第192回国会 2016年12月13日法務委員会
修繕費負担区分は過大 畑野氏 URに見直し求める
日本共産党の畑野君枝議員は13日の衆院法務委員会で、都市再生機構(UR)に対し、過大な賃借人負担となっている修繕費負担区分の見直しを求めました。
民法改定案の敷金・原状回復義務の明文化について、金田勝年法相は「紛争が多数生じており、国民に分かりやすくするもの」と答弁しました。
法務省の小川秀樹民事局長は、修繕義務の借り主負担は「意図的に賃借物の一部を破損したような場合などだ」と述べました。
国土交通省の伊藤明子大臣官房審議官は、修繕の特約は「双方の合意によって定めることができる」と話し合いによる解決を認めました。
畑野氏は、URの賃貸借契約書・修理細目通知書が「畳・ふすま」などの修繕を賃借人負担とするなど、居住者に重い負担を強いていると指摘。URの伊藤治理事は、「修繕区分について、今後、民法、標準契約書(国土交通省)、取引慣行を踏まえて検討する」と見直すことを明言しました。
「換気扇とガス台が接近しており、湯沸かし器をつけるために消防署から指導された遮蔽(しゃへい)板設置を要望しても、賃借人負担だ」(横浜市公田町団地)というURの対応について、伊藤氏は「調査によって適切に対応する」と答えました。
【会議録】
○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
民法の債権にかかわる改正案の中で、敷金、原状回復、修繕義務及び定型約款について、きょうは質問をいたします。
まず、賃貸借の終了時における敷金の返還や賃借物の原状回復の範囲について規定が盛り込まれております。新たに、賃貸借における敷金、原状回復義務の規定を設けた趣旨について御説明ください。
○金田国務大臣 畑野委員の御質問にお答えします。
敷金と原状回復義務、それぞれに関します規定を設けた趣旨をお尋ねであります。
敷金の返還をめぐる紛争というものは日常的に極めて多数生じておるところでありまして、この一方で、この種の紛争に関しましては既に安定した判例が形成されている。そういう状況の中で、改正法案では、民法を国民一般にわかりやすいものとするために、敷金の定義そして基本的な規律について、その明文化を図ることとしたものであります。
そして、原状回復義務につきましても、賃貸借契約におきます原状回復義務は賃借人の負う基本的な義務である上に、原状回復義務の範囲をめぐって実務的に紛争が生ずることが多いということから、民法を国民一般にわかりやすいものにしなければいけないという観点から、改正法案では原状回復義務について明文の規定を設けることとしたものであります。
○畑野委員 金田法務大臣から、その趣旨について御説明がありました。
それでは、今回の法案によって、敷金、原状回復についての判断の枠組みは明確になるのでしょうか。
○小川政府参考人 まず、敷金の問題でございますが、敷金の返還をめぐっては、例えば、敷金をいつ返還するのか、あるいはどのような範囲で返還するのかといった紛争が日常的に極めて多数生じております。
そこで、改正法案では、まず、敷金の定義自体を明瞭なものとするほか、敷金返還債務の発生時期については、判例に従い、賃貸借が終了して目的物が返還されたときに敷金返還債務が生ずるなどとしております。さらに、返還すべき敷金の額についても、判例に従いまして、賃貸物の返還完了のときに、受け取った敷金の額からそれまでに生じた被担保債権の額を控除した残額につき発生するなどとしております。
次に、賃借人の原状回復義務に関する問題でございますが、賃貸借契約における原状回復義務をめぐりましては、例えば、どのような損傷であれば借り主が原状回復義務を負い、どのような損傷であれば貸し主が負担するのかといった紛争が生ずることも多く、特に、通常生ずべき損耗や経年変化について賃借人が負担すべきかといった紛争が生ずることも少なくありません。
そこで、改正法案では、原状回復義務について、通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗やその経年変化については賃借人が原状回復義務を負わないことなどを明記することとしております。
このように、原状回復義務あるいは敷金について明文の規定を設けることで基本的な判断の枠組みは明瞭なものとなり、実際に生ずることの多い賃貸借契約終了時の紛争につきまして、それを予防するという効果と、その適正迅速な解決に資する効果を期待することができるものと考えております。
○畑野委員 そこで、通常の使用収益によって生じた損耗や経年変化ということなんですが、具体的にどういうことなのか、もう少し詳しく御説明していただけますか。
○小川政府参考人 改正法案では、従来の確立した判例実務を踏まえまして、通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗、すなわち通常損耗ですとか賃借物の経年変化については賃借人は原状回復義務を負わないことを明文化しております。
