構成要件明確化せよ

畑野氏 刑法改正認識ただす

 日本共産党の畑野君枝議員は7日の衆院法務委員会で、改正刑法(16日成立)にかかわり、親子関係だけでなく教師と生徒やスポーツコーチと選手などの立場を利用した性犯罪についても「監護者」と「被監護者」の関係が成り立つ場合があるのかと政府の認識をただしました。

 改正法では、親などの「監護者」が立場を利用して18歳未満の者に性的な行為をすれば、暴行や脅迫がなくても罰することができる「監護者わいせつ罪」と「監護者性交等罪」を新設します。

 畑野氏に盛山正仁法務副大臣は、生活全般で依存、非依存や保護、被保護の関係が認められないので、監護者に当たらない場合が多いと考えられるが「具体的にはケース・バイ・ケースだ」と答弁。畑野氏は「刑罰法規である以上、構成要件は明確でなくてはならない」として法務省に明確な見解を示すよう求めました。

 畑野氏は、子どもが性犯罪の被害を受けた際、心理的な負担に十分配慮して面接を行い、事実の確認とケアをすべきだと指摘。厚労省は、民間団体とも連携した子どもケアを図っていきたいと述べました。

(2017年6月21日付 しんぶん赤旗より転載)

 

【会議録】

〇畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。刑法の一部改正案について質問いたします。先ほどからお話がありますように、百十年前の制定から初めての性犯罪に係る刑法改正です。きょう一日の委員会審議でなく、参考人の皆さんの御意見など、しっかりした論議を尽くすべきであったということを最初に強く申し上げたいと思います。  

 私はきょうは、この間お話を伺ってまいりました山本潤さんの著書、「十三歳、「私」をなくした私」を少し御紹介させていただきたいと思います。冒頭にこのように述べられています。私は父親からの性的虐待のサバイバーだ、私が十三歳のとき、父は私に性加害をするようになり、それは父と母が別れるまで七年間続いた、私の心は人生の早い時期に殺されてしまったのだと述べられております。そこから立ち直って、このような本を書かれるまで、どれだけの年月が、そしてどれだけの苦しみ、悲しみがあったか。まさに魂の殺人と言われる問題です。  そこで、私は、短い時間ですが、今回の法案で、百七十九条、監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪の新設がされたことについて伺いたいと思います。監護者が性的虐待を行うということは、本来助けを求めたい人に虐待を受けることですから、被害者の心理的ダメージは本当に強いものがあります。そこで、伺いますが、法案の現に監護する者とは何か。そして、地位、関係性を利用した性的行為に関して、例えば教師と生徒、雇用関係、障害者施設や福祉施設の職員と入所者、医師と患者、スポーツコーチや協会役員と選手など、現に監督する者に含まれる場合があるのではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

〇盛山副大臣 先ほども御答弁申し上げたところでございますが、監護者性交等罪の現に監護する者とは、十八歳未満の者を現に監督し、保護している者をいいます。これに当たるか否かは個別の事案における具体的な事実関係によって判断されるものですが、一般的には、現に生活全般にわたって依存、被依存ないし保護、被保護の関係が認められ、かつ、その関係に継続性が認められることが必要であると考えております。教師、スポーツの指導者という御指摘がございました。一般論として申し上げれば、御指摘の教師やスポーツ等の指導者については通常は、児童生徒との間に生活全般にわたる依存、被依存ないし保護、被保護の関係が認められないことから現に監督する者に当たらない場合が多いと考えられますが、繰り返し申しますが、これも具体的なケース・バイ・ケースということになります。福祉施設の職員等につきましてもさまざまな場合が考えられ、一概に申し上げることは困難ではありますが、同居の有無、居住場所に関する指定等の状況、指導状況、身の回りの世話などの生活状況、生活費の支出などの経済的状況、未成年者に関する諸手続等を行う状況などの要素を考慮して、実態として生活全般にわたって依存、被依存ないしは保護、被保護の関係が認められ、かつ、その関係に継続性が認められる場合には、現に監護する者に該当する場合もあると考えております。

