【議事録】

○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。  前回に引き続き、給特法改正案について、萩生田光一文部科学大臣に伺います。  十一月十三日の質疑で、私は、恒常的な残業のある教員に一年単位の変形労働時間制を導入することはできないと指摘いたしました。しかし、萩生田大臣は、業務の削減を徹底した上で、学校行事等に伴いあらかじめ予想される時間外勤務について、一年単位の変形労働時間制の活用により勤務時間を延長し、それを一時間単位で積み上げて、長期休業期間中に休日のまとめどりを行うとしており、あらかじめ予想される恒常的な時間外労働はないことを前提とする制度の趣旨に合致していると答弁されました。  私は、この答弁を聞いて本当に愕然といたしました。存在する超過勤務をなかったとする給特法の異常な世界を前提に、月四十五時間、臨時特別の場合には月百時間未満、連続する複数月の平均で八十時間以内と、過労死ラインまで残業を認めた上でこの制度を導入する。まさに、これは教員の過労死促進法案だと言わなくてはなりません。  そこで、まず厚生労働省に伺います。  事前に通告している問いがあるんですが、その前に、きょう資料で、前回、委員長を通じてお願いをしていた、労働基準法第三十二条違反の指導件数のうち、一年単位の変形労働時間制に係るものについての内訳について、答えられないという御答弁をいただきましたので、その理由について、一、二、三と書いていただいておりますが、時間がございませんので、二の部分だけ簡単に読み上げていただけますか。

○吉永政府参考人 お答え申し上げます。  二の部分を読み上げさせていただきます。  一年単位の変形労働時間制を採用している事業場において、労働基準法第三十二条の違反が成立するのは、下記のとおりである。    一年単位の変形労働時間制が適正な労使協定を欠き無効であるときに、法定の除外事由がないにもかかわらず一週四十時間、一日八時間を超えて労働させた場合    一年単位の変形労働時間制度を採用した場合における時間外労働となる時間に、法定の除外事由がないにもかかわらず労働させた場合 以上でございます。

○畑野委員 三のところでは、指導件数については、上記二に該当するか区別して集計していない、こういう状況なんですね。つまり、実態そのものは政府として把握されていないんですよ。私、これは引き続き追及をしていきたいというふうに思っております。  その上で、伺います。  前回、厚生労働省は私の質問に、労使協定と労働協約とは一致するものではないと答弁されました。一年単位の変形労働時間制では、制度導入に当たって、労使協定を締結することに加え、時間外労働が見込まれる場合は三六協定も締結されるということです。  厚労省に伺いますが、これらの労使協定に反し、法違反が認められる場合、どのような対応がされるんですか。

○吉永政府参考人 お答え申し上げます。  労働基準監督署が行います監督指導におきまして、一年単位の変形労働時間制を導入している事業場に労働基準法第三十二条の違反が認められた場合につきましては、是正勧告を行い、改善を図らせているところでございます。  また、監督指導の結果、たび重なる指導を行ったにもかかわらず法違反を是正しないなど、重大又は悪質な事案につきましては、刑事訴訟法に基づき検察庁へ送検を行うこととしているところでございます。

○畑野委員 厳しい罰則含めて、あるわけですね。法違反が認められれば労働基準監督官が違法状態を解消するために指導監督を行い、従わなければ法的措置をとる、司法警察権に基づいて労働条件の最低基準を守らせるというのが労働基準法の世界です。  一方で、勤務条件条例主義である地方公務員の場合は、どのような労働者保護のルールがあるのでしょうか。  大臣は、労使協定抜きに条例で一年単位の変形労働時間制を導入することについて、地方公務員法に基づいて職員団体と当局が交渉を行い協定を結ぶことができるため、勤務条件に関して教員の意向が反映されるとの趣旨の答弁をされました。  そこで、総務省に伺います。  地方公務員法第五十五条に基づく団体協約による書面の協定にはどのような法的拘束力があるのでしょうか。また、勤務条件に関する措置要求、地方公務員法第四十六条に基づく人事委員会の勧告にはどのような効力がありますか。

○大村政府参考人 お答えいたします。  地方公共団体と職員団体は、勤務条件等に関する交渉の合意事項につきまして、地方公務員法第五十五条第九項に基づく書面による協定を締結できることとされております。この協定は、拘束的な効力は有しませんが、同条第十項に基づきまして、地方公共団体の当局と職員団体の双方において、誠意と責任を持って履行しなければならないとされております。  また、地方公務員法第四十六条に基づきます勤務条件に関する措置要求に対して、人事委員会は、同法第四十七条により、審査を行い、事案を判定した結果に基づいて必要な勧告を行うことになりますが、この勧告につきましては、措置要求制度が交渉と並んで職員の勤務条件決定を補完する目的の制度である、こういった意義に鑑みまして、勧告を受けた機関がこれを可能な限り尊重すべき政治的、道義的な責任を負うものであると解しております。

