第189回国会 2015年7月14日法務委員会

盗聴法拡大/記録消去、検証できず/畑野議員が追及

 刑事訴訟法等改定案の柱の一つである盗聴法の拡大問題で、犯罪に無関係な通信が盗聴されてもその記録が捜査機関によって完全に消去されたのか否か、チェックされない危険性が14日の衆院法務委員会で、日本共産党の畑野君枝議員の質疑を通じて浮き彫りになりました。
 警察に盗聴された傍受記録のなかで、犯罪に関連する通信以外は捜査主任官らの判断で消去されることになっています。
 畑野氏が通信を消去したのか否か客観的な検証が可能か問いただしたところ、警察庁の三浦正充刑事局長は「法律上消去しないといけないと書いている」「捜査機関としてはそうしたこと(=消去しないこと)は行わないよう心している」と答弁しました。畑野氏は「法律に書いているというだけで、結局はブラックボックスだ」と厳しく批判しました。
 畑野氏はまた、盗聴にあたって「特定電子計算機」を使う場合、これまで義務付けられていた通信事業者の立ち会い制度を廃止する問題に言及。「違法な通信傍受が行われる可能性が高い」と追及しましたが、上川陽子法相は「適正な実施を確保する」とのべるだけでした。
 畑野氏は「盗聴法は『通信の秘密』『プライバシー権』を侵害する違憲の法律だ」と批判し、撤回を求めました。
(
2015年07月15日付 しんぶん赤旗より転載)

 

【会議録】 

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
 刑事訴訟法等一部改正案ですが、本日から通信傍受法、いわゆる盗聴法の改正案についての審議が始まりました。
 私は、まず初めに、憲法違反と言われ、多くの反対の声が寄せられてきた盗聴法を今回さらに拡大するとともに、それをほかの法案とともにあわせてのめと言わんばかりのこそくなやり方で刑訴法改正案が提出されたことに強く抗議をするものです。
 私は、緒方宅盗聴事件の住民訴訟原告として、盗聴を許さないと訴えてまいりました。当委員会でも、奥野委員長のもと、通信傍受施設の視察が超党派で、委員会として行われました。私もその調査を求めてきた一人です。
 そもそも、現行の通信傍受法、盗聴法は、憲法で保障された通信の秘密、プライバシー権を侵害する違憲の法律と言わなければなりません。
 通信傍受方法について、まず伺います。
 お手元にお配りいたしました資料ですけれども、その一枚目に四つの方式が書かれております。一、現行のリアルタイム方式、通信事業者の施設で聞くものです。この方式に加えて、法案では、二、一時的保存方式、通信事業者の施設で行うもの、三、特定電子計算機を用いるリアルタイム方式、これは捜査機関の施設で行うもの、四、特定電子計算機を用いる一時保存方式、捜査機関の施設で行うものの三種類の新しい通信傍受方式が準備されております。
 まず、一つ目の現行の方式について伺います。
 これは今後も使われるのですね。確認です。
林(眞)政府参考人 御指摘のとおりでございまして、現行のリアルタイム方式で行う通信傍受は今後とも制度として残っております。
畑野委員 そうしますと、その次の資料のところで、この間当委員会で通信傍受施設に調査に伺ったときに警察庁から資料をいただきましたので、それを、二枚目、電話傍受(音声傍受)装置と、それから三枚目、メール等傍受装置の資料、そして次に、メール閲覧時の表示内容、スポット傍受が行われるときのものをつけました。
 今の方式について、資料の五枚目なんですが、ここのちょうど左のところにあります立会人のところも見させていただいたわけですが、その部屋から出て、ちょうど真ん中の下のところに七と黄色い囲みがありまして、犯罪関連通信等以外の通信を消去するというところがございます。
 通信傍受をする場合、警察によって傍受された通信傍受記録の中で、犯罪関連通信等以外の通信であれば消去されることになっております。伺いたいのは、それを判断して、その通信部分を消去するのは誰になるか、お答えいただけますか。
三浦政府参考人 その対象の通信が犯罪関連通信であるかどうかということを判断するのは、その捜査を担当している捜査責任者ということになろうと思います。
畑野委員 捜査責任者、具体的にお名前を言えますか、どういう人か。
三浦政府参考人 例えば、本部の薬物担当課においてそういった薬物関係の通信傍受を行っているという場合には、そうした所属の幹部といいますか、そういった捜査を担当するセクションのしかるべき幹部、責任のある者が判断をするということだと思っております。
