裁判所の体制強化を

衆院法務委 畑野議員が要求

 衆院法務委員会は3月31日、司法修習生への基本給付金の一律支給などを盛り込んだ裁判所法改正案を全会一致で可決しました。全体の職員数を削減する裁判所職員定員法改定案は、日本共産党以外の賛成多数で可決。日本共産党の畑野君枝議員は採決に先立つ質疑で、裁判所の体制強化を求めました。

 畑野氏は、認知症の人などの権利を保護する成年後見制度の利用促進委員会が「裁判所の人的・物的体制のさらなる充実強化」を求めていると指摘。この趣旨が、閣議決定された利用促進計画でも変わらないかとただし、内閣府は同じ趣旨だと答弁しました。

 また畑野氏は、育児休業のための書記官、事務官、家庭裁判所調査官の代替要員確保に困難が生じていると指摘。中村慎最高裁総務局長は「東京地裁など大規模庁では職員1人分以上のマンパワーが欠けている。必要な部署にさらに配置していく」と答えました。

 少年事件をめぐり畑野氏は、再非行に走る例など事件処理の複雑・困難さがあると紹介。家裁調査官の役割について村田斉志最高裁家庭局長は、少年事件が複雑・困難化し、面会交流に関する事件では子どもへの丁寧な対応が必要だと答弁。畑野氏は、事務量増加を挙げ家裁調査官の増員を求めました。

 畑野氏は、速記官が供述書作成のために、自費で高額な電子タイプライターを購入しているとして、国による支給を要求。中村氏は「検討してみたい」と答弁しました。

(2017年4月2日付 しんぶん赤旗より転載)

 

【会議録】

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。  裁判所職員定員法改正案について伺います。  成年後見制度利用促進法に基づいて、二〇一七年一月十三日に成年後見制度利用促進委員会の意見書が提出され、「今後の成年後見制度の利用促進に当たっては、成年後見制度の趣旨でもある1ノーマライゼーション、2自己決定権の尊重の理念に立ち返り、改めてその運用の在り方が検討されるべきである。」という考え方に立って、「保佐・補助を含めた成年後見制度の利用の促進による事件数の増加に対応できるよう、裁判所の人的・物的体制の更なる充実強化が望まれる。」と述べられております。法律の条文よりも踏み込んで意見を言っているということだと思います。  二〇一七年一月十九日の日本弁護士連合会の意見書で、成年後見制度利用促進基本計画の案に盛り込むべき事項に対してということを御紹介したいと思います。  「成年後見制度の利用促進のためには、家庭裁判所の人的・物的体制の充実・強化を図ることも必要不可欠である」「そもそも、成年後見関係事件を適切かつ迅速に審理するためには、根本的に、家庭裁判所に配属される裁判官や調査官等の職員の人員体制を増強することが必要不可欠である。」というふうに述べられております。  そこで伺いたいのですが、日弁連は、成年後見制度利用促進委員会の意見に加えてさらに強い意見を述べられていると思いますが、その点についてどのようにお考えですか。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  委員御指摘の、日本弁護士連合会が内閣府に提出した意見書に今御指摘の内容が記載されていることにつきましては、最高裁としても承知しているところでございます。

畑野委員 そこで、二〇一七年三月二十四日に成年後見制度利用促進基本計画が閣議決定されました。これまで紹介した意見書の文言、「人的・物的体制の更なる充実強化」が、この基本計画では表現が変更されて、「保佐・補助を含めた成年後見制度の利用の促進による事件数の増加に対応できるよう、裁判所の必要な体制整備が望まれる。」と書かれているんです。  伺いますけれども、この基本計画は、成年後見制度利用促進委員会の意見と同趣旨と受けとめてよろしいのかどうか。

中島政府参考人 今委員御指摘の言いぶりの点につきましては、我々事務方としては文言の整理にとどまるものと考えてございまして、成年後見制度の利用促進委員会の御意見、さらには、今度閣議決定させていただいた基本計画の意味するところは、組織、定員面、それから予算面でしっかり手当てをしていくということを意味するものだと解しておるところでございます。