○畑野委員 つまり法的拘束力はないというふうにおっしゃっていただきましたように、団体協約による協定はいわゆる紳士協定です。また、人事委の勧告にも強制力はありません。  そこで、文部科学省に伺います。教員の超過勤務是正に関する措置要求で、実際に労働条件が改善された件数はどれぐらいありますか。

○丸山政府参考人 お答えを申し上げます。  文部科学省としては、勤務条件に関する措置要求の係属状況を毎年調査をいたしておりまして、平成三十年四月一日現在の調査では、全国で合計百六件となっております。このうち、実際に労働条件が改善された件数につきましては、現在把握はしておりません。

○畑野委員 それすらつかんでいない。何の担保にもなっていないじゃありませんか。  地方公務員の労働基本権が制約されている代償措置として設けられているのが措置要求です。公務員の労働基本権が制約されていること自体は重大な問題です。しかし、その結果がどうなったかも把握されていない。残業しても残業と認められず、割増し賃金も払われない教員から更に労使協定まで奪っておいて、どうして労働者としての権利が守られるというのかということです。条例で労使協定のかわりとすることは成り立ちません。  そこで、条例により制度を導入するプロセスについて確認したいと思います。  先日の委員会の答弁で、一年単位の変形労働時間制の導入に関し条例を策定するプロセスの出発点として、まず学校で御検討いただいた上と述べられました。さらに、条例が制定された後、学校への制度適用については、学校の意向を踏まえと述べられました。  確認しますけれども、学校での検討とは具体的にどのように行われることを想定していますか。  条例制定に当たって学校での検討の結果、制度の導入について教員の合意が得られない場合、また、条例制定後、教員の合意が得られず、学校の意向が制度導入を拒否する場合、制度は導入できないとなるのでしょうか。

○丸山政府参考人 お答えを申し上げます。  本制度の活用に当たっての具体の手続、段取りについてということでございますが、公立小中学校の場合、まず、各学校で検討の上、市町村教育委員会と相談をし、市町村教育委員会の意向を踏まえた都道府県教育委員会が、改正後の給特法や文部科学省令、指針などを踏まえて条例案を作成し、都道府県議会で成立の上、この条例に従って、学校の意向を踏まえ、市町村教育委員会が、導入する学校や具体の導入の仕方、これは勤務時間の配分や対象になる教職員ということでございますが、それを決定することとなるというふうに考えております。  各学校での検討におきましては、校長が自校の業務改善状況や年間スケジュールを踏まえた上で、学校閉庁日を何日程度設けることができるのか、設ける場合の手法として一年単位の変形労働時間制を活用すべきかなどについて判断の上、教育委員会と相談をするということになると思います。  また、具体的に今回の制度を活用する対象者を決めるに当たっては、校長がそれぞれの教師と対話をし、その事情などをよく酌み取るということが求められております。  このように、休日のまとめどりのための一年単位の変形労働時間制の導入に当たっては、各学校ごとに異なる年間スケジュールを踏まえ、育児や介護を行う者など個々の事情に応じて適用する、そういった必要があるため、各学校の意向を踏まえずに都道府県の条例で一律に強制することはできないものというふうに考えております。  各地方公共団体において条例の制定等に取り組んでいただく際には、適切なプロセスを通じて働く教師の意思が反映されなければ職場の環境は変わりません。したがって、当然のことながら、しっかり話合いをしていただき、教育委員会、校長と現場の教師等が共通認識を持って制度を活用していただく必要があると考えており、施行の通知等でその旨を周知するとともに、各地方公共団体で同じ思いを共有して取り組んでいただけるように、全国の教育長や首長、地方公共団体、関係者が集まる会議等々さまざまな場を活用して今回の法改正の趣旨や意義の周知徹底をしっかりと図っていきたいというふうに考えております。

○畑野委員 配慮する個々の教員のことを聞いているんじゃなくて、全体として教員の合意が得られなかった場合は学校の意向にならないという確認でいいですか。大臣、どうですか。

○萩生田国務大臣 各学校の意向を踏まえずに、都道府県が一律に条例で強制をしても何の意味もないと思います。(畑野委員「学校じゃなくて教員」と呼ぶ)ですから、当然のことながら、条例をつくるに当たって各学校の校長とそれぞれの教師がしっかり対話をしていただいて、個々の事情もあると思います、介護期間中だとか、子供が小さいとか、いろいろな事情があると思いますので、よく酌み取ることが求められておりますので、当然、学校のみんなが嫌だと言うものを、これは幾ら条例ができたからといって、なかなかそれを運用して、動かすことは無理だと思います。

