5月28日の衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会で、「研究力の低下」が指摘されている日本の研究環境について政府の認識をただしました。

 研究力低下の背景に、研究費を競争資金化し短期的に結果が出るような研究に配分する「選択と集中」があることを指摘し、その実例として国立天文台のVERAプロジェクトをとりあげました。

 このプロジェクトは、全国4カ所の電波望遠鏡を連動させ、銀河系の三次元立体地図を作成する計画ですが、今年度、岩手県水沢観測所の予算が大幅に削減され、計画の存続が危ぶまれています。

 予算削減の背景に国立天文台を抱える自然科学研究機構への運営費交付金が独法化以降、40億円近く削減されてきており、プロジェクト継続に向けた対応を求めました。

 

 岡村直子文科省大臣官房審議官は「プロジェクト継続に向け追加予算を検討中と聞いている。しっかりフォローしたい」と答えました。

 

【動画】

【議事録】

○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。  冒頭、新型コロナ感染症対策に関連する学生への支援について伺います。  この間、休業要請で、アルバイト先が休みになったり、シフトが減るなどして収入が激減した学生等に、第一次補正予算の予備費を使って、最大二十万円給付する学生支援緊急給付金が創設されました。また、昨日閣議決定された第二次補正予算案には、独自に授業料減免を実施する大学などに国が助成する措置が盛り込まれました。  通告していないんですけれども、これ、額がわかったら教えていただけますか。なければ、後で資料を下さい。  これらは、この間、多くの学生や大学院生自身が声を上げて政府に求めてきたことでありまして、一歩前進だというふうに思います。  一方で、こうした施策でも、支給対象が限られていることなどから、そもそも学費を一律半額にしてほしいという声が広がっています。今国がしなければならないことは、そもそも高過ぎる学費負担をいかに軽減していくのか、国際人権規約に基づき、高等教育の漸進的無償にどう進んでいくのかということだと思います。  もし金額がわかりましたら、教えていただけますか。なかったら、委員長、後で出していただくようにお願いします。

○松尾(泰)政府参考人 今具体の数字を持っておりませんので、後ほど調べてお届けします。

○畑野委員 全体で百五十三億というのを聞いているんですが、そこに私立の小学、中学、高校が入っているものですから、引いた額をちょっと聞きたかったということで、よろしくお願いをいたします。  こういう取組が進められているんです。ところが、今、こうした学生や大学院生の願いとは全く逆の議論が行われています。  ことし二月から、国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議です、この会議の検討事項に、授業料の自由化の是非が掲げられています。  国立大学の授業料は、国立大学等の授業料その他の費用に関する省令第十条、授業料等の上限額等で、標準額の一二〇%の範囲内で定めることができるとされています。値上げには上限がありますが、値下げには下限がないということです。  ここで伺いたいのですが、この検討会で議論される自由化というのは、学費値上げの自由化ということですか。

○川中政府参考人 お答えいたします。  議員御指摘の検討会議は、成長戦略フォローアップ、骨太方針二〇一九の閣議決定を受けまして、国立大学法人がより個性的かつ戦略的な経営を行うことを可能とするため、多岐にわたる検討が行われることとなっておりまして、御指摘の授業料の自由化の是非も検討事項の一つとして挙げられているところでございます。  この会議におきましては、国立大学の役割や地域の特性等も踏まえまして、各大学の判断により、授業料の上げ下げも含め、一層柔軟に取り扱うことを可能とするかどうか議論していたものと考えてございます。  したがいまして、文部科学省といたしましては、現時点では、国立大学の授業料を自由化すべきか否か、予断を持って考えているわけでもございませんで、まずはこの会議においてその是非について御検討いただくものであり、今後、この会議での結論を踏まえて対応していきたいと考えてございます。

○畑野委員 申し上げましたように、値下げについては下限がないんです。問題は値上げですよ。今一二〇%と歯どめをかけている、それを取っ払おうとしていることじゃないですかというふうにしか見えない検討課題じゃありませんか。下げるのは、幾らでも下げようと思えばできるということになっているわけですから。  第一回の検討会議で、文科省の高等局の担当者が、検討事項が取りまとめられ次第、できるものから速やかに制度改正等を進めてまいりたいと発言をいたしました。  この検討会議で合意された内容で運用改善や政省令改正で対応可能な事項というのは、直ちに実行に移されるということですか。