畑野委員 同じ趣旨だと確認をさせていただきました。さらに進めようということだと思います。  日弁連の意見書で、家庭裁判所支部や出張所の新設についての意見というのも出されているんです。その中では、  全国、どこに住んでいても成年後見制度を利用するためには、身近な場所で審理されなければならない。事件数の状況や地理的状況に鑑み必要性のある所には、新たに家庭裁判所支部や出張所の新設をすべきである。基本計画には、法第三条三号の基本理念に基づき、成年後見制度の利用の促進に対応するための家庭裁判所と関係行政機関の協力及び役割分担の体制の整備と、裁判所の人的・物的体制の更なる充実・強化についても、最高裁判所と関係行政機関が協議することを盛り込むべきである。 というふうに述べられております。  そこで、全国では受け付けしか行わない家庭裁判所の出張所があるというふうに伺っておりますが、具体的に御説明いただけますでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  いわゆる受け付け出張所、これは受け付けとそれから家事事件の出張審判、出張調停に限って取り扱っている出張所でございますが、これは全国の家庭裁判所の出張所七十七カ所のうち二十カ所がそういう受け付け出張所ということでございます。  これらの二十カ所の受け付け出張所は、平成二年の四月に地家裁支部の適正配置を行った際に廃止された家裁支部の一部について、さまざまな要因を考慮してその所在地に新設したものでございまして、その後、数は変わっておりません。  具体的な場所について申し上げましょうか。(畑野委員「お願いします」と呼ぶ)  具体的な二十カ所について申し上げますが、前橋家裁中之条出張所、長野家裁飯山出張所、長野家裁木曾福島出張所、長野家裁大町出張所、新潟家裁村上出張所、新潟家裁柏崎出張所、新潟家裁南魚沼出張所、新潟家裁糸魚川出張所、和歌山家裁妙寺出張所、岐阜家裁郡上出張所、福井家裁小浜出張所、富山家裁砺波出張所、山口家裁柳井出張所、岡山家裁笠岡出張所、松江家裁雲南出張所、福岡家裁甘木出張所、大分家裁豊後高田出張所、熊本家裁御船出張所、宮崎家裁高千穂出張所、そして函館家裁寿都出張所の二十カ所でございます。

畑野委員 そこで、このような受け付けしかない家裁の出張所で成年後見制度を利用することはできるんでしょうか。管内在住者は、家裁を利用する上で不都合はないのでしょうか。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  受け付けのみを取り扱う家庭裁判所出張所におきましても、成年後見関係事件の申し立てを受理することはできます。  その後の審理につきましては、個別の事案に応じて裁判官が判断することにはなりますが、一般論として申し上げますと、家庭裁判所において成年後見関係事件を処理する際には、必ず当事者の方などに裁判所にお越しいただかなければならないというわけではございませんで、現に書面のみで審理している事件も少なくないというふうに認識をしております。  なお、裁判官が、書面による審理のみでは十分ではないということで、直接当事者の方などからお話を伺う必要があると判断した事案におきましては、事件を取り扱う裁判所にお越しいただくということももちろんございますけれども、当事者の方に裁判所にお越しいただくことが困難な事情があるというような場合には、裁判官が出張してお話をお伺いするといった対応も可能でございますので、現在受け付けしか行わない家裁出張所の管内にお住まいの方の事件処理においても、不都合は生じていないというふうに認識をしております。

