衆院本会議可決
取引デジタルプラットフォーム(DPF)を利用する消費者の利益保護法案が15日の衆院本会議で採決され、全会一致で可決されました。日本共産党は13日の衆院消費者特別委員会で立憲民主党とともに修正案を提出。否決されましたが、修正案を一部反映した14項目の付帯決議が全会一致で可決されました。畑野君枝議員は同委で、「消費者利益の保護をDPF提供者に義務付けるべきだ」と求めました。
同法案は、アマゾンや楽天などDPF提供者に対し、消費者利益保護を規定する新法。さまざまな商品やサービス、無数のDPF提供者があり、危険商品等が販売されても「場の提供者」として責任が不明なためトラブルが増加しています。
畑野氏は、ネットを介して情報を売買する情報商材を集めるDPF提供者や、出火した携帯バッテリーの販売業者などの事例を指摘。危険・虚偽表示商品の削除とDPF利用停止や販売業者の情報開示の実効性確保などを求めました。井上信治消費者担当相は、「安全でないことを記載せず、非表示の場合も対象」などと答弁しました。
9日の参考人質疑で、日弁連や全国消費生活相談員協会から「情報商材のDPF提供者は存在自体が害悪」などの意見が出ました。
(しんぶん赤旗2021年4月20日付)
【議事録2021年4月9日参考人質疑】
○永岡委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律案を議題といたします。
これより質疑に入ります。
本日は、本案審査のため、参考人として、京都大学大学院経済学研究科・研究科長依田高典君、公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会会長、東北大学・東京大学名誉教授、青山学院大学客員教授河上正二君、弁護士、日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長板倉陽一郎君、公益社団法人全国消費生活相談員協会理事長増田悦子君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願い申し上げます。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。
それでは、まず依田参考人にお願いいたします。
○依田参考人 初めまして。京都大学大学院経済学研究科で研究科長をしております依田高典でございます。
本日は、意見陳述の機会をいただき、どうもありがとうございます。
それでは、私から、デジタルプラットフォーム消費者利益保護法の必要性について意見陳述をさせていただきたいと思います。
まず最初に、デジタル時代の社会の変化について、三点お話をさせていただきます。
第一に、リアルからオンライン、アナログからデジタル、そうした移行が進んでいる世界でございます。
そして、アメリカのGAFAと呼ばれる巨大なプラットフォーマー、具体的には、グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルなどが台頭しており、世界経済を支配している状況にございます。
そしてさらに、今般の一年以上続いている新型コロナウイルスの流行におけるデジタルトランスフォーメーションの必要性、これはもはや無視できるものではございません。
次に、デジタル社会に必要な政策とは何かについて御説明いたします。
第一に、先ほど述べたアメリカのGAFAと呼ばれるようなプラットフォーマーが市場の支配力を増して、その行使を抑制する競争政策が必要でございます。
第二に、プラットフォーム上の取引のトラブルから国民、消費者を守る消費者の保護政策も必要でございます。
第三として、競争政策と消費者保護政策がプラットフォーマー政策の両輪となることを認識する必要がございます。
では、まず、デジタル時代の競争政策とは何か、これについても三点述べます。
内閣官房のデジタル市場競争会議、具体的には、経済産業省等が共同で設置している内閣官房の中の会議体でございますが、そちらが検討したデジタルプラットフォーマーの市場支配力をコントロールする事前規制が求められております。予防する規制が求められております。
私は、そのワーキンググループ座長として、オンラインモール、アプリストアの出店者、出品者、つまり中小企業いじめを監督する法律というものを検討して、まとめてまいりました。
幸いなことに、そのプラットフォーマー取引透明化法は、二〇二〇年五月に制定され、二〇二一年二月、この二月に施行されるに至っております。
他方で、車の両輪であるところのデジタル市場の消費者保護政策についても、三点述べさせていただきます。
消費者庁のデジタルプラットフォーム消費者取引検討会というものを消費者庁が立ち上げ、合計十二回開催してまいりました。私は、そちらの座長としましても、毎回おおよそ三時間にも及ぶ議論を積み重ねてまいりました。
第二に、日本のみならず、欧米、特にヨーロッパにおいて、EUデジタルサービス法というものを検討しており、日本同様、デジタル時代における消費者の保護政策が現在進んでいるところでもあります。
そして第三に、そうした動きを受けて、デジタルプラットフォーマーの公的な責任を法制上明確に定め、危険商品の流通や消費者の泣き寝入りを予防する、消費者利益の保護を図る新法の制定を求める報告書をこの一月にまとめたところでございます。
ここで、消費者の視点と企業の視点について若干述べさせていただきます。
第一に、学者や弁護士や消費者団体は、概して言えば、デジタルの消費者トラブルの急増あるいはその悪質化というものを懸念し、消費者保護の法制化を強く求めてまいりました。
他方で、企業であるプラットフォーマーは、自社ビジネスの便宜を主張し、場所貸しであると自らの立場を述べ、公的責任の免除を主張してきたものでございます。
第三に、当初、両者の意見の隔たりはなかなか埋まるものではありませんでしたが、興味深いことに、NHKのようなテレビあるいはほかの日刊紙のような新聞がこうした消費者トラブルの実態を報道すること等を通じて、大変興味深いことに、市民、国民の問題意識や社会理解も進んでいく中で、先ほど述べた両者が歩み寄り、接点を見出すような努力も続けられてきたところでございます。
ここで、一つ、話題を変えまして、私の専門である行動経済学的な視点の重要性について述べたいと思います。
認知限界という言葉があります。人間の認知には限界があって、万能、完全な存在ではなくて、弱い生き物である。つまり、分かっていてもやめられない、理想と現実の乖離、それをバイアスと呼びますが、バイアスを回避できないのが生身の人間でございます。
第二に、二〇一七年に、そうした弱い、限定合理的な人間を優しく言葉や情報提供を通じて誘導する、ナッジという英語がございますが、ナッジを解明してノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー・シカゴ大学教授がつとに有名でございます。
セイラー教授は、来日されたときに、東京駅の近くにございます相田みつを美術館を訪ねまして、なぜかというと、セイラー教授は相田みつをさんのファンでございまして、だって人間だものという色紙を買って帰られた、そういう逸話もございます。
そうした中において、決してデジタル社会から、人間の弱みにつけ込む悪質業者というのは、悲しいことではありますが、なくなりません。
なぜかといいますと、デジタル社会の特徴は、誰でも低費用で気軽にデジタルの取引に参入できることが魅力だからです。
デジタルの魅力が悪質業者の惹起をしてしまう、これは皮肉なことではありますが、残念ながら、全ての出店者、出品者が善意の存在ではありません。
しかも、そうした企業は日本企業だけとは限りません。外国からそうした悪質業者が入ってくることもなかなか避けられません。巨大なプラットフォーマーの公的な責任は、そうした意味において無視できないものではありますが、従前の消費者関連法の中でプラットフォーマーの公的責任というのを明示的、明確に定めた規定というものも弱いところがございました。
プラットフォーマーのそうした自助努力に対する配慮も、一方で私は大変重要であると考えております。
第一に、プラットフォーマー、GAFAは現代のイノベーションの牽引者であり、彼らの新しいビジネスが消費者便益を大きく改善するところもございます。
そうした中において、お上である政府がしもべとしての民間事業者の行為をあれこれ縛るのは、ある意味で時代遅れであると言わざるを得ません。
企業の創意工夫を尊重した官民の共同規制と言われる新しい規制の在り方が求められるところでございます。
できるところから始めることが現実的な船出となります。
第一に、プラットフォーマーが出店者、出品者と消費者の紛争解決に取り組む努力義務、第二に、政府が危険商品の出品を停止させたり、消費者が悪質業者の情報開示を求めたりする権利、第三に、官民協議会を設置し、官民が不断にコミュニケーションをしながら、そして消費者が救済を申し出る制度の創設、そうしたものが新しい法案の中に盛り込められるべきであると考えております。
しかしながら、今後検討すべき幾つかの課題も残っております。
