在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の支出根拠となる特別協定を1年延長する改定議定書の承認案が12日の衆院本会議で審議入りしました。日本共産党を代表して質問し、「コロナ禍で多くの国民が困窮する中、なぜ負担を続けるのか」と強調し、同協定の廃止を主張しました。(質問要旨)
特別協定は、思いやり予算のうち(1)労務費(2)光熱水料(3)訓練移転費―の支出根拠となります。2021年度予算案の思いやり予算は2017億円で、うち特別協定による負担額が76%を占めます。
1978年度から米国の要求に応じて「思いやり予算」として基地従業員の福利費や施設整備費の支出に踏み切り、さらに87年度から特別協定の締結が繰り返され、総額は8兆円近くに上ることを指摘。日米地位協定24条が、米軍の維持経費を「日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」と明記していることをあげ、特別協定は廃止し、地位協定の規定通りに米側に負担を求めるよう迫りました。
茂木敏充外務大臣は、特別協定の締結から33年が経過し、事実上、恒久化しているにもかかわらず「あくまでも暫定的、限定的、特例的な措置だ」などと釈明しました。
また、日本全国で米軍機による低空飛行訓練が拡大し、首都圏には日米のオスプレイ配備が進められていると批判。全国知事会が日米地位協定の抜本的見直しと航空法令・環境法令の在日米軍への適用を提言していることを紹介し、来週開かれる予定の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で提起するよう求めました。
【議事録】
○畑野君枝君 私は、日本共産党を代表し、在日米軍駐留経費負担特別協定について質問します。(拍手)
本協定は、現行協定の有効期間を一年延長するものです。さらに、二〇二二年度以降の負担について今年改めて交渉すると報じられていますが、政府は一体いつまで米軍駐留経費の肩代わりを続けるのですか。
政府は、一九七八年、アメリカの要求に応え、思いやりと称して基地従業員の福利費などの負担に踏み切り、隊舎や家族住宅などの施設整備に広げ、さらに、一九八七年に特別協定を締結して以降は、給与本体、光熱水料、訓練移転にまで拡大してきました。来年度は二千億円を上回り、負担開始以来の総額は八兆円近くに上ります。
政府は、特別協定締結当時、アメリカの財政赤字を最大の理由とし、暫定的、限定的、特例的な措置だと説明しました。我が国自身が巨額の財政赤字を抱え、しかも、コロナ禍で多くの国民が生活に困窮しているときに、どうしてこのような負担を続けるのですか。
そもそも、日米地位協定二十四条は、米軍の維持経費は「日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」と明記しています。特別協定は廃止し、地位協定の規定どおりに米側に負担を求めるのが当然ではありませんか。
今求められていることは、安倍政権の下で進められてきた憲法違反の安保法制、F35戦闘機やイージスなど米国製兵器の爆買い、地元自治体、住民の意思を無視した米軍基地建設など、余りにも異常な対米従属外交からの転換です。
沖縄県民は、度重なる選挙や県民投票で、辺野古新基地建設に反対の意思を示してきました。県民の苦難の歴史に向き合い、新基地建設の断念と普天間基地の閉鎖、撤去に正面から取り組むべきではありませんか。
地位協定の改正も急務です。
在日米軍関係者は、地位協定の特権により、コロナの下でも自由な出入国を保障され、基地経由の入国は検疫も米軍任せになっています。当初はPCR検査も行われていませんでした。政府は、基地従業員や周辺住民が抱える不安をどう認識しているのですか。
沖縄に加え、神奈川県の横須賀基地でも、昨年七月からの累計で六百三十人以上の感染が確認され、多くはこの数か月間に集中しています。昨年十一月、米原子力空母ロナルド・レーガンが定期整備のために入港し、米本土などから数百人の整備要員が来日したことが一因に挙げられています。
日米地位協定を改正し、米軍に国内法を適用して、日本政府の権限の下で出入国管理と検疫が行われる仕組みに改めるべきではありませんか。
米軍機による低空飛行訓練も重大です。
沖縄県では、昨年末以降、かつてなかったような超低空での飛行訓練が県内各地で目撃されています。中四国、九州地方でも急増し、愛媛県や鹿児島県では、今年度の目撃件数が過去最多となっています。首都東京の中心部でも、米軍ヘリが周辺のビルよりも低い高度で飛行を繰り返していることが報じられました。危険な低空飛行訓練は直ちに中止させるべきではありませんか。
横田基地には、米空軍オスプレイ十機の配備が進められています。木更津駐屯地では、米海兵隊に加え、米海軍オスプレイの定期整備が計画され、さらに、暫定の名の下に、陸上自衛隊オスプレイ十七機も配備されようとしています。欠陥機オスプレイが沖縄と首都圏を拠点に全国の空を飛び回るなど、断じて容認できません。計画の撤回を強く求めます。
全国知事会は、昨年十一月の提言で、日米地位協定を抜本的に見直し、日本の航空法令や環境法令を米軍に適用することなどを求めています。来週開かれる2プラス2で、このことを米側に提起すべきではありませんか。
以上求めて、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣茂木敏充君登壇〕
○国務大臣(茂木敏充君) 畑野議員から、特別協定に基づき在日米軍駐留経費を日本が負担する理由、そしてその資金拠出の是非についてお尋ねがありました。
インド太平洋地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中、日米同盟及び在日米軍は、我が国の防衛のみならず、インド太平洋地域の平和と安定のためにはなくてはならない存在です。
その中で、在日米軍駐留経費は、在日米軍の円滑かつ効果的な活動、米軍の地域への前方展開を確保する上で重要な役割を果たしてきています。
