第189回国会 2015年12月1日文部科学委員会
国立大授業料40万円値上げ/畑野氏「撤回を」
衆院閉会中審査 文科省認める
国会は1日、衆院文部科学委員会を開き、閉会中審査を行いました。日本共産党の畑野君枝議員は、財務省が国立大学運営費交付金の削減を求めている問題を取り上げ、「国の予算を削るため学生に大幅な授業料の値上げを強いることは許されない」とただしました。
馳浩文科相は「考え方は同じだ。財務省の考え方は本末転倒だ。経済的理由で断念せず、安心して学べる環境を整備していく必要がある。運営費交付金の確保に取り組んでいきたい」と答えました。
畑野氏は、財務省が求める自己収入増2437億円をすべて授業料で賄えばどうなるのかと質問。常盤豊高等教育局長は「授業料は93万円となり、40万円の増加になる」と答えました。
畑野氏は、奨学金で平均300万円、多いと1000万円もの借金を背負う実態をあげ、「高等教育の段階的な無償化を求める国際人権規約や、憲法が定める教育機会の均等に反する」と指摘しました。
交付金は法人化後1470億円も削減され、国立大学協会が「経済格差による教育格差の拡大につながる」「消費税や電気料金値上げで努力も限界」と訴えています。畑野氏はこのことを紹介し、「切実な声に応えるべきだ」と求めると、馳氏は「一律削減ありきの考え方に反対だ。物価動向や教育研究上の必要性を勘案し、交付金の確保に努めていく」と答えました。
畑野氏は、学費の連続的な値上げを許さない共同を呼びかけた日本共産党のアピールを紹介し、「国の大学予算削減をまかなうために学費を値上げするという方針を撤回させる。その一点で党派を超えて力を合わせたい」と述べました。
(「しんぶん赤旗」2015年12月2日付け)
【会議録】
○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
野党五党は、憲法五十三条に基づき臨時国会を召集するよう安倍首相に求めています。内閣が召集に応じないのは明確な憲法違反であり、国会として断じて容認することはできません。臨時国会を召集してしっかりと議論をするべきだということを初めに申し上げて質問に入ります。
財政制度等審議会、財政審が平成二十八年度予算の編成等に関する建議を出しました。そこでは、国立大学は、「今よりも国費(渡しきりの運営費交付金)に頼らずに自らの収益で経営する力を強化していくことが必要」との文言があります。つまり、国に頼らず、みずから収入を上げよと言うんです。
では、大学の自己収入とは何か。寄附金、産学連携の研究費、そして学生から集める授業料、つまり学費です。
では、大学の自己収入という点でいうと、寄附金、産学連携の研究費を財務省の言うように今後大幅に増額していくことは可能なんでしょうか。それが難しいとなると、確実に自己収入をふやすためには、結局、授業料、学費を値上げしていくことになるのではないかと思いますが、いかがですか。
〔委員長退席、池田(佳)委員長代理着席〕
○常盤政府参考人 国立大学の運営に当たりまして財源の多様化ということは重要なことであります。国立大学の法人化以降、各大学において寄附金や産学連携等収入等の自己収入の獲得に努力をしているところでございます。
ただ一方で、十月二十六日の財政制度分科会の配付資料において示されました国立大学法人収入額の推移について申し上げますと、まず寄附金収入でございますが、自己収入に占める割合は約一割でございます。法人化直後に伸びがございましたが、その伸びに比べますと、現在頭打ちの状況にあるという状況でございます。
また、産学連携等研究収入等でございますけれども、これも、その大半が国の予算を基礎としていることがございますので、今後も継続的に増加するということは必ずしも見込めないという状況にあるかと考えてございます。
このほかに考えられる自己収入として、今御指摘ございましたが、授業料収入ということも考えられますが、授業料収入で自己収入の大幅な増加を賄うということは、金額の大幅な引き上げにつながりかねませんので、現下の経済状況や厳しい家計状況では困難であるというふうに考えてございます。
○畑野委員 本当におっしゃるとおりだと思うんですね。
それで、伺いますけれども、私、資料を示したように、財務省の、十月二十六日の財政審分科会で示した内容です。今後十五年間に運営費交付金に依存する割合と自己収入割合を同じ割合にして、運営費交付金依存度を毎年〇・五%、運営費交付金を毎年一%減少させ、自己収入を毎年一・六%増加させるということなんですね。
仮にこのように進めるとしたら、授業料は十五年間で幾らの値上がりになると試算されますか。