第一に、今回、BツーC取引に対する規律は定められることになろうかと思いますが、CツーC取引の規律は今なお今後の検討課題でございます。
第二に、発展著しいデジタル広告のターゲティング広告や、あるいは一人一人に異なった値段をつけるパーソナルプライシングというものがありますが、今なおそちらに関してはもう少し静観することも必要かと考えております。
そして三番目、消費者保護政策というものは消費者教育政策というものがあってこそ機能するものでございます。
最後になりますが、日本のデジタル社会を目指して大切なことは何か。
一番、日本のデジタルトランスフォーメーションはもはや待ったなしでございます。デジタル社会に多大の危険、リスクが存在するからといって、従来どおりのアナログにとどまることはもはや許されません。そうした中において、デジタルトランスフォーメーションは待ったなしで進めていかないといけない。
第二に、そのデジタルトランスフォーメーションの前提として、消費者の安全、安心があってこそ成立するものでございます。
第三に、そうしたデジタル市場上の取引環境を整備して、世界のデジタル化の中でもっともっと日本企業のプレゼンスを高めていくような視点も重要でございます。
以上、まとめて結論となりますが、私は、デジタルプラットフォーム消費者利益保護法の制定を求めるものでございます。
以上であります。ありがとうございました。(拍手)
○永岡委員長 ありがとうございます。
次に、河上参考人にお願いをいたします。
○河上参考人 河上と申します。
私の肩書のところがいろいろと入り乱れておりまして大変申し訳ございませんけれども、実は、参考人としてどういう立場でお話をすればいいのかということについてさっきまで迷っておりまして、基本的には、私は大学で民法とそれから消費者法を研究、教育してまいりましたものですから、やはり一研究者としてお話をさせていただくのがいいだろうということで、その意味で、意見メモの方の肩書とこれとがちょっとずれているということになりますけれども、ちょっとお許しいただければというふうに思います。
実は、それとは別に、消費者庁の預託法等検討委員会の委員長もさせていただいていたというようなこともあって、そこでもデジタル関係のものについて一定の意見をまとめたという経験がございます。これまでのところ、見ました段階では、今回の取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律案も非常によく考えられたものであるというのが認識でございますけれども、できれば、それに加えてこういうこともお願いできればということで、幾つかお話をさせていただこうと思います。
お手元に発言メモというのをお配りさせていただいているかと思いますが、初めのところ、それから二番目のインターネット通販と詐欺的な定期購入商法というのは、今、依田先生からお話があったところと繰り返しになる部分がございますので、ある程度省略をさせていただいていいかと思います。
ただ、今、プラットフォームビジネスというのは非常にグローバルに展開されているということでございまして、海外でも議論が大いに進んでおりますし、一部の国では立法的な手当ても設けられているということがございますので、こうしたグローバル化に対応するには、それらのルールとイコールフッティングの状態というものを求めていく必要があるだろうというふうに思います。
三ページ目の五のオンラインプラットフォームの構造というところでございますけれども、その真ん中から下あたりに書いてありますけれども、プラットフォームを介して商品等の販売をしようとする者及びプラットフォームを介してその売主から商品等を購入しようとする買主等、これは、それぞれ、実は、プラットフォーム事業者があらかじめ用意した利用規約、これは約款と呼んでいいだろうと思いますが、そういうものに同意することによって利用契約を締結するという構造を持っております。
しかも、プラットフォーマーは、その利用者が多ければ多くなるほど価値を高める、利益を上げる。そして、プラットフォーム事業者の定める利用規約によって、その全体ルールを事実上定めていくことになっているというわけであります。
プラットフォーマーと売主等との利用契約と買主側との利用契約というのは、これはばらばらの契約ではなくて相互依存関係にありまして、言ってみれば、多面市場が全体として一つのシステムを構成しているというふうに考えられますために、一方の契約関係だけを切り離して単独で考察するのは、これはまずいということでして、全体を一つのシステムとして観察する必要があるというのが基本的な認識でございます。
その六のところに、プラットフォーマーの責務というものを書いております。
この責務に関しては、実は、有名なYというオークション、これについて名古屋高裁に判決が出ているのがありまして、その中で名古屋高裁は、利用者が詐欺等の被害に遭わないように、犯罪的行為の内容、手口あるいは件数などを踏まえて、利用者に対して、時宜に即して、相応の注意喚起の措置を取るべき義務、これを負うんだと。
さらに、プラットフォーマーは取引のきっかけを提供するにすぎず、単なる場の提供者にすぎないという抗弁は、今日では否定されるべきであるということになろうかと思います。つまり、プラットフォーム事業者というのは、システムの構築者ないしプラットフォーム市場の形成者としての役割を担っているからであります。
このシステムのコントロール可能性ということを考えていくと、プラットフォーマーの立場というのは、売主の詐欺的な行為など不適切な行為に関する情報が得られた場合には、売主との間での利用契約上も、利用停止等の対応を取ることができる立場にあるというふうに考えられるわけであります。
最後の段落ですが、プラットフォーム事業者自身による不適切な表示に起因する損害についても、プラットフォーム事業者は利用者に対して賠償責任を負わないといけないということになりますし、その延長上の問題として、商品、売主に関する評価システムをプラットフォーム事業者が導入しているような場合は、その評価の公正さと透明さを確保する、そういう責務があるんだということになります。
最後のページになりますが、こうした利用契約上の付随義務として、レビューの公正さ、あるいは透明性の確保義務というものが求められるんじゃないかということであります。
今回の法律案、これは、どちらかというと行政規制関係のものというものに限られているように思われまして、民事の義務に関する民事規定を今後充実させていく必要があるというのが私の意見でございます。
シェアリングエコノミーにおいては、これを仲介するプラットフォーマーに情報が集中しておりますから、その意味では一定の制度的対応も行われてはおりますが、これは、民事の解釈上も、買主のリスクを軽減するためのより積極的な措置を取ることが要求されていいんじゃないかということになります。
最後の七のところに、システム構築責任という言葉を掲げておりますけれども、プラットフォーマーにおいては、このプラットフォーマーをシステム構築者として位置づけて、複数の契約ないしそれを構成要素とするシステム全体を正面から捉えてルールを整備するということが不可欠であります。その一環として、民事的にも、プラットフォーム事業者のより積極的な義務を明文で基礎づける可能性があるというふうに思います。
コロナ禍のこの時代において、本法を制定するということは非常に大事なことでもございます。それだけに、これを是非改善しながら、是非よい法律にしていただければというふうにお願いしたいと思います。
以上でございます。(拍手)
○永岡委員長 河上参考人、ありがとうございました。
次に、板倉参考人にお願いを申し上げます。
○板倉参考人 弁護士で、日弁連消費者問題対策委員会副委員長、こちらは電子商取引・通信ネットワーク部会の部会長というものを兼ねておりますが、板倉でございます。
本日は、このような機会を与えていただき、ありがとうございます。
お手元に私の意見陳述用の資料をお配りしておりますので、こちらを参照しつつ、私の意見陳述をさせていただきたいと思います。
主として、条文案を既にいただいておりますので、条文案に順番にコメントするという形を取っておりますが、八ページを見ていただきますと、最初に附則を載せております。
これは何かと申しますと、いろいろな法案、最近は、何年見直しとか、個人情報保護法などは三年ごと見直しの条項などがありますが、本法案においても、三年を目途として見直すという条項が入っております。
ただ、非常にデジタルプラットフォーム関係は動きが速い。それから、先ほどの依田先生が座長の検討会、私も同じ日弁連の肩書で委員をさせていただいておりましたが、残念ながら積み残しの論点がいろいろございます。こちらの論点の議論や、今回設立されると思われるデジタルプラットフォームの協議会等の状況を見て、三年では遅いということであれば、これは積極的に早めに見直しの検討に着手していただきたいと思います。
