内部告発した人を企業の報復などから守るための「公益通報者保護法改正案」が5月21日の衆院消費者特別委員会で全会一致で修正可決されました。同法の2006年施行後も企業から通報者への報復が後を絶たず、改正は喫緊の課題でした。

  共産党を含む5党派が提出した修正案について賛成討論しました。修正案は通報者が不利益な扱いを受けて提訴した場合の立証責任を事業者に転換するという、改正原案に盛り込まれていなかった規定の創設を検討するよう政府に義務づけていますが、立証責任の転換は04年の現行法審議のさいに共産党が修正を提案していたものです。一方、改正案について、不利益な取り扱いをした企業への行政措置が抜け落ちた点も不十分だと指摘しました。

  5月19日の同委員会で、「不利益取り扱いへの抑止力であれば、行政措置を設けることが一番効果的」(全国消費者団体連絡会)、「行政措置及び刑事罰を導入すべき」(日本弁護士連合会消費者問題対策委員会)などの意見を紹介し、速やかな検討と体制づくりを迫ると、衛藤晟一消費者担当大臣は「背水の陣で臨まなければいけない」と答えました。

  不利益な取り扱いが通報への報復かどうかを立証する責任を事業者側に転換すべきだと述べると、衛藤大臣は行政措置や立証責任の転換などを「付則5条で総体として検討事項としている」と答弁しました。「法律にしっかり明記すべきだ」と重ねて求めました。

【議事録】

5月19日

○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。  公益通報者保護法の一部を改正する法律案について、衛藤晟一担当大臣にきょうはお伺いいたします。  新型コロナウイルス感染症により、東京都など八都道府県は緊急事態宣言が継続しております。参考人質疑が開かれるべきところ、きょうはそれがかなわないということでございますけれども、各関係者、各界の皆さんから、委員長の御配慮にもより、本委員会に文書による御意見が寄せられているということで、本当にありがたく存じます。  全国消費者団体連絡会の浦郷由季事務局長からの御意見を御紹介させていただきたいと思います。   昨年だけでもIHIの無資格検査、かんぽ生命の保険不適切販売、関西電力幹部の金品受領などいくつもの不祥事が起きています。不正が長期間潜在していたにも拘らず通報がされなかったり、内部通報があってもそれが機能していない事例もあります。   公益通報者保護法の施行後、状況の調査や制度の実効性向上のための検討を進め、ガイドラインの策定など必要な対応をしてきたとのことですが、いまだに社会に大きな影響を与えるような大企業の不祥事が発覚したり、通報したことを理由に不利益な取り扱いを受けた人がいることから、消費者団体として抜本的な法改正を求めてきました。   本来であれば、もっと早く法改正されるべきではありましたが、今回やっと改正案が審議されるということで、まずは第一歩として公益通報者保護法が確実に改正されることを望みます。   また、提出された改正案の内容は内閣府消費者委員会公益通報者保護専門調査会の報告書にほぼ沿って整理されたと考えますが、以下の論点については、国会での十分な審議を求めます。 というふうに述べられておられます。  そこで、まず最初に伺いたいのは、不利益取扱いに対する行政措置についてです。  浦郷事務局長は、  一、不利益取扱いに対する行政措置について    制度の実効性確保のため、事後的な行政措置ではなく事前抑止を考え、本改正案では不利益取扱いに対する行政措置は設けず、刑事罰つきの守秘義務導入や通報体制整備義務を事業者に課したとのことですが、不利益取扱いへの抑止力ということであれば、行政措置を設けることが一番効果的と考えます。 と述べられております。  私もそういうふうに思います。  衛藤大臣に伺いますが、不利益取扱いを行った事業者への行政措置や刑事罰について、大臣は、五月十五日の本会議で、制度の実効性確保のため、事後的な行政措置ではなく、不利益取扱いを事前に抑止することが重要と答弁されましたが、抑止力ということであれば行政措置を導入するのが一番効果的だと思いますが、いかがでしょうか。

