第190回国会 2016年3月16日法務委員会
裁判所の体制充実を!職員増員要求
日本共産党の畑野君枝議員は16日の衆院法務委員会で、国民の裁判を受ける権利を保障するために、人員増など裁判所の体制拡充を求めました。
畑野氏は、複雑・困難な事件を扱う合議制の実施拡大が見送られ、労働問題を迅速に解決する労働審判事件を扱う地方裁判所支部は全国で2庁にとどまり、来年度3庁増えるだけであるとただしました。最高裁の中村愼総務局長は「事件処理体制の整備に努めたい」と述べました。
また、家庭裁判所調査官が介護・子育てなど考慮されず、不本意な異動を強いられていると追及。最高裁の堀田眞哉人事局長は「経済的負担・身体的負担をつぶさに見て検討し、適切に異動を実施する」と答えました。
さらに、畑野氏が、裁判所速記官の処遇改善を求めた衆院法務委員会の付帯決議(2004年3月)についてただすと、中村氏は「速記官の要求を踏まえつつ、備品の整備、研修の充実といった可能な限りでの執務環境の整備を図る」と答弁しました。
畑野氏が「裁判所職員の抜本的増員が必要だ」と問うと、岩城光英法務相は「裁判所の判断を踏まえて適切に対応する」と答えました。
(2016年3月20日(日)赤旗)
【会議録】
○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について質問をいたします。
二〇一六年、ことしの一月十八日の日本弁護士連合会の会長声明で、二〇一四年十月から九回にわたって、当連合会及び最高裁判所における地域司法の基盤整備に関する協議を行ってきたことが報告されております。
私の地元、横浜弁護士会においては、地域司法の基盤整備について、特に相模原支部における合議制実施について、竹森裕子会長声明が発表されております。その中では、このように訴えられております。
当会は、長年、相模原支部での合議制の取り扱いを求めてきた。管轄地域である相模原市、座間市の各議会においては合議制の実施を求める議会決議を行い、相模原市においては首長が裁判所に要望書を提出するなどしており、合議制の実現は管轄地域住民の声でもあっただけに、今回の結果は極めて残念である。
近年、民事事件には複雑で困難な事件が増加しており、それらを適正迅速に解決するためには合議体による審理が有効であることは、最高裁判所の「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」や判例タイムスに掲載された「東京地方裁判所民事通常部における新たな合議態勢への取組について」において指摘されている。さらに、寺田逸郎最高裁判所長官は今年の新年のことばにおいて、民事裁判の質を向上させる手段として「合議体による審理を充実させること」をあげている。
と述べられております。
このように、地方裁判所支部で合議制実施の声が上がっていることについてどのように受けとめておられるか、伺います。
○中村最高裁判所長官代理者 現在、地方裁判所の支部二百三庁のうち百四十庁につきましては、支部で合議事件を扱っていないというところでございまして、そのような合議事件を扱っていない支部について今議員御指摘のような要望が出ている、これは承知しているところでございます。
合議事件を支部で扱うかどうかにつきましては、手続上は最高裁判所規則に基づきまして各裁判所が決めるということになりますが、支部において合議事件を取り扱うかどうかは、体制整備あるいは全国的状況を検討する必要があることから、最高裁においても検討しているという状況にございます。
最高裁といたしましては、合議を取り扱っていない各支部における事件数の動向、最寄りの合議取り扱い庁へのアクセス等を考慮すれば、合議事件の取り扱いをする支部を増加させる必要は今の時点ではないというふうに考えているところでございます。
○畑野委員 ある弁護士の方からいただいた資料によりますと、相模原支部は、本庁までの時間は四十七分、二〇一三年の民事新受件数は五百五十七件となっております。現在、裁判官は六人ということです。
一方、合議制が行われている横浜地方裁判所管内のほかの支部の状況を伺いますと、川崎は二十七分、千七十五件、小田原、一時間七分、七百九十件、横須賀、四十四分、四百一件。ですから、どのような基準で決まっているのかよくわからないという声があるんですね。