本当に毎日のようにデジタルプラットフォームないしインターネットをめぐる事件というのは報道される状況ですので、せっかく今回ベースになる法律ができるということであれば、一から作るのに比べれば非常に議論はしやすいと思いますので、ちゅうちょなく、これは前倒しで検討していただきたいなと思います。
もう一つは、先ほどの検討会の報告書でも、消費者庁において必要な人材の確保その他の組織体制の充実を図るべきであると記載されたとおりですが、こちらは、アメリカのGAFA規制といえば、それはもう連邦取引委員会、FTCにおいて相当のパワーを持ってなされているわけでございます。ヨーロッパにおいても、いろいろな機関が相当の力を割いて監視、監督を行っているものでありますので、日本においても相応の人員及び予算が必要になると思います。
消費者庁等の関係省庁に十分な予算、それから機構・定員、予算だけあっても駄目ですし、人だけ割り当てられても、ポジションを横から動かしてくださいでは、やはりこれも困ってしまいますので、予算、機構・定員、是非、全て確保していただいて、十分な体制で施行していただきたいなと思います。
九ページに参ります。
こちらは三条の条文を書かせていただいております。これは取引デジタルプラットフォーム提供者の努力義務の条文ですが、検討会で、様々な関係事業者ないし関係事業者の団体に来ていただきましてお話を伺いましたが、残念ながら、最もたちが悪い部類の事業者というのは、そういう検討会では、当然来ていただけるわけではありません。
ここで例に挙げておりますような、情報商材の取引デジタルプラットフォームのような、どう考えても、その存在自体が極めて害悪である、この極悪層というのは、私がつけたネーミングではなくて、検討会の座長代理をされていた神戸大学の中川先生のネーミングですが、もう最初から悪いことをして、いざとなったら逃げるというようなのを極悪層というふうに消費者法の分野で呼んでおります。
こういう取引デジタルプラットフォームについては、やはり、残念ながら検討会でも実態把握や検討が十分ではなかったので、これらの検討をした上で、今の努力義務では、彼らは基本的には効果はないわけです。守る気もないでしょうし、協議会にも参加しないでしょうから。効果がないということが分かれば、これは、ちゃんとやっていただけるデジタルプラットフォームに対して勧告、命令が出されるということはなくとも、極悪層のデジタルプラットフォームに対する勧告、命令、さらに、違反した場合の罰則というのは検討されるべきものだろうと思います。
それから、その下に記載しておりますのは、日弁連の方で並行して、オンラインの紛争解決手続についての意見書を出させていただいております。こちらも資料の三として配付させていただいております。
内容は多岐にわたりますが、デジタルプラットフォーム関係についても意見を述べさせていただいておりまして、こちらの我々日弁連の提案としては、適切な身分確認等が定期的に行われない等の場合には、たな子ですね、販売業者等々、法案では販売業者等と言っておりますが、販売業者等との契約をやめるといったようなことをしてほしいというような意見の趣旨を述べております。
なので、この努力義務全てについて勧告、命令、罰則に変えるべきという意見にはなっておりませんが、オンラインの紛争解決をきちんと整備していただく、そのためには、当然、相手方の身元確認等が犯罪収益移転防止法のレベルで必要であろうと。こういうことを確認をして、ちゃんとやっていないというようなたな子については取引をしないでほしい、その取引をしないということについて、守っていただけないのであれば、勧告、命令、罰則という仕組みも必要ではないかという意見を、これは日弁連として述べております。
十ページに参ります。
十ページは利用停止要請の部分ですが、これは割とテクニカルな部分になってしまうんですが、こちらの定め方が、安全についての表示が不適切な場合でたな子に連絡がつかないような場合には利用停止要請ができる、こういうことになっております。全てこれは表示に係っておりますが、一々、安全ですと書いて出品する人はいませんので、安全じゃない場合に、その書いてないということを表示として捉えないと、この条項は機能しないことになります。
なので、是非ここは、非表示も表示に含める、ないしは、非表示であることを全体として勘案して表示であるというような解釈ですよというのが確認できるといいだろうというふうに思っています。
もう一つ、安全性の判断に資する事項以外は消費者庁において内閣府令で定めていただくことになっておりますが、これはやはり、消費者の権利利益の保護に必要なものというのが目まぐるしく変わると思いますので、十分な内容で、かつ相当の頻度で適切に改正して定めていただきたいなと思います。
それから、十二ページに飛びまして、販売業者等の開示請求についてですが、こちらの開示請求は、損害があるというふうに主張される場合にたな子に連絡がつかないときに用いる請求になりますが、内閣府令で定める額を超える被害が要るということになりますので、こちらが余りにも高い、例えば何十万円ですとなると、ほとんど行使できないことになりますので、十分に低廉な額で内閣府令は定めてほしいなと思います。
もう一つ、開示していただく販売業者等の情報、こちらが、これも内閣府令に係っているわけですが、同じような制度として発信者情報開示というのがあります。これは、関連してプロバイダー責任制限法の改正が今国会にもかかっておりますが、その発信者情報開示の対象情報が限定列挙であったがために、非常に実務家は苦労してきたという事実があります。
なので、今回は、定め方によると思いますので、限定列挙ではなくて例示列挙、包括条項を入れるような形で是非定めてほしいなと。これは府令レベルでできると思いますので、そのようにしていただきたいなというふうに思います。
それから、十六ページに飛びます。
こちらは、先ほどの検討会の報告書の、今後の検討課題のところを抜いて記載させていただいておりますが、依田先生からもありましたように、CツーC取引の実態把握及び検討、これはやはり、検討会としては積み残しだと思っておりますので、速やかに着手してほしいなと思います。
今回、結局、隠れBについては適用するというような形になっております。そうすると、CツーCのデジタルプラットフォームにおいても事実上従わざるを得ないということになります。いるかもしれないので、結局、この法律に従う。他方で、この法律に従ったとしても、この法律に従った場合の免責というのはCツーCプラットフォームのCの部分はかからないということになって、事業者としても宙ぶらりんだろうと思います。
議論としては、CツーCのCについては、消費者法が適用されない、行政規制等がないのでデジタルプラットフォームにかけるのも変なんだというような考え方も一つあろうかと思いますが、他方で、間接侵害のようなものはそれ自身の責任であるといって定めることは決して法制上は不可能ではないと思いますので、これは、CツーCの実態把握、検討を速やかに行うべきだろうと思います。
それから、積み残しの論点では、私はやはり、不正、悪質レビューというのを残したのが非常に心残りです。こちらの検討も速やかに行い、場合によっては、そのレビューを主導するようなコンサルタントであるとか、書いてしまうような人に対する直接の罰則も含めて検討すべきだろうと思います。
十七ページに参ります。
こちらも今回は法案には入っていない話なのですが、外国事業者の話です。
ここで発言を引かせていただいているのは、規制改革会議の第十四回の貿易・投資等ワーキング・グループという平成二十六年五月二十七日の会議の議事録で、これは法務省の民事局参事官が直接コメントされていることでありますが、外国会社について、やはり登記がされていないということについては、いろいろ大変な問題が起きるんじゃないか、特にBツーCは大変な問題が起きるのではないかと平成二十六年の段階で御担当者が言っていますが、大変な問題が起きているわけでございます。
外国会社は、日本において取引を継続してするような場合には登記しないといけないことになっていますが、これが全く守られていません。取引デジタルプラットフォームの提供者にせよ、たな子である販売業者等にせよ、外国会社の登記の義務があるのに履行していないのは、これは単なる違法です。日本国がなめられているというようなことにもなりますので、是非、これは積極的に代表者登記義務の履行を徹底させる運用をお願いしたいと思います。これは、日弁連でもプロバイダー責任制限法に関する意見書の中で述べておりますが、デジタルプラットフォーム、本法との関係でも同じことが言えます。
さらに、同民事局の参事官は、場合によっては取引継続禁止命令というのもできる、外国会社が不法な目的に基づいて日本で事業を行う場合にはそういうのもできるんだというようなことを自認されていることであります。なので、極悪層である販売業者等というのがデジタルプラットフォームにはたまに紛れ込むわけですが、そういう者に対しては、法務省自身が御確認されているとおり、取引継続禁止命令、これは、外国会社の事業が不法な目的に基づいて行われたときということですのでハードルは高いのかもしれませんが、例えば、被害者等の利害関係人と法務大臣が協力して申し立てることによって取引継続禁止命令を行うということも積極的に是非やっていただきたいなと思っております。