○常盤政府参考人 先般の財政制度等審議会の建議におきましては、授業料の引き上げの際に授業料免除の拡大とかそういうこともあわせて記述をされているところではございますけれども、十月二十六日の、今お示しをいただきました財政制度分科会の配付資料のとおり、自己収入を平成四十三年度時点で二千四百三十七億円増加をさせるということのためには、仮にこれを全て授業料収入で賄うとした場合におきましては、平成二十七年度の学生数をもとに試算を行いますと、授業料は約九十三万円となりまして、現在と比べて約四十万円の増加が必要となるということでございます。
これを来年度から毎年均等に引き上げるということにいたしますと、年間約二万五千円の値上げが必要ということになろうかと思ってございます。
○畑野委員 大変な額が言われたわけですね。十五年間で四十万円値上げになる、学費が年間九十三万円になる、今の私立大学よりも高い額になる、それは今三歳の子が十五年後にはそうなるということですよね。
これまで政府は受益者負担とか私学との格差是正とか言ってきましたけれども、今回のように国の予算を削るために学生や保護者の負担を求めるというのは前代未聞です。
かつて、私などは国立大学の学費は年間三万二千円の時代でした。今や五十三万五千八百円、初年度、入学金を合わせると八十一万七千八百円もかかる。これ以上はもう払えない、無理だということですよね。ですから、十年間、国立大学の学費は値上げされずに来た。ところが、こんなふうな、財政審が言うような方向になれば、国立、公立、私立、学費値上げの連鎖は極端なことになるわけです。
きょう、国立大学協会にお話を伺ってまいりましたら、馳文部科学大臣には、国立大学協会と公立大学協会と、そして日本私立大学団体連合会の三者から、十一月十八日に、こんなことはよしてほしいと、国家予算における国公私立大学の基盤的経費拡充に関する要望書というのを出してきたというふうに言っておられました。
それで、私は、このように国立大学の学費を値上げするということは、高等教育について段階的に無償にすると言って国際人権規約を日本政府は批准いたしました、こういう日本政府の国際公約に反することになると思うんですが、馳浩文部科学大臣の御認識はいかがでしょうか。
○馳国務大臣 国際人権A規約第十三条においては、「高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。」と規定されております。
授業料の引き上げについてのお尋ねでありますが、国際人権A規約の当該条項は、授業料減免や奨学金事業などを含め、教育費負担軽減のための種々の施策により、教育の機会均等を図っていくことを求めているものであり、文部科学省としては、こうした条項の趣旨に鑑みて、学生の教育費負担の軽減に努力してまいりたいと思います。
○畑野委員 おっしゃるとおりに、国際公約の立場で、学費の値下げ、それから奨学金制度の充実に向かっていくべきときだというふうに思うんです。それが日本の政府の務めだと思うんです。
国立大学協会の声明で、やはり「経済格差による教育格差の拡大につながる。経済条件にかかわらず、また我が国のすべての地域において意欲と能力のある若者を受け入れて優れた人材を社会に送り出すという国立大学の役割を十分に果たすことができなくなる」と、危惧の声が今回寄せられております。
今、学生の過半数は、借金である貸与制の奨学金を借りざるを得ない。そして、その多くは有利子で、卒業と同時に、平均的には三百万円、多い場合は一千万円もの借金を負うことになります。大学院生も深刻です。その結果、多くの学生がアルバイトに頼らざるを得ない。そして、違法、無法な働き方を強いるブラックバイトから抜け出せないという状況になっております。
私は、私の地元の首都圏の学生から聞いてまいりました、ぜひ馳大臣にお伝えしたいんですけれども、ある学生は、奨学金を返済することが不安だというので月五万円を三万に減らした、ところが親の仕送りも減った、バイトをふやそうと思ったけれども、条件が合うバイトがなかなかない、泣く思いでいると。また、学費免除の学生は、成績が下がると学費免除が打ち切られる、大学をやめなくちゃいけなくなるというので、学びたい授業もやめている、学べない。それから、ある学生は、来年、大学受験と高校受験の兄弟が二人いる、だから親が授業料を出せるのか本当に心配している、体も大丈夫か、一生懸命働いてくれているけれどもという声を寄せてくれました。それから、私立の女子大生ですけれども、高校生のときから奨学金を借りている、返済のためには相当返さなくちゃいけないので、教員になろうと思ったけれども初任給が低いのでやめて、給料の高い民間企業を志望することに変えた。また、私立の高校生は、兄弟がいるので四年制を諦めて短大に行くことにしましたと。
馳大臣、国の予算を削るために学生にさらなる負担を強いる、こういう財務省のやり方は到底認めることはできないと思いますが、いかがでしょうか。
○馳国務大臣 基本的な考え方は同じでありますし、本末転倒であると私はまず思っております。
その上で、基本的には、学生等に対してできるだけ教育費負担をかけないようにしていく必要があり、意欲と能力のある学生等が経済的理由で進学などを断念することがないように、安心して学ぶことのできる環境を整備していく必要があると考えています。