相模原支部でも合議制を実施してほしい、これは横浜弁護士会相模原支部支部長も、二〇一六年、ことしの二月二十六日に、合議制の実現は住民の声でもあっただけに、今回の協議結果を極めて残念なものと受けとめておりますと報告されて、きのう、三月十五日に相模原市議会議員との懇談会も開催しているんですね。
その点について、もっと実情をつかむべきじゃないかと思いますが、いかがですか。
○中村最高裁判所長官代理者 相模原支部に関する要望、先ほど言われました弁護士会の会長の声明というものも承知しているところでございます。
相模原支部につきましては、管内人口は少ないわけではございませんし、事件数も決して少ないわけではございません。そういう中で、現時点においては、先ほど申し上げましたように、合議を取り扱う必要性はないというふうに考えておりますが、今後とも、相模原支部における事件数の動向等の実情を注視しつつ、必要な事件処理体制の整備に努めてまいりたいと考えているところでございます。
○畑野委員 横浜弁護士会の声明では、さらに、
当会は、これまでにも増して、相模原支部において合議制が一刻も早く実現するよう、さらに地域住民、自治体、関東弁護士会連合会、日本弁護士連合会と一致協力して、粘り強く取り組む所存である。
と言っているんですね。
ですから、合議制は、国民にとって極めて重要な事件が扱われるものです。相模原はもとより、一刻も早く全国の合議制実施の要求に応えていただきたいということを強く求めておきます。
次に、地方裁判所支部で労働審判事件を扱う裁判所が限られている問題について伺います。
労働審判は、裁判所の所管のもとで労働者の訴えを短期で解決する制度でありまして、解雇、雇いどめ、配転、出向、賃金、退職金不払いなど事実関係が明確な事件に有効で、アルバイトやパートも申し立てることができます。
日弁連声明では、最高裁判所は、日弁連との協議により、労働審判実施支部を拡大すること等を明らかにしたとされております。
今後、労働審判事件を扱う地方裁判所支部は増加するのでしょうか。
○菅野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
労働審判事件につきましては、現在、全国の地裁本庁のほか、東京地裁立川支部と福岡地裁小倉支部において取り扱っております。
最高裁におきましては、日弁連との意見交換を重ねるなどする中で、労働審判事件取り扱い支部拡大の要望を認識してきたところですが、予想される労働審判事件数や本庁に移動するための所要時間等の利便性を基本としつつ、事務処理体制、労働審判事件の運用状況及び労働審判員の安定的な確保を含めた地域的事情、こうしたものを総合的に勘案しながら検討を行いまして、結論といたしまして、静岡地裁浜松支部、長野地裁松本支部、広島地裁福山支部において、平成二十九年四月から労働審判事件の取り扱いを開始することができるよう準備を開始することといたしました。
以上でございます。
○畑野委員 三つのところで着手をするということでした。
そして、この労働審判実施の要望については、多くの声が寄せられております。
例えば、千葉県弁護士会松戸支部は、昨年、二〇一五年十二月十一日、千葉地方裁判所松戸支部において労働審判を実施することを求める決議を採択しました。
そこでは、千葉県内においては、労働審判を行っている裁判所は千葉地方裁判所本庁のみであるため、支部管轄区域内の労働者や使用者が労働審判を利用するには、本庁がある千葉市まで出向かなければならない。しかし、千葉市までの距離がある支部管轄区域内の労働者や使用者にとっては、千葉市までの移動による時間的、経済的な負担を強いられることにより、本庁までの移動の負担を考えて、労働審判の申し立てを諦めざるを得なかったという事例も報告されている。
また、二〇一六年、ことしの三月九日、茨城県弁護士会会長声明では、
土浦支部管内を中心とする県南地域は、現在、人口、事業所数及び個別的労働紛争数において、水戸地方裁判所本庁管内のそれらに匹敵し、あるいは上回る状況にある。このような状況の下、県南地域においては、個別的労働紛争の解決に対する市民の需要をみたすため、その有用な手段である労働審判を実施する必要性は極めて高いところである。
今回の結果について、
市民のために上記のような活動を継続してきた当会として、遺憾である。
と述べております。
