第190回国会 2015年4月6日法務委員会
低賃金・違法労働 拡大/外国人技能実習法案ただす
外国人技能実習法案が6日、衆院法務委員会で審議入りし、日本共産党の畑野君枝議員が質問に立ちました。
外国人技能実習制度では違法な働かせ方や人権侵害が問題になっています。法案は、実習生保護などを目的にうたう機構を創設する一方、実習可能期間の3年から5年への延長や対象職種の拡大などで、実態として低賃金・単純労働者の受け入れ手段となってきた制度の深刻な問題を拡大する内容です。
畑野氏は、あるベトナム人実習生が、実習計画の職種とは異なる仕事で酷使され、問題を訴えたら帰国させられる恐れが出てきたため失踪した事例を取り上げ、入国管理局は受け入れ機関などの不正で実習継続が困難となった場合の対応を実習生に説明しているのかとただしました。入国管理局の井上宏局長は、受け入れ機関が「計画の職種と異なる職種の技能実習を実施しているような場合は不正行為にあたる」と述べたものの、「当局からは直接、実習生に不正行為があった場合の対応は説明していない」と答弁しました。
岩城光英法相は「人権侵害を受けやむをえず失踪した場合、実習生が引き続き他の機関での実習を希望するときは個々の事案に応じて引き続き在留を認める」「法案では実習生の転籍を支援する体制を整備する」と答弁しました。
畑野氏は、相次ぐ技能実習生の死亡事故(2014年度34件)や自殺事例、高すぎる寮費問題などをとりあげ、現状の改善を求めました。
外国人技能実習制度 「国際貢献」「技能移転」などを名目にしながら、実態は低賃金・単純労働力の供給手段として利用され、中国、ベトナム、フィリピンなどから現時点で約19万人の労働者を受け入れています。
畑野氏の質問に、厚生労働省は14年、労働基準監督署などが3918の実習実施機関に監督指導した際に全体の76%で法令違反が認められたと答弁しました。
(2016年4月7日(木)赤旗)
【会議録】
○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
外国人技能実習法案について質問をいたします。
この制度は、一九五〇年代に本来の技能移転を目的とする外国人研修制度としてスタートしましたが、六〇年代には既に、研修とは名ばかりの外国人労働力の供給手段として利用され始め、改変を経つつも、基本的仕組みを維持しながら現在に至っております。中国、ベトナム、フィリピンなどから、現時点で七十四業種百三十三作業、約十九万人の外国人労働者を受け入れ、人手不足の中小零細企業では、低賃金の極めて使いやすい労働力として活用されてきました。
先日、新聞で、外国人技能実習生への労働基準法違反について報道されました。資料一をごらんください。右側の記事です。
外国人技能実習生に違法な長時間労働をさせたなどとして、岐阜労働基準監督署は三月二十二日、岐阜県の婦人子供服製造会社社長と岐阜市の技能実習生受け入れ事務コンサルタントを、最低賃金法と労働基準法(割り増し賃金不払いなど)に違反した疑いで逮捕した。技能実習生に対する労基法違反などでの逮捕は異例だ。
二〇一四年十二月から一五年八月、中国人技能実習生四人に対し、岐阜県の最低賃金(当時は時給七百三十八円)に満たない額で、一日八時間の法定労働時間を超えて働かせ、割り増し賃金も支給しなかった疑いがある。不払いの賃金は計約四百七十五万円になる。
労基署の立入調査に応じなかったり、虚偽の説明を繰り返したりしていたといい、悪質性が高いと判断、逮捕されたと見られる。技能実習生は午後十時から翌午前五時の深夜帯や休日にも働かされていたという報道でございます。
外国人技能実習制度に関して、労働関係法令違反事件はどのようになっているか、直近の年度の実態を伺いたいのと、外国人技能実習法案はこれに対してどのように対応するのか、伺います。
○宮川(晃)政府参考人 お答えいたします。
現在、労働基準監督署等におきまして、実習実施機関に対して監督指導を行っておりまして、平成二十六年に三千九百十八機関に監督指導を実施した際には、全体の七六・〇%である二千九百七十七機関に労働基準法等の法令違反が認められ、法令違反の内容としては、労働時間や安全基準、割り増し賃金に係る違反が多いという結果が得られたところでございます。