畑野委員 幹部というのはどういうクラスの方ですか、階級でいうと。
三浦政府参考人 一概にはちょっと答えにくいと思いますけれども、一般には、捜査主任官をしている警部であり、あるいは、その上司である警視級のクラスの者であろうと思っております。
畑野委員 警察庁からいただいた依命通達からは、それぞれかかわる捜査主任官ですとか、それから傍受実施主任官ですとか、通信記録物等管理者とか、そういうのを伺っているんですが、そういう人たちですか。それとも、もっと上の方ですか。
三浦政府参考人 そのとおりでございまして、そうした主任官が判断をするものと理解しております。
畑野委員 それでは、そういう人が消去したというのをチェックするのは誰になりますか。
三浦政府参考人 そうした捜査資料、通信傍受の結果等も含めまして、それはまたその上司等に報告をされるということになろうかと思いますので、そうした者が一義的にはチェックをするということになろうと思います。
 そのほか、傍受の経過につきましては、全て原記録という形で作成をされますので、その原記録は裁判所に提出をされまして、最終的には、どういう傍受を行ったのか、どういう内容の通信を取得したかということについては、裁判所の方でそうした記録が残されるということだと理解をしております。
畑野委員 最後のところが全然違うんですよ。
 原記録は裁判所に行くんですけれども、捜査上必要な記録をもう一つつくりますよね。そこで犯罪に関係ないものは消去しなくちゃいけない、担当者が消す、それをチェックするのは上司ですということですよね。そこまではいいんですけれども、その次なんです。
 適正に消去されているかどうか、犯罪に無関係な通信が消去されているのかどうか、これを検証する制度というのはあるんですか。
三浦政府参考人 傍受をいたしますと、一般に、その通信当事者に対して通知が参りますので、そうした通信の当事者につきましては、事後的ではありますけれども、どういった記録がつくられたのかということを、例えば閲覧するといったことが可能でございます。
畑野委員 質問に全然お答えになっていないんです。よくわかっていないのかというふうに言わざるを得ないんです。
 私が聞いているのは、この資料の五枚目の真ん中の黄色の七、犯罪関連通信等以外の通信を消去、つまり、裁判所に行ったのではない、捜査機関に行く、作成された傍受記録について聞いているんです。これは犯罪に関係なければ消去しなくちゃいけないということですが、では、それを本当に消去したのかどうかをチェックする体制はあるんですかと聞いているんです。
三浦政府参考人 ちょっと御質問の趣旨を正しく理解しているかどうかというところはありますけれども、傍受記録を作成する際に犯罪に関連しない通信を消去する、それは、先ほど来申し上げておりますように、一義的には捜査主任官といいますか、そうした捜査を担当する者の責任においてなされるものだというように考えております。
 そのほか、傍受記録の通信の当事者に対しては通知がなされるわけですので、その当事者は、原記録ではなく傍受記録の閲覧をするということが可能でございます。また、傍受記録につきましては、最終的には捜査資料として裁判所に提出をされるといったことにもなりますので、そうした無関係な通信が含まれているとすれば、そういったところでもチェックが働くものというように考えております。
畑野委員 ですから、その傍受記録ですけれども、消しましたということにして違うものが残っているということだってあり得るじゃないですか、考えようによっては。そういうことを含めて、本当に正しく消去できたのかということを客観的に検証するような制度はあるんですか、過ちのないようにできているんですかということです。
三浦政府参考人 法律上も消去しなければならないということが明確な規範、規律として書かれているわけでございまして、もしそうしたものに違背をして正しく消去をしていなかったとなれば、そうした規律といいますか、規制にも違反をすることにもなりますので、通常、そうしたことは行われ得ず、特に、傍受というのは非常に重要な手続といいますか、慎重な処理を要するものでございますので、捜査機関としては、そうしたことは起こらないように心して行われているものというように理解をしております。
畑野委員 つまり、そういうのを検証する制度はないということですよね。法律に書かれていますということしかないじゃないですか。結局、ブラックボックスですよね。
 山谷国家公安委員長に伺います。