○畑野委員 教職員全員の意向をちゃんと聞くべきだというふうに思います。それとて労使協定じゃないんですから。大問題です。  ちょっと確認なんですけれども、懸念として、これがどんどん押しつけられるんじゃないかと、文部科学省から。そんなことはあってはならないと思います。推奨したり、あるいは財政的な誘導をしたりするということを考えているんでしょうか。

○萩生田国務大臣 それぞれの自治体で条例で定めていただくことが必要でありますし、働き方の選択肢でありますから、それぞれの地域に合わせ、また、個人に合わせて選択をいただくということになると思います。

○畑野委員 財政的な誘導をするということはないということでいいですか。

○萩生田国務大臣 大きな政策を進めていく上では、我々は、この方針がぜひ皆さんの御理解をいただいて前に進ませていただきたいと思っているわけですから、結果としてこの大きな思いを成就するために、例えば人員をふやしていくとか、先ほどから申し上げているように、この法律だけで全てが解決するわけではないということも認めた上で皆さんに協力を求めていますので、例えばICTの環境を整備する、あるいはスクールサポートスタッフを配備する、これはもう予算が伴わなければできないことでありますから、結果としてそういう予算を措置することで応援をしていくことは、政策を前へ進める上ではございます。

○畑野委員 今の話というのはちょっと重大な答弁なんですけれども、要するに、一年単位の変形労働時間制を導入するところにそういうのを厚くするという意味ですか。とんでもないですよ。撤回して。

○萩生田国務大臣 変形労働制に予算措置をするということはございません。はい。

○畑野委員 確認しました。  次に、大臣は、一年単位の変形労働時間制の活用により勤務時間を延長し、それを……(発言する者あり)  引きかえに財政誘導するということはないですかと確認をさせていただきます。

○萩生田国務大臣 ございません。

○畑野委員 確認しました。  大臣は、一年単位の変形労働時間制の活用により勤務時間を延長し、それを一時間単位で積み上げて、長期休業期間中に休日のまとめどりを行うとおっしゃいました。しかし、教員は、夏季休業期間中も、研修、プール指導、補習、部活動指導等の業務があって、決して時間にゆとりがあるわけではありません。  大臣は、本会議の答弁で、長期休業期間中は、児童生徒が登校せず、実態としても学校閉庁日を設ける自治体が多く見られるなど、比較的緩やかになるという答弁のみでした。  夏季休業期間中は閑散期となる根拠となるデータはあるのでしょうか。

○丸山政府参考人 お答えを申し上げます。  平成十八年の教員勤務実態調査、これは当該年度の七月から十二月まで六カ月間の調査でございますが、当時の勤務時間が一日八時間であったところ、八月期の一日当たりの小中学校の平均勤務時間は八時間十七分であったということであります。  また、ちょっと個別の例で御紹介をさせていただきたいと思いますが、横浜市の教育委員会の、直近の平成三十年の調査では、時間外勤務が月四十五時間以下の小中学校及び特別支援学校の教職員の割合は、四月から六月は四割弱でございますが、八月は九割というふうになっております。  また、さらに、北九州市の教育委員会の二十九年度の調査では、時間外勤務が月四十五時間を超える教員は、小学校では八月はゼロ、中学校では通常期の約七割ほどということで、少ない人数となっているところでございます。  ただし、委員が御指摘いただきましたように、夏休み期間中にも時間外勤務が発生していることは事実でありますので、文科省としては、夏季等の長期休業期間に研修や教育活動等の業務の実施を求めた平成十四年の通知を廃止いたしまして、学校閉庁日の設定とともに、オンライン研修も含めた、活用した研修の実施、整理、精選、それから部活動の適正化、さらに高温時のプール指導等の見直しなど、長期休業期間中の業務の見直しを求める通知を本年六月に発出したところでございます。

○畑野委員 残業時間四十五時間だからいいなんという話じゃないでしょう。それとて、おっしゃったように古いデータですよ、二〇〇六年の。夏休み、八月、八時間よりも多く働いているということじゃありませんか。何言っているんですか。決して余裕がある期間ではありません。  一年単位の変形労働時間制導入の前提は、長期休業期間中の業務量の縮減だというふうに言われました。  そこで、部活動について伺います。どのように縮減するのか。部活動の大会日程について、日本中学校体育連盟に見直しを求めていると聞いていますが、検討状況はどうなっていますか。