○川中政府参考人 お答えいたします。  御指摘の検討会議では、国立大学法人がより個性的かつ戦略的な経営を行うことを可能とするため、多岐にわたる検討が行われるということになってございまして、年内を目途に取りまとめる予定になってございます。  しかしながら、急速なグローバル化、激しい国際競争の激化の中で、イノベーションの創出の中核として、国立大学は、社会変革のエンジンとして我が国の成長に大きく貢献するために、待ったなしの改革が急務となってございます。  本検討会議は、国立大学のあり方を議論する中で、多岐にわたる事項を検討するための会議でございまして、直ちにこの検討会議の場で政策が決定するものではございません。  この会議においてある程度検討が熟した事項につきまして、会議での検討も踏まえながら、文部科学省として、責任を持って政策決定した上で、関係省庁との調整も含め、対応していきたいと考えてございます。

○畑野委員 この検討会議ですけれども、五月二十二日の第四回検討会議で、委員の上山隆大氏は、私は、徹底的な自由論者なので、レッセフェールの信奉者ですから、全てを基本的には自由にすべきだ、授業料も学生数もなどと述べられて、授業料を引き上げたイギリスで、留学生が減ると学科が潰れ、教員も首を切られるということを紹介した上で、そのことを現場は耐えないといけないなどと発言しておられます。  座長の金丸恭文氏は、まずこの会で覚悟を決めて文科省に迫り、文科省が覚悟を決めて各省とかに交渉するべきなどと述べておられます。  私は、いろいろ文科省はおっしゃいましたけれども、学費値上げありきのひどい議論だと思いますよ。こんな議論で値上げが合意されて、文科省が唯々諾々と実行に移すなどということは、これはとんでもないことだ、許されないことだと思います。  学費値上げの議論は検討事項から削除すべきだと思いますが、この授業料の自由化問題、削除すべきだと思いますが、削除してください。

○川中政府参考人 お答えいたします。  大変申しわけない、繰り返しになりますが、この会議におきましては、国立大学の役割や地域の特性も踏まえまして、各大学の判断により、授業料の上げ下げも含め、一層柔軟に取り扱うことを可能とするかどうかを議論していただくものと考えてございます。

○畑野委員 総合科学技術・イノベーション会議の議員などから、あけすけにこういう発言があるということです。大臣にも聞いていただきたいから、この質問をいたしました。  本日の委員会の質疑終了後に、二十五年ぶりとなる科学技術基本法の改正案が審議入りいたします。私は、それに先立ちまして、まず、科学技術基本法そのものについて幾つかただしておきたいと思います。  科学技術基本法第二条第二項は、「基礎研究、応用研究及び開発研究の調和のとれた発展」をうたっています。これはどのような趣旨から設けられたのですか。

○松尾(泰)政府参考人 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、現行の科学技術基本法第二条第二項におきまして調和をうたっておりますけれども、当時の提案者であります尾身幸次元議員の本によりますれば、将来の科学技術の発展のためには、基礎研究から応用研究、開発研究までバランスのとれた総合的な発展を図ることが必要である、そのために定めたというふうに書いてございまして、要約いたしますと、基礎といえども高度な技術がなければ成り立たない、また、技術の高度化に当たってもしっかりとした科学的な原理の裏づけが必要ということで、お互いに補い合い、支え合うということであろうかと思います。  なお、特に基礎研究につきましては、この法案の、第五条におきまして、基礎研究の推進において国が果たすべき役割の重要性に配慮すべき旨についてもあわせ規定しているところでございます。

○畑野委員 議員立法で提出された科学技術基本法の成立に尽力された、当時衆議院議員の尾身幸次氏の御紹介がございました。私も持っております。  尾身幸次氏が書かれた基本法の解説書である「科学技術立国論」からは、当時の日本が国際的に見て、応用研究、開発研究に比べて基礎研究分野のおくれが目立つという現状認識に立って、そのレベルを引き上げようという問題意識を私は読み取ることができました。  基本法第五条では、基礎研究が新しい現象の発見及び解明並びに独創的な新技術の創出等をもたらすことであること、その成果の見通しを最初から立てることが難しく、また、その成果が実用化に必ずしも結びつくものではないこと等の性質を有するものであることに鑑み、基礎研究の推進において国及び地方公共団体が果たす役割の重要性に配慮しなければならないというふうにしております。  このような基本法の基礎研究に対する位置づけに照らし、現在の我が国の基礎研究を取り巻く状況についてどのように認識されていますか。