教員や学生が安心して活動が行えるよう、平成二十八年度予算編成に向けて、基盤的経費である運営費交付金の確保が図れるようにしっかりと取り組んでまいりたいと思います。
○畑野委員 それで、あわせて、財政審の分科会で示された財務省の提案に対しては、国立大学協会はもちろんですが、中央教育審議会、それから国立六大学連携コンソーシアム、北陸地区国立大学連合、滋賀医科大学、お茶の水女子大学、北海道大学、横浜国立大学、秋田大学、神戸大学などが抗議声明を出されております。大学関係者のみならず、財界関係者や県知事、県医師会など、幅広い各界の方が抗議声明に名を連ねてくださっているんですね。きょうも、国立大学協会に伺いましたら、地域の国立大学、あるいは私立、公立を含めて、地域の経済界の人が本当に期待している。自分たちが思っていた以上の声が寄せられているということです。
お話がありましたように、運営費交付金が法人化後十二年間で一千四百七十億円、一二%も削減されてきて、懸命の努力を現場はしてきている、しかし、消費税率の値上げや電気料金等の値上げによってそういう努力も限界に達しつつある、これ以上の削減などあり得ない、ふやしてほしいということを求めているんですね。
毎年一律の削減係数を撤廃するとともに、物価等の動向に応じた所要の措置を講ずることを国立大学協会として要望しているということですが、こういう声にぜひ応えていただきたいと思いますが、いかがですか。
○馳国務大臣 国立大学法人運営費交付金については、一律の削減ありきという考え方は反対であります。また、物価動向等の社会経済情勢等及び教育研究上の必要性を総合的に勘案して対応することが必要であると考えています。
なお、文部科学省では、各国立大学の機能強化を進めていくため、単純に一律削減する係数ではなく、その取り組みを支援することを目的とした機能強化促進係数、これは仮称でありますが、それにより一定の財源を確保した上で、運営費交付金を重点配分する仕組みを導入することを検討しております。
国大協の要望も踏まえつつ、国立大学が現在進めている機能強化のための改革を後押しすべく、国立大学法人運営費交付金の確保に努めてまいります。
○畑野委員 地方も大変、そして首都圏も大変。だけれども、本当に地方が疲弊しているんですね。もう将来は学長のなり手がいなくなるんじゃないかという声も寄せられているんです。ですから、国立大学の役割あるいはそれぞれの地域の大学の役割、これをしっかり見て、どこかをふやしてどこかを減らすというんじゃなくて、抜本的に底上げをするというのが私は必要だというふうに思うんですよ。
なぜなら、憲法は国民にひとしく教育を受ける権利を保障しております。教育の機会均等ということでいえば、経済的な理由で、あるいは地域の差によって教育を受ける権利が奪われるということはあってはならないということであるからです。そういう点では、大学の存続も含めて、本当に心配されているということです。
私、資料で二枚目につけさせていただいたんですが、国際的な状況で、OECDの、二〇一二年度高等教育予算についてのGDP比各国調査が出ております。二〇一二年も、日本はGDP比〇・五で、先進国最低クラスです。OECD諸国の平均はGDP比一・二で、その前の年一・一から一・二に上がっているんですね。かつては一・〇というのが平均だったのが、もう一・二ですよ。
ですから、もっと大学予算をふやして、大学教育、研究への支援や給付、奨学金の創設などの支援や、また、学費は抑制していく、下げていくということができる経済力はあるわけですよね。
そういう点で、私は、きょう委員会に来られている各会派の、党の皆さんに、私たちは「学費の連続値上げは許さない」というアピールをお届けさせていただいたんです。国の大学予算を削減するために学費を値上げするという方針は、これは党派を挙げて撤回を求める必要がある。これは、国民や学生や、あるいは子育て中の皆さんとも力を合わせてその一点で頑張りたいというふうに思って、呼びかけさせていただきたいと思います。
後でこのアピールは馳浩大臣にもお届けしたいと思います。委員会が終わったらお渡ししたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。
さて、先進国と比べても、日本の教育条件は大変立ちおくれていると言わなければなりません。OECDの平均と日本の平均で、小学校、中学校の一学級当たりの子供の数について伺いたいと思います。
○小松政府参考人 お答え申し上げます。
OECDの調査によりますと、これは二〇一五年度版の発行物によるものでございますけれども、小学校段階では、お尋ねの件、OECD平均が二十一・三人、日本は二十七・四人。中学校段階では、OECD平均が二十三・六人、日本は三十二・五人となっているところでございます。