このうち、通常損耗とは賃借人の通常の使用により生ずる賃借物の損耗などを意味し、経年変化とは年数を経ることによる賃借物の自然的な劣化または損耗等を意味するものでございますが、いずれにしても賃借人が原状回復をすべきものではないこともあり、ある特定の損傷などがこのいずれに当たるのかを厳密に区別することは実益に乏しいとも考えられます。
これらの概念については、例えば賃貸期間がどの程度であったかといった具体的な事実関係によるところもあり、必ずしも一般化できない面はございますが、あくまで例えばということですが、家具の設置によって床のカーペットが若干へこんだというようなケースが通常損耗に当たると考えられます。また、日照等による床や壁紙の変色などは経年変化に当たると考えられます。他方で、たばこのやにやペットによってつけられた傷などは、通常損耗にも経年変化にも該当しないと考えられるところでございます。
○畑野委員 通常損耗そして経年変化について御説明をいただきました。
それでは次に、修繕義務について伺います。
法案の六百六条一項にただし書きが追加されています。この改正案の趣旨は何か、今までの規定の趣旨を変更するものなのかどうか、御説明ください。
○小川政府参考人 お答えいたします。
現行法の第六百六条一項は「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。」と規定しておりますが、賃借人の責めに帰すべき事由によって目的物の修繕が必要となった場合については、賃貸人に修繕義務がないのか、あるいは、修繕義務はあるが、その費用分を賃借人が負担するということであるのかなどは直ちに明らかでなく、解釈が分かれておりました。
もっとも、賃貸借契約の当事者間の公平を図る観点からは、たとえその費用を最終的には賃借人が負担するとはいえ、この場合について、賃貸人に修繕義務を負わせるのは相当でないと考えられます。
そこで、改正法案では、賃借人の責めに帰すべき事由によって修繕が必要となった場合については、賃貸人は修繕義務を負わないこととしたものでございます。
○畑野委員 そうしますと、この規定によって、修繕義務について借り主の責任が重くなるということはないんでしょうか。
○小川政府参考人 賃借人の責めに帰すべき事由によって目的物の修繕が必要となった場合に賃貸人に修繕義務が生ずるかどうかが直ちに明らかではなく、解釈が分かれておりますが、この場合には、賃借人がその責めに帰すべき事由に基づく賃貸物の修繕費用を負担するという点では大方の見解は一致していたものでございます。
改正法案は、このような状況を踏まえ、賃借人の実質的な負担は変わらないが、賃貸人に不公平に過大な負担を負わせるべきではないという観点から、その内容を改めるというものでございます。
したがいまして、借り主、賃借人の方の負担が現行法よりも重くなるということはないものと考えております。
○畑野委員 重くないということでした。
それで、六百六条一項のただし書きに「賃借人の責めに帰すべき事由」というのがあるんですが、これはどういうことなのか。そして、どのような場合に賃借人の責めに帰すべき事由があるというふうに認定されるのか。この点について伺います。
○小川政府参考人 御指摘ありました六百六条第一項の「責めに帰すべき事由」とは、これは講学上帰責事由と呼ばれるものでございまして、民法中では多用されている概念と言えようかと思います。
六百六条第一項の「賃借人の責めに帰すべき事由」にどういう場合が該当するのか、該当し得る場合として考えられる例を挙げますと、例えば、賃借人が正当な理由なく意図的に賃借建物の一部を破損したような場合ですとか、あるいは、賃借人が適切な汚れ防止の措置を講ずることなく室内を汚すといった行為を行う場合などが考えられると思われます。
○畑野委員 この修繕義務についてですけれども、例えば、住宅の賃貸借契約において、特約を設けて賃借人の責任を重くしている例があるというふうに聞いております。
そこで伺いたいんですが、そもそも、修繕義務について、民法上、特約を設けることはできるのですか。
○小川政府参考人 御指摘の第六百六条第一項は、一般に任意規定と言われるものでございまして、そのことを前提とした最高裁判所の判例もございます。
したがいまして、この規定と異なる特約を締結することは可能であると解されるところでございます。
○畑野委員 そういう点では問題が残っておりまして、修繕義務について多くを賃借人負担としているという契約書も見られるわけです。
それで、賃貸借契約で、法案六百六条一項ただし書きと異なる特約があった場合は、民法上、いかなる場合に無効になるんでしょうか。
○小川政府参考人 先ほども申し上げましたが、民法第六百六条第一項は任意規定であると解されておりますので、特約それ自体が、六百六条の一項の規定と異なるというそのことをもって無効となるということは基本的にはないものと考えられるところでございます。