○衛藤国務大臣 公益通報者に対する不利益取扱いは、公益通報者が誰であるかわからなければ、なされることはありません。したがって、不利益取扱いを抑止するためには、誰が通報したのかという情報が漏えいされないようにすることが最も効果的と考えられます。  他方で、行政措置は、既に不利益取扱いが生じた後に個別に行政権限を発動するものであるため、不利益取扱いを一般的に防止するというものではありません。  これらの観点から、今回は、不利益取扱いを事前に抑止することを重視いたしまして、刑事罰つきの守秘義務を導入するほか、不利益取扱いの禁止を定めるなどの通報体制整備義務を事業者に課することとしたものでございます。

○畑野委員 どういうふうにやはり不利益な取扱いをやめさせていくのか、このことは本当に喫緊の課題です。  きょう文書で御意見をいただいている方の中で、日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長の志水芙美代弁護士の御意見も付されております。  少し御紹介しますけれども、   公益通報者の保護は、企業の違法な活動を明らかにして公正な競争を確保し、遵法企業こそが活躍できるようにする役割がある。このことは、消費者保護に資することはもちろん、日本経済の競争力の向上ひいては社会全体の利益にも直結する。世界的にも、二〇一九年十月にEUで公益通報者保護指令が承認されるなど、企業の違法行為への監視の仕組みが厳格化している流れである。 こう述べられて、「一 不利益取扱いに対する行政措置」、今回、「条文なし」と書かれた後に、   通報者に不利益取扱いをした事業者に対する行政措置及び刑事罰を導入すべきである。現行法下での問題点は、通報者に対し不利益取扱いを行った事業者に対し、行政・刑事上何らのペナルティも課されず抑止力がない点にある。不利益取扱いの未然防止・早期是正のためには、行政措置及び刑事罰を導入すべきである。前記EU指令においても、不利益取扱いに対して「効果的、比例的で抑止効果のある罰則を課さなければならない」としている。 このように述べられているのは本当に大事だというふうに思います。  そこで、更に大臣に伺います。  先ほど御紹介した浦郷事務局長は、さらに、不利益取扱いに対する行政措置について、このように述べられておられます。   不利益取扱いに対する行政措置に関しては、事実認定が困難、また執行体制の確保が不十分などの課題があるということで、附則五条で今後検討をするという内容にとどめられています。施行後三年を目途とした検討において、不利益取扱いに対する行政措置が導入され、さらには刑事罰の導入も検討されるべく、今回導入を見送った理由となるこれらの課題にどう対応するのか、課題解決に向けた道筋をつけていただくよう求めます。 このように述べられております。  そこで伺います。  衛藤大臣は、五月十五日の本会議の御答弁で、事後的な行政措置を導入するには事実認定や執行体制について多くの課題があるとされておりますが、それでは、これらの課題にどう対応されていくのか、課題解決に向けた道筋をどのようにお考えになっているのか、伺います。

○衛藤国務大臣 不利益取扱いに対する事後的な行政措置を導入するには、私も本会議で申し上げましたように、事実認定や執行体制について多くの課題があり、また、仮に行政措置を導入するための十分な執行体制を確保できたとしても、解雇その他の不利益取扱いが公益通報を理由とすることの因果関係を行政機関が立証することはまだまだ困難であるという課題が残ります。  御指摘の行政措置は、違法な不利益取扱いを抑止する方策として検討されたものですが、今後、先ほど申し上げましたような課題がある中で、今回の改正法によって規定される刑事罰つきの守秘義務や体制整備義務の運用状況や実効性を分析、検討した上で、違法な不利益取扱いを抑止するためにどのような方策が効果的で実行可能かを踏まえ検討してまいりたいということで、附則五条の中にこれを書き込んだところでございます。

○畑野委員 前回からの今回の改正に物すごい時間がかかっているわけですね。ですから、大臣、そうおっしゃっていただいているのであれば、これは速やかに進めていただきたいと思いますが、検討、いかがですか。

