【議事録】
○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。 冒頭、委員長報告にもありましたように、十一月二十五日の当委員会の視察で旭化成に伺い、ノーベル化学賞を受賞された吉野彰博士からお話を伺いました。大変貴重なお話でした。 吉野博士の受賞はリチウムイオン電池の開発ということですけれども、その前に、福井謙一京都大学・京都工芸繊維大学名誉教授のフロンティア電子理論、そしてその後の白川英樹筑波大学名誉教授が発見した導電性ポリアセチレン、こうした研究、十九年ごとだというふうにおっしゃいましたけれども、それを受けての今回の受賞だということです。 リチウム電池の研究開発で先行する二人のアメリカの研究者の到達点を知り、それを活用することによって乗り越えられなかった課題を乗り越えて、商業生産が可能なリチウムイオン電池を初めて開発されたということです。 ノーベル賞受賞者が必ず聞かれる質問は、何歳からこの研究をスタートしましたかということで、博士は三十三歳と。ぜひ三十五歳前後への、若手研究者への支援をよろしくお願いしますというふうに訴えられました。基礎研究への支援も訴えられました。深い感銘を私覚えました。 こうした受賞の経過を伺う中で、改めて、多様な分野の多様な研究が大きな成果の土台にあるということを痛感しました。 吉野博士は、うまくいく研究は百人に一人かもしれないが、九十九人の研究を無駄な研究だと言って切り捨ててしまえば成功する一人の研究も生まれないとお話をされておられました。 竹本直一担当大臣に伺いますが、若い、多彩な才能を持つ研究者が、それぞれの興味、関心に基づき、成功、失敗にかかわらず研究に専念できる環境が本当に重要だと思いますが、大臣の御所見を伺います。
○竹本国務大臣 畑野先生のおっしゃるとおりだと思います。 今回のノーベル賞受賞を受けまして、すぐれた若手研究者が失敗を恐れることなく新たな課題に積極的に挑戦することができる環境整備が非常に重要であります。 十一月十一日の総合科学技術・イノベーション会議では、若手研究者が本当に自分のやりたいことにチャレンジしていくことのできる環境をつくっていくことの重要性について、吉野さんより我々も御講演をいただいております。 内閣府では、研究環境の抜本的強化等によって研究者の魅力を高めていくことが重要であると考えておりまして、その実現に向けて、年内を目途に、研究力強化・若手研究者支援総合パッケージの策定を予定しております。この中で、優秀な研究者のポストの確保や表彰、自由な発想による挑戦的研究を支援する仕組み等の具体的な施策を検討し、実施していくことが絶対に必要であります。 実は、研究者の環境が非常によくないというのは再三出ておりますが、ちょっと数字を申し上げますと、修士課程から博士課程へ行く進学率が、平成十二年で一六・七%、現在で、平成三十年で九・三%、半分近くに減っている。それから、四十歳未満の国立大学教員のうち、任期つき割合が非常に増加しておりまして、平成十九年三八・八%だったのが、現在では六四・二%とふえています。また、博士課程修了者の就職率が実は停滞しております。かつては七一・六だったのが、七二・〇。それから、大学教員の研究教育活動の割合が非常に低下をしておる。こういうことで、落ちついて研究にのめり込めないということ。 それから、吉野先生のように、企業の研究において成功された方も、あの方のお話を聞いておりますと、全部ハッピー、ハッピーであったわけではもちろんないわけで、極めて厳しい二年間があったというお話を聞きました。 つまり、会社としては、もうけなきゃいけないですから商品を出さなきゃいけない、しかし、そういう基礎研究では金にならないから大変だ、こういう雰囲気もあったんだと思います。 ですから、あらゆる障害をできるだけ軽くしてあげて、自由にやっていただくということが大事であろうというふうに思います。
○畑野委員 竹本大臣から大変心強い御答弁をいただきました。 十一月二十一日の所信的挨拶の中で、斬新かつ野心的な研究を行う若手の支援を含め、研究力を総合的に強化するための戦略の策定などに取り組むというふうに述べられ、今、本当に具体的にお話をしていただきました。 研究者に対する支援のあり方については、将来の若手研究者となる、大臣もおっしゃられた大学院の修士、博士課程の方々への支援を始め、博士課程を修了した若手研究者、中堅研究者、シニア研究者など、それぞれの段階での支援が求められていると思います。 その中で、きょうは、特に大学院の修士、博士課程の方々への支援のあり方について伺いたいと思います。 文部科学省に伺いますが、今、研究の重要な担い手である博士課程入学者総数が減少傾向にあると伺っています。二〇〇三年のピーク時と二〇一八年の比較ではどうなっているでしょうか。また、減少の原因をどのように考えていますか。