もっとも、例外的に、民法第九十条によってその特約が無効となったり、あるいは権利濫用に当たるとして、その特約の効力を主張することが認められないこととなる余地はございます。例えば、賃貸人が意図的に賃借建物を破損したような場合も含めて、全て賃貸人は修繕義務を負わないというような特約、これはもちろん個別の事実関係にもよるとは思われますが、今申し上げましたような特約は無効となることがあり得るものと考えております。
○畑野委員 具体的なお話がありました。一般条項九十条に委ねるということでなくて、やはりこの明確な基準を定めていく必要があると私は思います。
そこで、具体的に国土交通省に伺います。
きょう、資料を幾つか持ってまいりました。大きく言って三つ資料がありまして、一つは法務省のカラーの資料で、今いろいろと御説明いただいたんですが、二つ目の資料は国土交通省住宅局からいただいた資料です。この原状回復をめぐるトラブルとガイドラインを作成しております。
このガイドラインに基づいて、そこでは、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義しております。これは民法改正案の趣旨に沿ったものなのでしょうか、伺います。
○伊藤政府参考人 お答えいたします。
国土交通省においては、賃貸住宅の退去時におけるトラブルの未然防止を図るために、原状回復の費用負担の考え方等の一般的な基準として、原状回復をめぐるトラブルとガイドラインを取りまとめて公表しております。
本ガイドラインにおいては、近時の判例や取引等の実務を考慮の上、借り主が義務を負う原状回復について、借りたときの状態そのものに復旧することではなく、先ほどお読みいただいたとおり、「賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義しております。
この定義については、今般の民法改正案第六百二十一条において判例法理を明文化する賃借人の原状回復義務と、基本的には同一の意味内容のものと理解しております。
○畑野委員 このガイドラインの中、見せていただきました。それで、あわせて、資料にもつけておりますが、「特約」というのがガイドラインの六ページにございます。七ページのところに要件が三つ書かれているんですが、これについて御説明をしていただけますか。
○伊藤政府参考人 お答えいたします。
この七ページの枠の中に書かれているとおりでございまして、「賃借人に特別の負担を課す特約の要件」といたしましては、「特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的な理由が存在すること」、それから、「賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること」「賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること」、双方において合意がなされているということだというふうに理解しております。
○畑野委員 それでは、もう一つ、この国土交通省の資料のつづりの一番最後のところに、賃貸住宅契約書と、その解説コメントというのを資料としてつけさせていただきました。この点について伺います。
まず、賃貸借の原状回復について、これは実は、住宅契約書の資料ではなくて、その前のページにガイドラインから載せたものが載っておりますので、大体同じというふうに読んでいただけたらいいんですけれども、原状回復についてどのように述べられているのか、伺います。
○伊藤政府参考人 お答えいたします。
原状回復につきましては、先ほど御説明いたしましたとおり、通常の損耗等に関しましては貸し主負担を原則としているところでございます。
なお、御指摘の賃貸住宅契約書、賃貸住宅標準契約書についても御指摘いただいたかと思いますが、この「契約期間中の修繕」につきましては、原則としては貸し主が実施主体になり費用負担するというふうにしているところでありますが、一方で、例えば畳表や電球の取りかえ、ふすまの張りかえなど、費用が軽微な修繕については、借り主と貸し主の合意によって、借り主がみずからの負担で行うこともできるというふうにしているところでございます。
○畑野委員 資料が行ったり来たりしたわけですが、「原状回復の条件について」という点では、おっしゃったように、「賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用方法を超えるような使用による損耗等については、賃借人が負担すべき費用となる」ということと、「建物・設備等の自然的な劣化・損耗等(経年変化)及び賃借人の通常の使用により生ずる損耗等(通常損耗)については、賃貸人が負担すべき費用となる」ということが、ガイドラインでも、また契約書でも確認をされているということでございますね。
それで、その上で、今おっしゃっていただきましたように、戻りますが、資料の賃貸住宅契約書の修繕の問題、第九条のところでお話が進んだわけですけれども、これは、貸す側が必要な修繕を行わなければならない、借りた側の故意または過失により必要となった修繕に要する費用は借り側が負担しなければならないというふうに九条で書かれて、その三項に、借りる側は、貸す側の承諾を得ることなく、別表第四に掲げる修繕をみずからの負担において行うことができるというふうにあり、そして、その別表第四ということで、「畳表の取替え、裏返し」あるいは「ふすま紙の張替え」、こういうふうに書かれているわけなんです。