現行の特別協定及びその有効期限を一年延長する本議定書は、このような状況及び日米両国を取り巻く諸情勢を総合的に勘案し、日米地位協定第二十四条に定める経費負担の原則は原則として維持しつつ、あくまでも暫定的、限定的、特例的な措置として締結するものであります。
政府としては、我が国の厳しい財政状況にも十分配慮しながら、国民の理解を得られる内容にするとの観点から、主張すべきは主張しつつ、米側と真剣に協議を重ねた結果、今般の合意に至ったものであり、この合意に基づく我が国の負担は適切だと考えております。
次に、政府の対米姿勢についてでありますが、現下の厳しい安全保障環境の下では、我が国としては、日米安保体制を引き続き堅持し、その抑止力の下で我が国の安全を確保する必要があります。
こうした中、平和安全法制は、国民の命と暮らしを守り抜くために、あらゆる事態に切れ目ない対応を可能とするため、我が国として主体的に取り組んだものであります。
また、現下の厳しい安全保障環境に鑑みれば、必要な装備品の調達を含め、我が国の防衛力整備や在日米軍再編を適切に行っていく必要があります。
これらはいずれも、米国と協議しつつ、我が国として主体的に判断しているものでありまして、対米従属といった御指摘は全く当たりません。
在日米軍の新型コロナ対策についてお尋ねがありました。
新型コロナの拡大防止についても、日米両政府で緊密に連携し、取り組んできております。
在日米軍からは、米軍関係者による我が国への入国については、水際対策を含む日本政府の方針に整合的な措置を取る旨説明を受けています。
引き続き、地元の方々の不安が解消されるよう、適切に対応し、日本国内における新型コロナの感染拡大の防止に取り組んでいきます。
最後に、在日米軍の出入国管理や検疫、並びに航空法や環境法令の米軍への適用等の日米地位協定の見直しについてお尋ねがありました。
日米合同委員会合意に基づき、米軍関係者が米軍施設・区域において日本に入国する場合を除き、日本の当局が検疫を実施することになっていることから、日本の民間空港から入国する場合は、米軍関係者に対しても日本政府による検疫が行われています。
一方、米軍関係者が米軍の施設・区域において日本に入国する場合は、米側の検疫手続によることとなっており、在日米軍からは、水際対策を含む日本政府の方針に整合的な措置を取る旨説明を受けています。
また、日米地位協定は、同協定の合意議事録等を含んだ大きな法的な枠組みでありまして、政府としては、航空分野、環境分野を含め、事案に応じて、効果的にかつ機敏に対応できる最も適切な取組を通じ、一つ一つ具体的な問題に対応してきています。
このような取組を積み上げることにより、日米協定のあるべき姿を不断に追求していきます。
なお、日米2プラス2の議論の内容については、現時点で予断することは差し控えますが、日米同盟の抑止力、対処力の強化に向けた今後の協力等について幅広く議論をする予定であります。(拍手)
〔国務大臣岸信夫君登壇〕
○国務大臣(岸信夫君) 畑野議員にお答えいたします。
まず、普天間飛行場の辺野古移設についてお尋ねがありました。
沖縄は、戦後七十五年以上たった今もなお、大きな基地負担を負っており、この現状は到底是認できるものではありません。
その中でも、普天間飛行場をめぐる問題の原点は、市街地に位置し、住宅や学校で囲まれ、世界で最も危険と言われる普天間の危険性を、一日も早く除去することです。普天間の固定化は絶対に避けなければならない、これは政府と地元の皆様との共通認識であると思います。
その上で、日米同盟の抑止力の維持と普天間飛行場の危険性の除去を考え合わせたとき、辺野古移設が唯一の解決策であり、この方針に基づいて着実に工事を進めていくことこそが、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現し、その危険性を除去することにつながります。
今後とも、地元の皆様の御理解を得る努力を続けながら、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現するため、辺野古移設に向けた工事を着実に進め、基地負担の軽減に全力で取り組んでまいります。
次に、米軍機の飛行訓練についてお尋ねがありました。
米軍機の飛行訓練に対しては、地元の皆様から不安の声が上がっていることは承知をいたしております。
米軍機の飛行訓練は、パイロットの技能の維持向上のため必要不可欠な要素であり、在日米軍が日米安保条約上の義務である我が国の防衛を全うする観点から重要なものですが、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動することは当然の前提であります。
防衛省としては、今後とも、米側と連携を図りながら、安全面に最大限の配慮を求め、地元の皆様に与える影響が最小限にとどまるよう、適切に対応してまいります。
最後に、米軍及び陸上自衛隊のオスプレイ配備等についてお尋ねがありました。
政府としては、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、米軍及び陸上自衛隊のオスプレイの配備は、日米同盟の抑止力、対処力の強化、島嶼防衛及び災害救援等の観点から重要であると考えており、また、日米オスプレイの共通整備基盤を確立することも必要と考えております。
その上で、オスプレイについては、米軍、陸上自衛隊のいずれについても、安全性、信頼性を十分に確認しており、オスプレイの安全性に問題はないと考えております。
そのため、米軍オスプレイの配備撤回を求めたり、陸上自衛隊オスプレイの配備計画を撤回すること等は考えていませんが、オスプレイの日本国内における飛行運用に際しては、地元の皆様に十分配慮し、最大限の安全対策を取るよう、万全を期してまいります。(拍手)
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