○衛藤国務大臣 そのような議論も、相当、与党内においても、また消費者庁の中においても議論をいたしました。そういう中で、まずは大きな一歩を歩み出そう、そして、附則の中で、今度は三年ないし五年の中で検討をしなければいけないということで、これを書き込ませていただいたところでございます。  今はまだ、そこまでの体制が消費者庁にあるかということを問われれば、消費者庁としてもなかなか即答ができなかったというのが実情でございます。

○畑野委員 大臣でおられるのですから、衛藤大臣のときに消費者庁の体制をしっかりつくる、そういう構えをお示しいただきたいと思うんですが、いかがですか。

○衛藤国務大臣 一昨年の暮れに委員会から報告があり、指摘がなされ、それで、私どもも、消費者庁としても、そしてまた与党内においても、これは本当に真剣に議論をさせていただいて、ここまで来たところでございます。  ですから、これは真剣に検討するということが前提で、附則の中に盛り込ませていただいた。我々も、そういう意味では、このことの検討は背水の陣で臨まなければいけない、そういう覚悟で取り組んでいるところでございます。

○畑野委員 背水の陣でというお答えでございましたので、これは消費者庁だけではもちろんできないわけですね。ですから、政府全体で、大臣としてぜひ力を発揮して進めていただきたいと思います。  きょうの文書の御意見の中で、全国消費者行政ウォッチねっと事務局長の拝師徳彦弁護士もいろいろと御提案されております。  不利益措置への対応   保護法に解雇無効等の民事ルールしか規定がない状態では、通報者は、不利益措置を受けたら自分で裁判を起こして、敗訴リスクや訴訟コストを一人で背負って、職場で孤立しながら戦わなくてはなりません。これでは、情報の透明化役たる「通報者」が萎縮してワークせず、情報が不透明なままになります。不祥事の是正・予防に繋がりません。通報者への不利益措置は、消費者・投資家を含む社会全体の利益に反する悪質な行為として刑事罰、少なくとも行政措置の対象とすべきです。 ということで、いろいろな体制のことについても御意見を述べられている。  大変大事だと思いますので、ぜひ進めていただきたいと思います。  次に、立証責任の転換について伺います。少し順序を変えまして、大臣に引き続き伺いたいと思います。  消団連の浦郷事務局長の御意見では、  四、立証責任の緩和について    通報者が通報を理由として不利益取扱いを受けたことの立証責任の緩和については、調査会報告書において今後必要に応じて検討とされましたが、通報者が不利益取り扱いの無効を求め裁判を起こした場合でも、不利益取扱いを受けたことを立証する資料は通報者の手元にはほとんどなく、立証に苦労するなどの事例があります。立証責任を事業者側に転換し、事業者が通報者を通報したこと以外の理由で解雇及びその他の不利益取扱い(降格・減給・配置転換等)したことを立証しなければ無効と規定すべきです。    これについては、附則五条の公益通報者に対する不利益な取扱いの是正に関する措置のあり方についての検討規定に含めて検討を行う趣旨と説明がありましたが、附則五条の中に明記して、今後引き続き検討することを求めます。 と述べられています。  また、日弁連の志水弁護士は、御意見の中で、「二 立証責任の転換」、これも、条文がありませんと書かれた後に、   不利益取扱いが通報を理由とすることについて、事業者側に立証責任を転換する規定を設けるべきである。具体的には、通報者側が公益通報をしたことと不利益取扱いを受けたことを主張立証した場合には、不利益取扱いが通報を理由とすることの立証責任を事業者側に転換すべきである(事業者が別の理由で解雇等したことを反証しなければ通報に基因した解雇等と認定される)。   事業者側に人事裁量が与えられ、情報も証拠も圧倒的に偏在しており、訴訟追行のための資金力にも大きな格差があることに照らすと、労働者側の立証軽減の必要性は高い。この点、裁判実務における事実上の推定の活用に委ねるという考え方もあるが、事実上の推定の活用はそれが現実に適切に活用されるとは限らず、明文での転換規定がある場合とは大きく異なるのであって、通報者が安心して公益通報できるために、立証責任を転換する規定を設けるべきである。 このように述べられております。  大事な御意見だと思うんですね、それぞれ。  立証責任の転換を、私たち日本共産党は、二〇〇四年のこの法律の法案審議の際に修正案を提出して、盛り込むべきだと述べてまいりました。  衛藤大臣に伺いますけれども、これはやはり立証責任の転換を盛り込むべきだと思うんです。政府は、また大臣の御答弁も、立証責任の転換あるいは緩和について附則五条の検討規定に含むというのならば、だったら、そのことを明文化して、条文にしっかり明記するべきだったんじゃないんですか。いかがですか。