それから、十八ページは、まだ審議入りされておりませんが、特商法等の改正のポンチ絵を貼らせていただいております。
なぜこれを貼っているのかと申しますと、そちらの法案で、左下に赤く囲みましたが、外国執行当局に対する情報提供制度を入れるという案が示されております、預託法も含めてですね。
これは当然、デジタルプラットフォームないしたな子、販売業者等に対しての執行等を検討される場合には、アメリカのFTCであるとかヨーロッパの消費者当局と情報を交換するんだということも含めて、こちらの法案でも提案されているというふうに認識しております。このようなことができるという体制も含めて、是非、関係当局には、人員、予算、機構・定員等、十分な体制を構築していただきたいなと思います。
私からは以上です。ありがとうございます。(拍手)
○永岡委員長 ありがとうございました。
次に、増田参考人にお願いいたします。
○増田参考人 公益社団法人全国消費生活相談員協会の理事長をしています増田悦子と申します。
本協会は、消費生活相談員を主な構成員とする公益社団法人です。本日は、消費生活相談員としての意見を述べる機会をいただき、ありがとうございます。
多くの消費者は、個々の販売店の情報がなく、価格の妥当性、商品の安全性、事業者が信用できるかなどの心配から、デジタルプラットフォームを利用しています。
デジタルプラットフォームの利便性や有益性については言うまでもありません。また、デジタルプラットフォームは販売店の信用性を調査した上で販売することを許可しているはずだ、トラブルがあったら救済してくれるだろうという期待を持っています。今やなくてはならないデジタルプラットフォームについて、消費者利益の保護のための新法が制定されることは、消費者としても、消費生活相談員としても、大変感謝申し上げたいと思います。
その上で、消費者からの基本的な期待に応えていただきたく、意見を述べたいと思います。
まず初めに、本法案の対象についてですが、BツーCを対象とし、加えて、消費者を装った販売業者も含めるとしています。
しかし、今は、副業も容認されたり、インターネットの利用によって、費用をかけずに誰でも事業をスタートできるようになりました。特商法のインターネットオークションのガイドラインで販売業者かどうかの判断基準が示されていますが、販売業者として認められるにはハードルが高く、これまで、私の消費生活相談の現場で活用した経験がありません。今後、消費者庁で検討される場合に是非留意していただきたいと思います。
また、CツーC取引の場合、当事者同士での解決は困難で、場合によってはエスカレーションします。多くは少額の取引ですので、すぐに裁判に移行することもできません。デジタルプラットフォーム提供者によるODR機能としての一定の解決を目指すことも含めて、今後の課題にしていただきたいと思っております。
二番目に、デジタルプラットフォーム提供者が講じる措置についてです。
本法案では、消費者と販売業者との円滑な連絡を可能とする措置や、苦情があった場合の調査を行うこと、必要に応じて所在確認をすることなどを努力義務としています。
しかし、デジタルプラットフォームへの出店を募り、消費者との取引を取り持つ業務であるなら、デジタルプラットフォームにおける販売店管理責任は、クレジットカード会社の加盟店管理責任と大きな差がないのではないかと考えています。よって、努力義務で足りるのか、大変懸念があります。
販売店がどのような商品やサービスを幾らで販売するのか、その商品はどこから仕入れるのか、どのような方法で誰がサービスを提供するのかなど、一般的に消費者が知りたい最低限の事項については事前に確認を取っていただく必要があるのではないかと思います。
インターネット取引の場合、価格の比較が大変しやすいので、消費者は価格に大変敏感です。その販売店の商品が他の事業者の同種の商品と比較して余りに低価格であったり、あるいは高価格であった場合には、その理由を確認していただきたいと思います。余りに低価格のブランド品は模倣品であったり、通常より余りに高価格な商品やサービスである場合、効能、効果についての広告に問題があることが多くあります。
また、消費者から苦情があった場合には、調査を行い、同種の苦情の発生状況を確認していただきたいと思います。販売店への苦情は様々ありますが、同種の苦情が複数寄せられる場合は必ず理由があります。それが改善されないのであれば、プラットフォームから退場してもらう必要があるのではないかと思います。
そして、特商法で定められている連絡先等の記載事項が虚偽であったり、修正していなかったりは特商法違反です。デジタルプラットフォーム提供者として、常に正確な連絡先の届出義務や表示義務、違反する場合の措置などの内部規定を策定すべきではないかと思います。こうした事前調査、途上調査を既に実施しているデジタルプラットフォームがありますし、小規模なデジタルプラットフォームは許されるということではないのではないかと思います。
今後、措置の内容を指針で定めるに当たっては、こうした事前調査、途上調査のほか、エスクローサービス、苦情の申出窓口、補償制度、レビューの監視など、デジタルプラットフォームとして消費者から当然に期待される機能について提案していただきたいと思います。
また、消費者に対し、デジタルプラットフォーム提供者が講じた措置の概要及び実施の状況について開示するとされていますが、これは、消費者が安全に利用できるプラットフォームかどうか適切に判断するために大変重要なことだと思います。
そのためには、消費者がすぐ分かる場所に分かりやすく表示していただきたいと思います。消費者の適切な選択を可能とし、同時に、消費者利益のために費用をかけて制度を導入しているデジタルプラットフォーム提供者のインセンティブにもなると思います。そして、それは結果的に消費者教育にもつながるものと思います。
三番目に、デジタルプラットフォームの利用の停止に係る要請についてです。
事故のおそれがあると分かった場合や、消費者を誤認させる虚偽、誇大な広告表示がされている場合、利用の停止等をデジタルプラットフォーム提供者に行政から要請できることは、消費者の安全、安心のために非常に重要な制度だと思います。
しかし、要請であることと、販売業者を特定できない場合という要件があることから、速やかな情報伝達となるか懸念があります。消費者に情報が届くまでには時間がかかりますし、販売業者が特定できたとしても、デジタルプラットフォーム提供者の積極的な協力がなければ、小規模な販売業者の場合、情報入手が遅れる可能性があります。
特商法や景表法に基づき行政機関が執行するまでには時間がかかり、その間に、消費者被害が継続して発生することにもなります。危険な商品については取引停止措置、商品回収することを即座に販売店に伝え、偽ブランドや詐欺的な情報商材など、事実と相違するものについてはデジタルプラットフォームでの販売をすぐに排除していただきたいと思います。デジタルプラットフォーム提供者が情報を把握したら速やかにプラットフォーム内に通知することを義務づけしていただくことで、消費者被害が拡大防止、未然防止されて、同時に、販売業者が被害を拡大させないためのサポートにもなると考えます。
四番目に、販売業者等の情報の開示請求についてです。
本法案では、消費者から販売業者の情報の開示請求ができることになっています。その際、一定金額以上という条件が入るようですが、通信販売の取引額は少額であり、その少額の被害について消費生活センターにたくさんの相談が寄せられていることを配慮していただきたいと思います。
また、さきにお伝えしたとおり、特商法で定められている連絡先等の記載事項が虚偽であったり、修正していなかったりは特商法違反です。この条文の中で、なぜ違反している販売業者に意見を聞かなければならないのか、開示を拒否した場合にはどうするのかなどの疑問が湧きました。せっかくの開示請求の実効性に不安が残ります。
五番目に、紛争解決の対応についてです。
消費者と販売店との話合いが進まなかったり、苦情を申し出た場合には、デジタルプラットフォームとして解決のために尽力していただきたいと思います。また、消費生活センターから連絡した場合、大手デジタルプラットフォームにおいても、担当者によって対応が異なったり、プラットフォームによって対応のレベルが異なる場合があります。補償制度も、実質的で利用しやすいものでなければ、制度を導入しているとは言えません。制度をつくるだけでなく、現場での運用を適切に行っていただかないと、努力義務を果たしていることにはならないのではないかと思います。
また、デジタルプラットフォーム提供者の中には電話番号の記載がないところもあります。電話番号を明記すること、消費生活センターから紛争解決のための連絡が入った場合は、積極的に連携協力して、一緒に解決を目指していただきたいと思います。デジタルプラットフォームは、消費者と事業者をつなぐ場の提供者であり、同時に当事者であるという意識を持っていただきたいと思います。