さらに、二〇一六年一月十八日、釧路弁護士会会長声明は、
この度の労働審判支部実施の拡大が小規模なものにとどまったことは、遺憾と言わざるを得ない。あらためて最高裁判所に対し、帯広支部及び北見支部その他全国の多くの支部で労働審判が実施されるよう強く求める。
と述べておられます。
このような弁護士会の要望にどのように応えていかれますか。
○菅野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
労働審判事件につきまして、委員から今御指摘いただいたとおり、ただいま申し上げた三支部以外の支部での取り扱いを求める要望があることは認識してございます。
ただ、ただいま申し上げましたとおり、予想される労働審判事件数、それから本庁に移動するための所要時間等を基本としつつ、事務処理体制、労働審判事件の運用状況、それから労働審判員の安定的な確保といった事情を総合的に勘案して、継続的に検討を行った結果として、さきの三支部での取り扱いができるよう準備を開始することとしたものでございます。
もっとも、労働審判事件を支部で取り扱うかは、新たに労働審判事件を取り扱うことになるさきの三支部における具体的な運用状況ですとか、あるいはその他の庁の運用状況等によるところだと考えております。
今後、これらの三支部を初めとする各地における労働審判事件の運用状況等を十分に注視してまいりたいというふうに考えております。
以上でございます。
○畑野委員 横浜弁護士会は、既に二〇〇二年十一月、地域の実情に根差した司法制度をつくるため、「神奈川から始める司法改革 神奈川の司法十の提案」をつくっているんですね。その中で、
最高裁判所行政局から日本弁護士連合会に対し、同制度を始めるに当たり、地裁本庁に集約していたのは、労働知識に精通した裁判員の確保が必要であったことと、新しい制度のためノウハウの蓄積が必要であったことが大きな理由であったところ、事件数も増え、解決率も高く、ノウハウも蓄積できたことから、二〇一〇年四月から支部でも事務を取り扱う旨の説明があり、まず東京地裁立川支部と福岡地裁小倉支部で取扱いが始まりました。そして、神奈川県では、川崎支部と小田原支部が検討対象となっています。
しかし、検討対象となっている川崎支部と小田原支部のみならず、横須賀支部、相模原支部でも労働審判の取扱いを開始すべきです。
と既に二〇〇二年から言ってきているんですね。だから、全国でそういう声が上がっている。
ぜひ、この問題は、地域の実情に沿った司法行政を行うように進めていただきたいということを申し上げておきます。
次に、裁判所職員の問題について伺います。
この間、裁判官、書記官が増員されても、実際には三人庁、二人庁が増加しているのが実情です。裁判官、書記官は都市部に集中され、地方における裁判所の人的体制の問題の解決につながるとは言えない状況です。
現在の二人庁になった経過と現状について伺います。
○中村最高裁判所長官代理者 裁判所も国の予算で運営される公的な機関ということで、業務量に見合った人の配置ということを考えていく必要があります。
これまで書記官、事務官合わせて三人の配置であった独立簡易裁判所につきまして、特に事件の少ない庁につきまして、人員の有効活用の観点から、利用者に対する司法サービスの低下につながるおそれがないかどうか、職員の休暇時や緊急時の応援体制等を的確に組むことができるかどうかといった業務体制の観点も踏まえつつ、事件処理に支障がないよう配慮した上で、二人庁、二人による執務体制をとることとしたものでございます。
このような二人による執務体制をとっている庁は、全国独立簡裁百八十五庁のうち、昨年四月一日現在で二十八庁でございます。
○畑野委員 事件数だけでなく、窓口業務の改善の問題、フレックスタイムの導入に基づく体制など、やはりこれも現場の実態をよくつかんでいただいて、そして抜本的な改善を求めておきたいと思います。
次に、家事事件についてですが、増加をしております。成年後見関係事件は、二〇〇五年度から二〇一五年度には約五倍と急増しているということで、二〇一四年度報告分では、後見人による不正事案が多発し、総数八百三十一件、被害額は約五十七億円となっております。
家庭事件も増加していて、子供をめぐる事件の割合が増加している。この点で、人的体制の充実が必要ではないかと思いますが、いかがですか。