○衛藤国務大臣 今後の検討課題として、不利益取扱いに対する行政措置の導入を求める意見があるほか、今御指摘のように、立証責任の転換を求める意見や不利益取扱いに対する命令制度や刑事罰を求める意見があるということは承知をいたしております。  これらは不利益取扱いの抑止や是正といった目的で共通していることを踏まえて、改正法案の附則第五条では、それを総体としてひっくるめまして、「公益通報者に対する不利益な取扱いの是正に関する措置の在り方」と明示いたしまして、検討事項とさせていただいているところであります。

○畑野委員 立証責任の転換について、今後検討していくお気持ちは強くおありなんですか。

○衛藤国務大臣 これは課題としてなっておりますので、最初からこの附則五条の中で検討していくという意思で、それを総体として、「公益通報者に対する不利益な取扱いの是正に関する措置の在り方」というぐあいに書かせていただいたところでございます。

○畑野委員 ひっくるめてしまうと、先ほどの弁護士の方の話のように、やはり法律にきちんと明記しないと、これはなかなか現場では大変だということはあるんです。  私は、何かひっくるめてとおっしゃるのでは、個々のやはり記述、明文化が必要だというふうに思います。そういうところに、本当にこれはやる気があるんですかというのを私は思うわけなんですよ。これだけ議論されてきたわけですから、長い間、そして、関係者の皆さんも、また通報者の皆さんもこれだけ苦労してきたわけですから、こういうことをしっかりとやるべきだ。  これは、委員長、ぜひ今後の委員会の中の議論でも深めていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○土屋委員長 今後、理事会でも、皆さんと検討しながら、深めていければと思います。

○畑野委員 時間が参りました。  まだまだたくさん伺いたいことがあったんですが、大臣からも御答弁いただきましたので、また次回に深めてまいりたいと思います。  ありがとうございました。

【動画】

 

 

5月21日

○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。  引き続き、公益通報者保護法の一部を改正する法律案について伺います。  まず、内部通報体制整備義務の実効化について伺います。  現在、大企業の多くでは、内部通報を受け付ける窓口を設置するなど、取組が行われております。しかし、体制が整備されている企業でも不祥事が頻発している。これは内部通報体制が形式的なものになっているからではないかと思います。  内部通報体制の形式的な整備、導入ではなく、実際に通報者が安心して通報できる実効ある体制、運用にすべきだと思います。そのために、公益通報者に対する不利益取扱いを禁止し、予防する仕組みを明確にして、通報者保護を最優先に位置づけるべきだと思います。  法案第十一条四項では、内閣総理大臣は、第一項、第二項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めるとしています。この指針に具体的な形で盛り込んでいくべきだと思いますが、いかがですか。