○松尾(泰)政府参考人 委員御指摘のとおり、基礎研究は非常に重要だと私どもも思っているわけでございまして、そのために、この法案でもそういうふうに記載をし、進めてきたわけでございます。  一方で、昨年、吉野先生がノーベル化学賞を受賞されましたように、我が国の基礎研究の能力、潜在力、これは極めて高いものだと思ってございます。  しかし、今先生からも御指摘ございましたが、我が国の状況を見ますれば、大臣からも先ほども別の委員の方々に答弁させていただきましたが、他の先進諸国が論文数をふやす中で、論文数の総数、そしてまた、注目度の高い論文数、トップ一〇%の補正論文数でございますけれども、やはり、日本の順位が低下するなど研究力の低下、これが相当危惧されている状況でございます。  したがいまして、私どもとして基礎研究にしっかりと取り組んでまいりたい、かように考えている次第であります。

○畑野委員 今、研究力の低下という話がありました。  そこで、竹本直一大臣に伺います。  今日、我が国の研究力の低下が指摘されているその原因をどのように分析されていらっしゃいますでしょうか。

○竹本国務大臣 博士後期課程への進学率が非常に減っております。それから、研究ポストの不安定な状況があります。例えば、任期は、五年の任期だとか十年の任期だと、それを越すと先がわからないという不安があります。それから、研究時間が非常に少ない、雑務に六割ぐらいとられるという話もあります。状況はそういうふうに非常に厳しくて、そんな苦しい、魅力のないポストだったらやめようかというふうになって、なかなか研究室に進む人が少ない、これが非常に問題であります。  今お話ありましたように、ノーベル賞につながるような基礎研究が非常に必要なんですけれども、若手研究者がじっくり腰を据えて研究に打ち込むという環境が全くできていないと言っていいのではないかと私は思っております。そういう結果として、最近、論文数が激減、半分ぐらいになってしまった、しかも、いい論文が少ない、今答弁しましたように、そういう状況であります。  そこで、これではいけないというので、私は、科学技術がリスペクトされる社会をつくることが一番、国家戦略として大事だと思っておりまして、そういう意味で、若手研究者を中心に自由な発想による挑戦的研究を支援する仕組み、我々は創発的研究支援と言っておりますが、こういうものを仕組んだり、それから、優秀な研究者のポストの確保、これは、本来の給与以外に、いろいろなところから給与の足しになるような資金を集めるというようなこともやらなきゃいけないし、それから、ポスドク、博士後期課程学生の処遇の改善、これもしなきゃいけない。学生であると同時に、大学に対して役立っているというところもありますから、そういう意味で、民間からの資金の提供もつなぎ合わせるというようなこともいろいろやっておるんですけれども、しかし、いずれにいたしましても、決して研究環境は、豊かでないといいますか、快適ではないというのは事実であります。  これをしっかりと本当にやらないと、たまたまノーベル賞を連年とりましたけれども、二十年近く前のことです。これからはそんな、見通しは全然明るくないと私は思っております。ですから、本当に今こそ、このコロナのような大災害を経験しまして、基礎研究に打ち込むことに対してみんなが拍手を送るような、そういう社会にしなきゃいけないなと思っております。