○畑野委員 OECD平均よりも日本の子供の方が一クラス当たり多くなっているということです。
伺いますけれども、公立の小中学校の教職員定数をめぐっても、先ほどから各委員から発言があるように、九年間で約三万七千人もの削減を財政審の建議は打ち出しました。とんでもないことです。馳大臣はセンスのなさに愕然としたというふうにおっしゃったと新聞報道で読ませていただきましたけれども。
既にこの文部科学委員会ではことしの六月に、当時の財政審が教職員大幅削減の議論を行っていることに対して、到底容認できない、全会一致で、大臣も当時委員としておられて賛成をして、決議をいたしました。
この点で、今回の財政審の教職員定数削減に対してどのようにしていかれるつもりか、馳大臣の御見解を伺います。
○馳国務大臣 できれば財務省の坂井副大臣もお招きいただければよかったんですが、私は、先ほどの答弁を聞いていて、坂井副大臣のベースラインと言ったところを、加配の現状を踏まえたベースラインというふうにおっしゃったことに大変な違和感と、正直それは違うということを申し上げました。
つまり、県単費で、市単費で、やむ得ず、必要だと思われる加配教員を配置している、そこをベースにして機械的に削るということは、地方の努力も一緒になって削って、では地方はどうするんだといえば、今までの自己負担しているような県単費、市単費部分をさらに自己負担で出さなければいけないということであって、これこそ負担のツケ回し以外の何物でもないと思っています。
ただ、財務省が言っている、どこをベースにして議論したらいいのかという議論には私は応じたいと思っています。
今実際に各自治体で取り組んでいる実態を踏まえた数字をもとにして、いや、これはベースとして守りながらも、今必要とされている習熟度別の教育の必要性とか、少人数教育の重要性であるとか、障害児に対するきめ細かな支援とか、また小学校の専科教員の課題もありました、また外国人に対する日本語教育の課題もありました。現場では、それぞれ必要と思われる加配を求めて、減ることはないんですよ、何でもっとよこしてくれないのかという声ばかりでありますから、その声を踏まえた交渉をすべきだ、こういうふうに考えています。
○畑野委員 少人数学級になって、掛け算、九九も一時間に二回ずつ聞いてあげられるし、漢字の学習でも授業の中で全員のノートを見て回ることができる、一番の問題は進級するときに四十人学級に戻らなければならないことなんだ、だから、クラスの規模を小さくして、一人一人の子供が自分の思いをゆったりと受けとめてもらえるような条件を整えることが必要じゃないかというのが現場の教員の声として上がっているんですね。
この六月の委員会で上げた決議の中では、「教職員定数の計画的な改善に当たっては、義務標準法を改正し、」ということで、三十五人学級を法制化して実現しようと全会一致で決議を上げたわけですね。
ですから、私は、そもそもクラスサイズを今よりも小さくしていくということをもっと正面から議論するべきだと思うんですが、いかがですか。
○馳国務大臣 少人数学級の教育効果を高める有効性というのは私ももちろん同じ考えであります。同時に、私、少人数教育という言い方も申し上げました。これはまさしく習熟度別の教育のあり方であります。
同時に、三十五人を下回った場合に、これを定数にしてしまうと、分割をすると十七、八人のクラスになってしまうということが本当に教育効果上いいのかどうかということも考えれば、望ましいとは思いますが、財政状況も考えたらなかなか厳しい現実もあるということも踏まえる必要があると思っています。
したがって、少人数学級の役割を全く否定するものではありませんが、少人数教育と組み合わせての役割といったことについても私はより一層検討する必要があると思っています。
○畑野委員 安倍首相が二月二十三日に、三十五人学級の実現に向けて努力していきたいと言っているわけですから、ぜひ政府として実現のために全力を挙げていただきたいと思うんです。
最後に、高速増殖炉「もんじゅ」について質問して、終わります。
これまで、建設に五千八百八十六億円、運転・維持費に四千三百三十九億円、合計一兆円以上つぎ込んだ結果が今の状況なんですね。大変な無駄遣いですから、これはどう馳大臣は総括するのか。
私は「もんじゅ」の廃炉を決断すべきときだと思いますが、いかがですか。
○馳国務大臣 核燃料サイクル事業、この事業の重要性を考えた場合に、無駄という言葉で一刀両断することは私は適切ではないと思っています。
ただ、今回の問題はやはり、安全運転そして点検の問題等についてのこれまでの原子力規制委員会の指摘を踏まえて、ある部分、運営主体をかえろという話でありますから、これは重大な意味を持っていると思っていますので、まずはこの勧告に従った対応を、これはこれで丁寧にするべきだと思っていますので、その点において取り組みます。
○畑野委員 国民の安全にとっても「もんじゅ」は廃炉にすべきだということを申し上げて、質問を終わります。