菅義偉首相は15日の衆院予算委員会で、中学校についても少人数学級の実施を検討すると初めて明言しました。

 現在の小中学校の学級編成は1クラス40人(小学校1年のみ35人)。長年の保護者や教職員の運動におされ、政府は2021年度から小学校全学年を段階的に35人に引き下げる計画を決めましたが、中学校は計画に入っていません。

 米国やドイツの中学1年の学級編成が30人なのに日本では40人だと指摘し、「世界の流れは30人、20人程度学級だ。日本も小学校にとどまらず、中学校でも35人に進むべきだ」と迫りました。

 菅首相は、小学校で実施する35人学級の教育効果などを検証するとし、「その結果も踏まえ、望ましい指導体制のあり方について引き続きしっかりと検討していきたい」との答弁に、その検討対象に中学校が入るのかと重ねてただすと、菅首相は「いま中学校を念頭に申し上げた」と明言しました。菅首相はまた、小学校の35人学級化で「子どもの状況を把握し、一人ひとりにきめ細かな教育が可能になると思っている」と述べました。

 「大事な答弁だ」と指摘した上で、中学校は小学校から大きく環境が変わり、不登校も急増するなどきめ細かな支援が求められているとし、「中学校でも少人数学級をぜひ進めてもらいたい」と訴えました。

