衆院本会議
金田法相に対する不信任案
畑野議員の賛成討論
日本共産党の畑野君枝議員が18日の衆院本会議で行った、金田勝年法相に対する不信任決議案への賛成討論は次の通りです。
【会議録】
〇畑野君枝君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました金田勝年法務大臣に対する不信任決議案に賛成の討論を行います。(拍手)
第一の理由は、金田法務大臣が共謀罪法案の担当大臣でありながら、憲法六十三条に基づく国務大臣としての答弁義務を果たさず、国民に対する説明責任に背を向けてきたからです。共謀罪法案は、これまで三度廃案になった、日本国憲法と近代刑事法の大原則にかかわる重大法案です。この法案の国会提出を明らかにした安倍総理は、今国会の冒頭、テロ等準備罪であって共謀罪とは全く異なると強弁し、一般人が対象となることはあり得ないと断言しました。なぜテロ等準備罪なのか、これまでの法案とどこがどう違うのか、国民の疑問と不安に答えることは、担当大臣たる金田法務大臣の当然の責任です。
ところが、金田大臣は、再三にわたる野党の質問に対し、成案を得て国会に提出した後に法務委員会で議論すべきなどと、あれこれ理由をつけて法案準備段階での答弁を事実上拒否し、法案の閣議決定後は、なぜ一般人が対象にならないのかという基本問題についてさえまともな答弁ができず、刑事局長に答弁を丸投げしてきました。しかも、法務委員会での審議に当たって、与党は、委員長職権のもと、与党の多数による一方的な議決で、衆議院規則に反し、政府参考人である刑事局長の法案審議中の常時出席を求めるという前代未聞のことまで行いました。これは、金田大臣の答弁能力の欠如を与党みずからが認めたものにほかなりません。提出した法案を説明できないこと自体、法務大臣の任にあたわないことは明らかです。
第二の理由は、金田法務大臣のもとで提出した共謀罪法案が、まさに憲法違反だからです。 共謀罪は、計画、すなわち話し合い、相談などを処罰の対象とするものです。これは、現実に具体的な危険性のある行為があって初めて罰することができるという近代刑法の大原則を根底から覆し、日本国憲法が保障する思想、良心の自由、表現の自由、適正手続の保障などを侵害する違憲立法そのものと言わなければなりません。 しかも、法案の骨格はこの間の審議でことごとく崩れています。金田大臣と政府は、実行準備行為があって初めて処罰するものであり、内心を処罰するものではないと答弁してきました。しかし、実行準備行為は、客観的な危険性は要求されていません。したがって、日常的な普通の行為と区別できないのです。ところが、金田大臣は、花見であればビールや弁当を持っているのに対して、下見であれば地図や双眼鏡、メモ帳などといった外形的な事情というのがあり得ると答弁しました。そのときの外形的な事情だけから内心を判断できるというのでしょうか。まさに荒唐無稽な答弁と言わなければなりません。 このことを指摘されると、金田大臣は慌てて、計画に基づく行為かどうかを判断すると取り繕ったのです。この答弁は極めて重大です。捜査機関が、実行準備行為が行われるはるか以前から、計画、すなわち一般人を含む広範な国民のコミュニケーションを調査し、つかんでおくことを認めたものにほかなりません。内心を処罰しないという前提はもはや崩れています。もう一つ重大なのは、一般人は対象にならないという答弁です。金田大臣は、一般人とは組織的犯罪集団にかかわりのない人たちだと言い張りました。一方、法務省林刑事局長は、計画がなされた時点において組織的犯罪集団かどうか判断すると正直に答えています。計画をつかむためという口実で国民を広く監視し、一般人かどうかは政府が仕分けすると言っているに等しいではありませんか。一般人は対象にならないというのはとんでもないごまかしであり、国民を愚弄するものにほかなりません。
さらに、政府は、テロ等準備罪だ、テロ対策だと言いますが、高山佳奈子参考人が明確に述べたように、国際組織犯罪防止条約はマフィア等による国際的な経済犯罪を対象とするものです。この条約の目的はテロ防止ではないことは、同条約の立法ガイド作成の中心となったニコス・パッサス氏が明言しています。何より、日本政府自身が、この条約の制定に当たって、テロリズムを含めるべきではないと主張していたではありませんか。この経過を知りながら、テロ等準備罪と喧伝し、ごまかしの答弁に終始してきた金田大臣と政府の責任は極めて重大であり、断じて容認できません。
第三の理由は、国民の不安や懸念を無視し、金田法務大臣が与党と一体となって法案の強行成立を図ろうとしているからです。世論調査では、今国会で共謀罪法案の成立はやるべきではない、慎重にすべきだという声が六割を超えています。 今、共謀罪法案に反対する声は全国各地で急速に広がっています。日本弁護士連合会初め法律家七団体、百六十二人の刑事法研究者、日本ペンクラブなどが反対声明を発表し、国会請願署名は六十万人を超えています。この声にこそ耳を傾けるべきです。安倍政権は、特定秘密保護法をつくり、盗聴法を拡大し、安保法制を強行してきました。さらに、安倍総理は、九条改憲発言までも行いました。こうした動きと一体となって、物言えぬ監視社会をつくり出す共謀罪法案は、まさに現代版治安維持法というべきものであり、日本を戦争する国へ変質させるものです。憲法違反の共謀罪法案を強行採決することは絶対に許されません。廃案を強く求め、金田法務大臣不信任決議案に賛成の討論を終わります。(拍手)