コロナ禍で大打撃を受けている文化・芸術分野。当事者の運動に動かされ、国は文化庁の「文化芸術活動の継続支援事業」など支援策をつくり、同事業は11日、募集を締め切りました。「文化の灯を消すな」と求めてきた日本共産党の畑野君枝衆院議員に課題と展望を聞きました。
一番困っている人に支援が届いていない
―「継続支援事業」(スポーツを含めて509億円)は、予算を使い切る見込みだと文化庁は言っています。国の支援策をどう見ていますか。
「一番困っている人に支援が届いていない」というのが実情です。先日もあるピアニストとお話ししたら、支援策の存在さえ知りませんでした。
日本の俳優や音楽家、技術スタッフの状況は世界的に見ても深刻です。国際俳優連合、国際音楽家連盟などは田村憲久厚労相に対し、コロナ禍で日本のフリーランスの俳優や音楽家たちが貧困線を下回る「絶望的な状態」にあるとし、早急な支援措置を求めています。(10月30日)
新型コロナ感染症の「第3波」の中で、困窮する人が大勢取り残されています。ますます支援が必要です。
「自粛は補償しない」の支援策では使えない
―文化庁は来年度予算案でも「継続支援事業」を求めていますが、金額を明示しない要求です。今月の財務省との折衝が重要です。
そもそも「継続支援事業」は、「国は自粛に補償しない」という前提でつくられた支援策です。自己負担がなければ使えません。
日本俳優連合の調査では、支援事業に申請していない人が6割以上、その半数以上が、自己負担金があることを理由にしています。
私は国会で、自己負担なしにするなど抜本的な改善・拡充を求めてきました。5月20日の文部科学委員会では文化・芸術団体でつくる「文化芸術推進フォーラム」が継続支援策を求めていることを紹介し、「500億円の支援を」と訴えました。超党派議連でも取組み、509億円の支援を実現しました。
「自粛と補償は一体で」という大きな世論をつくりたい。
文化・芸術は生活に「不可欠な存在」と
―いち早く現場の窮状を聞き取り、質問してきました。
最初は3月5日、日本オーケストラ連盟と児童・青少年演劇劇団協同組合にうかがいました。劇団の方は、学校が一斉休校になり、「懸命に準備したものがもうできない」と涙ぐんでいました。こんなにも子どもに文化を届けたいと心を砕いているのだと知り、胸が熱くなりました。
それを文部科学委員会で取り上げたら、萩生田光一文科相も「芸術団体の継続的な支援が重要だ。今後も支援を充実したい」と約束しました。
ドイツの文化担当相が「アーティストは生命維持に不可欠な存在」と述べ、「無制限の支援」を約束して話題になりました。文化・芸術はぜいたく品でなく、人間の全面的な発達を保障する根源的な活動です。
「文化芸術復興基金」国費も出して創設を
―支援策に加え、「文化芸術復興基金」創設を求めています。
これは、文化の担い手を支えるための基金を、国費も出してつくる構想です。与野党の超党派議連では1千億円、日本共産党の案では数千億円を国が出すよう求めています。
私が11月20日の文科委員会で、フランスの芸術家などの失業保険制度「アンテルミタン」にも触れて、国費を出資した基金設立を求めたら、萩生田文科相は「将来はあった方がいい」と述べ、国費を出す「新しいスキーム(枠組み)を検討したい」と答えました。
基金があれば、たとえば、ライブハウスやミニシアターなど〝町の文化発信地〟も支えられます。引き続き、知恵を集め、基金創設を求めていきます。
声と運動で実現した509億円の支援制度
―これまでの運動をどう見ていますか。
当時の安倍首相による2月26日のイベント自粛要請に対し、さまざまな分野の人たちが連帯して「文化・芸術は必要不可欠だ」「自粛には補償を」と声をあげ、何もないところに509億円の支援制度をつくらせました。実情から見ると、さらなる支援が必要です。
いま他分野でも、市民が声をあげ、政治を動かしています。文化予算の貧困を克服し、文化・芸術を大切にする国に転換したい。
(しんぶん赤旗日曜版 2020年12月20日号:https://www.jcp.or.jp/akahata/web_weekly/)