これらの法令違反が認められた場合には、労働基準監督署などにおいて厳しく指導しているところでございます。
その上で、提出させていただいている法案におきましては、新たに外国人技能実習機構を創設し、受け入れ機関への実地検査等の権限を付与することで、法令違反の是正を徹底することとしております。
引き続き、労働基準監督署などとも連携しつつ、外国人技能実習機構においてもしっかりと対応を行い、法令遵守を徹底してまいりたいと考えております。
○畑野委員 本当に違反が多いわけですよね。七六%、前の年よりもまた件数でもふえているという実態です。
一つ伺いますが、重大または悪質な違反というのは何件送検されているか、わかりますか。
○宮川(晃)政府参考人 大変恐れ入りますが、ちょっと手持ちの資料がございませんので、また後ほど御報告させていただきます。
○畑野委員 それでは具体的に伺います。
ことしの三月十六日、日本弁護士連合会に人権救済の申し立てがされた件です。二〇一五年六月に宮城県気仙沼から逃げたベトナム人実習生の話です。
愛知県の労働組合に相談に来た、母国の工場労働者で、溶接の職種だと思って二〇一四年八月に広島から入国したが、実際に派遣された先は鳥取県の建設業で、同年十一月には宮城県の工事現場の土木作業員として働かされた、各地転々としていると。実習生は、仕事の内容が母国で試験を受けた職種と違うことを受け入れ機関などに訴えたが、逆に帰国させられるおそれが出てきたため、二〇一五年一月に宿舎を逃げ出したというんです。
伺いますけれども、外国人技能実習生が契約した職種と、現実に従事する職種が異なっている場合、受け入れ機関の不正行為に当たるのですか。
○宮川(晃)政府参考人 先ほどは大変失礼いたしました。
送検の数字がわかりましたので、御報告させていただきます。平成二十六年の監督実施の結果、重大、悪質な労働基準関係法令違反が認められた事案として労働基準監督機関が送検した件数は二十六件でございました。
○井上政府参考人 委員の御質問にお答えいたします。
入国管理局におきましては、技能実習生の入国に当たっての審査におきまして、職種を含めた技能実習の内容が募集の段階で技能実習生に伝えられ、技能実習生がその内容を理解していることを文書により確認する、それと同時に、その内容を踏まえた技能実習計画が策定されることを確認してございます。そして、このようにして策定された技能実習計画に記載された職種と異なる職種の技能実習を実施しているような場合であれば、それは不正行為に当たることになります。
○畑野委員 この件では、その後の調査で受け入れ機関の書類偽造が明らかになり、また実際の監理は別のブローカー企業に行わせていたことも明らかになりました。
ここでは株式会社Kと言っておきますが、その中に送り出し機関の支部があって、そのKの社長が代表となっていた、また同社内には複数の受け入れ機関があり、そのうちO協同組合は、昨年二千万円の横領で役員が逮捕されている、こういう状況です。遅くとも昨年末までには、名目上の受け入れ機関が失踪の直接の原因である指導体制の不備で処分を受けて、企業には不正行為が通知されております。
伺いますが、私の本会議質問での答弁では悪質なブローカーの存在を認めておられますが、法案ではどのような対応がとられるのですか。
○井上政府参考人 お答えいたします。
御指摘のありました昨年九月の本会議における法務大臣答弁では、過去の入管による摘発事例では、ブローカーが失踪した技能実習生に不法就労先をあっせんした事例も少なくないというようなことをお答えしてございます。
こうした外国人に不法就労先をあっせんするようなブローカーにつきましては、これは技能実習制度に特有というよりは外国人に対するものということで、基本的には入管法によって取り締まるという性質であると理解してございます。すなわち、ブローカーや失踪した技能実習生を雇用した者に対して不法就労助長の罪を適用するなどして対処していくことになります。