この度の法案は消費者利益のための大きな前進だと考えていますし、消費者の安全、安心の機能を既に導入しているデジタルプラットフォームがあることも承知しています。しかし、小規模のプラットフォームや情報商材ばかりを集めて販売しているプラットフォームなどについては、やはり努力義務を果たすことを期待できるか疑問です。努力義務の取組の程度が低い場合や、消費者とのトラブルが多数発生しているのに、その販売業者を放置しているような場合、そのデジタルプラットフォーム自体に指導等が必要ではないかと考えます。
全国の消費生活相談員がこの法律に期待しています。消費生活センターとの連携により、消費者の利益の確保ができるよう、心から望んでいます。
そして、最後になりますが、本法案ではSNSは対象とされていませんが、消費生活センターに寄せられる悪質な定期購入や詐欺的な情報商材等のトラブルの多くは、SNSの広告に誘引されて、販売業者のサイトへ誘導されています。広告の審査基準の厳格な運用や表示されている広告の監視、苦情が入ったときの調査など、SNSもデジタルプラットフォームとしての役割を果たす必要があると考えます。SNS広告規制について、特商法で行うのか、この法律で行うのかも含め、今後検討していただきたいと思っております。
以上でございます。(拍手)
○永岡委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
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○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
本日は、依田高典参考人、河上正二参考人、板倉陽一郎参考人、増田悦子参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、ありがとうございます。
取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律案ということで伺います。
まず、増田参考人に伺います。
取引デジタルプラットフォーム提供者による措置の実施を努力義務でなく義務とするようにとおっしゃっていただいておりますが、日々、消費生活相談を受けている現場の御認識についてお聞かせいただきたいと思います。努力義務で果たして実効的な運用ができるのか、問題点があればお示しください。
○増田参考人 既に大手のプラットフォームはそういう機能を装備しているところが多くありますので、努力義務じゃなく義務化しても何ら問題はないのではないかと私としては理解しております。
そうではないところに対してどれだけの、プラットフォーム協議会がつくられましたけれども、そこからの効果がどういうふうに及ぶのかということも非常に考えにくいところがありまして、やはり、義務化していただかないと実効性というのは果たされないでしょう。
私たちが交渉するときに、これは義務ではないですねというようなことは、当然反論されるということが予測されますので、そうした場面を想定しますと義務化が望ましいなというふうに思います。
○畑野委員 また、併せて伺いたいんですけれども、取引デジタルプラットフォーム上の取引のうち、CツーCの話が先ほどから出ておりますが、増田参考人は、CツーC取引も対象にすべきでしょうか、どのようにお考えか伺いたいのと、現在、既に起きている消費者被害の事例として御紹介いただければ、お願いしたいと思います。
○増田参考人 CツーCを消費生活センターで取り扱うというのは、現段階では非常に難しいというふうに思います。
ただ、CツーCの取引であっても、苦情が寄せられた場合、プラットフォームに伝え、そこで調整をしていただくということは、プラットフォームだからこそできるのだというふうに思いますので、両方の場所を知っていたり、調整ができる立場だと思いますので、やはりそういう、ある意味ODRの機能というものを持っていただくというのが非常に望ましいなというふうに思っております。
○畑野委員 ありがとうございます。
河上参考人に伺います。
DPF上の様々な消費者被害の話もございますが、とりわけ、高齢者や若年者の被害は深刻だと思います。来年四月から成年年齢の十八歳への引下げが施行されるんですが、このデジタルプラットフォームに絡んでどのような被害が想定され、どのような対策が必要になるとお考えか、伺えますでしょうか。
○河上参考人 ありがとうございます。
私も前期高齢者でありまして、どちらかというとリテラシーに弱い方であります。だから、非常に頼りない人間ではあるんですけれども、やはり、高齢者がこの方法についてきちんと理解できるようにサポートしてくれるような人を育てないといけないだろうという気がします。ただでさえ、だまされやすくて依存心が強いものですから、全体としていろいろな方が高齢者を見守っていくということが必要で、消費者教育はこれまで高齢者に対してはかなり手厚くやるようになってきていたんですが、もう少し、このリーガルリテラシーに関しては考えないといけない。
それからもう一つ、若者の方ですけれども、若者は意外に慣れているんですね。その意味では、むしろこういう問題に対しては敏感に反応できる態勢にあります。
ただ、逆に、それだけに、若者が安易に、例えばお金がもうかりそうだとかそういうものに飛びついてしまう、場合によっては自分が加害者になってしまうというような可能性もございます。
そういうことを考えていくと、若年者に対する消費者啓発というもの、特に、今度、年齢層を下げて、成年年齢が引き下がっていきますと、自分でも銀行口座を開けるわけですね。ですから、いろいろな被害が出てくる可能性がありますので、これは中学生あたりから少しずつ、消費者教育の中に、こういうインターネット取引における危険性、そういったものについて教えていくということが必要になるだろうとは思います。
○畑野委員 ありがとうございます。
板倉参考人に伺います。
販売事業者はもちろん、デジタルプラットフォーム事業者の義務についても強調されていると思います。取引の場を提供しているだけだから何らの義務を負わないということには当然ならないというふうにおっしゃられているんですが、この点についてもう少し詳しくお話を聞かせていただけますでしょうか。
○板倉参考人 ありがとうございます。
一般論になりますが、デジタルプラットフォームができたことによって、同じインターフェースで消費者はいろいろなところにアプローチして買物ができて、しかも比較もできて、これは便利だというのはそのとおりです。
他方で、たな子の方、販売業者等の方も、三つに分けると、これはまた中川先生の分類をおかりしますが、従順層と中間層と極悪層といるわけで、従順層はちゃんとやってくれるからいいわけですが、中間層は被害を生じさせてしまうかもしれないですね。過失で被害を生じさせてしまうかもしれない。それが自分でオンラインストアを立ち上げてアプローチしてということですと、範囲が限られますから、そんなにたくさんの被害は出ないわけですが、デジタルプラットフォームを使うことによって、思わぬ被害が非常に及ぶ場合がある。それから、極悪層はひどいもので、デジタルプラットフォームを悪用して、最初から悪いことをするわけであります。
しかしながら、デジタルプラットフォームは、それはどういう人かにかかわらず、恐らく、その上がりをいただいて利益を上げているわけですから、それは知らないよというわけにはなかなかいかない。過失や故意で悪いことをしてしまう人についてはやはり排除してもらうというようなことをやっていただきたいなということで、責任がないということにはならないでしょうと。
これを、基本的には今回の法律は、責任を負う販売業者等の補助的な責任として位置づけているわけですが、それは絶対ではないだろうと思うんです。
私の意見陳述のときにも、一言、間接侵害という話をしましたが、立法によって、関与する方の侵害を、単なる補助的な責任ではなくて法的な責任だとしている例というのはいろいろ、知的財産の分野とかでありまして、民事の分野では、河上先生からあったように、放置した場合にはいろいろ責任が生じる場合があるというようなこともされているわけですから、議論を経て、立法等によって、必ずしも補助的な責任ではないというようなものを加えるというのは不可能ではないと思いますので、そこは、今申し上げたような、非常によくない人がどれぐらい今後もばっこするのかというのを丁寧に見ていただいて、必要があれば直接的な責任に、多少、法律の考え方を変えるんだというのはそんなに難しくないのではないかと思っています。
○畑野委員 ありがとうございます。
依田参考人に伺います。
極悪層の話を先ほどもされておられましたが、デジタルプラットフォーム事業者の責務という話が先ほどから出されております。今後の課題としてどのようなことが考えられるか、その点について少し詳しく伺えますでしょうか。
○依田参考人 畑野先生、どうもありがとうございます。
正直申し上げまして、課題というのはたくさんございます。そういう中において、プラットフォーマーの公的責任をどう考えるかという点について、課題について私見を述べさせていただきます。