○萩生田国務大臣 部活動の、例えば大会の見直しについて、本年三月に、中体連に対し、部活動指導員による単独の引率を認めてもらいたい、要するに、顧問の先生がいなくても大会に参加できるようにさせてもらいたい、複数合同チームや地域のスポーツクラブの大会参加について認めてもらいたい、大会の日程そのものを、夏休みの真ん中にぼんと置きますと、これはなかなか連続した休暇がとれませんので、見直してもらいたいなどを依頼したところです。  中体連においては、部活動指導員が単独で生徒を大会に引率することを可能にすることにより、大会期間中の教師の負担軽減を図ったところです。また、日程の見直しについても検討に着手したところであり、来年度中に結論を得る見込みであると伺っております。一部の自治体においては、部活動の大会の見直しも既に進められているところです。

○畑野委員 中体連についても来年度中と。まだまだ先の話じゃありませんか。  研修はどういうふうにするんですか。

○萩生田国務大臣 夏休み中の研修については、独立行政法人教職員支援機構の夏季休業期間中の研修日程の見直しを図り、来年度は、八月八日から十六日の九日間は研修を実施しない予定としております。  なお、自治体においては、全国的な広がりを見せておりまして、例えば横浜市などは、政令市ですから、自分たち独自の日程で夏季の研修を行っておりますし、先日来委員会でも御披露いただいている岐阜市などは、中核市ということで、教員研修、みずから自治体ができるということで、日程的に休日がとりやすいような環境の中で既に実施をしているところでございます。

○畑野委員 次に伺います。  教員には週休日の振りかえという制度があります。どのような制度か、簡単にお答えください。

○丸山政府参考人 お答え申し上げます。  公務員法制において、週休日とは、勤務時間が割り振られていない日を指します。各地方公共団体の条例や規則では、原則として日曜日及び土曜日を週休日と定めておりますが、学校運営上必要がある場合には週休日の振りかえを行うこともできるとされております。具体的には条例や規則において定められておりますが、一般的には、週休日と定めていた日、土曜日、日曜日を勤務日とし、そこで勤務をさせた分、平日の勤務日を週休日に変更すること、また、振りかえを行う際には、一日又は半日単位で、勤務を命じた日の四週間前の日から八週間後の日までの期間において割り振ることが定められているところでございます。

○畑野委員 大臣が例に挙げた岐阜市ですけれども、先日の参考人質疑では、早川三根夫教育長も、現行の仕組みで休みはとれると御答弁されました。一年単位の変形労働時間制の導入など必要ありません。  ことし七月に、さいたま市で試行的に一カ月単位の変形労働時間制が導入されたのを伺いました。七月の四日間、一時間勤務時間を延長した分、七月二十二日以降の夏季休業期間中に四時間分を調整するというもので、しかし、そのわずか四時間さえ、結局、調整する日が見つからなかったというんですね。現場の教員からは、教員の未配置や未補充が多く、常に繁忙期で、長時間労働を余儀なくされる中、長期休業期間中を閑散期などと決めつけ、変形労働時間制を導入するなど余りに無謀だ、教員をふやして穴を埋め、勤務時間内に普通に仕事ができる学校にしてほしいというふうに訴えているわけです。  続けて伺いますけれども、一年単位の変形労働時間制で所定勤務時間を延長する時期について、学校行事等にあらかじめ予想される時間外勤務としていますが、具体的に何月を想定しているんですか。

○丸山政府参考人 お答えを申し上げます。  一年単位の変形労働時間制においては、さまざまな労働日や労働時間の定め方がありますが、公立学校の教師については、具体的に、年度当初や学校行事等で業務量が特に多い時期の勤務時間を一時間単位で積み上げることで、長期休業期間に休日のまとめどりを行うということを想定いたしております。  具体の、業務量が特に多い時期ということでございますが、年度当初というのは四月ということですが、学校行事の時期については、これは地域、学校によってさまざま異なる部分がございますが、例えば、運動会や文化祭を行うということでいえば、六月ごろであるとか十月ごろということで今考えているところでございます。

○畑野委員 大問題じゃありませんか、今の御答弁。  先日の参考人質疑で、神奈川過労死家族の会の工藤祥子代表は、教員の過労死事案が六月、七月、十二月に多いこと、それは新学期になってからの環境の変化のストレスに加えて、行事の多さが加わっていると指摘しているんです。何でそのときに長くするんですか。おかしいじゃありませんか。ただでさえ業務量が多く、過労死事案が多いとされる月に、何でわざわざ所定労働時間を延長して勤務させるのか。文科省は教員の過労死をふやすつもりかと言われますよ。  そもそも、国として、教員の過労死事案を把握しているんですか。どのような時期に多いと認識されていますか。