○坂田政府参考人 お答え申し上げます。  指針に定める体制整備の具体的な内容としては、単なる通報の窓口整備のみならず、通報者が安心して通報することができるよう、御指摘のような通報者に対する不利益取扱いや通報者に関する情報漏えいの禁止を社内規程に定め、その規程に基づき適切に運用するよう求めることを想定しているところでございます。  もっとも、違法行為を是正し、法令遵守を促進するためには調査を適切に実施する必要があり、実際に指針を定める際には、通報者の保護の観点のみならず、法令遵守の促進の観点からも、通報制度が実効的に機能するようにする必要があると考えられます。  指針については、こうした観点から、消費者委員会を始め関係者の御意見を踏まえて検討してまいりたいと考えております。

○畑野委員 消費者委員会などで聞くということなんですけれども、その際に、この間本当に御苦労されてきた、その方たちの意見を丁寧に、具体的に組み入れるようにしていただきたいと思うんですが、衛藤晟一大臣、いかがでしょうか。

○衛藤国務大臣 そういう方向のところを検討するということをやっています。  だから、まず体制を整えるべきところを整えて、そして具体的にそういうことについても検討してまいりたいということでこの五条を入れたところでございまして、この検討については、さらに、有識者やいろいろな方々からの御意見、そして先生方の指摘を踏まえてこの検討を実行してまいりたいというふうに思っております。

○畑野委員 ぜひ、よろしくお願いをいたします。  次に、内部通報の体制や運用に関する具体的な記録の作成や保管などを事業者に求めることが重要だと思います。内部通報制度の利用状況や公益通報者保護の状況を検証する上でも、これが本当に大事だと思うんです。こういったことをきちんと指針に盛り込むべきだと思いますが、いかがですか。

○坂田政府参考人 お答えいたします。  御指摘のございました内部通報制度の利用状況等の検証につきましては、内部通報制度の実効性向上の観点からは有用であり、民間事業者向けガイドラインにおいても、窓口の整備、運用の状況、実績について評価、点検することを現在でも推奨しているところでございます。  他方、現在ガイドラインにおいて推奨されている事項につきましては、各事業者の実態等を踏まえた対応が望ましいものもあることから、法律で定める指針の内容とすべきかについては改めて検討する必要があると考えております。  今般の改正法案が成立した暁には、御指摘の記録の作成、保管などの点も含め、消費者委員会を始め関係者の御意見を踏まえて検討してまいりたいと考えております。

○畑野委員 やはり状況がこの間ずっとわからない。それは制度上そういうこともあるんですけれども、やはり、きちっとそういったものを記録をしておく、保管をしておく、そのときどうだったのかということを明らかにしておくことが私は今後の、次の改正に向けても大事だというふうに思いますので、衛藤大臣、ぜひそのことについてもきちっと検討していただきたいと思いますが、念押しで申しわけありません、よろしくお願いします。

○衛藤国務大臣 まさにこういう議論もずっと行われてきましたので、よく我々も存じ上げています。そして、先生からも御指摘いただきましたように、そういうことでございますので、今後、これは検討していくという方向で頑張ってまいりたいと思っております。

○畑野委員 ぜひ進めていただきたいと思います。  次に、公益通報対応業務従事者の守秘義務について伺います。  法案第十二条では、正当な理由がなくということが書かれて、その公益通報対応業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるものを漏らしてはならないというふうにされております。  正当な理由とは何かというのは、今ほども議論になりましたけれども、この間の答弁でも言われているように、通報者本人の同意がある場合などなど言われています。こういうことが正当な理由だというふうにされてしまうと守秘義務が解除されてしまうのではないか、こういう懸念があります。  そこで、ちょっと確認なんですが、この点については慎重、厳格な解釈指針を示すべきではありませんか。まずこのことを伺います。