〇畑野委員 刑罰法規である以上、構成要件は明確でなくてはならないと思います。法務省として明確な見解を示すべきだということを申し上げておきたいと思います。二〇一五年二月十八日付神奈川新聞に次のような記事が載りました。特別支援学校の小学部に通う長女には知的障害がある。放課後に通う放課後等デイサービスで、昨年一月、二〇一四年ですが、職員の男が利用者の女児にわいせつな行為に及んでいたことが発覚。警察からの電話は発覚から四カ月後だった。警察署で、男性が撮影したという動画を見せられた。長女だとわかり、女性は泣き崩れるしかなかった。私は、この横浜市の女性から直接お話を伺いました。そのお母さんは、何回も動画を見せられ、警察、裁判所などで同じ話をさせられた、一年以上心療内科から処方された薬を服用しても夜眠れなかった、家族全員が苦しんだとおっしゃっております。子供が性犯罪の被害に遭ったときに、心理的負担に十分に配慮して面接を行い、事実の確認とケアをすべきだというふうに思います。そこで、厚生労働省として、二〇一五年十月二十八日に、子供の心理的負担に配慮した面接の取り組みに向けた警察、検察との連携強化についてという通知を出しております。私、先日、神奈川県伊勢原市にあります子どもの権利擁護センターかながわに伺いまして、先ほどあった司法面接、診察室があって、虐待を受けたことが疑われる子供のためのワンストップセンターとなっている、連携もしているということも伺いました。厚生労働省に三つ質問をお願いしているんですが、まとめてお答えいただけますか。この通知によって、子供の心理的負担の軽減がどのように制度として図られているのか。そして、年齢別の性的虐待の件数、協同面接の実施件数、具体的な対策についてどうか。最後に、法改正に伴って児童相談所について対応が充実されることが必要だと思いますけれども、また、先ほど紹介したような医療機関との連携も進める必要があると思いますが、その点はいかがでしょうか。

〇山本政府参考人 お答え申し上げます。心に深い傷を負った子供から被害状況等の聞き取りを行う際は、被害児童にとって二次被害にならないように十分配慮する必要があると考えております。先生御紹介になりましたとおり、平成二十七年十月に通達を出しておりまして、児童相談所、警察、検察の三機関で面接、聴取方法等について協議するように通知をしているところでございます。この協同面接等により、必要な情報を一人の面接者が集中して話を聞くことで、被害の詳細を語ることが子供にとって出来事の再体験となる二次被害を回避または緩和することができるなど、子供に与える負担をできるだけ少なくしているものと考えております。それで、実績でございますが、私どもとしては四半期ごとに都道府県等から報告を求めておりまして、平成二十七年十月から二十八年九月までに合計二百十四件の三機関による協同面接または二機関による面接が実施されているところでございます。  面接、聴取方法を児童相談所が警察、検察に協議した事例二百四十七件のうち性的虐待の件数は百三件ということでございますが、年齢別の内訳を見ますと、学齢前児童、ゼロ歳から六歳が六件、小学生、七歳から十二歳までが三十四件、中学生、十三歳から十五歳までが四十三件、高校生その他、十六歳から十八歳が二十件というふうになってございます。こうした児童相談所における協同面接が円滑に実施されるように、厚生労働省では、児童相談所強化プランに基づく専門職の増員を図るとともに、昨年五月に成立しました改正児童福祉法において、児童福祉士等の専門職に研修の受講を義務づけております。その研修のカリキュラムにおいて警察、検察など関係機関との連携について盛り込んでおりますので、二十九年度から取り組みが進んでいくものと考えております。また、平成二十八年度から協同面接を実施するための設備等を整備するための費用への補助を実施しております。今回の刑法改正法案が成立した際には、その趣旨や内容等について、法務省とも十分に相談させていただきながら、児童相談所に対して十分に周知を図ってまいりたいと思っております。  

 また、今後の体制強化につきましては、昨年四月に策定した児童相談所強化プランに基づきまして、児童福祉士等の専門職を平成三十一年度までの四年間で千百二十人増員することを目指すなど、児童相談所の体制整備を図っていきたいと考えております。また、先生御紹介になりましたように、子どもの権利擁護センターかながわ、こちらでは子供の心理的負担に配慮した面接と診察をワンストップで実施する取り組みが行われているところでございまして、こうした民間団体とも十分に連携した子供ケアを図っていきたいというふうに思っております。

〇畑野委員 時間がもうなくなってしまいました。警察庁、検察庁、内閣府に来ていただいたんですが、積み残しでございます。最後に、金田大臣に伺いたいと思います。まだまだこれから、法改正そして運用の改善を含めていろいろな支援を進めていく必要がある、財政的にも必要になってくると思います。その御決意を伺って、私の質問を終わります。

〇金田国務大臣 畑野委員にお答えをいたします。このたびの本法案の提出に当たりましては、さまざまな観点からの御要望や御意見をいただきました。これを踏まえて、法制審議会での審議を経て十分に検討を行ったものと認識いたしております。もっとも、本法案の内容が不十分であるという御指摘もあることにつきましては真摯に受けとめた上で、今後とも適切に検討を行ってまいりたい、このように考える次第であります。また、検察当局におきましては、これまでも警察や児童相談所と連携するなどいたしまして児童の負担軽減及び供述の信用性確保に努めてきたところでございますが、今後とも、児童はもちろんのこと、性犯罪の被害に遭われた方々の心情やプライバシー等に十分配慮した捜査、公判を行っていくものと承知しておりまして、私ども法務省としましても、関係府省庁と連携いたしまして性犯罪被害者への配慮、支援の充実に積極的に取り組んでまいりたい、このように考える次第であります。

〇畑野委員 終わります。