○丸山政府参考人 お答えを申し上げます。  公立学校の教師のいわゆる過労死や過労自殺等の件数については、地方公務員災害補償基金によれば、義務教育段階の学校職員について、脳・心臓疾患及び精神疾患等として公務災害認定をした件数は、平成二十七年度から平成二十九年度までの三年間で三十八件、うち死亡件数は十二件となっていると承知をいたしております。  また、委員の方から御指摘のありました過労死等の公務災害の発生時期については、これは集計、公表されておりませんが、文科省としては、志がある教師の過労死の事態は、そういったことは決してあってはならないものであり、その根絶を目指して、学校における働き方改革の実現に向けた取組を総合的に進めていく必要があるというふうに考えております。

○畑野委員 実態把握もきちんとされていないで導入するなど、言語道断ですよ。私は、工藤祥子さんから、独自に集めた裁判例もいただきました。  大臣、例えば、一九九九年六月五日に心筋梗塞で亡くなられた梅丘中学校教頭、男性、四十九歳の方です。判決が出たのは、東京地裁で二〇一一年二月十七日。十年以上かかっているんですよ。  時間外勤務時間は発症前六カ月の平均が八十時間を超え、特に発症前三カ月は百十時間を超えていた。しかも、夏季休業期間等、時期による繁忙状況の差異はあるものの、基本的には特段の変化が認められず、一年以上の間、同様の状況であったと。こういう例。  あるいは、二〇〇六年十二月十六日、自殺をされた、西東京市立小学校二学年担任の女性、二十五歳の方。初任者研修及び研究指定校の準備業務の負担、担任になって間もなく、児童の万引き、上履き隠し、体操着隠しなどのトラブルとその対応の連続、並びに月六十時間前後の時間外勤務に加えての日二時間程度の持ち帰り残業、こういうことですよ。こういうのをしっかり委員会でも議論しなくちゃいけません。  今、学校の先生たちは、この法案をどう見ているか。日々の疲労は日々解消することが原則、たまった疲労が簡単にとれないことは誰もが感じているはずです。それを行えない変形労働時間制は絶対に認められません。一日二十四時間は教員も一緒です。寝だめ、休みだめは、人間にはできません。変形労働時間制は、健康を壊し、人間を壊します。休日のまとめどりによる教職の魅力の向上などとおっしゃいますが、教員は、夏休みをまとめどりしたいから教員をやっているんじゃないですよ。子供とともに、一緒に歩んでいくところに最大の魅力があると思って頑張っている。  ある方は、採用試験に合格し、この春から夢を膨らませて教員になりました。一カ月働きましたが、はっきり言って異常です。残業せざるを得ない仕事量を任されて、残業しても、ボランティア扱いで残業代は出ない。雑務等の仕事量が多いせいで、授業や学級をよくしようとする試み、子供一人一人を考える時間が全くとれません。本当に悲しいです。日々の授業はほぼ準備なしです。毎回思いつきのような授業になってしまって、子供に本当に申しわけない。このままでは、質のよい教育はおろか、教員が死にます。助けてください。  この当たり前の思いに、一日十一時間を超える長時間労働で身も心も疲れ切っている教員の働き方を変えるのが、文部科学省の仕事じゃありませんか。一年単位の変形労働時間制で、今でさえ多忙な時期に所定労働時間を延長するなど、受け入れることはできません。やめるべきです。  学校現場はどうなるのか、資料を示しました。二です。ここにあるように、所定労働時間を超える超過勤務時間が抜本的に減少しないまま、一年単位の変形労働時間制が導入されれば、所定勤務時間が延びた分、超過勤務の時間が先送りされ、今以上に拘束される時間が長くなります。  例えば、現在の退勤時間が十六時四十五分、それが十八時まで延長されるとすると、それまで十六時四十五分終了をめどに設定された会議が延長され、一時間十五分の中で行うことが可能になります。これまで時間外で行っていた授業準備が、十八時以降からでなければ始められなくなる。結局、長時間労働が助長されるのではありませんか。

○萩生田国務大臣 先生、さまざま御指摘いただいたことは、いずれも大事なことです。過労死や過労自死が起きるような職場環境をこのまま続けるわけにいきません。がゆえに、今回、働き方の改革の法案を提出させていただきました。  審議の中でも繰り返し申し上げていますように、この法律を成立させることで直ちに全ての解決にはつながらないけれども、しかし、現場のマンパワーをふやしていったり、事務作業をICT化していったりすることで、何としても、現状の労働環境、言うならば、短縮を図っていきたい、時間の縮減を図っていきたいというのが大きな目標です。  ですから、先生が御心配されているように、この法律を入れることによって、今より悪くなるんだ、現場が今より大変になるんだということはあってはならないと思います。そのために、指針を示した後の条例などで、徹底してこの思いを国から地方まで貫いて共有していただくことが大事だと思っていまして、そのことをしっかりやらせていただいた上で、三年後の勤務実態調査を踏まえ、新たな制度も含めて検討を更に深めていく、これが思いでございますので御理解をいただきたいと思います。

