【議事録】

○畑野委員 日本共産党の畑野君枝でございます。  参考人の方々には、貴重な御意見を伺わせていただきまして、ありがとうございました。  給特法改正案の一年単位の変形労働時間制導入の問題について特に伺いたいと思います。  まず、工藤祥子参考人に伺います。  私も委員会で取り上げさせていただきましたが、夫の工藤義男さんの公務災害認定、大変御苦労されたと伺っております。工藤義男先生は六月に亡くなられたということで、夏休みまで待てなかったのですという訴えでございます。公務災害認定で特に御苦労された点がございましたら伺いたいと思うんです。  きょういただきました資料の中でも、やりたかった仕事、やり切った仕事の一方で、実際の仕事、つらいと言っていた仕事があります、夫一人に過重、過密労働が集中した、原因としては人員や人材不足などいろいろあったというお話が書かれております。  また、体育教師であったので、健康が不可欠であると、毎年人間ドック、工藤祥子参考人も同行されて、三年に一度脳ドックを受けて健康管理もして、特に異状なく、他界一年前の脳ドックでは、将来クモ膜下出血を起こす可能性はほとんどないという所見を受けながら、クモ膜下出血で亡くなられたということです。  今回の一年単位の変形労働時間制を導入すれば、こういった問題が解決できるのか。そうではなくて、お話しされていたように、平日の学期中の労働時間が長くなるということは、先ほど工藤参考人がおっしゃったように、人間の体というのは、一日あるいは一週間単位でやはりきちっと休みをとる、そういうものなんだという点に私は反するものではないかというふうに思っているんです。  その点で、公務災害認定、あるいはこの間の全国の過労死遺族の会の皆さんの状況などを含めて伺わせていただけますでしょうか。

○工藤参考人 御質問ありがとうございます。  まず、夫の公務災害認定についてお答えさせていただきます。  まず、一番苦労した点というのは、とにかく時間の管理をしていないので、記録が全くございませんでした。その記録がない中、夫が何をしたのか、夫は中学校の教師であり、私は小学校でしたので、全くわかりませんでした。なので、まずどこから手をつければ、わからないという状況でした。  そして、勤務時間なども全部遺族である私がヒアリングをして、それに協力を求めて回るという、勤務時間の把握だけでも一年くらいの年月を使うことになりました。そこに過重性があるのかないのか、これは本当に自主的な仕事なのかそうでないのか、そこまでさかのぼって証明していかなくてはならなくて、その結果、その証明したものに対して、六カ月間で三百二十八時間十五分が認定外となって、それは自主的、自発的仕事だということで片づけられてしまいました。  その点につきまして、本当に大変苦労いたしましたし、最終的に我が家は、時間ではなくて校務の過重性、業務の過重性ということで認定されたので、よくはないんですけれども、認定されただけでもよかった。ほかの先生方は認定もされませんですし、申請すらできない、そういう現状もございます。多くが病死として扱われてしまうという現状がございます。  また、本当にすごく健康に気をつけていたんですけれども、結局、多くの仕事が一人に降りかかるということが今も学校現場で起こっておりまして、過労死等が減ることは今もありません。統計上は出てこない氷山の一角で、たくさんの方が、いろいろなところに参りましても、あの先生は過労死だと思うけれども申請はしなかった、そういう声をたくさん聞いております。  導入されたときに何が一番重要かといいますと、やはり人間のリズムをきちんと整えることですね。  夫はすごく健康だったんですけれども、これだけの業務を与えられたら、どんなに健康でも疲弊してしまうのは当たり前ですし、健康回復という期間もございませんでした。六月に長時間の労働を課されたとしましたら、そこに健康回復する時間がどこにあるのか。夏休みまでどういうふうに過ごしたらいいのかということが非常に懸念されます。  そして、脳ドックで大丈夫と言われて一年以内にクモ膜下を起こす可能性というのはほとんどないそうなんです。そういうまれなことが誰にでも起きる状況にあるということを、管理職の先生を始め、私たちというか一般の先生ももっときちんと考えるべきだと思っております。  以上でございます。

○畑野委員 そうしますと、全国を見ていらっしゃると思うんですけれども、学期中、お休みがとれずにずっと働いているという事例は多いのでしょうか。工藤参考人が院内集会で、工藤家の事案からの訴えということを昨年の十月八日に示されていらっしゃるんですが、脳・心疾患での死亡、発症月というのが六月とか七月とか十二月とか、そんなふうに多いという事例、あるいは、自死事案も六月が多いとか十月とかいろいろと出されているのですが、その点、いかがでしょうか。

