第190回国会 2016年3月9日法務委員会

再婚禁止期間なくせ/衆院法務委員会で質問 

 日本共産党の畑野君枝議員は9日の衆院法務委員会で、国連女性差別撤廃委員会の「総括所見」が日本政府に対して、女性の再婚禁止期間を廃止する旨の民法改正を勧告していることを示し、緊急の課題として差別的規定を廃止するよう求めました。

 畑野氏は、政府が女性の再婚禁止期間を180日から100日に短縮する民法改正法案を提出したことについて、「女性差別が法律に残されており、廃止を求める声は当然だ」と強調しました。岩城光英法相は、同委員会による勧告を認めながら、父子関係を確定するために「100日は合理的」と説明しました。

 畑野氏はさらに、夫婦同姓の強制についても同委員会からの勧告が廃止を求めていることについて追及しました。岩城法相は「国民と国会の議論の深まりを関心を持って注視する」と答えました。

 畑野氏は、夫婦同姓を強制する制度は個人の尊厳と両性の本質的平等を保障する憲法24条に反していると追及。同委員会の「総括所見」には、特に改善が急がれる2年以内の追加報告項目に民法改正が盛り込まれていると強調し、選択的夫婦別姓の実現を求めました。

(2016年3月15日(火)しんぶん赤旗)