先ほど河上先生ほか諸先生が申し上げましたように、当初の私が座長を務めた検討会においても、名立たる大大プラットフォーマーが、我々は所詮、場所を貸しているにすぎずに、悪いことをしているのはたな子なので我々には責任はありませんということを、とうとうと政府の委員会でも述べてきたところでございます。
やはり、今日、それは絶対に許されない見解であると私は感じております。
なぜかと申しますと、一つ、消費者庁等が実施した利用者アンケート調査に基づくと、消費者は、例えば、名立たる、ここでは実名は申し上げませんけれども、世界に冠たる巨大プラットフォーマーが運営するオンラインモール等を利用した場合において、あなたは誰から買物をしていますか、誰がそこの責任を負いますかというアンケート調査を実際に行っております。それについて詳しい数字は消費者庁の報告書を見ていただければとは思いますが、多くの消費者が、具体的なたな子ではなくて、その巨大プラットフォーマーを信用して、そこを信じて買物をしていますので、具体的な責任もプラットフォーマーに負ってほしいという意見が多くございました。更に言えば、たな子が具体的に誰かも分からないようなケースも、消費者の方の意識としては多々あります。
そうした消費者の現状を踏まえまして、やはり、従前どおりの、プラットフォーマーの公的責任は場所貸しであるからないという一部のプラットフォーマーの意見は、もはやあり得ないだろうと私は感じております。
しかしながら、特商法を始め、従前どおりの法律は、十分にそのプラットフォーマーの公的責任を法制、明示化するところにまだ至っていないところもございまして、また、事業者のみを扱っているところもございまして、CツーCの、消費者が売手側に回るときの責任をどう考えるかにはまだ及んでおりません。そうしたところにおいては、公的責任をより明確にする上で今後の課題であると受け止めております。
以上です。
○畑野委員 ありがとうございました。
先ほども質疑の中で出ておりましたけれども、今、コロナ禍で経済状況が逼迫する中で、デジタルプラットフォーム上の勧誘や広告を受けて、投資話やマルチ商法、私、この間の委員会でFXの話をしたんですが、情報商材によるもうけ話などについすがってしまうという消費者もおられます。こうした中で、現在、特商法の改正案に盛り込まれた契約書面の電子化に多くの団体から懸念や反対の声が上がっているんですが、先ほど議論でありましたが、この電子化、電子書面化に対する御意見があれば伺いたいので、先ほどお話しされていなかった皆さんに一言ずつ伺います。増田参考人、板倉参考人、依田参考人、一言ずつ、何か御意見があれば伺いたいと思います。
○永岡委員長 では、増田参考人から。
申し訳ございません、時間が迫っておりますので、手短によろしくお願いいたします。
○増田参考人 対面で勧誘をする訪問販売であるとか、それから成年年齢引下げを目前にした若者に対する連鎖販売取引については、このオンラインでの書面交付というのは一番懸念されるところだと思います。相談現場で非常に混乱が起きるというふうに思っております。
○板倉参考人 御質問ありがとうございます。
これは日弁連も反対の意見書を出しておりますし、各地の弁護士会も、さらには市議会等も出していただいておりますが、元々の規制改革会議の議論は、要するにオンラインで全部完結する英会話のようなものについて御意見があったということですが、なぜか法案が出てきたら全部になっている。今、増田参考人からもあったように、情報商材のマルチみたいな、悪魔合体みたいなものがデジタルで全部できますと。それに、成人年齢の引下げですよ。ひどくなるのはもう誰が見たって明らかなわけであります。
なので、是非、こちらは特商法等の審議もされると思いますが、慎重な議論をよろしくお願いいたします。
○依田参考人 取引のデジタル化、オンライン化が進むことは、取引の参入障壁が下がることを意味しております。
参入、取引が容易化することのメリット、デメリットは、消費者側にもそれぞれ一長一短ございまして、よりデジタルを使いこなしたい方々が、ペーパーレス化することによって便宜性が高まることは、一方でメリットでございます。しかし、それによって、デジタルに対しての素養が弱い方々に関しては、確かにだまされやすくなるというデメリットの側面もございます。
そうしたものに対しては、今後、デジタル化、オンライン化が、日本のデジタルトランスフォーメーションが進んでいく中において利益と費用を慎重に比較考量することが求められていて、よいところは伸ばし、悪いところは潰すという今後の方針で、より慎重に臨んでいきたいと思います。
以上です。
○畑野委員 どうもありがとうございました。
今後の審議の参考にさせていただきます。よろしくお願いします。
【議事録2021年4月13日委員会質疑】
○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律案について伺います。
四月九日の参考人質疑の際にも、各参考人から指摘された大変重要な点が、取引デジタルプラットフォーム提供者は単なる場の提供者ではない、責任を果たすべきだという御意見でした。取引提供者であり、同時に当事者でもあるという声もありました。消費者は、デジタルプラットフォーム提供者の利便性を認め、信頼して利用しているということです。
消費者庁のデジタルプラットフォーム利用者の意識、行動調査でも、売主が直接販売するサイトよりプラットフォーム上の通販サイトを選ぶという消費者は七六・六%。理由は、信頼性や安心、安全面、確実性、慣れや利便性が挙げられているということです。
そもそも、法律が、消費者の利益の保護を規定する法律なわけですから、消費者の立場で考えなければなりません。今日では、悪質なデジタルプラットフォーム提供者が存在をしておりまして、これへの対策が必要です。この間も、ヤフーオークションの裁判の事例もございました。
そこで伺いますが、取引デジタルプラットフォーム提供者は単なる場の提供者ではないという御意見に対する井上大臣の御認識はいかがでしょうか。
○井上国務大臣 インターネット上の場である取引デジタルプラットフォームでは、取引に不慣れな、又は悪質な販売業者等が紛れ込みやすいという特徴も相まって、消費者問題が発生しやすい環境が生じております。このような点に照らすと、取引デジタルプラットフォーム提供者は、何ら役割を負わない単なる場の提供者ではなく、場を利用して行われる取引の適正化と紛争の解決の促進に関し一定の役割を果たすべき立場にあります。
本法律案は、このような認識に立って、取引デジタルプラットフォーム提供者が果たすべき役割を定めるものです。
○畑野委員 河上参考人からは、Yというオークション、これはつまりヤフーオークションのことですが、の御紹介がございまして、名古屋高裁は、利用者が詐欺等の被害に遭わないように、犯罪的行為の内容、手口あるいは件数などを踏まえて、利用者に対して、時宜に即して、相応の注意喚起の措置を取るべき義務、これを負うんだということを述べてくださいました。
そこで、次に伺います。第三条のデジタルプラットフォーム提供者の努力義務についてです。
通常のデジタルプラットフォーム提供者の中には、既に、販売業者との連絡や、苦情を受けた際の調査などを実施しているところも当然ございます。今求められているのは、いわゆる極悪層と呼ばれるデジタルプラットフォーム提供者への対策だと思います。努力義務では措置を講じない、自主的取組が促進されない悪質なデジタルプラットフォーム提供者です。
本法案が広く網をかけて悪質事業者の抜け穴を塞ぐようなものにするには、この極悪層について直ちに実態把握、そして検討がなされるべきだと思います。
その点で、消費者利益の保護を十分に図るためには義務とするべきではないかと思いますが、その点、いかがでしょうか。
○井上国務大臣 本法案の対象となる取引デジタルプラットフォームには、取引の対象、規模や態様において様々なものが含まれ、当事者同士の取引への関与も多様であります。消費者保護の観点から、規模や態様を問わず、幅広い取引デジタルプラットフォームを法の適用対象とする必要があるため、今般、努力義務を課すこととしました。
取引デジタルプラットフォーム提供者は講じた措置について開示するものとされており、努力義務であるものの、措置や開示を適切に行っていないデジタルプラットフォーム提供者は消費者から信頼を失うことになりかねないことから、おのずと積極的な取組が行われるものと考えております。
本法律案が成立した暁には、例えば官民協議会の場における議論などを通じて、十分な取組が行われているかどうかなど、取引デジタルプラットフォーム提供者の取組状況についての実態把握に努めてまいります。その上で、取引デジタルプラットフォーム提供者による取組が十分ではないときは、消費者利益の保護を図る観点から、所要の措置を講ずることを検討してまいります。
○畑野委員 依田参考人、板倉参考人、増田参考人からも含めて、この問題が言われてきたわけです。自主的にやるところはいいんですよ、そうならないでしょう、協議会にも出てこないでしょう、そういうところを直ちに対応する必要があるということを、それぞれ参考人の皆さんは懸念をされ、訴えておられたということを申し上げたいと思います。