○畑野委員 私も、この間、委員会などで繰り返し研究力低下の問題について取り上げてまいりました。  私は、科学技術基本法の理念どおりに基礎研究が重視されてきたならば、今のような研究力の低下など起こりようがなかったのではないかと思うんです。結局、この二十五年間行われてきたのは、研究費を競争資金化し、短期的に結果が出るような研究が評価され、資金も重点的に配分される、いわゆる選択と集中による施策が推進されてきたことにあるというふうに思うんですね。  ですから、どのような研究成果が得られるのかとか、その研究成果がどのように社会実装に結びつくのかとかわからないけれども、研究者の興味や創意に基づく自由な研究を行う環境というのがやはり後退してきたのではないかというふうに思います。  私は、イノベーションの創出というふうに政府はおっしゃいますが、実は、学術的な研究や基礎研究を充実させて、その裾野を大きく豊かにしていくことこそが必要だというふうに思います。そこで、伺います。資料の二枚目につけさせていただきましたが、基礎研究や将来の研究人材育成がどのように取り扱われているのかを示す実例として、国立天文台のVERAプロジェクトについて質問したいと思います。  資料にありますように、VERAプロジェクトは、岩手県の水沢、鹿児島県の入来、小笠原の父島、沖縄県の石垣島の四カ所にある同一仕様の電波望遠鏡を連動させることで直径二千三百キロメートルの電波望遠鏡と同じ能力を発揮させ、二〇二二年三月までに銀河系の天体を観測して銀河系の三次元立体地図を作成しようとするものだということで、非常に壮大で夢のある基礎研究です。  実は、二〇一九年、去年の四月に、日米欧等の研究者から構成される国際共同研究プロジェクトのグループが、史上初めてブラックホールの撮影に成功したということで、この資料にも載っております。  日本からも二十二名の研究者等が参加をして貢献をした。日本側代表者は、国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長。所長を含め水沢VLBI観測所から四名の研究者等が参加をしたということで、たしか去年の四月、それが映像で流れて、おおっと、本当に国民は感動しまして、その一人が私ですけれども、すごいことだと。先ほどアインシュタインの話がありましたけれども、百年前にアインシュタインの一般相対性理論、ブラックホールを予測し、それが百年たって証明された、銀河の起源や進化の解明の手がかりにもなる、こういうことだったと思います。今でも、そのときのわくわくどきどきした思いを思い起こすわけなんです。  ところが、伺いますと、本年度、この水沢VLBI観測所の予算が削減をされて、プロジェクトがことし六月までに前倒しして終了されるというふうに言われております。予算削減の理由は何でしょうか。これは、しっかりと対応していく必要があると思いますが。

○岡村政府参考人 お答えいたします。  先生、今、国立天文台のVERAのプロジェクトを子細に御説明いただきました。まさしく、遠隔地をつなぎまして、二千三百キロメートルの機能を持つという、非常に画期的なプロジェクトでございまして、二〇〇四年にスタートをしまして、二〇二二年の三月に終了する予定のプロジェクトでございます。  このVERAのプロジェクトの予算といいますのは、国立天文台の内部予算、基盤経費の配分によって決まるものでございますが、こういう基盤経費の配分につきましては、研究者のコミュニティーの意見も踏まえまして、国立天文台の自主的、自律的な運営の中で検討されるべきものと思っております。  お尋ねの予算削減の件なんでございますが、当初は、このプロジェクトの進捗状況や成果等を踏まえて国立天文台本部として決定をいたしましたが、その後、改めて本部と水沢の観測所との間で話合いの場が設けられまして、現在、プロジェクトの継続に向けて追加の予算の配分等が検討されていると聞いております。当省としましても、この状況をしっかりとフォローしてまいりたいと思います。  なお、先端の技術や研究者の知識を結集しまして人類未踏の研究課題に挑むような、こういうような研究開発、私どもも、先生の御指摘のように、非常に意味のあるものでありまして、我が国の研究力向上や国際社会におけるプレゼンス向上に意義のあるものであると考えております。国立天文台におきましては、そのような観点も含めて、水沢の観測所と調整を進めていただきたいと考えております。  いずれにいたしましても、当省としましても、きちんとフォローしてまいります。

○畑野委員 国立天文台を抱える大学共同利用機関法人自然科学研究機構への運営費交付金なんですが、二〇〇四年の三百億円から今年度二百六十三億円へと、四十億円近くも削減されているわけです。研究や運営、人件費等に充てられる基幹運営費交付金は、運営費交付金が削減される中で約三億円減っております。だから、国立天文台の基盤的経費は前年比三千万円の減少ということなんですね。こうした国の予算削減が国立天文台内の予算査定にも影響を与えているということは否めないと思います。  天文台の関係者の方は、銀河系の立体地図製作が完成させられなくなるかもしれないという危惧と同時に、予算削減が続けば、営々と続けられてきた観測自身ができなくなるのではないか、最先端の観測装置を自前で持つことが困難な地方大学のいわば天文学者の卵とも言える学生や大学院生が研究できなくなるのではないかということを大変危惧されていると伺いました。  実は、テレビ信州が、昨年、二〇一九年の十一月三十日に、「カネのない宇宙人 閉鎖危機に揺れる野辺山観測所」という放映をしまして、私、二〇二〇年、ことし二月十六日に再放送されたので、それを見ました。若手の人たちも、もうあと一年だよねと言われる中で、本当に苦労しているという話です。  私は、選択と集中の話をしましたけれども、運営費交付金が競争資金化され、少ない予算で効率的に経営しろとなれば、成果の見通しが明らかでないなどといって、基礎研究がないがしろにされてしまうと思うんですね。そして、若手研究者や卵たちが育つ土壌を奪うことになりかねないと思います。  今年度予算で、新規事業として創発的研究支援事業が創設されました。趣旨は何ですか。