 【会議録】

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
 昨年十二月十六日の最高裁判決を受けて、昨日、民法の再婚禁止期間の改正案が閣議決定されました。再婚禁止期間百日への短縮を行い、離婚時に妊娠していない場合は適用除外とするなど、例外規定を設けるものとしています。
 再婚禁止期間百日への短縮は、二十年前に出された法制審議会答申に既に盛り込まれていたものです。それなのに、最高裁判所の判決を受けなければ民法の改正を行わないという政府の姿勢が問われていると思います。
 同時に、女性だけに課せられる再婚禁止期間は差別的規定であり、廃止すべきという声が大きく起こっております。法律に残された女性への差別は、世界から見ても異常な、日本の男女平等への改善のおくれ、民主主義のおくれを示す大きな問題点の一つでありまして、廃止を求める声は当然だと思います。
 きのう三月八日は国際女性デーでございました。法制審議会答申以来の二十年、再婚禁止期間について民法改正に着手しなかったことをどのように思われますか。岩城法務大臣の御認識を伺います。
岩城国務大臣 御指摘がありましたとおり、法制審議会は、平成八年の二月に、女性の再婚禁止期間を百日に短縮すること等を内容とする民法の一部を改正する法律案要綱を答申されました。
 そこで、法務省は、平成八年そして平成二十二年に、法案の提出に向け、法制審議会の答申を踏まえた改正法案を準備いたしました。しかしながら、この答申の内容につきましては、国民の間にもさまざまな御意見があったほか、与党内においても異論があったことなどから、改正法案の提出にまでは至らなかったものと認識をしております。
 もっとも、女性の再婚禁止期間を定める民法の規定につきましては、このたび、違憲立法審査権を有する最高裁判所において、再婚禁止期間のうち百日を超える部分は憲法に違反する旨の判断が示されたわけでありますので、速やかに違憲状態を解消する措置を講ずる必要があるものと認識をしております。
畑野委員 法制審の答申が出てから、本当に多くの女性たちの、また国民の法改正を求める声が出されてきて、裁判も行われてきたわけですね。そういう点では、二十年間、法改正に着手されなかったということは、国民、女性にとっても本当に大変な問題だった、苦しみだったということをぜひ知っていただきたい。御存じのことだと思いますけれども。
 ある女性の方は、当時の夫の暴力を逃れて別居して、夫は離婚に応じないので、女性が裁判を起こして、離婚が成立したのは約一年半後だったと。女性は、離婚の直前に現在の夫との子を妊娠して、再婚して、生まれてくる子と一緒に新しい家庭を築けると思ったけれども、民法の再婚禁止規定が壁となって、子供が無戸籍になる問題にも直面したと。こういう多くの皆さんの声と運動があったわけでございます。
 さて、この問題につきまして、国連女性差別撤廃委員会は、女性差別撤廃条約に基づいて、締約国の差別の是正状況を審議してまいりました。前回二〇〇九年から七年ぶりのことしの審議には、日本から多くの女性団体や日本弁護士連合会の代表約百人が代表団として参加して、女性差別撤廃委員会は、二月十五日にはNGOから意見を聞く、十六日には日本政府からの報告を審議したわけです。中でも再婚禁止期間については、女性差別撤廃委員会からことしも勧告を受けております。
 伺いたいんですが、この問題については、以前にもこの委員会から何度も勧告を受けております。これまでどのような指摘と勧告を受けてきたのでしょうか。また、この二月に行われた女性差別撤廃委員会での第七回、第八回政府報告審査ではどのような質疑応答があったのか、お答えください。
小川(秀)政府参考人 お答えいたします。
 我が国は、女子差別撤廃委員会から、民法の規定に関しまして、平成十五年、二〇〇三年と、平成二十一年、二〇〇九年に勧告を受けております。
 このうち、平成十五年に受けました勧告の内容は、民法に依然として存在する差別的な法規定を廃止し、法や行政上の措置を条約に沿ったものとすることを要請するというものでございました。
 また、平成二十一年に受けました勧告の内容は、婚姻適齢を男女ともに十八歳とすること、女性に係る六カ月の再婚禁止期間を廃止すること、選択的夫婦別氏制度を採用すること、これらを内容とする民法の改正のために早急な対策を講ずるよう要請するというものでございました。
 ことしの状況でございますが、本年二月に行われました審査では、再婚禁止期間の廃止を含めた民法の改正について、政府の対応状況を問われたところでございます。これに対しまして、法務省担当者からは、昨年十二月の最高裁判決を踏まえ、速やかに違憲状態を解消するため、再婚禁止期間を百日に短縮することなどを内容とする法律案を、これは二月の時点でございますので、今国会に提出すべく検討を行っているということを御説明させていただきました。
畑野委員 国連女性差別撤廃委員会の日本審査の内容というのは、国会にも報告するべきものだということで、きょうも御報告をしていただきました。民法改正のおくれについて厳しい指摘が二月の十六日にもされたわけですね。人権問題、女性差別問題として、本当に解決を図る必要があると思うんです。
 そこで、さらに伺いますが、先日の三月七日、国連女性差別撤廃委員会から日本政府に対して、勧告を含む総括所見、すなわち最終見解が公表されました。再婚禁止期間についてどのような見解、勧告が出されたかということを重ねて伺います。
小川(秀)政府参考人 女子差別撤廃委員会は、本年三月七日に公表されました最終見解におきまして、我が国に対し、女性の再婚禁止期間そのものを廃止する旨の民法改正を遅滞なく行うよう勧告したものと承知しております。
畑野委員 即時措置を再び勧告したということですよね。
 そこで伺いたいんですが、再婚禁止期間について世界の状況はどうなっているかということです。世界の主要な国々の現状について、岩城法務大臣に伺います。
岩城国務大臣 法務省が行いました調査によりますと、再婚禁止期間に関する規定がある国としては、イタリア、トルコ、タイ、イスラエル、インド、サウジアラビアなどが挙げられます。その期間は、九十日や三百日など、それぞれの国によって異なっております。
 一方、イギリス、ドイツ、フランス、オランダ、中国、韓国などには、再婚禁止期間に関する規定はないものと承知をしております。
畑野委員 廃止したという国も、北欧諸国などですね、ずっと進んでいるわけです。
 さらに伺いますが、再婚禁止期間について、国連女性差別撤廃委員会の総括所見、すなわち最終見解を受けて、岩城大臣の御認識はいかがでしょうか。
岩城国務大臣 女子差別撤廃委員会は、今般、我が国に対し、再婚禁止期間そのものを廃止するよう勧告したものと承知をしております。