○玉上政府参考人 お答えいたします。 博士の後期課程入学者数は、平成十五年、二〇〇三年の一万八千二百三十二人をピークとして減少傾向にございまして、平成三十年、二〇一八年には一万四千九百三人と、ピーク時から約一八%減少しております。 平成二十一年度の科学技術政策研究所によります日本の理工系修士課程への進路決定に関する意識調査によりますと、博士後期課程への進学を考えるための重要な条件として、キャリアパスの拡大と並んで経済的支援が挙げられております。 また、中教審の大学分科会においては、大学院のカリキュラムと社会の期待の間にギャップが生じているなど、大学院教育をめぐる課題が若手研究者ポストの確保の困難さという問題と相まって、課程修了者のキャリアパスに対する不安を招き、博士後期課程への進学をちゅうちょさせる原因の一つとなっていると指摘されております。 これらを踏まえますと、修了後のキャリアパスに対する不安、在学中の経済面に対する不安が、博士後期課程入学者が減少している原因のうち大きなものであると考えております。
○畑野委員 確認なんですけれども、博士課程入学者のうち、修士課程を修了して博士課程に進学するうちの一般学生の入学者数はピーク時と比べてどうでしょうかというふうに改めて伺いたいと思います。きょうの資料の一枚目に載せさせていただいております。その数字についてお答えいただけますか。
○玉上政府参考人 お答えいたします。 資料を先生もお配りいただいておりますけれども、平成十五年の一万一千六百三十七人から、平成三十年で六千二十二人ということでございます。
○畑野委員 そういうことなんですね。つまり、半減しているということです。 先ほど、最初に述べられたのは社会人の方なども含めてですが、一般学生といった場合には本当に少なくなっている。それは、若い人たちが減っているという深刻な事態だというふうに思います。 キャリアパスの問題でいうと、博士課程修了後の出口の問題、これはこの間、私も通常国会で指摘しましたように、企業自身が研究機関を閉鎖するなど、自前の研究機能を後退させる中で、大学や大学院に研究を肩がわりさせている現状は問題だというふうに思います。竹本大臣からも企業の大変さというお話、触れていただきました。 こうした傾向というのは、必然的に、博士課程修了者が研究職として企業に採用される門戸を閉ざすことにもつながるということも指摘しておきたいと思います。 一方、今おっしゃっていただきましたように、文科省の資料によると、博士課程進学を検討する際に重要と考える条件で最も重要視されているのが、博士課程在籍者に対する経済的支援なわけです。資料の二枚目につけさせていただきました。 今日の大学院生の実態がどうなっているかということで、全国大学院生協議会の皆さんは、毎年、大学院生の研究・生活実態に関するアンケート調査を行っておられます。先日、二〇一九年度の報告書をいただきました。これだけ厚い、労作だと思います。文部科学省にも届いていると思うんです。 これを見ますと、大学院生は年間六十万円近い学費、私立ではそれ以上の学費を払っていると。きのう伺いましたら、ある私学では百六十万円払っていますという方がおられました。 また、大学院生には給付型奨学金、返済不要の奨学金がないために、半数が貸与型奨学金を借り、そのうちの四人に一人が五百万円以上の奨学金という名の借金を抱えています。 大学院生全体の八一・七%は何らかのアルバイトに従事しており、その五二・八%は週十時間以上のアルバイトに追われています。学外でアルバイトしている大学院生の約九割は、生活費を賄うためにアルバイトをせざるを得ない状況です。この報告書は、「フルタイムに相当する時間を生活への支障なく研究に費やすことのできる大学院生は限られており、多くの大学院生が研究とアルバイト等のダブルワークとでもいうべき状況に置かれている。」というふうに指摘をしております。資料の三枚目と四枚目にその調査が載っておりますので、ごらんいただきたいと思います。 文部科学省に伺いますが、こういう現状で研究に専念できるのでしょうか。
○玉上政府参考人 お答えいたします。 先ほどの調査、並びにまた、独立行政法人日本学生支援機構によります学生生活調査というものがございますけれども、そこの二十八年度の結果におきましては、全博士学生の五三・一%が、家庭からの給付のみでは修学不自由・困難及び給付なしを理由としてアルバイトに従事しているとの結果になっております。 文科省といたしましては、多くの大学院生がアルバイトなどに過度の時間を費やすことにより、大学院における研究活動に十分に携わることができない状況を改善し、大学院生が研究にも十分な時間を充てることができる環境を構築することが重要であると考えております。