○畑野委員 このブローカーというのは、許可を受けていない、そういうあってはならない監理団体が監理行為を行っているということですから、これはどういうふうになるんですか。
○井上政府参考人 個別具体的な事実関係に係りますけれども、監理団体としての許可を受けずに実習監理業務を行ったことについては、禁止されて、処罰にも値するということになります。
○畑野委員 そこで、さらに伺いますが、受け入れ機関などの不正行為により処分をされた場合にもかかわらず、ベトナム人技能実習生を支援している労働組合の担当者から伺いますと、その方が受け入れ先の確保に奔走していらっしゃる。本来、監理団体等の不正行為があることが理由で技能実習が継続できない場合は、監理団体が新しい受け入れ先企業を探すことをやるべきではないかと思うんです。
法案では、新しい受け入れ先を誰が責任を持って探すことになるんですか。
○井上政府参考人 お答えいたします。
監理団体等の不正行為を理由として技能実習が継続できない場合の継続のシステムでございます。
新しい技能実習法案におきましては、監理団体等の不正を理由に技能実習の継続が困難となった技能実習生について、監理団体等に技能実習の継続が困難となった旨の届け出義務を課すとともに、当該技能実習生の移籍が円滑に行われるよう、連絡調整その他の必要な措置を講じるべき義務を法律上明確に課してございます。かつ、こうした措置が円滑になされるよう、主務大臣が必要な指導助言を行うことも法律に明記してございます。
さらに、外国人技能実習機構につきましても法律の規定を置きまして、個々の事案や本人の希望も考慮して、許可制や届け出制等、あるいは事業報告等によって把握している全国の監理団体や実習実施者の情報も活用しながら、移籍先の調整を含めた移籍支援を技能実習機構が行う、そのようなことができるようにしてございます。
○畑野委員 受け入れ機関などの不正で技能実習が継続できない場合、技能実習生は大変な不安に陥ると思うんです。
入国管理局は、監理団体、実習実施機関の不正行為があった場合、不正行為を認定したとき、技能実習生に対してその説明をしていますか。
あわせて伺いたいのは、監理団体が新しい受け入れ先を探すべきであるということ、他の実習実施機関に受け入れられるときは引き続き技能実習生として在留が認められるということを実習生に説明しているのか、状況を伺います。
○井上政府参考人 まず、不正行為の認定がされた場合からお答えいたします。
当該受け入れ機関で不正行為が認定されますと、受け入れの継続ができなくなります。技能実習を継続することができなくなりますので、そのような場合には、従来から、監理団体等に対しまして、JITCO等の協力を受けるなどして新たな受け入れ先の確保に努めるよう指導しているところでございます。
この点、技能実習を継続できなくなった機関が受け入れていた当該技能実習生が技能実習の継続を希望している場合には、当該機関またはその監理団体は、その旨を地方入管局に申し出るとともに、新たな実習実施機関を探す必要がございまして、技能実習生に対しても当該機関から、技能実習を継続することができなくなった理由について説明がなされているものと認識してございます。
したがいまして、当局から直接技能実習生に不正行為があった場合の対応を説明することはしてございませんが、監理団体の対応を通じまして技能実習生に必要な情報が伝わり、その保護が図られるというようなことで進んでいると理解しております。
○畑野委員 そういうふうになっているところが問題なわけですよ。やはり、そこのところをきちんと説明していく必要があると思うんです。
さらに伺いますが、この件で、ベトナム人実習生の受け入れ先確保は受け入れ機関の責任であったと。ベトナム人技能実習生を支援している労働組合の担当者の方からは、受け入れ先確保に本当に走り回った、ことし二月一日、新たな受け入れ機関での在留資格の許可申請も行った、名古屋入管は、提出した書類に不備はないとした、ところが法務省は、失踪の原因となった受け入れ機関の不正処分を当該実習生に知らせることもなく、在留期間の切れる三月十六日になって、昨年九月に特定活動を許可してからの期間について調査を延長するとしてきたということなんです。