○畑野委員 大臣は、導入の前提として、在校等時間の超過勤務を少なくとも上限ガイドラインで示した月四十五時間、年三百六十時間等の上限以内と答弁されました。  在校等時間全体の縮減ではなく、在校等時間の超過勤務の削減を導入の条件にすれば、在校等時間全体が変わらない場合、所定労働時間を延長すれば、その分は、超過勤務部分は見かけ上縮減される、つまり、実際は超過勤務が固定化される、こういうことになるのではありませんか。

○萩生田国務大臣 だから、ならないようにしたいと思っているんです。  休日のまとめどりのための一年単位の変形労働時間制を活用することにしておりますが、これを単に導入すること自体が勤務時間を縮減するものとは考えておりません。  その上で、今回の休日のまとめどりにおいては、在校等時間の超過勤務を少なくとも上限ガイドラインで示した月四十五時間、年三百六十時間等の上限以内とするまで、業務を縮減させることを導入の大前提としており、現在の長時間勤務を是正しないまま、在校等時間を見かけ上縮減させるものではありません。  文部科学省としては、今回新たに策定する指針における在校等時間の上限を踏まえ、業務の削減を徹底的に進めてまいりたいと思っております。

○畑野委員 だから、言っているように、月四十五時間というただ働きをさせた前提の上でしょう。それも、したいと思いますと、そんなのでは法案の審議の答弁として成り立ちませんよ。  先日の参考人質疑で、嶋崎参考人が、残業代ゼロの教員に残業代削減のために悪用されている変形労働時間制のメリットはない、あえて導入する狙いは、繁忙期の残業時間を減らし、見せかけの残業時間を減らすことにあるとしか考えられないと。そうだと思いますよ。  勤務時間自体が短縮されないということは大臣も認めています。その上で導入すれば、嶋崎参考人の指摘のように、見かけ上の残業時間が減ることで、真剣に勤務時間を短縮するのではなく、教員の多忙な状況が固定される。教員の長時間勤務の解消を真面目に考えているとは思えないですよ。  私、大臣に確認したいんですけれども、三年後に教員勤務実態調査を行うと述べていますが、それは具体的に何年度ですか。

○萩生田国務大臣 令和四年度です。

○畑野委員 そうすると、この法案では、一年単位の変形労働時間制が施行されるのは、教員勤務実態調査の前の年なんですよね。つまり、一年単位の変形労働時間制で見かけ上の超過勤務を減らして勤務実態調査をやったら、あっ、超過勤務が減りました、こんなことを言われたら、とんでもない話ですよ。  そもそも、四%の教職調整額と引きかえに残業代を支給しないとしていることで時間外労働を規制する手段を奪い、異常な長時間労働を教員に押しつけているこの給特法の枠組みには一切手をつけない。大問題です。  参考人質疑で、工藤祥子参考人は、教員だった夫の義男さんを過労死で亡くされた経験をお話しされる中で、他界一カ月前の二百六時間に及ぶ時間外勤務のうち、労災認定されたのは半分以下の九十七時間だった、認められなかった時間は、給特法で超勤四項目以外の超過勤務が命令によらないものとされ、本人が勝手にやった仕事だと扱われたからだとお話しされました。  ここに、超勤四項目以外の超過勤務を命令によらないものとして認めないというところと現実との矛盾があると思います。大臣には、そういう認識はございますか。

○萩生田国務大臣 給特法は、時間外勤務命令をいわゆる超勤四項目に限定した上で、時間外勤務手当及び休日勤務手当は支給しないかわりに、勤務時間の内外を問わず包括的に評価して教職調整額を支給する仕組みです。  しかしながら、この仕組みにより、所定の勤務時間外に行われる超勤四項目以外の業務は、教師がみずからの判断で自発的に働いているものと整理され、この時間については勤務時間管理の対象にならないという誤解が生じているのも事実だと思います。  また、教員勤務実態調査の結果によると、教師の長時間勤務の実態が改めて判明した中で、所定の勤務時間外に行っている業務としては、超勤四項目に関する業務以外のものが多くを占めていると考えられます。  このため、本年一月に公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドラインを策定し、超勤四項目以外の業務を行う時間も含めて在校等時間として勤務時間管理の対象とすることを明確にした上で、その上限の目安時間を示すこととしたところです。  その際、このガイドラインにおいては、上限の目安時間まで教師が業務を行うことを奨励する趣旨に受け取られてはならないということを明確にしており、このガイドラインを契機として、あらゆる手段を講じて学校や教師の業務の適正化を図っていくことが重要であると考えており、この点は、今般の改正により策定をすることとしている指針においても同様でございます。  現在の給特法の仕組みは、教師はどこまでが職務であるのかを切り分けがたいという教師の職務を踏まえたものですが、一方、給特法制定から半世紀を経た現在、保護者や地域の意識の変化の中で業務が大きく積み上がっています。また、安倍内閣において、働き方改革の推進の観点からも、労働法制も大きく転換しております。  そのため、今回の法改正を踏まえ、まずは教師でなければできないことに教師が集中できるように、働き方改革の強力な推進により業務を縮減し、その成果を社会に示しつつ、三年後に実施予定の教師の勤務実態状況調査などを踏まえながら、中教審の答申などでも指摘されているとおり、中長期的な課題として、教師に関する労働環境について、給特法などの法制的な枠組みを含め検討を行うことがあると考えております。