○坂田政府参考人 お答え申し上げます。  秘密保持に関し通報者が与える同意は、その有無や範囲について紛争が生じるおそれがあり、そうした紛争の未然防止の観点からは、委員御指摘のような措置をとることは望ましいものと考えられます。  消費者庁が策定、公表している民間事業者向けガイドラインでは事業者が自主的に取り組むことが推奨される事項を種々挙げておりますが、その中で、秘密保持に関し同意を取得する際には、開示する目的、範囲、開示することによって生じ得る不利益について説明することや、書面等の明示の同意がない限り、情報共有が許される範囲外には開示しないことの重要性についても触れております。  ただし、御指摘の改正法案十二条に係る同意は刑事罰に関するものであり、事業者が自主的に取り組むことが推奨される事項のとおりにしなかったからといって、刑事罰に処すべきほどに行為の悪性が認められるとまでは言えないものと考えられます。  したがって、御指摘のように、同意の際に説明や書面がない限り刑事罰としての守秘義務違反に当たるとすることについては慎重な検討が必要であると考えられます。  なお、委員から御指摘いただいたこうした課題につきましては、通報対応において推奨される事項を検討する際には有益と考えられますので、制度の周知啓発に向けた取組を検討する中で生かしてまいりたいと考えております。

○畑野委員 例えば、この間委員会でも取り上げられているオリンパスの事件、浜田さんの訴えですけれども、社内のコンプライアンスヘルプライン運用規程で、通報が法律の第一条に定める目的の趣旨に沿った内容でないと判断した場合には情報が開示されるようにされてしまったということがありました。これでは、まさに守秘義務が骨抜きになりかねないわけですね。  ですから、先ほどおっしゃったような、本人の承諾を正当な理由とするというのであれば、想定される事態を説明し、理解させた上で書面による確認を行うというのは最低限の必要なことですけれども、こういったことは、今の話だと、何か玉虫色というか、それぞれの状況がありますねということなので、これは、公益通報者をしっかりと保護すると、事例もいろいろありますけれども、そういうことでしっかりと指針で明確にしないと、本当に、法の抜け穴、実施の中での守秘義務が骨抜きになりかねないと思うんですが、改めて、どうですか。     〔冨岡委員長代理退席、委員長着席〕

○坂田政府参考人 先生の御指摘の点につきましては、法律の逐条解説書などに検討した結果を載せてまいりたいというふうに考えております。

○畑野委員 わかるように、逐条解説も含めて、幅広く徹底していただきたいと思います。  次に、報道機関等への通報の保護要件について伺います。  私たちは、外部通報の要件を行政機関への通報と同等にして、外部通報をしやすくするべきだとかねてから考えてまいりました。現在の法律では保護要件が五要件だということで、狭過ぎるのではないかという声が寄せられております。  内部通報体制に、事業者が内部通報対応業務従事者を定めていない場合や、通報を理由とする不利益取扱い禁止等について定めがない場合や、通報処理に従事する者の利益相反関係排除を定めていない場合や、通報に関する情報共有範囲の限定を定めていない場合など、内部通報処理規程に重大な不備がある場合についても特定事由に加えることを検討すべきではないかという御意見も伺っております。  この点についてはどうお考えになりますか。

○坂田政府参考人 お答え申し上げます。  今般の改正法案では、公益通報対応業務従事者の守秘義務や事業者に対する内部通報体制整備義務を新たに定めているところでございますが、事業者の規模によっては公益通報への対応業務に従事する恒常的な人員が確保されているとは限らないため、一定規模以下の事業者については、公益通報対応業務従事者を定めることや内部通報体制の整備を努力義務にとどめることとしております。  そうであるにもかかわらず、御指摘のように、公益通報対応業務従事者を定めていない場合や、御指摘のような内部規程の不備がある場合にまで報道機関等への通報を保護することとしますと、中小企業においても、実質上、公益通報対応業務従事者を定めることや内部通報体制を整備することが努力義務を超えて義務化されてしまうことになるのではないかと懸念をしております。  したがって、御指摘の場合における報道機関等への通報を保護の対象とすることについては、慎重な検討が必要と考えております。