悪質なデジタルプラットフォーム提供者として、例えば、情報商材だけを扱うデジタルプラットフォーム提供者があります。情報商材というのはいろいろありまして、インターネットの通信販売を通じて、お金のもうけ方や異性にもてる方法など、様々なノウハウを提供すると称するものです。国民生活センターのホームページでも、トラブルが多いと注意喚起がされております。
この悪質な商法というのは、メディアの中でも、もう十年以上も前から被害が問題になっていることです。こうした商法であることを知りながら、この販売業者を集めてデジタルプラットフォームを提供している、これは情報商材の商法に加担しているのと同じである。参考人質疑でも、板倉参考人からは、どう考えても、その存在自体が極めて害悪であると厳しく指摘されておりました。
なぜ、こうした消費者被害が食い止められないのか。悪質なデジタルプラットフォーム提供者に対しては排除や処分をしてほしいという声が現場の相談からも寄せられているということです。この点について、勧告、命令、罰則は必要ではありませんか。いかがでしょうか。
○井上国務大臣 第三条の努力義務について、一部の取引デジタルプラットフォーム提供者の中には、今回の法案提出を前にして自主的な取組を進めるなど、既に先取りした動きが見られるところです。
他方、悪質な取引デジタルプラットフォーム提供者という指摘がありましたが、取引デジタルプラットフォーム提供者の努力義務の取組状況については、官民協議会の場における議論などを通じて、十分な取組が行われているかどうか、しっかり注視してまいります。
○畑野委員 この間の検討会でも実態把握や検討が十分でなかった、そうした極悪層というのは、今の努力義務では、彼らは基本的には効果はないわけです、守る気もないでしょうし、協議会にも参加しないでしょうからという参考人からの御意見があるわけですね。ですから、これはしっかりとした対策を考えていく必要があるということを重ねて申し上げておきたいと思います。
情報商材で、FXの、PIO―NETの話をこの間いたしました。二〇二〇年度でいっても、二〇二〇年十二月三十一日現在で相談件数が八百二十八件で、前年同期四百七十四件に比べ三百五十四件も増えているという紹介もいたしましたけれども、これは大問題になっているということです。私が言ったのは、FXだけでこれだけの相談が来ているということです。増田参考人に伺いましたら、現場での対応は本当に大変だというお話もされたところでございます。
第四条について伺います。利用停止要請と表示等についてです。
消費者庁のデジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会、先ほどから言われている検討会、座長は先日来られた依田参考人です。そこでも議論になったのが、危険商品の流通です。海外製モバイルバッテリーから発火した例、先ほどもお話がございました。これは自宅が全焼したという大変な事例です。
本法案では、これほど危険な商品が出品された場合でも、販売業者が特定不能な場合に限っており、さらには、直ちに利用停止や出品削除をしなければならないではなくて、これらを要請することができるというものです。
これでは、デジタルプラットフォーム提供者が要請しなくて、さらに、販売業者から拒否されても、何も問題ないということになるのではありませんか。その結果、危険商品がそのまま流通し、消費者被害が継続する可能性もある。これで果たして実効性があるのか懸念が大きい、こういうことが参考人からも発言されました。危険な商品については取引停止措置、商品回収をすることを即座に販売店に伝え、デジタルプラットフォーム上での販売をすぐに排除していただきたいとの参考人の御意見もありました。
本来はこれらの指摘が盛り込まれるべきですけれども、少なくとも表示について、確認です。安全でないということが書かれていないということを捉えないと、この条項は機能しないと思います。つまり、書かれていないことは、つまり非表示だということを含むものであるということを明らかにすべきではないでしょうか。いかがですか。
○井上国務大臣 本法案第四条第一項第一号の表示と言えるかどうかは、表示上の特定の文章、図表、写真等のみから消費者が受ける印象、認識により判断されるのではなく、表示全体から消費者が受ける印象、認識により判断されます。つまり、明示的に表示された事項の内容がそれだけを見れば真実であるとしても、販売業者等が消費者にとってデメリットとなる事項を適切に表示しないことにより消費者を誤認させるものと認められる場合には、本法案第四条第一項の要請の対象となり得ます。
したがって、例えば、安全でないことを記載せず、商品の安全性の判断に資する事項等を表示しないような、いわゆる非表示によって消費者が誤認する場合も、本法案に基づく要請の対象に含まれ得ると考えています。
○畑野委員 しっかりそれも入れていく、含まれ得るではなくて、含まれていくというふうにしていただきたいと思います。
それで、その第四条なんですが、利用停止については強制力のある仕組みにするように検討していただきたい。法改正を含め必要な措置を講ずるべきではないかと思いますが、いかがですか。
○井上国務大臣 本法律案第四条の要請については、取引デジタルプラットフォーム提供者にとって、危険商品等の表示に著しい虚偽、誤認表示がある商品等を排除することは、安全、安心な取引の場としての自身に対する信頼性を高めることにつながること、要請に応じた取引デジタルプラットフォーム提供者を免責する規定を設けていること、要請について公表できることとしていることから、消費者庁からの要請に応じていただけるものと考えています。
したがって、同条の要請の制度の実効性確保については、現時点では必要十分であると考えておりますが、本法律案の施行後、要請の実施状況について実態把握に努めるとともに、必要に応じて、更なる実効性の確保について検討を行ってまいります。
○畑野委員 悪質なものについての調査そのものが不十分だというふうに言われてきたわけですから、それは当然なんですが、そういったことも含めて、既にちゃんとやれるところはできている、だから法律にも書き込むことができるのではないかという参考人の御意見は、私は大事な御指摘だというふうに思います。
次に、第五条です。販売業者等情報の開示請求権についてです。
消費者に損害が出て賠償請求を行う場合、デジタルプラットフォーム提供者が販売業者に情報の開示を請求するわけですが、その際の要件が、内閣府令で定める額、一定の金額以上と限定されております。
そもそも、通信販売の取引額は少額で、その少額な被害について、消費生活センターに多くの相談が寄せられている点に配慮すべきだと思うんですね。とても裁判にはできないという方たちの相談なんです。
少額の被害なら泣き寝入りせよというようなものではありませんか。一定の金額以上とした理由について伺います。
○井上国務大臣 消費者の権利行使の実効性の確保という開示請求の趣旨からは、消費者が開示請求を行った後に訴訟や任意交渉等の具体的な権利行使のための行動を取ることが合理的と思われる金額とするのが相当です。加えて、取引デジタルプラットフォームを利用した通信販売取引の当事者ではない取引デジタルプラットフォーム提供者の事務処理負担が生じることにも鑑み、一定の金額の基準を設けることとしています。
開示請求が認められる具体的な金額については内閣府令で定めることとなりますが、開示を受けて行われる販売業者等に対する訴訟や任意交渉等に消費者が要する費用、取引デジタルプラットフォーム提供者による事務処理の負担、取引デジタルプラットフォームを利用した取引における被害実態と取引金額の分布、他の消費者関連法令における金額設定の例、こういったことを踏まえて、バランスを考慮して定めてまいります。
○畑野委員 現場からの意見がありましたように、高いとこれは行使できない法律になってしまう、十分に低廉にするべきだと思いますが、そのお考えはありますか。
○井上国務大臣 取引デジタルプラットフォームを利用して行われる取引における消費者被害の実態に照らし、必要十分な、消費者が開示請求制度を利用できるよう、適切な額を設定してまいります。
○畑野委員 是非、消費者の立場に立って決めていただきたいというふうに思います。また、御意見も聞いていただきたいと思います。
特に問題なのは、デジタルプラットフォーム提供者が、開示するかどうかについて販売業者等の意見を聞くとしている点です。そもそも、特商法では、販売業者は住所などの連絡先を表示する義務を負っています。これが虚偽であったりすれば特商法違反になるということです。
なぜ、違法な事業者に対して、情報を開示するかどうか聞かなくてはならないのでしょうか。
○井上国務大臣 意見聴取手続を設けた趣旨は、販売業者等の手続保障という点、また、取引デジタルプラットフォーム提供者による開示の可否の個別具体的な判断に資するという点にあります。