○畑野委員 ティーチングアシスタントやリサーチアシスタントというのがあるんですが、希望する大学院生全てに枠があるわけではないんです。国立大学では、運営費交付金が減らされているせいで、限られている学生にしか枠がない、首都圏の大学に比べて地方大学ではその枠がごくわずかしかないという話も伺ってまいりました。 そこで、文部科学省に伺いたいんですが、第五期科学技術基本計画では、特に博士課程後期学生に対する経済的支援を充実するとして、「「博士課程(後期)在籍者の二割程度が生活費相当額程度を受給できることを目指す」との第三期及び第四期基本計画が掲げた目標についての早期達成に努める。」と述べておられます。 この目標に対して、到達はどのようになっているのでしょうか。
○玉上政府参考人 お答えいたします。 平成二十八年度に博士後期課程学生を対象といたしまして実施いたしました博士課程学生の経済的支援状況に係る調査研究によりますと、平成二十七年度時点で、生活費相当額とされる年間百八十万円以上の経済的支援の受給者は、博士後期課程在学者全体の一〇・四%という結果が出ております。
○畑野委員 博士課程後期学生全体の一〇・四%ということなんですが、その半数以上が特別研究員受給者となっているんですね。 その博士課程を対象とした特別研究員制度で支給されるのは年額二百四十万円、月二十万円ということで、先日、全国大学院生協議会の皆さんが文科省に要請に行かれたんです。これでは少ないから、特別研究員制度の金額の引上げをしてほしいと訴えられた。そのときに、担当者の回答は、大学院生の平均的な生活費は十八万円程度だから、月二十万円の特別研究員の支給額で十分だというふうにおっしゃったというんですね。 これは、全く実態をわかっていない。二十万円は手取りではないんです。実際に受けている方からお話を伺いましたら、月二十万円の支給額は、給与でもないのに所得として扱われるので、所得税、住民税がかかる。年間約三十万円の負担になる、引かれるわけですね。それから、国民健康保険料で年額十五万円。所得ありと扱われることで、学費も全額免除はなくて、最大半額免除です。都内でひとり暮らしとなれば、家賃、水光熱費、定期代等を払えば、生活費は月五万円しか残らない。これでどうやって生活しろというんですかという話を伺ってきたんです。 都内の私立大学の大学院博士課程で研究している大学院生は、自宅から通っているので基本的に家賃や生活費の負担はないんですけれども、しかし、学費や、研究活動のために所属する学会の年会費、必要な書籍の購入費、資料のコピー代、移動のための交通費等の費用を捻出する。海外の研究にも行く。そのために、非常勤講師や大学の助手、出版社のアルバイトなどをせざるを得ないので、研究時間が確保できないと、きのう、おっしゃっていました。 私はきのう、直接、そうした博士課程に在籍する皆さんからお話を伺ったんですが、そういう中で、これは深刻だなと思ったのは、修士課程から博士課程に進学した最初の年は何とかアルバイトで学費を捻出するんだけれども、研究時間が確保できない、二年、三年目は続かないといって、大学院をやめていく方が周りにたくさんいらっしゃるというんですね。結局、経済的に恵まれた環境の人しか研究を続けられないというふうに訴えておられました。 こんな状況では、若い、多様な才能を持つ研究者は育ちようがないと思うんです。 そこで、文科省に伺いますが、博士課程後期在籍者の二割程度が生活費相当程度を受給できることを目指すという目標を掲げたのは二〇〇六年なんです。もう十年以上、十三年たっているんです。そのときの第三期科学技術基本計画なんです。いまだ達成できていない。生活費相当の年間百八十万円という数字も実態に合わずに、低過ぎて問題なんですけれども、まず、この目標とした水準、直ちに達成すべきだと思うんです。加えて、特別研究員制度の支給額は増額するとともに、対象枠も拡大するべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○梶原政府参考人 お答えします。 特別研究員事業は、すぐれた若手研究者に対して、その研究者としての活動の初期において、自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選びながら研究に専念する機会を与え、その養成確保を図る制度です。 文部科学省としましては、今後とも、社会情勢の変化や財政状況等を踏まえつつ、優秀な人材が研究に専念できるよう、支援の充実に努めてまいります。 以上です。
○畑野委員 いつまでやるんですか。
○梶原政府参考人 支援については、先ほども申しましたとおり、今後も、社会情勢の変化や財政状況を踏まえつつ、引き続き継続的に支援の充実に努めてまいりたいと考えております。