 お話を聞いていて、これは本当に、法律に基づいてやると言うんだけれども、それをきちっと客観的にチェックできる制度があるのかどうかということが問われていると思うんです。山谷大臣の御所見を伺いたいと思います。
山谷国務大臣 警察といたしましては、法制度に従って運用をしていくという立場でございます。制度設計に関するお尋ねであれば、制度所管の法務省からお答えするのが適当かと存じます。
畑野委員 警察内部で行い、あるいは捜査内部で行って、チェックができるわけはないということを申し上げたいというふうに思います。何の保証もないということです。
 一つ目はそういうことで、現行で、これからも続けられるということなんですが、では、先ほどお配りした一枚目の資料、四つの方式がありますけれども、時間の関係で、三つ目と四つ目について伺います。
 三、特定電子計算機を用いるリアルタイム方式、四、特定電子計算機を用いる一時的保存方式です。これは、濫用のおそれが極めて高い、問題のある方式だと思うんです。なぜならば、立会人制度が廃止されているからです。
 通信傍受をする際に立会人がいるということは、捜査官にとって、違法な捜査はできないという大きなプレッシャーがかかっているというふうに私は当委員会での視察でもよく理解ができました。
 伺いますけれども、そもそも立会人を置いてきた趣旨について御説明ください。
林(眞)政府参考人 現行通信傍受法において、傍受の実施をするときは、常時立会人を立ち会わせなければならないとされております。その趣旨は、捜査機関以外の第三者を立ち会わせることにより、傍受の実施手続の公正を担保しようとするものでございます。
 具体的に言いますれば、立会人は、傍受のための機器に接続する通信手段が傍受令状により許可されたものに間違いがないかどうか、許可された期間が守られているかどうか、傍受をした通信等について全て録音等の記録がなされているかどうかなどの外形的な事項についてチェックをする役割がございます。
 また、傍受の中断、終了の際に、裁判官に提出される傍受した通信を記録した記録媒体について、改変を防止するための封印を行う、こういった役割を果たすことによりまして、通信傍受の実施について、その適正を確保することが求められております。
畑野委員 立会人はそういう役割だったという話ですが、それでは、今回の法案で、三、特定電子計算機を用いるリアルタイム方式と、四、特定電子計算機を用いる一時的保存方式の場合に、立会人制度を廃止した理由は何ですか。
林(眞)政府参考人 特定電子計算機を用いる通信傍受の実施手続におきましては、まず通信事業者が、傍受令状により許可された通信手段を用いた通信を、許可された期間に即して、特定電子計算機へ伝送することとされております。そのことから、これによりまして、傍受のための機器に接続する通信手段が傍受令状により許可されたものに間違いがないか、許可された期間が守られているかという点の適正は担保されると考えております。
 また、現行通信傍受法におきまして、立会人が、傍受をした通信等について全て録音等の記録がなされているかをチェックし、裁判官に提出する記録媒体の封印を行うこととされているのは、傍受が適正に行われたかどうかというものを事後的に検証できるようにするためでございます。この点につきましては、特定電子計算機が傍受をした通信の全てと傍受の経過を自動的にかつ改変できないように暗号化して記録することによって、担保されます。
 したがいまして、こうした立会人がなくても、通信傍受を適正にできる手当てはなされているわけでございます。
 なお、通信傍受で、現行のもとで立会人が行う外形的事項のチェックといたしまして、捜査官が該当性判断のための傍受、いわゆるスポット傍受の際の機器のスイッチのオン、オフを行っているかどうか、こういったことを外形的に立会人がチェックすることも含まれているとされております。
 もっとも、仮に捜査官がこの傍受機器のスイッチのオン、オフを行っていないことを立会人が認識して指摘し得ることがあるといたしましても、捜査官が適正に該当性を判断して傍受を継続しているかどうかにつきましては、最終的には通信の内容を踏まえなければ判断することが困難であり、現行通信傍受法は、この該当性判断のための傍受の適正というものは、基本的には、傍受した通信が全て傍受の原記録に記録されて、事後検証が可能となるということによって担保されていると考えます。