畑野委員 一層の充実、つまり増加していくわけですから、それは求めたいと思うんです。  さらに、家裁の出張所の新設を求めている、地方議会も出されておりまして、地元の神奈川県でも、藤沢市議会、茅ケ崎市議会、厚木市議会、伊勢原市議会などで決議が上がっております。  例えば厚木市ですけれども、「厚木市内にも厚木簡易裁判所があるが、当地の市民が家庭に関する問題を抱え、裁判所を利用しようとすると、小田原市まで出向く必要がある。しかし、厚木市の中心部から横浜家庭裁判所小田原支部までは徒歩も含めると約一時間を要し、自動車を利用しない高齢者にとっては気軽に利用できる距離ではない。」という実態が述べられておりますし、藤沢市では、「政府及び最高裁判所におかれては、身近な裁判所で家庭に関する問題を解決できるようにするため、藤沢簡易裁判所に家庭裁判所出張所を併設し、人的、物的体制の確保と予算措置を講じるよう当市議会は強く要望する。」という声も上がっております。  このような地域の声を聞くべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、藤沢市議会など、簡易裁判所に家庭裁判所出張所の設置を求める意見が出されていることは最高裁としても承知しているところでございます。  家裁の出張所というのは全国七十七カ所あるわけですけれども、一方、全国、簡易裁判所は四百三十八庁あります。この数が違うというところにつきましては、家裁の場合は、簡裁のように簡裁事件のみを行う権限を有する簡裁判事という職種がない関係で、判事、判事補が本庁または支部から出張して事件を処理するということになりますので、出張所の新設ということにつきましては、本庁または支部までのアクセスの困難性を中心に、事件数の動向等を考慮して慎重に検討していく必要があるんだろうというふうに考えております。  いずれにいたしましても、最高裁といたしましては、限られた人的、物的資源を有効に活用しつつ、利用者の利便を確保し、地方サービスを充実していくことが重要であるというふうに考えておりまして、全国各地域におきまして、人口動態、交通事情、事件数の動向等の観点を注視しつつ、必要な事件処理体制の整備に努めてまいりたいと考えているところでございます。

畑野委員 アクセスの困難を初め、本当に解決が求められていると思うんです。  成年後見利用促進法に基づいて内閣府に成年後見制度利用促進委員会というのが設置されて、最高裁家庭局長もこのメンバーになっていると伺っております。最高裁として、地域の要望、日弁連、また成年後見制度利用促進基本計画を受けとめて、人的、物的体制の充実強化に努めていく必要があると思うんですね。  それで、資料につけさせていただきましたけれども、成年後見制度利用促進基本計画に、「今回策定する基本計画は、平成二十九年度から平成三十三年度までのおおむね五年間を念頭に定めるものとする。」というふうにございます。  最高裁として、この基本計画に基づいて具体的に、行程表というんですか、ロードマップ、どのような計画を策定していくおつもりでしょうか。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  委員御指摘の成年後見制度利用促進基本計画は、成年後見制度の利用の促進に関する法律に基づきまして、行政府省における成年後見制度の利用の促進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るために策定されるものというふうに承知をしておりまして、最高裁判所は、この基本計画に基づいた取り組みにつきまして具体的な計画の作成を求められているものではないというふうには理解をしております。  もっとも、裁判所は成年後見制度の運用を担う立場にはございますので、最高裁判所といたしましては、この基本計画に沿って推進される政府の取り組み状況等を踏まえながら、今後も、この成年後見制度の趣旨に沿った制度の運用ということに向けた各家庭裁判所の取り組みを支援してまいりたいというふうに考えております。