○畑野委員 通報経験者の方からは、外部通報こそ、ハードルを下げて通報しやすいように充実強化してほしいという声が相次いでいるわけです。これは、ぜひ、こうした声に応える対策を進めていただきたいということを申し上げておきます。  次に、通報対象事実の範囲についてです。  現行法では、税法、補助金適正化法、公職選挙法、政治資金規正法など、重要な法律が対象に含まれておりません。法令違反一般に拡大すべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

○衛藤国務大臣 御指摘のように、法目的の限定を解除して法令一般を保護の対象とすべきとの議論があることは承知をいたしております。  しかしながら、消費者委員会の専門調査会の調査審議の中でも、対象となる法律がどの程度広がるのか不明瞭であるという意見や、行政機関等の負担増大による体制面の懸念があるという意見があったところでございまして、法目的の限定を外した場合、公益通報と消費者の生活や利益との関連性が希薄となることの妥当性が問題となります。  政府としては、今後、改正法案成立後の施行状況等を分析しつつ、必要な対応を検討してまいります。

○畑野委員 大臣おっしゃったように、答申の中では、法目的による限定をしない場合には対象法律を列挙する方式をやめるべきだという意見もあったわけですね。  現在の法律が議論された当時、国会での参考人として来られた企業の代表者の方からは、企業の法令違反を是正する上でも全ての法令に関する通報を対象にすべきだという意見もあったということを我が党の議員も紹介しながら、政治の役割を含めてしっかりやるべきだということを申し上げたわけです。そういう点では、しっかりと今後の議論を進めていただきたいと思います。  公益通報者の範囲について、退職者の範囲、これは期間制限をつけないようにすべきではないかと思います。そのことはこの間議論されてきているんですが、この点についてはいかがでしょうか。

○衛藤国務大臣 今回の改正法案につきまして、委員の皆様方から御指摘をいただきました。しかし、法令違反行為を早期に是正することが重要との観点から、退職後一年以内の通報者を保護することとしています。  これは、違法行為の早期是正のためには早期の通報を促す必要があるため、保護される通報を退職後一定の期間内のものに限定する必要があると考えられるためであります。  加えて、退職後の通報を理由として不利益取扱いを受けた事例のほとんどが退職後一年以内に通報された事案でございました。そのため、退職後一年以内にされた通報を保護すれば実際に不利益取扱いの想定される通報のほとんどを対象とすることができるというぐあいに考えることから、一年の期間制限としているところであります。  これも、実際の運用を見ながらやはり検討しなければいけないというぐあいに考えております。

○畑野委員 実際の運用を見て検討をしなくてはいけないというふうに衛藤大臣がおっしゃいました。これは速やかな検討をしていただきたいというふうに思います。  消費者委員会の答申でも、期間制限を設けないことが望ましいとして、限定する場合には、法制的、法技術的な観点から整理を行い、実態等に照らして合理的な期間を設定するべきだとしておりまして、一年などとは限定しなかったわけですね。どこから出てきたのかというと、経団連から出てきたのではないかということですから、これはしっかりと進めていただきたいと思います。  次に、役員が外部通報を行う場合の事業者内部での是正に努めるという前置措置を外すべきではありませんか。いかがでしょうか。

○坂田政府参考人 お答え申し上げます。  不正行為は事業者みずからが自浄作用を発揮して早期に是正されるのが望ましいところでございますが、役員は、不正のおそれに気づいた場合、本来はみずからその調査、是正に当たる義務を負っております。  そのため、役員については、まずはみずから不正行為の調査、是正に当たるよう、原則として、事業者内部において調査是正措置に努めたにもかかわらず、なお不正行為のおそれがある場合には事業者外部への通報が認められることとしたところでございます。