○畑野委員 そういうことを言い募っているから進まないわけですよ。竹本大臣もおっしゃったじゃないですか。ちょっと担当が違うので、後で大臣には御決意を伺いますけれども。 それで、大学院在籍者に対する経済的支援のあり方を考える上で、大学院生、特に博士課程在籍者を、学生の延長の存在と捉えるのか、それとも研究者として捉えるのか、そもそもの考え方をはっきりさせる必要があると思うんです。 博士課程の大学院生は、大学院の研究活動の中でどのような役割を果たしていると文科省は認識しておられますか。
○玉上政府参考人 お答えいたします。 過去の調査によりますと、例えば、大学院生は我が国で生産される論文の二五%の筆頭著者に名を連ねております。また、高被引用と申しますが、高被引用度論文におきましても、約二割の論文の筆頭著者は大学院生となっております。論文数のシェアの大きいグループほど、研究者に占める博士課程学生の割合が大きいなどの結果が見られるところでございます。 こうしたことから、博士課程の学生は、自立した研究者などとなるために学ぶ学生という側面がある一方で、教員やほかの研究者などと協働して主体的に大学の研究力の一翼を担う重要な存在であり、研究開発やイノベーション創出の原動力となっていると認識しております。
○畑野委員 資料の九のところでつけさせていただきました。そのことをお答えいただいたわけです。二〇一八年七月三日の第六十八回学術分科会のものです。 「研究者の年代別論文生産性4」という資料なんですが、ここでは、国立大学等の、約七割に学部、修士、博士学生、ポストドクターといったジュニア研究者が参画しており、ジュニア研究者は科学的研究には欠くことができない存在、ジュニア研究者が参画している論文の方が、Q値、注目度が高い論文の割合が高い傾向と指摘されているのが、その前の資料の八にもつけさせていただきました。 そして、資料の九の方は、ことし一月に中教審大学分科会が取りまとめた、二〇四〇年を見据えた大学院教育のあるべき姿、審議まとめに附属する資料です。 おっしゃっていただいたように、「博士課程学生の研究への貢献」で、大学院生は二五%の論文の筆頭者に名を連ねており、高被引用度論文においても約二割の論文の筆頭著者は大学院生であり、我が国における研究開発やイノベーション創出の原動力となっている、優秀な博士課程学生は学部生のように授業料を納めて教育を受けるだけの存在ではなく、教員や他の研究者などと協働し、主体的に大学の研究力強化の一翼を担う重要な研究者であるため、研究に専念できるようにすることが必要だと指摘しております。 きのう伺いましたら、新しい科学技術、どんどん日進月歩なので、博士課程の方たちが教授に教えているというわけですよ。その専門の分野はその博士課程の学生でないとわからない、院生でないとわからない、こういう状況で、みんなで協力しながら取り組んでいるというわけです。 ノーベル賞を受賞した本庶佑教授や山中伸弥教授の論文も、その執筆者に修士、博士課程の大学院生が含まれております。 資料十なんですけれども、ノーベル賞を受賞された山中伸弥教授のiPS細胞に関する論文に関するものです。 論文のタイトルの下に執筆者の名前があるんです、ローマ字ですけれども。左から二人目の田邊剛士さんは、当時、博士課程在学の大学院生です。その隣の大貫茉里さんは、当時修士課程。博士課程だけにとどまらず、修士課程在籍者も研究に大きな貢献をしております。 そこで、文科省に伺います。 大学院設置基準第四条で、大学院の博士課程の目的を定めています。博士課程は、専門分野について、研究者として自立して研究活動を行い、又はその他の高度に専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養うことを目的とするとあります。 学費を払い、生活費を稼ぐために研究時間を犠牲にしてアルバイトに追われ、数百万円にも上る奨学金という名の借金を背負わされる。こんな実態で、高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養うことができるんでしょうか。支援が必要ではありませんか。
○玉上政府参考人 お答えいたします。 博士課程の学生が大学院設置基準第四条の博士課程の目的とする能力を十分養うためには、授業科目や研究指導をできる限り充実した形で受けることが必要となると考えられます。 この観点からも、先ほどもお答えしたとおり、文科省といたしましては、院生がアルバイトなどに過度の時間を費やすことにより、大学院における活動に十分に携わることができない状況を改善し、大学院生が授業科目や研究指導を受けることに十分な時間を充てることができる環境を構築することが望ましいと考えております。 このため、本年八月には、大学院の志願者が経済的な見通しを持って進学について判断できるよう、学費や経済的支援について、入学前から大学は必要な情報を提供することの努力義務化を定める省令改正を行ったところでございます。 また、先ほどお答えした日本学術振興会の特別研究員事業のほかにも、各大学におきます授業料減免に係る予算要求を行っているところでございます。 また、日本学生支援機構の奨学金事業における業績優秀者返還免除制度やRA、TAによる支援、企業から大学への寄附金などの外部資金の活用等も含めた多様な経済的支援策を促進することで、大学院教育の充実を図っていきたいと考えております。