○工藤参考人 御質問ありがとうございます。  死亡事案が六月、七月、十二月が多いというのは、先ほどもありましたけれども、新学期になってからの環境の変化のストレスに加えて、行事の多さというものが加わっているかと思います。  また、精神疾患も、特に新任の若い方も非常に多いんですけれども、新しく仕事が始まって、先輩の先生が忙しくて助けてくれない中で、一人でやっていかなくてはいけないということに非常に苦悩して、六月ごろの一番忙しいときに発症して、結果的に夏休みが終わった後に自死してしまうという事案がとても多いというふうに感じております。  亡くなられた先生や精神疾患を起こされた先生というのは、やはり、誰も相談できる人がいなかったりとか、過重、過密な労働を与えられたという方が多いです。  あと、学校によっても違うという、これはすごく皮肉なことなんですけれども、我が家は、すごく大変でも、すごく理解のある学校にいたときは頑張れました。ただ、新しい学校になって、ちょっと管理職に恵まれなかったという点で、二カ月で命を落としてしまうという結果になりましたので、そういう、学校によっても違うということがあってはいけないというふうに思っております。  以上でございます。

○畑野委員 ありがとうございました。貴重な御意見をいただきました。  次に、嶋崎量参考人に伺いたいと思います。  一年単位の変形労働時間制は、教員の長時間労働問題を解決するどころか、学期中の労働を固定化し、また、長時間労働を助長するのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○嶋崎参考人 御質問ありがとうございます。  現状の学期中の労働、長時間労働をまず助長するかどうかの点ですけれども、現在も超勤をしている方から見れば、それが夏休みに休みが回っても、現状維持のままかもしれません。  ただ、今、全ての教員の皆さんが時間外が必ずしもあるわけではないし、今回、変形労働が、望まぬ方が対象にされ、その時期も、御本人が何らかの形で時間外勤務をしたくないと思っている時期に、これは労使の合意が必須の要件ではありませんので、現状を無視した形で対象が選ばれてしまえば、これまでであれば、この日は建前上は業務を命じられないわけですから帰れたものが、所定労働時間がふえ、超勤を命じられ、拒否ができない事態は法理論上あり得るし、それを恐れる声というのは全く現実に即したものだなと思います。これが助長の点でございます。  固定化の点は、現状維持で休みがとれるだけならばという御意見もあるかもしれませんが、それによって現状から少し目が背けられる、休みがとれるからそれでいいんじゃないのということになれば、固定化してしまうのではないか。本来的な、超勤がある状態をどう解消するのか、抜本的な部分に目を向けていただきたいなという意味で、固定化するという危惧を持っております。

○畑野委員 嶋崎参考人にもう一つ伺いたいんですけれども、先ほどもお話がありました、労使協定が必須の一年単位の変形労働時間制を、今回、条例で導入可能とするということについてなんです。  憲法二十七条に基づいて労働基準法がありまして、その最低基準としての役割を今度の改正案は否定するのではないかと私は大変危惧しております。その点について、先生の御意見はいかがでしょうか。

○嶋崎参考人 御質問ありがとうございます。  憲法から解きほぐしての御質問、本当に的を得たものだと思います。  建前上は、現在も確かに、労基法上の労使協定を条例で読みかえる規定がないわけではございません。確かに存在はしますけれども、今回の変形労働時間制は、労働時間の弾力化に伴う、しかもスパンが長い、一年という長い期間なので、現場の意見を聞かなければ混乱が生じる、望まない時期に超勤を強いられるということで、労使協定が必須となっているものです。  命や健康、場合によっては生活時間も含めて、労基法がまさに憲法に由来する最低基準として大きく役割を期待されるし、ここ抜きにはこの変形労働は成り立たないものですので、条例を決めることと労使協定と、単純に意思決定権者も違いますので、合意抜きというのは、労基法で定められた要件、最低基準、御質問に即して言えば、憲法に由来する労働基準法で定められた最低基準を条例で許すことで、ここに風穴をあけてしまうものだというふうに理解をしております。

○畑野委員 ありがとうございます。  次に、早川三根夫参考人に伺いたいと思います。  教育長さんは、昨年の十二月九日の岐阜のシンポジウムで御発言されていらっしゃると思います。岐阜市では、夏季休業中の十六日間の学校閉庁日ということで取り組んでいらっしゃるわけですが、その十二月九日のシンポジウムの中で、変形労働時間制を導入しなくてもこの期間の休暇はとれるということです、変形労働時間制を前提としてこれをやったわけではなくて、これは既にとれますよということですとおっしゃっていらっしゃることが大変私は大事だというふうに思っているんですが、その点について伺えますでしょうか。

○早川参考人 十六連休を実施するに当たって、実際に先生方がどういう服務で休みがとれるかということについては、我々も十分に検討いたしました。  前提としては、とれます。年休を使用していただくということですが、年休は、二十日、二十日、四十日ございますが、現場の学校の先生で実際使っているのは、私どもの市では、十日から十一日ぐらいでした。  だから、余っているからいいよねということなんですけれども、しかし、考え方としては、余っているから使ってくださいねという話ではないので、それはやはり私どもとしては大変心苦しかったということです。どこかで御病気になったときに、病休をとる前に年休を使用していただくというのがあるわけなので、先生のお持ちの年休を使ってくださいということを前提にしてこれを導入することについては、ちょっと心苦しさは持ちつつも、それで数としてはカウントできるということです。  ただ、繰り返しになりますが、臨時的任用職員についてはその限りではなかったということが問題点としてはありました。