それで、解説コメントの中で、なぜそのようにしているのかということで、「契約期間中の修繕(第九条)」というのがございます。その三項のところについて伺いたいと思いますが、御説明いただけますか。
○伊藤政府参考人 お答えいたします。
ここの三項の解説にございますとおり、修繕の中には、安価な費用で実施でき、建物の損傷を招くなどの不利益を貸し主にもたらすものでもなく、また、借り主にとっても貸し主の修繕の実施を待っていてはかえって不都合が生じるようなものもあるということがございますので、軽微な修繕については借り主がみずからの負担で行うことができる、こういう考え方でございます。
○畑野委員 そうしますと、借り主みずからの負担で行うことができる、だから、しなくてもいい、貸し主にやってもらうということでいいのかというのが一点と、それから、その解説コメントの第三項のその後に、「なお、別表第四にあらかじめ記載している修繕については、当事者間での合意により、変更、追加又は削除できることとしている。」というふうに書かれておりますが、その点の確認、二つさせていただけますか。
○伊藤政府参考人 お答えいたします。
本標準契約書の性格でございますが、この標準契約書は法令に基づき使用を義務づけているという性格ではございません。したがって、個別の賃貸借契約における修繕の実施主体及び費用負担については、最終的に当事者間の合意になるということでございます。
したがって、先ほどお話しいただいた点についても「できること」としておりますが、それについて、双方の合意に基づいてどちらかが負担するということを決めることも当然可能だというふうに考えております。
○畑野委員 それでは、あわせて修繕義務についてなんですが、九条に、畳、ふすまの区分というのが別表の第四のところで書かれていたということなんですが、これについても話し合いで決めることもあるということですか。
○伊藤政府参考人 お答えいたします。
これは例示でございますので、当然にそういうお答えになると思います。双方の合意によって決めることができるということでございます。
○畑野委員 なぜこのようなことを聞かせていただいたかということです。
それでは、独立行政法人都市再生機構にきょうはお越しいただきました。ありがとうございます。
資料のもう一つの中に、都市機構賃貸住宅賃貸借契約書というのがあります。この契約書では畳、ふすまの修繕義務についてはどのように書かれているか、御説明ください。
○伊藤参考人 お答えいたします。
当機構では、お住まいいただいております期間中に必要となります修繕のうち、費用が軽微な修繕は借り主様の御負担で修繕をいただくものとして、あらかじめ修理細目通知というような書面に明示をいたしまして、賃貸借契約の一部として御理解、御了承いただいた上で契約をしております。畳、ふすまについてもその項目に該当してございます。
以上です。
○畑野委員 御理解というお話がございましたが、私はいろいろと声を聞かせていただいているんです。これが軽微なのかという問題もございます。
お手元の資料の二枚目のところに、契約書の第十二条ということで、修理または取りかえは借りる側が行うというふうに、今おっしゃったように書いてあります。一、畳、二、障子、ふすま等外回り建具以外の建具及び外回り建具のガラス、三、その他別に定める小修理に属するものと。
それで、その具体的なものが、今おっしゃったように、次のページの修理細目通知書です。
私は、ちょっとこれを読ませていただいて驚いたんです。皆さん、一枚目だけではありません、二枚目もずっとあるんです。これがURの賃貸住宅の通知書なんです。数えてみましたら、八十一項目あるんですね。畳表、畳床、それから、ずっと次のページに行くと、洗面器の陶器や便器、あるいは台所の換気扇等々、もうありとあらゆるものが書かれているんです。
それで、もう一つ、次のページをめくっていただきますと、ちょっと余りにもこれはどうかなと思って、URの住宅経営部が出された修繕の取り扱いについてというものを見ますと、「このような取扱いは、民間の賃貸住宅事業者の修繕の取扱いと同様」だ、「一般的な取引慣行に照らしても、特異なものではございません。」というふうに言っているんです。
例えば、一番左がUR、真ん中がA社と書いてあって、そのA社は、真ん中のところで、三、借り主は貸し主の「承諾を得ることなく、別表第四に掲げる修繕を自らの負担において行うことができる。」と書いてあって、例えば「畳の取替え、裏返し」という例なんですね。ところが、URの場合は、これは借り主が行うものであるというので畳とかふすまとか書かれているんです。
しかも、御丁寧に一番最後に、「また、国交省の賃貸住宅標準契約書においても、費用が軽微な修繕については、貸主の義務ではなく、借主の権利として構成し、借主が貸主の承諾なしに行えることとしています。」というので、これはちょっと違うんじゃないですかということなんです、国土交通省のは。