○畑野委員 資料の三を見ていただきたいんですけれども、これは、ことし二月に川崎市教育委員会が公表した「教職員の働き方・仕事の進め方改革の方針」に掲載されている、教諭の一日の勤務のイメージ図です。  一年単位の変形労働時間制が導入されると、私は大変おかしなことが起こると思います。この図で見ますと、十六時四十五分から退勤の二十時までの時間外の業務である会議・打合せ、部活動、校務分掌事務、学年・学級経営、授業準備は、制度導入前なら、給特法で、教員の自主的、自発的勤務と扱われるわけです。ところが、一年単位の変形労働時間制が導入され、仮に一日当たりの上限である十時間まで所定勤務時間を延長すると、十九時までが正規の勤務時間となります。  その時間帯を見てください。十六時四十五分から十九時まで、制度導入前も導入後も同じ仕事をしているんです。片や自主的労働、片や労働時間など、おかしいと思いませんか。大臣、御所見を。

○萩生田国務大臣 御指摘の点につきましては、現行制度における一カ月単位の変形労働時間制の場合でも同様で、日によって所定の勤務時間が異なることにより、同じ時間帯に行う業務でも所定の勤務時間内として扱われる場合と所定の勤務時間外として扱われる場合があるものであり、おかしなことではありません。  しかし、文科省としては、働き方改革を確実に推進するため、所定の勤務時間の内外を問わず、超勤四項目以外の業務も含めて在校等時間として勤務時間管理の対象とすることを明確にした上で、その上限の目安時間を示したところであり、今回の指針化により、学校における在校等時間の縮減を着実に進めてまいります。

○畑野委員 おかしいことなんですよ。よく後で見てください。  引き続き聞きたいと思います。あと二問だけ、質問の時間がありますので、聞きます。  大臣は、超勤四項目以外でも、校務として行うものについては、超過勤務命令に基づくものではないものの、学校教育に必要な業務として働いていることに変わりありませんと答弁されました。しかし、給特法のもとでは、それが労基法上の労働時間としては認められておりません。  ことし七月に確定判決が出された福井県若狭町立上中中学校新任教員過労死事件の損害賠償請求事件で、原告側の遺族が勝訴しました。長時間の残業が校長の指揮命令下の残業か自主的な活動だったかが争点の一つとして争われ、判決は、これらの事務を所定勤務時間外に行うことについて明示的な命令はないが、これらの事務を所定労働時間外に行わざるを得なかったものと認められ、自主的に従事していたとは言えない、事実上、本件校長の指揮監督下において行っていたものと認めるのが相当といたしました。  これらの事務というのは、学級担任、一から三年生の社会科、二年二組の体育、交通安全指導係、野球部の副顧問と、これらに付随する業務である担当授業の準備、部活動指導、初任者研修の準備、保護者対応等なんですね。  大臣、この判決、どう受けとめますか。超勤四項目以外であっても、学校教育に必要な業務として働いている時間は明確な労働時間と認めるべきではありませんか。

○萩生田国務大臣 お尋ねの判決においては、校長の安全配慮義務違反の有無が争点となる中で、安全配慮義務の範囲であるか否かという文脈において、当該教諭の業務内容や経験年数からすれば、所定の勤務時間外に業務を行わざるを得なかったものと認められ、自主的に従事したとは言えないと指摘されているものと承知をしております。  このように、御指摘の点は、給特法の仕組みや解釈、超過勤務命令の有無が争われたものではなく、校長が果たすべき安全配慮義務の範囲について判示したものと認識しております。  文科省としては、校務をつかさどる校長は、超勤四項目以外の業務については超過勤務命令を出すことはできないものの、これらを含めた業務量全体の縮減を図るという管理運営に関する責任を有するものと考えており、今回の判決はこれまでの文部科学省の考えと矛盾するものではないと認識します。  その上で、志ある教師が勤務の長時間化等の中で過労死等の事態に陥ってしまうことは、本人はもとより、その御家族にとってもはかり知れない苦痛であるとともに、児童生徒や学校にとっても大きな損失であると考えており、文科省としては、いずれにせよ、教師の過労死等の事態が起こらないよう、学校における働き方改革の取組を更に進めてまいります。