○畑野委員 早川参考人が、そのシンポジウムの中で、年休は一月から十二月になっているんだけれども、教員だけは九月から八月までとれるようにしてくださいと県にお願いしているというふうにおっしゃっていて、全国の中でもそういうのをやっていらっしゃるところはあるわけなんですね。そうすれば、八月最後に二十日間とか四十日とかまとめて年休も使えるじゃないかということなんですが、そうすると、そういうことは法律によらなくてもできるということになるわけですか。

○早川参考人 私も、何度も県にそのことはお願いしておりまして、その都度はね返されておりますので、なかなか県の条例の方でうまくいかない御事情があるものだと思っております。

○畑野委員 でも、教育長さんがおっしゃっているように、全国でもそういう県があるということであれば、これは大事な御指摘だというふうに思います。  郡司隆文参考人に伺いたいと思います。  先ほども、やはり教員をふやすこと、あるいは、こま数を減らすこと、これは私も国会の中で繰り返し質問をしてまいりました。  私、心配なのは、一年単位の変形労働時間制で、学期中の仕事です、勤務時間です。これは、決められた時間が延びて、それで終わることができるのか。先ほど言ったように、持ち帰り仕事とか、あるいは、延びた、遅くなった定時を更に超えて仕事というのは残るようになるんじゃないか。そうしますと、遅い勤務終了時間が更に現実には遅くなるというふうになるのではないかと思うんですが、その点、いかがでしょうか。

○郡司参考人 御質問ありがとうございます。  恐らく、一年単位の変形労働時間制というのは、先ほどもどなたかおっしゃられたように、これを導入したからといって、何か学期中の仕事がふえたり減ったりということはないんだと思うんです。  今現場では、業務改善ということで、さまざま、本当にみんな努力して減らしているということでございます。しかしながら、多くの学校でそうなのかな、多少時間が違うところもあるかもしれませんが、十六時四十五分で全員が退庁できるようには、とてもとてもなりません。  例えば、夜の六時、七時、八時まで残っている教員もたくさんいます。そうなったときに、これが、例えば十六時四十五分が十七時十五分で三十分延びたところで、はっきり言って何の影響もないんですね。何の影響もないんだけれども、でも、その部分を貯金しておけば夏休み中にしっかりとまとめどりができるということになれば、それは一つのいいことにつながるのかなというふうに思っております。今はそれが何もないという状況です。  もちろん、前提として、勤務時間を縮減し、縮減し、勤務時間内に終わるというのがそれは一番ベストなのかもしれませんが、それには、先ほど申し上げましたように、大がかりな、制度的な、学校制度そのものを変えるような大変革をしないとなかなかそこにはならないというふうに思っております。  なので、この変形労働時間制の導入というのは、我々教職員にとっては、マイナスはないけれどもプラスには働くのかな、トータルで考えたときに、そのように考えております。  以上です。

○畑野委員 平日の学期中の業務というのは多いままだというふうにおっしゃっていただいたと思います。  嶋崎参考人に最後に伺いたいんですけれども、地方公務員の場合は、一年単位の変形労働時間制というのは導入されておりません。それは、やはり労働者保護という観点だと思います。これがましてや長時間労働の教員に導入されるということになればどういうふうになるのか、その点、加えておっしゃっておきたいことがあれば、お述べいただけますでしょうか。

○嶋崎参考人 御質問ありがとうございます。  現状、多くの教員の皆さんが実際に既に長時間労働をされているのだから、今まで自主的とみなされたものが一部所定労働になっても変わらないのではないか。それは確かにそうかもしれませんが、実際に、ただ、定時で帰れている方もいないわけではないし、その方たちに業務命令が明確に出せる、部活をやりなさい、受け持ちをしなさいと命令ができるというのは、これは重みが法的には全く異なります。それによって現状を追認することになっていくことなどが本当に恐ろしいなと思います。  本当にそれを何とかしなければという機運が、一部休みどりがこれでできるようになる、これはすばらしいことだと思います、それによって、では現状の繁忙期をどうやったらなくせるのかという機運が、これから所定労働で説明がついてしまいますし、見せかけの残業時間、一部所定労働時間がふえることによって残業時間は数字上は減りますので、真剣に立法的な取組をする機運もそがれたりするのではないかというふうに思います。  繰り返しですが、まとめどりは、私は賛成です。まとめどりだけを明確に規定した条例や法律をただつくればいいんです。そこを明確につくれば、何も、繁忙期の所定時間をふやすという変形労働の危険性をなぜセットにしなければならないのか、それならなぜガイドラインの上限だけ入れないのか、そのあたりが私は全く理解ができません。

○畑野委員 参考人の皆さん、どうもありがとうございました。