だから、こういうことをきちっと、今、民法の改正案の議論をしているんですけれども、ちょっと見直していただくということを含めて持ち帰っていただきたいと思うんですが、URさん、いかがですか。
○伊藤参考人 お答えいたします。
当機構としましては、これまでも、賃貸借契約の内容を必要に応じて随時見直しを行っております。御指摘の修繕区分、負担区分の件につきましても、今後、民法、それから標準契約書、あるいは社会一般の取引慣行、そういったものを踏まえまして検討はしてまいりたいと思っております。
○畑野委員 大事な御答弁であったと思います。
全国公団住宅自治会協議会の皆さんからは、UR、都市再生機構が畳やふすま等の修繕を居住者負担にしているのは、民法や国土交通省の指導に照らして不当ではないか、再検討するべきではないかという御意見がございました。ぜひ、そういう再検討をしていただきたいと思います。
そこで、私、その次の資料のページにニュースをつけさせていただきました。カラーのものです。
これは現地で確認をしていただければいいんですけれども、例えば集会場の天井が傾斜しているとか、あるいは、換気扇とガス台が接近していて、消防署から湯沸かし器は設置できないと、遮蔽板設置を都市機構に要望しても、それは居住者負担と言われているとか、換気扇のスリーブ、枠が拡張していないので市販の換気扇が設置できないとか、これは公田町団地の実態を皆さんで調べたんですが、こういうこともきちっとやっていただきたいと思うんですが、これは調べていただけますか。
○伊藤参考人 お答えいたします。
住宅内部におきます設備の設置状況あるいは設置する場合の条件等は物件によってさまざまでございますので、個別の住宅におきます設備の状況、設備の設置に係る費用等につきましては、調査の上、適切に対応いたします。
○畑野委員 神奈川自治協のニュースを御紹介させていただきましたが、これはここだけではなくて全国の問題だと思いますので、調査をしていただきたいと思います。
今ずっと議論してきたんですが、次に、定型約款の観点から少し伺いたいんです。
一体、定型約款とは何ですか。
○小川政府参考人 まず、現代社会の中では、多数の顧客との間で同種の取引を効率的に行うために、契約の当事者の一方が詳細な契約条件をあらかじめ準備することが広く行われております。このように準備された契約状態の総体については、これを作成した事業者はともかく、取引の相手方である顧客は実際上細部までその条項を読むことはございませんのが普通でございます。そのため、取引の安定を図る観点から、相手方がその内容を認識していなくてもその個別の条項について合意したものとみなす旨の規定などを設ける必要がございます。
その上で、要件としましては、画一的であることが当事者の双方に合理的なこと、それから、不特定多数の者を相手方とする取引、こういった点を要件といたしまして、改正法案の中では、具体的に、もう一度申し上げますと、「ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの」、これを定型取引と定義した上で、この定型取引において、「契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体」、これを定型約款と定義しております。
○畑野委員 最後に確認です。
一般にですが、賃貸借の契約は定型約款に当たり得るのでしょうか。
○小川政府参考人 一口に賃貸用建物の一室の賃貸借契約といいましても、さまざまな形態のものがございます。
個人が自己の所有する建物の一室を第三者に賃貸するといった場合には、仮に市販のひな形などを参照して契約書を作成したとしても、それは事務の簡易化などを意図したにすぎず、取引内容が画一である必要性が存しません。このような事情は、自己の所有する土地上に比較的小規模な賃貸用の建物を建設し、その居室ごとの賃貸借契約を同一の契約書に基づいて締結しようとする場合でも基本的に同様でございまして、取引内容を画一にする必要性は高くございません。
また、賃借人の側から見ても、契約内容が画一であることから利益を享受しているとは言えず、賃借人にとって、画一的であることに合理性があるとは言いがたいのが通常でございます。
他方で、複数の大規模な居住用建物を建設した大手の不動産会社が、同一の契約書のひな形を使って多数に上る各居室の賃貸借契約を締結しているといった事情がある場合には、契約内容を画一的なものとすることにより各種管理コストが低減し、入居者としても契約内容が画一であることから利益を享受することもあり得ます。そのような場合には、個別の事情により、例外的にひな形が定型約款に該当することがあり得ると考えられます。
したがいまして、賃貸借契約の契約条項のひな形は、同じ賃貸借契約といいましても、その取引実態は大きく異なるものであるため、定型約款に該当するか否かを一概に申し上げることはできませんが、今申し上げましたような例外的な事案におきましては該当する余地はあるものと考えております。
○畑野委員 終わります。