○増子政府参考人 お答え申し上げます。  我が国が将来にわたってノーベル賞級のインパクトをもたらす研究成果を輩出し続けるには、若い研究者がしっかりと腰を据えて、自由で挑戦的な研究に打ち込める環境が必要でございます。  このため、文部科学省では、既存の枠組みにとらわれない自由で挑戦的な研究を、研究者が研究に専念できる環境を確保しつつ、最長十年間にわたり支援する創発的研究支援事業を新設し、これに必要な経費といたしまして、令和元年度補正予算及び令和二年度予算におきまして、合計五百一億円の基金を科学技術振興機構に造成したところでございます。  本事業を起爆剤といたしまして、若手研究者を中心とする多様な研究人材の潜在能力を最大限に引き出して我が国の基礎研究力の底上げを図れるよう、引き続き全力で取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。

○畑野委員 創発的研究というふうに言われているんですが、その出どころはどこかなと思ったら、昨年四月の経団連の「Society5.0の実現に向けた「戦略」と「創発」への転換 政府研究開発投資に関する提言」なんですね。  ここでは、政府研究開発投資の配分のあり方を見直す必要があるとして、選択と集中から戦略と創発へと転換せよと提言している。破壊的イノベーションは想定外の研究から生み出されることが多く、政策的に意図した研究開発から生じる可能性が極めて低いので、選択と集中を転換せよと言っているということなんです。  きょうはそれについて言う時間はありませんので、質問を最後に二つだけ、大臣にさせていただきます。一つは、政府は、研究力低下の要因に若手研究者の研究環境が悪化していることや、改善を図る必要があるとおっしゃっているんです。問題は、その解決のために何が必要か。新型コロナ感染症禍で修士、博士課程の大学院生が経済的に困窮している原因をどのようにお考えなのかということが一つ。  それからもう一つは、十一月の当委員会で、博士課程在籍者の自立した研究者としての地位を確立できるように真剣に検討するべきだと要望し、大臣も必要だとおっしゃっていただきました。研究者として大学院生が生活していくだけの経済的支援が必要だと思うんです。特別研究員事業の支援対象人数は何人なのか。本事業の抜本的強化は必要だと思いますが、その二点、伺います。

○竹本国務大臣 博士後期課程の入学者数は、平成十五年をピークとして、非常に減少傾向にあります。その大きな原因の一つは、在学中の経済面に対する不安であります。これは先生おっしゃるとおりであります。特に、博士後期課程学生は、学生であると同時に専攻分野について主体的に研究活動を行っておりまして、将来自立した研究者としての地位を確立するという観点も重要でございます。  内閣府におきましては、ことし一月、若手研究者に対する新しい支援パッケージを策定したところでございまして、関係省庁と連携しながら、大学院生が授業科目や研究指導をできる限り充実した形で受けられるよう、処遇の向上に努めているところでございます。  それともう一つ、要するに、大学院に残って研究することが、将来を考えた場合、余りメリットがないという状況があるからなんです。というのは、裏返せば、企業がドクターをもっと採用してくれればいいんですね。マスターで来た方が使いやすいというような風潮があるわけです。だから、ここも産業界の十分な理解がないと、こういう状態が続くことは決していいことではないと私は確信しております。  それからもう一つ、DC、特別研究員事業というのがございますけれども、ことし四月一日現在で三千八百六十五人と文科省から聞いておりますけれども、若手研究者の支援強化のための新しい支援パッケージ、先ほど御回答の中にもありましたけれども、多様な財源による優秀な博士後期課程学生のリサーチアシスタントとしての採用や、特別研究員等の充実を図ることとしたところであります。  要は、学生であると同時に、先生の手伝いをして研究のために働いている、ならば給料をとるべきではないか、こういうことであります。その分野を太くしてあげれば、ポスドクの人たちの経済環境はよくなります。そういうことをやらなきゃいけないなと思っております。

○畑野委員 時間が参りましたので、また引き続き、この次は質問をさせていただきたいと思います。  ありがとうございました。