畑野委員 家庭裁判所が発足した直後、一九五〇年、最高裁は、家庭裁判所をもっと国民の身近な存在にしてもらう必要があると考えて、三十四カ所の出張所を一気に新設したということを伺っております。今回、日本社会の高齢化に対応するために、当時に匹敵する家裁のさらなる充実強化をすべきだということで求めておきたいと思います。  次に、裁判所職員定員法改正案には、国家公務員の女性活躍推進とワークバランス推進への協力の趣旨に鑑み、同様の取り組みを行うことから、定員上の措置を講じているというふうにあります。  裁判所職員は、全体として女性の割合が高い、とりわけ三十代半ば以降の年齢層を見ると、男性よりも女性の比率の方が高くなっているということもある、男女とも、育児、介護などの家庭責任を果たしながら職務に取り組むことができる職場環境をつくっていくことが非常に大事だというふうに、この間の参考人質疑でも、全司法労働組合委員長の中矢正晴参考人からも伺ったところです。  ただ、実際に配置される数としては、事務官が、最高裁に一人、全国八つの高裁管内に各一人ということで、まだまだ不十分だと思うんですね。事務官だけでなく、書記官、家裁調査官などの職種についても同様の定員上の措置が必要じゃないかと思うんです。  それで、なかなか代替というのは、専門性のある仕事ですから、見つけるのが大変だ、退職者ぐらいしか考えられないというふうにも伺いましたし、それから、育児時間を取得するときには代替要員の制度がないということで、東京、大阪、横浜、名古屋、福岡といった大規模庁で、育児時間をとっている職員の取得時間をそれぞれ合計すると一日当たり八時間から十時間ということで、職員一人分の、それ以上のマンパワーが欠けているという指摘もありました。  このマンパワーが不足しているという点の認識はどのように持たれているかということと、今後どう対応していくのか、伺います。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  裁判所において、平成二十七年度でございますが、育児時間を取得した職員は、最高裁で十人、下級裁判所で九百八十四人でございます。特に、東京地裁などの大規模庁におきましては、複数の部署においてそういう職員が配置されているということになりますので、合計いたしますと職員一人分以上のマンパワーが欠けている状況にあるということは認識しているところでございます。  もっとも、こうした状況に対応するため、これまで、各庁の実情や必要に応じまして、担当事務の分担を工夫したり、業務の応援体制を構築するなどして、業務の円滑な運営を確保するということはもとより、育児等の事情を持つ職員が育児等のための制度を積極的に利用しながら活躍できるような取り組みを行ってきているところでございます。  先ほど御指摘ありましたけれども、昨年、一昨年とこの定員法の審議で、国家公務員の女性活用とワーク・ライフ・バランス推進のための増員ということで認めていただいたところでございます。これも、今、育児と仕事の両立が実現し、職場のワーク・ライフ・バランスが推進するように活用しているところでございます。この平成二十九年度、今御審議いただいている法律案につきましても、事務官九人の増員をお願いしているところでございます。  これまでの取り組みを踏まえまして、最高裁判所及び各高等裁判所管内でそのような取り組みを行うことが必要な部署にさらに配置していくことを考えておりまして、今後も、育児等の事情を持つ職員が育児等のための制度を積極的に活用しながら活躍できるような取り組み、これを行っていきたいというふうに考えております。

畑野委員 さらに進めていただきたいですし、大都市部の問題を言いましたけれども、全体が少ないので、地方からまた大都市部に職員をシフトして何とか賄っているという状況もこの間聞きましたから、全体をさらに増員していく必要があると思うんです。  家裁の調査官について伺いたいと思います。  まず、少年事件なんですが、未成年が引き起こした事件は、原則として全ての事件が家庭裁判所に送られて、最初に家裁調査官が少年と面接し、非行の原因や背景、少年の状況などの把握をして、調査をして、それを踏まえて処分に関する意見を述べるというふうに伺いました。調査官の取り組みというのは単なる事実の調査ではなくて、少年の立ち直りや再発防止に大きな役割を果たしていると思います。  それで、現場の声としては、少年事件処理の複雑困難さを肌で感じている、子供の貧困に代表されるような、経済格差が大きくて、地域コミュニティーが脆弱となって、非行少年を丸ごと抱えて手を差し伸べてくれる篤志家や民間組織がふえないと、少年鑑別所などで反省しても、また地域に戻れば生活を崩して再非行に走る、こういう、本当に困難があるんだ、複雑化があるんだという声を聞きましたが、この点、少年事件についての家裁調査官の職務について複雑困難さがあるということへの御認識はいかがですか。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  少子化等の影響もございまして少年事件の事件数は確かに減少傾向にございますけれども、一方で、再非行少年の割合が高い水準で推移しているという御指摘もございます。また、委員の御指摘にもございましたが、非行の内容も複雑多様化しており、中には、資質ですとか家庭等の環境に根深い問題を抱える少年も少なくないというふうに承知をしております。  家庭裁判所におきましては、送致された事件につきまして、事件の内容に加えて、少年の性格、家庭や学校等の環境のほか、被害者を含む関係者の受けとめ等につきましても、委員御指摘のとおり、専門的な知見及び技法を有する家庭裁判所調査官が十分に調査を行いまして、その結果等を踏まえて、少年の再非行を防止するためにはどうしたらよいか、こういう視点から適切な処遇選択が行われているというふうに承知をしております。

