第190回国会 2016年5月18日法務委員会

【会議録】
 畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
 五月十四日に、神奈川県弁護士会主催の少年法に関するシンポジウムが開かれました。共催は日本弁護士連合会、関東弁護士会連合会です。私もお話を伺いました。討論に参加をしている高校生や大学生からは、少年法について、これまでよく知らなかったという発言もありました。
 そこで、伺います。
 現在、法務省の若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会について、少年法の適用対象年齢についての議論の到達点、そして今後の方向性について伺います。
林政府参考人 お尋ねの若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会でございますが、これにつきましては、先般成立しました公職選挙法等の一部を改正する法律の附則におきまして、国民投票の投票権を有する者の年齢及び選挙権を有する者の年齢が満十八歳以上とされたことを踏まえて、少年法について検討を加え、必要な法制上の措置をとる旨規定されたことや、また、民法の成年年齢を十八歳に引き下げることに向けた具体的な準備が開始されることなどを踏まえまして、若年者に対する刑事法制のあり方全般について検討するために行うこととされたものでございます。
 この勉強会におきましては、多様な分野の実務家、研究者や一般有識者からヒアリングを行いまして、少年法の適用対象年齢を含む、若年者に対する刑事法制のあり方全般に関しまして、検討を行う上での有用な基礎的知見を幅広く得るということを目的として行っているものでございます。
 これにつきましては、平成二十七年十一月二日に一回目のヒアリング及び意見交換を実施して、二十八年三月十八日までの間に八回にわたりまして、弁護士等の実務経験者のほか、関係分野の研究者、犯罪被害者、報道関係者、医師など合計三十六名の者からヒアリングを行って、意見交換を実施しております。
 現在は、これまで実施したヒアリング及び意見交換を踏まえまして、追加のヒアリングの要否等を検討している状況にございます。
 今後とも、この勉強会につきましては、若年者の刑事法制のあり方全般についての有用な基礎的知見を得るために実施しておるものでございますので、その成果につきましては、国民の皆様と共有できるような形で取りまとめを行っていきたいと考えているところでございます。
    〔委員長退席、井野委員長代理着席〕
畑野委員 全般的な議論だというお話でした。
 少年法の適用対象年齢の引き下げありきということではないということを確認したいと思います。
 このヒアリングの結果については、六回まで公開をされている、七回、八回も今後出されるということで、私も法務省にいただきまして、きのう大体読ませていただきました。本当に深い、広い議論が今されているというふうに思います。
 その第一回目のヒアリングで、日弁連子どもの権利委員会幹事の弁護士の方が次のように述べられております。
 議論の前提として、十八歳、十九歳の少年の実情を踏まえなければなりません。十八歳、十九歳の年代は、いまだ心身の発達が未成熟で、可塑性に富んでおり、教育指導と環境の調整によって、大きく変化する可能性があります。
  近時の十八歳、十九歳の状況は、少子化と高学歴化により、高卒で就職する人の占める割合は、一九六一年の六四%から、二〇一五年は一七・八%に減少し、多くの人は親に扶養されているなど、真に自立した社会人になっているのは、ごく僅かです。なかでも非行に走る少年の多くは、資質や生育環境に大きなハンデを抱えております。このことは、日弁連、法務総合研究所、家庭裁判所調査官研修所等々がいろいろな調査を行っており、その結果からも明らかです。
と述べています。
 伺いますけれども、少年法の適用対象年齢の議論をするに当たって、十八歳、十九歳は心身の発達が未成熟であるということをしっかりとつかむことから始めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
林政府参考人 少年法の適用対象年齢を引き下げるかどうかという問題を含むところの、罪を犯した若年者に対する処分でありますとか処遇のあり方を検討する上では、少年非行や若年者による犯罪の現状やその背景等のほかに、成熟度等の若年者の実情を把握するということは重要であることは、委員御指摘のとおりであろうと考えております。
 先ほどの若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会におきましても多数のヒアリングを行っているわけでございますが、これまでに実施したヒアリング及び意見交換においては、この成熟度等の若年者の実情についても複数の方から意見が述べられているところでございます。