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【議事録】

○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
 二月十三日の夜中、福島県、宮城県で震度六強の地震が発生しました。被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。被災者の救助と、避難所等での新型コロナウイルス感染症対策、被害の復旧など、政府の迅速な対応を求めます。
 それでは、質問に入ります。
 まず、森会長発言問題について伺います。
 二月三日、女性がたくさん入っている理事会は時間がかかるという女性蔑視発言を行った東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長に対して、厳しい批判が国の内外から寄せられ、二月十二日、森会長は辞任すると表明しました。四日夜から始まった抗議の署名は、十日までに十四万筆を超えました。
 森会長の辞任は当然です。しかし、これで終わりではありません。森会長の発言は、日本社会にある女性差別の構造的なゆがみをあぶり出しました。長年にわたり職場や家庭などで差別され、セクハラやパワハラ、暴力に苦しめられてきた女性たちを始め、様々な差別を受けながら黙らされてきた人々をおとしめる発言でした。
 日本社会の在り方そのものを変えなければならないという声が広がっています。ジェンダー平等社会を実現することが強く求められています。菅義偉総理大臣の御認識はいかがでしょうか。
○菅内閣総理大臣 この森前組織委員長の発言を契機に、まさにこのジェンダー問題というのは、日本で解決をしなきゃならない一つの大きなきっかけにして、これから政府としても更に一層、全体を通して、女性の登用、女性と男性のバランス、そうしたものをやはりしっかり頭に入れながら対応していきたい、このように思います。
○畑野委員 総理からはジェンダーということが言われました。
 森会長発言の出た場というのはどういうところだったか。女性理事の割合を四〇%以上にしようと日本オリンピック委員会が取り組んでいる、その臨時評議員会の場で出されました。森会長が述べたのが、テレビがあるからやりにくいが、女性理事四割は、これは文科省がうるさく言うんでねと言って、先ほど紹介した女性差別、女性蔑視発言になりました。
 パネルを御覧ください。女性理事の目標割合四〇%以上、これはスポーツ庁の、スポーツ団体、中央競技団体向けのガバナンスコードです。
 橋本聖子大臣に伺います。
 この基になったのは、ブライトン・プラス・ヘルシンキ二〇一四宣言を行った第六回世界女性スポーツ会議の勧告です。スポーツ組織、団体における意思決定の地位における女性の割合が二〇二〇年までに少なくとも四〇%に引き上げられるべきだといたしました。その二〇一四宣言について、二〇一七年には、スポーツ庁や日本オリンピック委員会、日本パラリンピック委員会など五つのスポーツ機関、団体が合同で署名をしております。
 ここに来るまで、オリンピックにおけるジェンダー平等を求める長い闘いの歴史がありました。一八九六年の第一回アテネ大会は、男性のみが参加が許されて、女性は参加できませんでした。女性が選手として初めて参加できるようになったのは、一九〇〇年、第二回パリ大会からです。女子マラソンが始まったのは、一九八四年、第二十三回ロサンゼルス大会。二〇一二年の第三十回ロンドン大会でボクシングに初めて女子種目が加えられて、ようやく全競技で女性の参加が可能になりました。
 いかなる種類の差別も受けないと、オリンピック憲章も発展してきたんです。こうした歴史があって、日本オリンピック委員会は、女性理事、今二〇%ですけれども、四〇%以上にしようと取り組んでおられる。
 オリンピック・パラリンピックの開催地の責任というのは、世界にオリンピックの理念を示すモデルになることでしょう。東京大会に求められたアジェンダ二〇二〇の大きな改革の一つは、ジェンダー平等ですよ。それに反する女性蔑視発言を大会組織委員会の会長が行うとは、そもそも東京オリンピック・パラリンピックを開催する資格が問われる大問題だと言わなくてはなりません。
 担当大臣として、橋本大臣、そういう御認識ですか。
    〔委員長退席、山際委員長代理着席〕
○橋本国務大臣 お答え申し上げます。
 この度の森会長の発言は、オリンピック・パラリンピックの重要な理念である男女共同参画とは全く異なるものでありまして、あってはならない発言だというふうに考えております。森会長は、御自身の発言について熟慮の上、十二日、大会組織委員会の合同懇談会におきまして辞任を表明されたと理解をしております。
 また、この度の発言を受けて、理事会等の女性比率の向上に取り組むとともに、男女平等を推進するチームを立ち上げることとしたことを承知しておりますけれども、男女共同参画という理念に沿った大会となるように努めていかなければいけないというふうに思っております。
 オリンピック・パラリンピックのオリンピズム、根本原理、これは多様性と調和であります。いかなる差別があってはなりませんので、こういったことをしっかりといま一度推進をして、早期に信頼回復を図り、新しい体制に向かっていかなければいけないというふうに思っております。
○畑野委員 本当に遅かったと言わなくてはなりません。
 それでは、一方で政治はどうなっているかということが問われます。
 男女共同参画基本計画の問題です。これは、計画を作られるのは総理大臣でいらっしゃいますから、菅総理の責任も重大です。
 パネルの右を御覧ください。
 安倍政権の二〇一五年の第四次男女共同参画基本計画では、社会のあらゆる分野において、二〇二〇年までに指導的地位に女性が占める割合が少なくとも三〇%程度になるよう期待し、引き続き更なる努力を行うとしていましたが、達成できませんでした。そのときの官房長官は菅総理でいらっしゃいます。菅内閣になって、二〇二〇年十二月の第五次男女共同参画基本計画では、二〇二〇年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合が三〇%程度になるよう目指して取組を進めるとしたわけです。
 二〇二〇年代の可能な限り早期に、曖昧ですよね。はるかかなたの目標にしてしまった。「少なくとも三〇%程度」の「少なくとも」というのも外されました。菅総理、このままの水準でよいのでしょうか。変えるべきではありませんか。
○菅内閣総理大臣 まず、第四次計画に掲げていた二〇二〇年に三〇%、この目標に、政治分野、経済分野を中心に進捗が遅れ、その達成が厳しい状況にあることは、まさに率直に反省すべきであるというふうに思います。
 そして今、五次男女共同参画基本計画について言及がありました。二〇年代の可能な限り早期に指導的地位における女性の割合を三〇%程度になるよう、ここは政府一丸となって取り組んでいきたい、このように思います。
○畑野委員 ジェンダー平等への姿勢が問われると思います。これは変えることができるわけですから、今の政治も本当に変えなくちゃいけない、そのことを強く求めておきたいと思います。
 次に、少人数学級について伺います。
 子供たちに行き届いた教育をと、少人数学級、三十人学級を求める運動は、保護者や教職員、市民の皆さんが何十年にもわたって求めて、国会には多くの署名が積み上げられてまいりました。二十二年前、私の国会議員としての初質問も三十人学級で、以来取り組んでまいりました。
 政府は、全国の小学校について、現在の四十人学級を四十年ぶりに人数を引き下げて、全学年での三十五人学級へと順次改める法案を今国会に提出されました。総理は施政方針演説で、現場で子供の状況を把握し、一人一人にきめ細かい教育を実現しますとおっしゃられました。
 伺いますけれども、今回、小学校全学年での三十五人学級に踏み切った総理のお考えはどうなんでしょうか。
○菅内閣総理大臣 今回、公立小学校について、四十年ぶりに学級人数の大改正を行い、三十五人学級を実現いたしました。三十五人学級によって、ICTの活用をしながら学校現場で子供の状況を把握をし、一人一人にきめ細かな教育、これが可能になると思っています。その際に、外部の人材の活用、社会人の採用、教師の計画的採用などにより教員の質の確保を図って、引き続き指導体制の効果的な強化充実に取り組んでいきたいと思います。
    〔山際委員長代理退席、委員長着席〕
○畑野委員 総理は、一人一人にきめ細かい教育をとおっしゃっていただいて、総理も私と同じそういう認識に立っていただいた、この点は本当に前向きに評価をしております。
 現場からは、本当に少人数学級はいいんだ、例えば、学級担任が日常的に子供たちの状況を、学ぶ到達度を見ることができて、必要な支援ができる、それから、向き合う時間が確保できるので生活習慣も本当に定着しやすいんだというお話を伺っております。ここは本当に前に進めていく必要があると思うんです。
 しかし、今回、三十五人になるまでに四十年もかかった、じゃ、三十人学級に一体何年かかるんですか、こういう声も出ております。
 パネルを御覧ください。一クラスの子供の人数の上限についての国際比較です。小学一年生は、アメリカの例で二十人、ドイツの例で二十九人、日本は三十五人。中学一年では、アメリカの例で三十人、ドイツの例で三十人、日本は四十人です。こんなに多いんです。
 総理、世界の流れは三十人学級、二十人程度の学級です。今回一歩踏み込んだわけですから、日本で更に前に進むべきだと思います。小学校三十五人にとどまらず、中学校でも三十五人に進むべきではありませんか。
○菅内閣総理大臣 まず、今回、四十年ぶりに三十五人学級を実現できるようにしました。まず、この三十五人学級を実施する中で、少人数学級の教育に与える影響だとか外部人材の活用の効果、こうしたことについてしっかり検証を行った上で、その結果も踏まえて、望ましい指導体制の在り方について、これから引き続きしっかりと検討していきたいと思います。
○畑野委員 そうすると、菅総理、その検討の中には当然中学校も入ってきますよね。
○菅内閣総理大臣 今、私、中学校を念頭に申し上げました。
○畑野委員 中学校もということでよろしいですね。初めて言っていただきました。ありがとうございます。
 これは大事な御答弁です。本当に中学校は大変なんですよ。小学校に比べて学校の規模も大きいし、学区も広くなるし、そして進路の問題はあるし、友人関係も複雑だし。そして、不登校も、小学校六年から中学校一年になるとぐんと増える。本当にきめ細かい支援が必要になってくるわけです。
 是非、少人数学級は何よりも子供たち、そして保護者、教職員、教育研究者、知事、市町村長、みんなの願いですので、一日も早く前進をしていただきたい。
 中学校はやっていただける、検討すると言っていただきましたので、是非進めていただきたい、そのことを申し上げまして、私の質問を終わります。