畑野委員 大事な役割だという御答弁です。  家事事件手続法によって、夫婦の問題について、子の意思の尊重が求められております。そこで、年齢などに応じて、当事者夫婦から子供の陳述書を提出してもらうこともあれば、家庭裁判所が書面照会をしたり、場合によっては、家裁調査官が子供に会って心情や気持ちなどを丁寧に酌み取る作業をする。いろいろな特性を有している子供も見られるので、必ずしも真意を最初から語るとは限らず、家裁調査官と子供との長い時間をかけての信頼関係をつくることが必要な場合もあって、これまで以上に丁寧な事務処理を行う必要があるということで、事務量がふえているというふうに伺っております。  面会交流事件について、子供の意思確認など家裁調査官の果たすべき業務の増加、困難さの認識についてはいかがでしょうか。

村田最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、面会交流事件につきましては、家庭裁判所が子の意思を適切に把握するに当たって、家庭裁判所調査官が心理学、教育学等の行動科学の専門的知見及び技法を用いて行う事実の調査が活用されているものと承知をしております。  このような事実の調査に当たって、家庭裁判所調査官は、子の意思を適切に把握するために、子供に対して面接する際には、単に子供から話を聞くというだけではなくて、子の表情やしぐさ等、言葉以外の情報も十分に観察しながら子供の意思を総合的に理解するように努めております。  また、父母の紛争の内容ですとか子供の年齢、性格、子が紛争に巻き込まれている程度、親子関係、子の現状等を踏まえますと、子が初対面の家裁調査官と率直に話すことが困難であると予想される場面も確かにございまして、このような場合には、面接に先立って、子供との面接における良好な雰囲気を醸成するために顔合わせを先行させておくというようなことも、そういう場合もあると承知をしております。  また、家庭裁判所の児童室におきまして親子が交流する機会を設けて、その場面を観察するとともに、交流後に子供の方から感想をお聞きしたり、実施後の様子を把握するために、保育所等を訪問して子の様子を見たり、その保育所等の職員から事情を聴取したりということも行っております。  加えて、事案に応じては、子供のふだんの様子を見ている保育所や学校の職員あるいは親族の方の陳述を聴取したりといったことを通じまして、子を取り巻く事情等を十分に把握し、これらを踏まえて子の意思を適切に理解するように調査を行っているところでございます。  このように、面会交流事件における家庭裁判所調査官の役割は極めて重要なものであるというふうに承知をしております。

畑野委員 資料の二枚目のところで、事件数がふえているということもいただいております。ですから、その家裁調査官がここ長きにわたってふえていないということをやはり改善していく必要があるということを私は申し上げたいと思います。  速記官について伺います。  弁護士会の声明が出されまして、二〇一六年五月二十日、埼玉弁護士会会長及び裁判所速記官制度を守り、司法の充実・強化を求める会の要請書の中で、速記官にとって、とりわけ電子速記タイプライターの官支給が喫緊の課題となっています、速記官の大多数は、高額な電子速記タイプライターを自費で購入し、裁判所の許可を得て公務である供述記録作成に使用していますが、こうした状況を放置することなく、早急に速記官に対し電子速記タイプライターを支給するなど、速記官の執務環境の整備を実現するよう強く求めますということでございます。  前回、私の質問に、「速記官の執務環境の整備等に努めてまいりたい」という御答弁がございましたが、この電子タイプライターの整備についての御検討はいかがでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  新たな速記官が採用されないという状況のもとに、速記官としてその職務を全うすることを希望する者につきましては、その能力を十分に発揮し、速記官としてやりがいを持って職務に臨んでもらうという必要がありますことから、そのために執務環境整備等に努めてまいるということを答弁させていただいたところでございます。  速記官については、長年使用し、その性能が確認された速記タイプライターを整備してきたところでございますが、さきに述べました執務環境整備の一環として、その後継機種として電子速記タイプライターを整備することが可能かどうかについて検討してみたいというふうに考えているところでございます。