○中村最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、家事事件処理のため、合理的な事務処理体制の構築に努めるとともに、人的体制の充実を図ることが必要であるというふうに考えているところでございます。
新受事件が増加傾向にあります家事事件につきまして、家事事件手続法の趣旨に沿った適正な手続を実現するとともに、累積的に増加しております成年後見関係事件の処理を適正化していく必要があると考え、家庭事件処理の充実強化のため、今回の増員の関係につきましても、判事及び裁判所書記官の増員をお願いしているところでございます。
○畑野委員 そこで、家裁調査官なんですが、最高裁自身が人的体制の充実が必要としてまいりましたが、家裁調査官の増加をしないということについてはいかがでしょうか。抜本的にふやすべきではないでしょうか。
○中村最高裁判所長官代理者 家裁調査官の人的体制につきましても、家事事件及び少年事件の動向や事件処理状況に照らして検討しているところでございます。
ただ、増加傾向にあります後見関係事件につきましては、行動科学の専門家である家裁調査官の関与というのが限定的でありますし、増員をお願いしております判事や裁判所書記官による事件処理を行うことが有効であるというふうに考えておりますし、また、少年事件は一貫して減少している傾向にございます。
調停事件におきまして、家裁調査官の関与が有用であると考えられます子をめぐる紛争、この事件は増加しているところでございます。
このような増加傾向を踏まえましても、平成二十八年度において、家裁調査官の現有人員を有効活用することによって家事事件、少年事件の適正迅速な処理が図れるというふうに考えているところでございます。
○畑野委員 そうじゃないんですね。
司法統計によると、子の監護者の指定その他の処分事件、特に面会交流事件は激増しているんですが、面会交流事件については、ほぼ全件家裁調査官が関与している。そして、調停期日に全部立ち会い、その間に調整活動を行ったり、子供の意向や心情について調査活動を行う。さらに、家庭裁判所内において試行的面会交流を行う場合は、観察役と子の引き渡し役、複数の兄弟姉妹の調査などが想定されて、複数の調査官が共同して当たるなど、マンパワーが必要なんです。
少年事件は減少していると言いましたが、被害者配慮や被害者調査などの対応が必要な事件が少なくないなど、調査官による調査活動の要請が強くございます。さらに、育児休業を取得して、代替要員の補充が原則となっているんですが、調査官による代替要員の確保ができるとは限りません。特に地方の代替要員の確保は困難である。このような実態をつぶさに見ていただくことが必要だと思います。
最高裁判所第六回裁判の迅速化に係る検証に関する報告書に対する日弁連の意見書では、「家事調停に携わる裁判官、家事調停官、書記官、家裁調査官、調停委員の繁忙度についての調査と分析が不十分である。裁判官の関与の充実について調査と検討はなされているものの、裁判官の手持事件数等、裁判官の繁忙度については具体的に触れられていない。」「調停委員や家裁調査官の員数、選任方法、構成、手持ち件数、繁忙度の調査・検証についても、今回の報告で具体的に明らかとなっていない。現場からは、調停委員の手持ちの件数が多いことや、家裁調査官の手配が困難であることが、期日の進行に影響を及ぼしている場合があるという意見も存在する。家裁調査官の手続関与の割合・程度等からみて、調停事件を適正に運営する上で家裁調査官の人数に不足はないか等の検討も、今後、より具体的に進めていくべきである。」と指摘しています。
この点について、具体的な調査がないのではありませんか。いかがですか。
○中村最高裁判所長官代理者 先ほど答弁申し上げましたとおり、裁判所といたしましては、家事事件、少年事件の動向、あるいは調査命令の数といった事件処理状況を事件統計に基づいて具体的に検討した結果、平成二十八年度については、家裁調査官については現有の人員を有効に活用することによって家庭事件、少年事件の適正な処理が図れると判断したものでありまして、現時点で家裁調査官の人員に不足が生じているというふうには考えていない次第でございます。
○畑野委員 ぜひ具体的に実態をつかむ調査をしていただきたいということを申し上げておきます。
