃる懸念はもう十分分かっておりまして、今回の新型コロナのワクチンの申出ですね、接種券を私はもらえましたけれども、あれをコンピューターでやれといっても、一分か二分の間にやらないと全部取れないという状態。ITリテラシーのない我々、年寄りにとってみると、それは無理だという感じがするわけです。おっしゃる点は全く同感でございます。
○畑野委員 以上で終わります。ありがとうございました。