なお、第五条第三項に基づく意見聴取の結果、販売業者等が開示を拒絶した場合であっても、取引デジタルプラットフォーム提供者は、開示請求の要件該当性などを適切に判断し、適法な開示請求と認めるときは開示に応じなければならないと考えています。
○畑野委員 ならないと考えていらっしゃるなら、そういうふうな法律にしていく必要があると思います。
特商法で定められているわけですから、販売業者にきちんと表示をさせたり、虚偽の情報が表示されないように身元確認を厳格にすれば、消費者が開示請求する必要はなくなるはずなんですね。内閣総理大臣が策定する指針に盛り込む必要があると思います。
しかも、現状からいいますと、相談員から販売業者に連絡した場合、大手の取引デジタルプラットフォーム提供者であっても担当者の対応やレベルがまちまちだという話を増田参考人からも伺ってまいりました。表示義務や開示請求について周知徹底をし、現場でしっかり運用されるように、担当者への教育、また取引デジタルプラットフォーム提供者への指導が必要だと思いますが、いかがですか。
○坂田政府参考人 お答えいたします。
特定商取引法における通信販売業者等の表示義務につきましては、法令に違反する行為に対しては厳正に行政処分等を行うとともに、その制度の内容については消費者庁のホームページ等で周知を図っているところでございます。引き続き、周知徹底を図ってまいります。
また、本法案に基づく販売業者等情報の開示請求権につきましても、本法案が成立した暁には、ガイドライン、逐条解説等によってその解釈基準等を明らかにしつつ、本規定の実効的な運用を図るべく、官民協議会の枠組みも活用しながら制度の周知徹底を図ってまいりたいと考えております。
○畑野委員 デジタルプラットフォーム提供者が講じた措置について情報開示が求められるわけですが、デジタルプラットフォーム上で消費者が分かりやすい場所に分かりやすく提示してほしいという御意見が参考人からありました。これは直ちに実施すべきだし、また技術的にも可能だと思いますが、いかがでしょうか。
○坂田政府参考人 お答えいたします。
取引デジタルプラットフォーム提供者は、開示する情報を当該取引デジタルプラットフォームを利用する消費者にとって分かりやすい場所に示すことが望ましいと考えます。
そこで、開示に関する指針においては、開示の在り方等について参考となるべきものを定めることを想定しており、消費者にとって分かりやすい開示を促してまいりたいと考えております。
○畑野委員 これは消費者教育にもなるし、大事だという御意見がございました。
次に、本法案では、先ほどから議論になっておりますが、CツーCが対象とならずに、課題として残されたということが参考人からも言われました。依田参考人からもおっしゃっていただきました。
確認ですけれども、先ほどから議論になっていますが、隠れBは適用となるということでよろしいですね。
○井上国務大臣 結構です。
○畑野委員 確認ですけれども、そうすると、メルカリの場合はどういうふうになりますか。
○坂田政府参考人 お答えいたします。
CツーC取引の場と称されているものであっても、売主が実態としては事業者、いわゆる隠れBである場合には、本法案の対象となり得るということでございます。
○畑野委員 そこで、その基準については先ほどから議論になっていたと思うんですが、そもそも消費者には、Bなのか、Cなのか、隠れBなのかなどの情報をあらかじめ知ることは困難ですよね。判別もつきません。
参考人の方からは、相談業務の中でも、ガイドラインを活用したことはないというお話がございました。それは別のガイドラインですが。この状況で、膨大なCツーCは対象外として残され、消費者被害は広がることになると思います。
今後、対象とすべき検討を行う、法改正を含めた必要な措置を講ずるべきではないかと思いますが、いかがですか。
○井上国務大臣 本法案は、取引デジタルプラットフォーム提供者に対し、自らが提供する場で行われる通信販売取引において消費者保護がなされるよう、販売業者等と消費者との取引関係を支える者として一定の役割を果たすことを求めるものです。
売主が非事業者である個人の場合、すなわちCツーC取引の場となる場合には、売主である消費者と買主である消費者は対等の立場であることから、本法案の対象に含めることはしておりません。
なお、CツーC取引の場と称されているものでも、売主が実態としては事業者、いわゆる隠れBである場合には、本法案の対象となります。
その上で、売主が非事業者の個人である場合の買主の保護の責任の在り方については、場の提供者が果たすべき役割と併せて、別途、更なる検討が必要と考えています。
○畑野委員 やはり消費者の立場で、この対応をしっかりとしていく必要があるというふうに思います。
デジタル広告について伺います。消費者利益の保護の観点から措置を講ずるべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○坂田政府参考人 お答えいたします。
デジタル広告の問題などの残された検討課題につきましては、検討会の報告書では、今後、実態調査等を進めた上で、いかなる主体に対してどのような規律を設けることが消費者の安全、安心確保のために実効的であるか等について検討すべきとされております。
消費者庁といたしましては、消費生活相談や官民協議会での情報交換、申出など、様々なルートで寄せられている情報を基に実態を把握しつつ、鋭意検討を進めてまいりたいと考えております。
○畑野委員 これは消費者庁が注意喚起した例ですけれども、昨年、二〇二〇年十月七日の事案です。これは、楽天で安く購入したものをアマゾンで高く売ることで利益が出るというもうけのノウハウを伝える情報商材を販売した二社に対して、消費者庁が消費者安全法に基づき公表し、注意喚起をした。セレブリックとトヨマルという会社です。約六億二千万円を売り上げた。一日三十分で月収プラス十万円を可能にするとうたったが、利益を上げた客は確認されていない、こういうことですね。
ですから、やはり、最初に申し上げたように、この間出ている大手のデジタルプラットフォームに対する信頼というのが国民の中にあるわけです。だから、そういうのを使って、もうかりますよと、こういう悪質なものが出てくるわけですね。それが今、SNS、国民生活センターでいったら、もうスマホでどんどん来ると。コロナの中で、みんな、どうしようというので、この間も言いましたけれども、副業とかもうけ話とか、もうそれに頼らざるを得ないという消費者の実態があるわけです。これをしっかり進めていく必要を求めたいと思います。
最後に、特商法における契約書面の電子化について、この間、議論をしてまいりました。参考人質疑の中でこういう御意見がございましたので御紹介し、井上大臣の御所見を伺いたいと思います。
板倉参考人からは、「日弁連も反対の意見書を出しておりますし、」「元々の規制改革会議の議論は、要するにオンラインで全部完結する英会話のようなものについて御意見があったということですが、なぜか法案が出てきたら全部になっている。今、増田参考人からもあったように、情報商材のマルチみたいな、悪魔合体みたいなものがデジタルで全部できますと。それに、成人年齢の引下げですよ。ひどくなるのはもう誰が見たって明らかなわけであります。」「是非、こちらは特商法等の審議もされると思いますが、慎重な議論をよろしくお願いいたします。」という意見です。
増田参考人からは、「対面で勧誘をする訪問販売であるとか、それから成年年齢引下げを目前にした若者に対する連鎖販売取引については、このオンラインでの書面交付というのは一番懸念されるところだと思います。相談現場で非常に混乱が起きるというふうに思っております。」こういう御意見です。いかがですか。
○井上国務大臣 特商法の書面交付義務、これは消費者にとって重要な制度でありますが、社会や経済のデジタル化を踏まえ、書面でなく電子メールなどにより必要な情報を受け取りたいという消費者のニーズにも応えるため、消費者の承諾を得た場合に限り、例外的に契約書面等の記載事項の電磁的方法による提供、例えば電子メールでの提供を可能とするものです。
消費者団体などから、高齢者などデジタル機器に必ずしも慣れていない面もある方々への対応や、悪質業者に利用されるのではないかなど、不安の声が寄せられていることは承知しております。
消費者庁としては、消費者団体などの御意見も十分に踏まえながら、決して消費者にとって不利益になることがないよう、政省令、通達などの策定過程において詳細な制度設計を慎重に行い、消費者の利便性の向上や消費者保護の観点から万全を期してまいります。
○畑野委員 井上大臣からはそういう御答弁しかしようがないんですが、しかし、慎重な意見をということについては、それはせざるを得ないと思いますね。
依田参考人がおっしゃっていたのは、「今後、デジタル化、オンライン化が、日本のデジタルトランスフォーメーションが進んでいく中において利益と費用を慎重に比較考量することが求められていて、よいところは伸ばし、悪いところは潰すという今後の方針で、より慎重に臨んでいきたいと思います。」というふうにおっしゃっているのは、本当に大事だと思います。
慎重な対応を求めて、私の質問を終わります。ありがとうございました。