家庭裁判所の調査官の異動の問題について伺います。
どのような改善が図られているのかと前回も伺いました。仕事と家庭生活の両立のためさまざまな努力を最大限してまいりたいと考えている、そして、職員個々の希望や、育児、介護といった家庭事情等を一層きめ細かく把握するよう努めているというふうにお答えをいただきました。
ところが、ある調査官のお話を伺ったんですが、介護のために親御さんと同居せざるを得ないのに遠方に転勤になり、やむを得ず新幹線を使って通勤することになった、交通費の自費負担が月二万数千円になってしまうということなんですが、このような事態を生じさせないように対処すべきではありませんか。
○堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
個別の事例についての答弁は差し控えさせていただきたいと存じますけれども、一般的なこととして申し上げます。
裁判所職員の人事異動に当たりましては、介護等といった個別具体的な家庭事情にも可能な限り配慮をした異動の実施に努めてきているところでございますが、他方で、人事異動は、適材適所の任用原則にのっとりまして、均質な司法サービスの提供、人材育成、異動負担の公平等の観点からも考慮する必要があるところでございまして、転居を伴うなど必ずしも本人の希望どおりにならない場合も一定程度生じざるを得ないところではございます。
介護等の事情のある家裁調査官の異動におきましては、一般的に申し上げますけれども、その介護の具体的な事情のほか、転居せずに現住所から通勤した場合の経済的な負担、身体的な負担といったものもつぶさに見て検討の上、適切に異動を実施しているものと認識しております。
○畑野委員 後段の最後のところをぜひお願いしたいんです。
いろいろ声がありまして、子供が小学校に入学した時点で夫婦とも片道一時間半以上かかる庁に異動になったとか、夫婦別居で、この春も異動がなく別居は解消されなかったとか、異動内示が遅いので転入先の保育園の確保ができなかったとか、それから、介護の事情ももちろんたくさんあります。もう本当に続けられないという声も上がっているんですね。
ですから、なぜこういうことが起こるか、根本はやはり抜本的な増員が必要だというふうに思いますので、そのことを強く求めたいと思います。
最後に、速記官のことについて伺います。
再審で無罪となった布川事件の弁護団長は、二審から受任して一審記録を精査した際、前半は要約調書、途中から速記録になった公判調書を読んで、速記録を読むと、検察官が詰まりに詰まって困っているところ、本人たちが威勢よく尋問しているところなどが目に浮かび、それまでの要約調書と比べると、調書が生きていると感じたと述べています。
事件内容により速記録を作成するかどうかの判断に当たっては、裁判利用者の要望に応える体制も必要ではないでしょうか。
○中村最高裁判所長官代理者 委員が要約調書と速記調書というものの比較をされました。要約調書というのは書記官が概要を書く調書でございますので、それと比較いたしますと、速記調書の方が、まさに逐語的にとっているのでそういう感想が出たんだと思います。
逐語調書という中におきましては、録音反訳方式と速記の調書、両方がございます。一般的に、裁判利用者の要望については真摯に耳を傾ける必要があると考えております。
ただ、録音反訳方式でありましても、反訳業者が提出した反訳書を裁判所書記官が確認して、必要に応じて校正を行った上で書記官の調書として完成させておりまして、正確性を欠くということはございません。また、反訳書をつくる期間につきましても、最短の場合では音声データを業者が受領したときから四十八時間で完成させるというような迅速性についても、十分な手当てをしているところでございます。
このように、録音反訳方式と速記とについては、いずれも逐語録需要に対応するものであるところ、この両者について、どちらがすぐれているということはないというふうに考えておりまして、利用者からの要望のみによって速記録を作成するということにはならないというふうに考えております。
○畑野委員 ぜひ利用者の要望もつかんでいただいて、反映していただきたいと思うんです。