伺いますが、失踪の原因が受け入れ機関等の不正行為であることが明らかになった時点で、昨年八月にこの方が申し出た技能実習の在留資格期間延長を認めるべきではないかと思いますが、いかがですか。
○井上政府参考人 お答えいたします。
個別の案件についての答弁は差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論として申し上げますと、失踪した技能実習生から在留期間の更新の許可申請等があった場合のことになりますけれども、技能実習生が失踪した理由でございますとか在留を希望する理由、さらには当該技能実習生がどのような在留状況で経過して今日に至っているか等の諸事情を考慮いたしまして、個々の事案に応じて在留期間の更新を認めるなど、適切に対応することになります。
○畑野委員 既に出頭してから九カ月もたっている、この間、友人たちの支援や労働基準監督署の協力もあって、不払い賃金を取り戻すなどやってきたんだけれども、それも限界だと。今回の引き延ばしは強制帰国の理由をつくるためではないかというふうに労働組合の担当者から伺いました。労働組合の方は、監理団体の不正が明らかになった後もこれを実習生に伝えず、いたずらに調査期間を引き延ばしたことは人権侵害に当たるということで、日弁連に人権救済を申し立てたわけですが、三月十八日に受理されております。
技能実習制度は、米国人身売買報告書においても人権侵害の温床となっていると指摘をされておりまして、法務省の帰国ありきの対応はこれを助長することになるということで、厳しく指摘をし、改善を求めたいと思います。
次に、入国管理局の報告では、昨年は受け入れ機関の不正が五年連続で増加しているということです。このうち団体監理型の監理団体による不正は三十二件で、二〇一〇年に制度が改正されてから最も多くなっている。ここでは、実習実施機関への監査を委託先企業に行わせていた不正事例も報告されています。実習生の失踪が激増し、昨年は五千八百八人となっています。中には、監理団体による強制帰国を恐れて申告しなかったり、失踪することも少なくないと聞いております。
伺いますが、外国人技能実習生が人権侵害を受け、やむを得ずに失踪する事件について、どのように対応されるのか、岩城法務大臣に伺います。
○岩城国務大臣 技能実習生の失踪者が増加していることにつきましては、私どもも大変重く受けとめております。そして、その理由としては、近年、高い賃金を求めて失踪する事案が増加しておりますけれども、委員御指摘のような技能実習生に対する人権侵害等、受け入れ機関側の問題がある場合もあると認識をしております。
現行制度におきましては、人権侵害を受け、やむを得ずに失踪したような場合につきまして、技能実習生が引き続き他の機関で技能実習を行うことを希望するときは、失踪した理由、新たな実習実施機関の受け入れ体制、当該技能実習生の在留状況等を踏まえ、個々の事案に応じて引き続き在留を認めるなど、適切に対応することとしております。
そして、本法案による今後の対応でありますが、技能実習法案におきましては、実習生に対する人権侵害行為の禁止規定や罰則を設けるほか、技能実習生からの相談の受け付け体制や、所定の受け入れ機関での技能実習を継続することが困難となった技能実習生の転籍を支援する体制を整備することとしております。
○畑野委員 高い賃金を求めるとおっしゃられましたが、もともと低い。雇用主変更をこれまで許されずに、奴隷的とも言われるような状態になってきた。もう本当に人間としてどうしたらいいのかということまで追い込まれているわけなんです。ぜひこの解決が急がれていると思うんです。
資料の一枚目の左側に載っている記事です。ごらんいただければと思います。
見出しは、「困窮の末ヤギ盗み食べた ベトナム人実習に耐えかね逃走 毎日二十時間働く」という例です。真ん中にはヤギの写真も写っております。岐阜県で昨年八月、除草用に飼われていたヤギを盗み、食べたとして窃盗罪に問われたベトナム人の被告は、外国人技能実習生として来日していた。日本では、毎日午前六時から翌午前二時まで働きながら、家賃として二万円が天引きされ、手取りは六万円程度。来日に必要だった百五十万円が返せなくなることを恐れ、我慢していたが、ついに逃げ出し、食べるものはなく、ヤギを盗んでしまったということです。