○畑野委員 あのオリンパスの事件で言われてきたように、当時の社長が損失隠し、粉飾決算を知って、本人がやっているんじゃないんです、会長や副社長がやっていたその責任を問い、その辞任を求めたのに、訴えた社長が逆に解任されてしまった。もう一つのオリンパス事件です。  また、食品加工卸会社ミートホープの食肉偽装事件でも、告発者は同社の常務取締役でした。同社は、結局、自己破産し、従業員は全員解雇になってしまった。  前置措置があることで、これは法改正後も妨げてはならない、救済を妨げてはならないというふうに私は思います。  幾つかのこの間不祥事の中で、どんなような体制になっているのかということを聞いてまいりました。  例えば、日産のゴーン氏のあの事件では、ガバナンス改善特別委員会の報告書というのがありまして、日産には内部通報制度は存在するが、本件不正行為等の防止のために必ずしも有効に機能しなかった、これは、通報内容についてCEO傘下の組織が取り扱う体制になっており、最終的にはCEOが通報内容を知り得るかのような外観となっていたため、CEO自身による不正には効果がないと考えられているためである、このような事態を改善するため、内部通報制度の最終的な通報先を監査委員会として、執行役が通報者及び通報内容を知り得ない体制とすることを提言とするということも言われている。  それから、内部通報制度が機能しなかった例として、東京医大に設置されていた内部通報、外部の法律事務所への通報をも含む、の制度においては、通報内容が理事長に伝達される仕組みがとられていたと。  ですから、これは今回の役員の外部通報の問題だけではないんですけれども、こういう内部の体制がしっかりとできていない、言ったらそれは大問題になってしまう、こういうことをやはり阻止するためには、外部通報を行う場合のこの前置措置、これを外すべきだと私は思います。これは更に検討していただきたいと思います。  次に、取引先や下請等の事業者を加える、このことを検討すべきではないかと思いますが、いかがですか。

○坂田政府参考人 お答え申し上げます。  取引先事業者を公益通報者に含めることについては、積極的な立場と慎重な立場の意見の隔たりが大きく、消費者委員会の答申においても、今後、必要に応じて検討することとされました。  具体的には、事業者間取引には基本的に契約自由の原則が妥当する中で、契約解除等における不利益取扱いの判断や公益通報を理由とすることの判断が困難であること、二点目に、保護の対象とする取引先事業者の範囲を画する合理的な基準を策定することなどが今後の課題であると指摘されております。  政府としては、今後、改正法案の成立後の施行状況等を分析しつつ、必要な対応を検討してまいりたいと考えております。

○畑野委員 雪印食品の牛肉偽装事件については先ほどもお話がありました。不正を知り告発したのは、取引先事業者である食肉冷蔵倉庫の会社、西宮冷蔵の社長でした。本当に御苦労された。  企業、業界自身が自浄能力を発揮して、相互に社会的責任を自覚した経営を行うためには、保護対象とする通報者に取引先、下請等事業者を私は含む必要があると。これもぜひ進めていただきたいと思います。やはり、親事業者による契約の解除とかその他いろいろな不利益な取扱いというのがあるわけですから、これを禁止していくということを求めます。  第八条では、他人への正当な利益等の尊重というのが現行法で盛り込まれております。これは公益通報することを萎縮させるのではないか、削除するべきではないかとこの間考えてまいりましたが、いかがでしょうか。

○高田政府参考人 お答えいたします。  公益通報に際して、例えば取引先の営業秘密や国の安全にかかわる情報などがあわせて通報された場合は、他人の正当な利益や公共の利益が害されることもあります。また、軽率に報道機関等の事業者外部に通報した場合には、その内容や通報先の対処の仕方によっては、名指しされた事業者やその従業員に回復しがたい信用上の損害を与える可能性もあります。  このため、公益通報者といえども可能な限り他人の正当な利益や公共の利益にも配慮すべきと考えられ、現行法の第八条が規定されております。  この規定を削除するかどうかは、このような立法趣旨を踏まえた丁寧な議論を要するものと考えられます。

○畑野委員 済みません、時間が来ていたということで、時間を勘違いしておりました。  立証責任の転換を含めた修正をこの間求めてまいりました。更に今後の体制を進めていただきたいということを求めまして、質問を終わります。  ありがとうございました。

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