畑野委員 前向きな御答弁でした。  岩手弁護士会、福島県弁護士会、群馬弁護士会の各声明は速記官の養成再開を求めているということも申し上げておきたいと思います。  ぜひ電子速記タイプライターを進めていただきたいと私から重ねて申し上げておきたいと思います。  ヘイトスピーチの根絶の問題について伺いたいと思うんです。  ヘイトスピーチ解消法が昨年成立いたしました。しかし、これに基づいて、自治体で、どうしようかと。その対応でいいますと、公の施設の使用許可等とヘイトスピーチの問題について、判断で困っているという場合もあるかと思うんです。  法務省としてどのような対応をされているのか、自治体がもし相談したいといろいろあれば、どこに問い合わせたらいいのでしょうか。

萩本政府参考人 昨年成立、施行されましたヘイトスピーチの解消に向けた法律において、国は、地方公共団体が実施する施策を推進するために必要な助言その他の措置を講ずる責務を有するとされております。  法務省では、その一環としまして、昨年、関係省庁や関係地方公共団体の課長級職員の出席を得ましてヘイトスピーチ対策専門部会という会議を開催いたしましたが、地方公共団体の出席者からは、今委員御指摘の点も含めまして、施策の実施に当たって参考となる情報を提供してほしいという要望が出されました。  こうした経緯も踏まえまして、法務省では、地方公共団体が地域の実情に応じてヘイトスピーチの解消に向けた施策を行うに当たって参考となる情報を希望する地方公共団体に対して提供しております。  この参考情報は、国会における法案審議の際の発議者の答弁の中から、法の趣旨、目的の理解、法の解釈、適用等に資すると思われるものをわかりやすく整理して紹介するなどしたものでして、例えば、法律前文の趣旨、第二条の本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解釈、あるいは御指摘のありました公の施設の使用許可申請とヘイトスピーチの問題等々に関する情報を内容としております。  この点につきまして、法務局あるいは地方法務局を通じて地方自治体に提供しておりますので、希望がありましたら、地元の法務局、地方法務局を通じて問い合わせていただきたいと思います。  法務省としましては、地方公共団体におきまして、こうした参考情報を適宜活用するなどしまして、公の施設の使用許可申請とヘイトスピーチの問題も含め、適切な判断や施策が行われるものと考えております。

畑野委員 金田法務大臣に伺いたいと思います。  ヘイトスピーチ根絶に向けて現場で頑張っている市民や自治体の皆さんへの決意を伺いたいと思います。

金田国務大臣 畑野委員の御質問にお答えします。  特定の民族や国籍の人々を排斥する不当な差別的言動はあってはならないものであります。ただいま人権擁護局長も答弁をいたしましたとおり、法務省としては、ヘイトスピーチの解消に向けた法律の趣旨を踏まえまして、これまで、地方公共団体向けの参考情報を提供するといった取り組みを進めてきたところであります。  今後も、地方公共団体等の関係機関とも連携をしながら、このような不当な差別的言動の解消に向けた取り組みを適切に推進してまいりたい、このように考えておる次第であります。

畑野委員 ぜひ進めていただきたいと思います。  時間が参りましたので、司法修習制度については伺えませんでしたけれども、前回の委員会で、角田正紀参考人、郷原信郎参考人からも御意見をいただきました。きょうは、ビギナーズ・ネットの皆さんも来られております。  大臣、ぜひこういう皆さんの声を引き続き聞いていただきたいというふうに思いますが、そのことだけ聞かせていただいて、私の質問を終わります。

金田国務大臣 ただいまの委員の御指摘、私も、もう本当に、日本の将来の法曹界を支える皆さんのためにも、私ども法務省も一緒になって努力をしていきたい、このように考えております。

畑野委員 終わります。