技能実習生は、名目上の制度目的により、技能実習を実施する受け入れ機関を特定した上で在留資格が与えられ、原則として職場移転の自由がありません。技能実習計画に対して技能実習生が受け入れ機関の処遇に不満を持ったとしても、他の職場に転職することはできない。一旦技能実習に入った技能実習生は、技能実習計画に対してみずからの意見を言う制度もありません。
そこで伺いますが、法案では、技能実習生が技能実習計画に疑問を持ち実習先を変更したい場合どうするのか、岩城法務大臣に伺います。
○岩城国務大臣 まず、技能実習計画につきまして、法案では、主務省令で具体的な認定基準を設け、その基準に従って審査し、適切なもののみを認定するという仕組みを設けており、技能修得の効果や技能実習生の待遇などの面で、技能実習生に技能実習開始前から疑問を抱かせるような問題のある技能実習計画は、この段階で排除されることとなります。
また、技能実習開始後、技能実習生が技能実習計画に疑問を持って実習先の変更を希望する場合、新たに設けられる外国人技能実習機構に相談することができることとなっております。
そして、その事情いかんによって異なりますけれども、例えば、実習実施者が明らかに指導力を欠いていたり、実習実施者による人権侵害や不正行為が行われたことにより実習の継続が困難と認められるような場合には、外国人技能実習機構は、実習先の変更を認め、新たな実習実施者が作成した技能実習計画を審査の上、認定することとなっております。
○畑野委員 例えば、母国で職種を書くときに、母国語が書いてなくて、日本語しか書いてないから読めなくて、だまされて連れてこられるということもあるわけですね。ですから、そういう実態、きょうは時間が余りありませんので、引き続き、その点などを含めて、実態と今後どうするのかというのを伺っていきたいというふうに思います。
次に、死亡事故について伺います。
厚労省の資料によりますと、二〇一四年度の死亡事故が三十四件に及んでおります。死亡事故の詳細について伺いたいのですが、あわせて、次の質問も御答弁ください。
近年、死亡事故が増加傾向にある。自殺事件がそのうち六件を占めるということです。事実関係とその原因について、詳しい報告を伺いたいと思います。
皆さんのお手元の資料では、四枚目のところにございます。
○宮川(晃)政府参考人 御説明申し上げます。
三十四件の内訳でございますけれども、脳・心臓疾患が六件、自殺が六件、業務外での水難事故六件、作業中の事故五件、自転車の交通事故四件、その他の交通事故二件、悪性新生物二件、その他三件となってございます。
自殺事件がそのうち六件を占めておりますが、これらのうち三件につきましては、母国の家族または他の実習生とのトラブルなどの原因があったものと推測されるものでございますが、他の三件については、原因や背景事情の推測が困難な事案と承知しております。
○畑野委員 深刻な資料を厚生労働省が出してくださいました。四枚目、五枚目、六枚目です。一人一人の実態が本当に深刻な状況です。また引き続き、この点についても次の機会にと思っております。
自殺に至らなかったんですが、自殺をしようとした実習生の例が報道されております。資料の二枚目に戻っていただければと思います。
二〇一二年八月、来日した、当時二十四歳の中国人女性です。
九カ月後、労働基準監督署の調査で資格外作業が発覚し、養鶏場で働けなくなった。実習生の受け入れの仲介などをする監理団体の寮で一旦過ごしたが、この団体も別の不正行為で営業停止に。稼ぎがないまま帰国すると借金や違約金が残ると思い、昨年二月ごろ寮を出た。つてを頼って熊本県でホステスとして働いた。
同六月、女性は同県警に出入国管理法違反、資格外労働容疑で逮捕された。同九月、熊本地裁で罰金刑の判決を受け、退去強制命令が出た。さらに、収容されている間に帰国への不安から床に頭を打ちつけて自殺を図った。とめに入った入管職員にけがをさせたとして公務執行妨害などの容疑で逮捕され、福岡地裁で執行猶予つきの有罪判決を受け、昨年末に帰国した。