 もっとも、再婚禁止期間を設けた趣旨は、嫡出推定の重複を回避し、父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにあり、嫡出推定の重複を回避するために必要な百日については、合理的なものであると認識をしております。
 仮に再婚禁止期間そのものを廃止した場合には、前婚の夫と後婚の夫の嫡出推定が重複し、DNA鑑定等によらなければ法律上の父親を確定することができない事態が生じ得ることとなり、それは子の利益を害するおそれがあるものと考えられます。
 女子差別撤廃委員会に対しましては、今後も、このような我が国の立場や状況について十分に説明をし、理解が得られるよう対応してまいりたいと考えております。
畑野委員 今回、例外措置ということで、離婚時に妊娠していない場合は適用除外ということを入れたわけですね。これは、最高裁の判決の中でそういう意見もあったということで入れられた。ですから、実際的にはほとんどかかわらない状況になるんですよ。しかも、これは、医学の問題ではなくて、人権の問題だと国連からは指摘されているんですね。
 ですから、この点を含めてまた深い議論は続けさせていただきますけれども、実際には廃止の可能性があるんだということが多くの皆さんから言われております。
 さて、次に、夫婦別姓について伺いたいと思います。ことしの国連女性差別撤廃委員会でどのような質疑応答があったのか、伺います。
小川(秀)政府参考人 お答えいたします。
 御指摘いただきました女子差別撤廃委員会による本年二月の審査におきましては、委員会のメンバーから、我が国の最高裁判所が現行の夫婦同氏制を合憲としたことに対しまして、夫婦同氏制度を定めた民法の規定を早期に改正すべきではないかという質問がございました。
 これに対しまして、法務省の担当者からは、選択的夫婦別氏制度の導入を含む民法改正は、我が国の国民の家族関係に深くかかわる問題であるため、国民の大方の理解を得て行うべきものと考えているが、直近の世論調査の結果を見ましても、この問題についての国民の意見が大きく分かれていることなどを説明した上で、政府としては、国民的な議論や国会における議論の状況を引き続き注視しながら今後の対応を慎重に検討してまいりたい旨お答えしております。
畑野委員 女性差別撤廃委員会がこの間繰り返し言っていることがあるんですね。それは、締約国が、差別的法規定の撤廃が進んでいないことを説明するために世論調査を用いていることに懸念を持っているということなんですね。これは人権問題ですから、世論調査で多い少ないという問題ではないんだということを言っているわけなんです。
 そこで、この夫婦別姓の問題について岩城大臣の御認識を伺いたいんです。
 女性差別という観点から、女性差別撤廃委員会から大変厳しい内容の勧告がされておりますが、その総括所見、すなわち最終見解についてどのような御認識でいらっしゃいますか。
岩城国務大臣 女子差別撤廃委員会から勧告がありましたことにつきましては、もう説明があったとおりだと思います。
 いずれにしましても、選択的夫婦別氏制度の導入の問題は、我が国の家族のあり方に深くかかわるものであります。また、国民の間にもさまざまな意見があることから、慎重に対応を検討する必要があると考えております。今後、国民的な議論や国会における議論の深まりを関心を持って注視しているところでございます。
 国連の各委員会に対しましては、今後も、このような我が国の立場や状況について十分な説明をし、理解が得られるよう適切に対応してまいりたいと考えております。
畑野委員 最高裁の判決の中で、ある裁判官の意見として、夫婦同氏の強制は、憲法第二十四条に言う個人の尊厳と両性の本質的平等に違反すると説示をし、家族の中での一員であることの実感、夫婦親子であることの実感は、同氏であることによって生まれているのだろうかと疑問を投げかけております。まさにこれは、憲法の二十四条に基づいて解決しなくてはいけない問題だというふうに思うわけでございます。
 大臣に幾つか伺ったんですが、これは、本当に受けとめて進めていただきたいんです。なぜかといいますと、この女性差別撤廃委員会の勧告というのは、フォローアップというのがあるんですね。進まないと、どうなっているかと二年ごとに催促が来るわけなんです。
 しかも、先ほどお話があったように、再婚禁止期間の問題も、これから閣議決定されて法案の審議が進もうというふうになるわけですけれども、百日にとどまらず、廃止すべきだということが今回国連女性差別撤廃委員会から言われて、もう何回も言われているから、今回は、すぐやりなさいというふうに言われております。これは、国会の中で、委員会の中で議論をさらにしていかなくてはなりませんけれども、そのことを重ねて申し上げておきたいと思うんです。
 それからもう一つ、選択的夫婦別姓の問題です。
 この問題については、岩城大臣とも、この間の一月十三日にも議論をさせていただきました。今回言われているのは、昨年の最高裁が合憲とした夫婦同氏について、実際には女性に夫の姓を強制しているという指摘があって、そして改正するようにというふうに求められているわけなんです。
 これは私、この間の一月十三日のときに法務省から答弁いただきましたけれども、二〇一四年の調査で、婚姻届のあった夫婦のうち、夫の氏を選択した夫婦は九六・一%だと。結局そういう実態になっているということを国連の女性差別撤廃委員会もよく知って、これもちゃんと改正するべきだということなんです。
 ですから、この間言われたように、世論調査がどうかということではなくて、人権の問題としてやりなさいということを言われているわけなんですね。そういう点では、国会の議論をというふうに最高裁に言われているわけですけれども、国会はもちろん、委員長にこの間お願いして、ぜひ議論しようと。私、参考人などもお招きして大いに議論したらいいと思うんですが、このように国連から、締約国として女性差別撤廃委員会から言われているわけですから、国としてはもっとイニシアチブを発揮するべきだというふうに思うんですが、岩城大臣、いかがでしょうか。
岩城国務大臣 選択的夫婦別氏制度の導入につきまして各方面から意見があることは承知をしております。導入すべきだという意見ですね。他方で、現在の法律を改めるべきではないとの意見もあることも承知をしております。
 選択的夫婦別氏制度の導入は、先ほども申し上げましたけれども、国民の大方の理解を得て行うべきものと考えております。我が国の家族のあり方に深くかかわる問題でもあります。したがいまして、最高裁判決において指摘されておりますように、国民各層の意見、受けとめ方や、国会における議論の動向を踏まえながら、慎重に対応を検討してまいりたいと考えます。
畑野委員 終わりますけれども、人権の問題だということで、これは本当に、一人であっても解決しなくてはいけない問題。そして、そういう点では、引き続き大きな国民的議論ももちろん国会で起こしていきたい、そのことを申し上げまして、質問を終わります。