なぜかといいますと、二〇〇九年五月二十一日から、一般市民が裁判員として刑事裁判に参加する裁判員制度が開始されたからです。昨年も当委員会で熱心に審議がされたところです。第五十一条で、「裁判官、検察官及び弁護人は、裁判員の負担が過重なものとならないようにしつつ、裁判員がその職責を十分に果たすことができるよう、審理を迅速で分かりやすいものとすることに努めなければならない。」とありました。
一定の重罪事件につき、一般市民が職業裁判官とともに事実認定や量刑判断を行っている裁判員です。公正、的確な判断を保障するためには、法廷でのやりとりや証言内容が即時に確認できるようにすることが不可欠だと思います。
裁判員裁判において、速記官が作成する速記録は採用されているのか、これは現状について伺います。
○中村最高裁判所長官代理者 具体的にどの程度という数のところは把握しておりませんけれども、裁判員裁判におきましても、他の事件と同様に、逐語録を作成する必要があるものについては、録音反訳方式にするのか、速記録にするのかということを各裁判体において判断されているというふうに承知しているところでございます。
○畑野委員 裁判所速記官による速記録は、尋問を実施したその日のうちに文字化された証言、供述調書を作成することが可能なまで進歩しているということです。
裁判員裁判における尋問の際には、速記官を活用し、訴訟当事者が即時に速記録を閲覧できるようにすべきであるという要望がありますが、いかがでしょうか。
○中村最高裁判所長官代理者 裁判員裁判におきましては、記憶が鮮明なうちに連日的な審理が進められるということから、速記録を含めた供述調書を用いて証人等の供述内容を確認するという必要性は低いものと考えています。
速記官が尋問後即時に速記録を作成するということを御指摘になりましたけれども、そのような速記録を作成できるのは全ての速記官ということではございません。
一方、尋問の終了後、訴訟当事者には、音声認識システムを用いて認識、録音いたしました音声データ及び文字データを提供しておりまして、いわばその文字データをインデックスとして利用することで、証人の供述等の検索をして確認できるような運用を行っているところでございます。
○畑野委員 私は、実際その状況を見ましたけれども、なかなか素早いものだなというふうに思いました。
二〇〇四年三月十二日、衆議院法務委員会での附帯決議の「裁判所速記官が将来的に不安定な状況に置かれることのないよう十分な配慮をすべきである。」ということについて、どのようにしていくのか伺います。
○中村最高裁判所長官代理者 速記官としてその職務を全うすることを希望する者につきましては、その能力を十分に発揮し、速記官としてやりがいを持って執務に臨んでもらうようにする必要があることはもちろんでございまして、最高裁といたしましては、御指摘の附帯決議の趣旨も踏まえ、速記官が不安感を抱くことのないよう、速記官の要望も踏まえつつ、備品の整備、研修の充実といった可能な限りの執務環境の整備を図ってきているところでございます。
今後とも、処遇に対して不安を抱かず、安心して職務に精励できるように、速記官の執務環境の整備等に努めてまいりたいと考えております。
○畑野委員 速記官の皆さんはアメリカから個人輸入している電子速記タイプライターを使っていて、従来よりも軽いタッチで打ち込みができて、キーの深さも調節できる。これに日本語活字への変換ソフト「はやとくん」を接続するだけで、瞬時に活字になる。ほとんどの速記官は、電子速記タイプライター、「はやとくん」のシステムを自費で購入して使っているというので、ぜひ公費で購入することを検討するときじゃないか。現場の声もぜひ聞いていただきたい。
そして、速記官の養成再開を求めるという弁護士会からの要請も出ているということを紹介し、最後に大臣に伺います。
司法の独立、国民の裁判を受ける権利、司法サービス充実のために、裁判官及びそれを支える職員の抜本的な増員が必要であると考えますが、岩城法務大臣の御所見を伺います。
○葉梨委員長 質疑時間が終了していますので、簡潔に。
○岩城国務大臣 まず、裁判官及び裁判官以外の職員の数を含めました裁判所の体制整備、これにつきましては、最高裁判所において適切に検討しているもの、このように考えております。
そこで、法務省としても、裁判所において判断されるところを踏まえまして、政府において裁判所職員定員法を所管する立場から、引き続き、適切に対応してまいりたいと考えております。
○畑野委員 抜本的な増員を求めて、質問を終わります。