畑野委員 そこで、さらに伺いますが、少年事件の全件について家庭裁判所がまずもって判断する、全件送致主義という現行法の少年法の趣旨はどういうところにあるのか、伺います。
林政府参考人 少年法の四十二条では、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、原則としてこれを家庭裁判所に送致しなければならないと定めているところでございます。これは全件送致主義と言われているものでございますけれども、その趣旨につきましては、科学的な調査を行った上で、少年にとって最も適切な措置を行うために、その調査を行う専門スタッフを備えた家庭裁判所に送致させることとしたというような説明がなされていると承知しております。
畑野委員 次に、最高裁判所に伺います。
 家庭裁判所に送られた事件に関する調査官の調査はどのようなものか。それは鑑別所の心身鑑別との関係でどういうものか、伺います。
村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 家庭裁判所調査官の調査についてのお尋ねでございますけれども、調査官は、裁判官の命令に基づきまして、心理学等の行動科学に関する専門的な知識と、面接あるいは心理テストなどの技法を活用いたしまして、少年の生活、生育歴、環境等について調査を行いまして、それによって得た情報をもとに、少年はなぜ非行に及んだんだろうか、あるいは、再び非行を行わせないためにはどのような手だてを講じればよいかということを検討しておりまして、このプロセスにおきましては、少年や保護者に対して、非行の要因ですとか被害の結果をもとに反省を促したり、あるいは家族関係について助言をしたりするなど、保護的措置と呼ばれる教育的な働きかけも行っているところでございまして、このような調査と働きかけを踏まえまして、裁判官に少年の処遇についての意見を提出しているというところでございます。
 もう一つお尋ねの、少年鑑別所の心身鑑別との関係でございますけれども、鑑別所の鑑別の方は、主として少年の心身、資質等の状況につきまして、少年鑑別所において、生活に密着する形で心理検査ですとか行動観察を中心に把握をしておられるというふうに承知しておりますけれども、家庭裁判所の調査官の調査では、調査の対象として、少年自身のみならず、家族あるいは学校、就職先、さらには交友関係、また被害者といったものも調査の対象とした上で、その実情といった社会的な要素も多様な方法を用いまして幅広く把握した上で再非行の可能性などを検討しているというところでございます。
 これら二つの関係でございますけれども、いずれも実施されるというような事案におきましては、少年の再非行の防止、ひいては少年の健全な育成という目的のために、お互いが相互に補い合うような関係に立っているのではないかというふうに考えているところでございます。
    〔井野委員長代理退席、委員長着席〕
畑野委員 きょうは短い時間なので、最後に少年法の成果について伺います。
 全件送致主義、調査官の調査と鑑別所の鑑別、保護的措置、少年院待遇など、現行少年法のシステムについてどのように評価をされていらっしゃるのか。有効に機能し、再犯防止効果を上げているのではないかと思いますが、岩城法務大臣の御認識をお伺いします。
岩城国務大臣 現行の制度におきましては、少年の健全な育成を期し、非行のある少年の性格の矯正及び環境の調整を行うために、少年の被疑事件は全て家庭裁判所に送致させ、家庭裁判所の調査官による科学的な調査や少年鑑別所における鑑別を踏まえて処分を決定するものとしております。
 処遇に際しましても、例えば、少年院におきましては、個々の在院者の性格、年齢、経歴、心身の状況及び発達の程度、非行の状況等を踏まえた、その特性に応じた処遇を実施するなどして取り組んでおります。このような現行制度につきましては、再非行の防止と立ち直りに一定の機能を果たしているもの、そのように認識をしております。
 もっとも、少年法の適用対象年齢を含む、若年者に対する処分や処遇のあり方につきましては、現在、公職選挙法等の一部を改正する法律附則の趣旨や民法の成年年齢についての検討状況等を踏まえ、先ほど来議論がありました、若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会において検討が行われているところでありまして、その成果や国民の御意見等を踏まえながら適切に検討してまいりたいと考えております。
畑野委員 引き続き深めてまいりたいと思います。
 以上で質問を終わります。