○畑野委員 大学院生の方に聞きましたら、ほとんどがゼミや講義を受け持って、教育者として学部生の教育を担っているんですね。あるいは、常に研究論文に目を通して最新の成果をゼミや学部生や教授に教えている。学費を払って教育を受ける大学生ではなく、研究者の役割、教育者の役割をしているんですよ。にもかかわらずこのような貧しい環境でいいのか、それでは優秀な人材も集まらない。博士課程在籍者は大学生の延長だ、学費を払うのが当然だなどという考えそのものが世界の流れから大きく立ちおくれたものだと言わなくてはなりません。 最後に二点、竹本大臣に伺いたいと思うんです。 二〇〇五年に欧州連合が研究者に関する欧州憲章、ザルツブルクの原則を策定しました。研究者の範囲に、早い段階の研究者、いわゆる博士課程の学生を含むとされて、新しい知識の創造に重要な貢献をする専門家として認められるべきであるとしているんです。雇用主や資金提供者は適切な労働環境を保障するために必要な財政措置に特に留意すること、全てのキャリア段階の研究者に対して、既存の国内法や、国、部門ごとの労働協約に従って適切な社会保障、傷病手当、養育手当、年金、失業給付を含むとともに、公正で魅力的な資金、給与条件を保障することが記述されています。 ドイツ、フランス、ノルウェー、デンマーク、オランダ等では、労働契約の仕組みが導入されて研究労働者として扱われている。ドイツ、フランスは、年間数百ユーロの登録料はあるが、授業料はない。アメリカでは、理工系の博士課程の場合は、入学許可がおりると、大学院に在籍する標準的な期間における収支計画書が渡されて、授業料、生活費はどのように支給されるかなど、数年間にわたる収支予定が記載されて、生活に困らない計画が詳細に立てられる。スウェーデンでは、二〇一四年に法改正し、博士号取得候補者の大多数が、学生ではなく大学の従業員として扱われるようになった。こういう流れなんです。 しかし、日本は、学費を払って大学院に籍を置かなくちゃならない。生活の保障もない。私は、博士課程在籍者の自立した研究者としての地位を確立できるようにすることを真剣に検討すべきじゃないかと思うんです。 時間がありませんから、まとめて質問させていただきます。 それで、一九九一年に大学審議会が「大学院の整備充実について」という答申を出しております。この中で、大学院生は、学生としての側面とともに若手研究者としての側面を持ち、大学院における研究の担い手としての役割も有していると。学生の側面と若手研究者としての側面について、それぞれ処遇の改善が検討されているんです。学生でいえば奨学金制度の拡充、それから、若手研究者の側面でいえば特別研究員制度の採用人数の充実や研究奨励金等の引上げ。 しかし、二十八年たって、奨学金でいえば、当時あった、課程修了後一年以内に教育研究職について、一定年数以上継続して勤務した場合の返還免除制度はなくなってしまった。それから、特別研究員制度でいえば、当時よりも上がってはいるけれども、二〇〇四年以来、十五年間一円も上がっていないんですね。 第六期科学技術基本計画を検討中だと聞いております。中教審のまとめもいろいろあります。こうした博士課程在籍者を自立した研究者と位置づけ、ふさわしい処遇の改善を図ることを次期基本計画や大学院教育振興施策要綱にしっかり反映すべきじゃないかと思いますが、大臣のお考えを伺います。
○竹本国務大臣 ただいま先生から、欧米諸外国の実態について詳しく御説明いただきまして、ありがとうございました。 要は、学生を、現在やっている状況の中で、学生として教育を学ぶ時間と、それから研究者として研究に打ち込み、担当教授を助ける立場、言ってみれば勤務労働者です、その両面がやはりあるんだと思います。だから、それは大学によっても違うでしょうし、地域によっても違うだろうと思いますが、その辺を子細によく見て、少なくとも、研究者が研究に打ち込める環境、それをつくってあげないと日本の基礎研究能力は上がってこない、このように私は思っております。 吉野先生がノーベル賞をとられたときに、我が国は、日本の国は、上流は強いが下流は弱いとおっしゃった、この言葉は非常に私も心に響いております。できるだけ研究者が研究に打ち込める環境、これをつくるために、関係省庁ともちろん協議をしてやっていきますが、そういった方向でいろいろ検討を重ねたいと思います。
○畑野委員 ありがとうございました。終わります。