○畑野委員 給特法の矛盾に手をつけないような改正案は、これは教員の長時間労働に拍車をかけるものだと思います。  最後に、私たち、これはやめるべきだと言ってまいりましたが、実は学力テストなんです。五月十五日の委員会で取り上げました。当時の柴山文部科学大臣は「アンケートも踏まえて、検討させていただきます。」とおっしゃいました。どのような検討を行ったのか。廃止を検討すべきじゃないでしょうか。

○萩生田国務大臣 全国学力・学習状況調査について行き過ぎた取扱いがなされないよう、本調査の趣旨、目的や調査への適切な向き合い方について、学校内や教育委員会と学校との間において共通理解を深め合うことが重要と考えております。  このため、文部科学省としては、平成二十八年に適切な取組について通知を発出したところであり、毎年度の教育委員会の学力調査担当者を集めた会議などにおいて、この通知を踏まえた取組を進めるよう、各教育委員会に求めているところです。  本調査は、全ての教育委員会や学校において調査結果の活用を通じた教育施策や児童生徒の教育指導の恒常的な改善充実を図ることを目的としており、今後も継続的に実施していく必要があると思っております。

○橘委員長 畑野君、時間が参っております。

○畑野委員 はい。  小学校の先生からは、残業はもちろん、持ち帰り仕事に休日出勤も珍しいことではありません、さらに、次年度から授業時数がふえることには失望感しかありません、仕事をやめたい、こういう声ですよ。  長時間労働の根本原因である授業時数も削減せず、学力テストも廃止せず、教員の抜本的な増員にも背を向ける文部科学大臣に教員の働き方改革を語る資格はないと思います。  教員の長時間労働改善に役立たないばかりか、学期中の長時間労働を一層ひどくする一年単位の変形労働時間制導入はきっぱりやめるべきだということを申し上げまして、引き続き質問したいと思います。きょうは終わります。

 

【反対討論】

○畑野委員 日本共産党を代表し、公立学校教員給与特別措置法改正案に断固反対する討論を行います。  本法案は、教員の長時間労働を是正するためといいますが、教員に長時間労働を押しつけている給特法の枠組みには一切手をつけていません。  給特法では、四%の教職調整額の支給と引きかえに、労働基準法第三十七条の割増し賃金の規定を適用除外し、残業代を支給しないとしています。それが、時間外労働を規制する手段を奪い、際限のない長時間勤務の実態を引き起こしてきました。ここに手をつけずに、どうして教員の長時間労働が是正できるというのでしょうか。  本法案が導入する一年単位の変形労働時間制は、八時間労働の原則を崩し、労働者に長時間労働を押しつけ、使用者の残業代節約に活用されているのが実態です。そんな制度を、一日十一時間を超える恒常的な超過勤務が蔓延している教員に、過重労働と脳・心臓疾患発症との関連性が徐々に高まるとされる月四十五時間までの超過勤務を前提に導入するものです。これでは、所定の勤務時間が延長された分だけ、全体の勤務時間が延びることは明らかです。勤務時間の短縮どころか、ただでさえ異常な長時間労働を一層ひどくするだけではありませんか。  しかも、政府は質疑の中で、所定の勤務時間を延長する時期を、学校行事等で多忙となる四月、六月、十月などと答弁しました。教員の過労死事案が多いと言われるこの時期にあえて所定労働時間を延長するなど、まさに教員の過労死促進法案と言わざるを得ません。  一年単位の変形労働時間制は、一年間という長期間にわたり八時間労働制の原則を崩す、重大な労働条件の不利益変更です。だからこそ、労働基準法は、一年単位の変形労働時間制の適用条件として、労使協定の締結などの厳しい条件を課しています。法案が、地方公務員である教員について、労使協定さえ結ぶことなく条例で導入を可能とするのは、労使対等原則の改悪にほかなりません。しかも、地方公務員には、憲法二十八条で保障された団体交渉権や争議権の制約という問題を放置したままであり、こうしたやり方は、多くの学者、法律家が指摘するように、労働基準法の最低基準としての役割を否定する、二重三重の憲法違反にほかなりません。  教員の長時間労働を改善するためには、業務の抜本的縮減、教員の大幅増員とともに、教育職員に労働基準法第三十七条を適用し、残業代を支給するための給特法の抜本改正こそ必要です。  以上、討論といたします。(拍手)