この方は、だまされた気がしますと。日本語で、日本が好きで来た、真面目に仕事をしたかったと言っている、女性が中国側の仲介者に払ったとされる保証金や違約金は、出入国管理法の関係省令で禁止されていると。しかし、実態は違うということであります。
あわせて、資料の次の三枚目のところで、実習生が相次ぐ死亡事故という報道記事もございます。先ほどもお話がありました。
この方は、虚血性心疾患で急死をした。岐阜県の鋳造会社で働く二十七歳のフィリピン人実習生が宿舎で亡くなった。岐阜労働基準監督署は、一月から四月に月七十八時間半から百二十二時間半の残業があったとして、会社と社長を労基法違反容疑で書類送検した。
労基署は長時間労働と死亡の関連が強いと判断し、フィリピンの遺族に労災補償の申請書類を送付。遺族は申請する見通しだ。厚生労働省が実習生の過労死について統計をとる二〇一一年度以降は認定はなく、順調に進めば異例の認定になるという記事です。
なぜこのように自殺事件が多く発生しているのか、どう対処しているのか、過労死として認定しているのか、伺いたいと思います。
あわせて、外国人技能実習生の死亡事故が発生した場合、母国のしかるべき機関に報告はされているのでしょうか。
○宮川(晃)政府参考人 お答えいたします。
実習生が健康で安心して実習するため、現行制度上、一つは、実習実施機関が生活指導員を置くとともに、監理団体においても実習生からの相談に対応する措置を講ずることとされております。さらに、我が厚生労働省においては、メンタルヘルス専門家による巡回指導を委託で行っているところでございます。
実習生が自殺する原因は事案により異なっており、必ずしも明らかではないケースが多いわけですが、不幸にして死亡事案が発生した場合には、監理団体または実習実施機関が地方入国管理局及びJITCOに報告することとされております。また、一般に、監理団体などにおいて、送り出し機関との契約に基づき、送り出し機関に報告がなされるものと承知しております。
あわせて、JITCOが死亡事案を把握した場合には、実習実施機関等に対する訪問調査を行うとともに、必要に応じて労災保険の請求手続等の周知を行っております。また、労働基準監督署におきましても、JITCOからの情報を受け、必要に応じ請求勧奨を行っているところでございます。
なお、平成二十六年度におきましては実習生が過労死として認定された事案はございませんが、労災請求がなされた場合は、過労死等の認定基準に基づき業務上外の判断を行うこととしております。
○畑野委員 最後に、岩城法務大臣に伺います。
寮費の問題です。
愛知県のある企業で、二十七人の実習生が、一部屋に九人、二段ベッドで生活し、寮費は一人四万円を請求されていたということなんですね。
新機構では手数料も新設され、技能評価試験料も高騰する中、寮費が高くなるのではないか、このような高額な寮費は失踪の原因となりかねないという問題があると思います。
これまで政府は諸般の事情だと言ってまいりましたが、そうではなくて、同程度の住宅家賃の近隣相場を超えてはならないとすべきではないでしょうか。
○岩城国務大臣 まず、現行の制度のもとでは、入国管理局は、宿舎費を賃金から控除する場合につきまして、労働基準法にのっとった労使協定の締結の存在を前提として、控除する寮費の額が実費を超えてはいけない旨指導しております。
この実費とは実際に要する費用を意味するものでありますが、当該費用を判断するに当たりましては、物件の構造や築年数はもちろんのこと、共用部分の状況など、諸般の事情を総合的に考慮した上で、社会通念に照らして判断することとしております。
この点、新制度におきましては、適正な宿舎費について、より明確化していきたいと考えております。
宿舎費の適正価格につきましては、同程度の住宅家賃の近隣相場は一つの参考指標にはなりますが、これのみをもって一律の基準とするのは必ずしも適当ではなく、どのような着眼点で宿舎費の適否を見ていくのが適当かについて、さらに検討していくこととしていきたいと考えております。
○畑野委員 徹底した審議を求めて、質問を終わります。