 この点、特定電子計算機を用いる通信傍受の実施の手続におきましても、該当性判断のために傍受をしたものをも含め、傍受をした通信が全て改変できない形で自動的に記録媒体に記録され、事後的に検証され得る以上、立会人がいる場合と同様に、傍受の実施の適正が確保されるものと考えております。
畑野委員 詳しい話をいろいろとしていただきました。
 伺いますけれども、通信傍受令状がありますよね。これを発付する際に、この事件についてこの特定電子計算機が使われる、それが適正に作動するかどうかということをきちんと検証する必要が出てくると思うんですね。
 それでは、裁判官が通信傍受令状を発付するときに、それを判断することはできるんですか。
林(眞)政府参考人 通信傍受令状を請求する際に、特定電子計算機を使うということであれば、そのことの疎明を必ず裁判官に向かってすることになります。その際に、裁判官においては、どのような特定電子計算機において行われるものであるか、その特定電子計算機の仕様がどのようなものであるか、こういったことをあわせて判断した上で、令状相当と認めるときには令状を発付するということになろうかと思います。
畑野委員 裁判官全員が、難しい暗号の話とか、あるいはいろいろな仕様のことについてわかるのか、疑問ですよね。
 大体、私たちも委員会で現行の傍受装置は見に行きましたけれども、これからどういうものができるか、それが本当に正しくできるのかというのは誰も見ていない、つくってもいないわけですから。ですから、国会議員もここで審議するんだけれども、チェックもできないですよね。どうですか。
林(眞)政府参考人 新たな通信傍受の手続の許可を得ようとする場合には、捜査機関は、傍受令状の請求に当たりまして、実際に用いようとする装置の仕様書でありますとか、当該装置を製造した民間業者がこの仕様書に沿って製造したものであることを証する文書、当該装置が法律で定めるところの特定電子計算機の要件を満たす機能を有するものであって、裁判所の職員が作成する鍵を用いた暗号化や復号を行うことができるものであることを示す資料、こういったものを提供することとなろうかと思います。
 また、通信の暗号化等を行う通信事業者の設備面、人員面での体制でありますとか、捜査機関と通信事業者との間の事前協議の状況に関する資料など、技術的な事項も含めまして、裁判官が新たな傍受の方法を許可するのが相当であると判断するに足りる資料を提供することとなろうと思います。
 裁判官におきましては、そうした資料を吟味するなどして、法定の手続に従って適正に傍受が実施されると判断した場合に、傍受令状を発付することになろうかと思います。
畑野委員 この特定電子計算機は、本当にブラックボックスだと思うんですよね。どういうふうな仕様になっているか、チェックすることができないというふうに言わなくてはなりません。
 さらに、こうした三番目と四番目の方式ですけれども、捜査機関が自由に通信データを聞くことができるわけですね。これまで通信事業者の施設だったのが、捜査機関の施設になるわけです。
 この場合に、捜査機関が、記録された通信データを違法にコピーすることは可能なのではないかと思いますが、いかがですか。
三浦政府参考人 通信傍受を行う際には、復号したものが全て原記録として自動的に保存されるということになります。その瞬間、暗号化をされるということになります。
 それを復号するための鍵というのは、これは裁判所のみが保管をすることとされておりまして、捜査機関はその鍵を保有しておりませんので、捜査機関が原記録の複製を作成し、それを活用するということはできません。
畑野委員 なぜそれができないんですか。
三浦政府参考人 原記録は、特定電子計算機の中の処理で、傍受または再生と同時に暗号化をされて記録されるわけであります。その記録を復号する、再び聞くことができるようにするための鍵というのは捜査機関は保有をしておりません。裁判所の職員があらかじめ、通信事業者、それから捜査機関、それから裁判所自身が保管をするものとして三つの鍵をつくるわけですけれども、原記録を復号するための鍵というのは裁判所のみが保管をしているわけでありまして、捜査機関は持っておりません。持っておりませんので、複製を作成するということはできないわけであります。
畑野委員 複製のことを聞いているんじゃなくて、その装置そのものについて聞いているんですね。
 この特定電子計算機ですよ。これはブラックボックスだ、誰も見たことがない、つくられてもいないわけですから。そういう機能をつけるというふうに法律上書くというふうになっているわけですけれども、例えば検察庁や警察署において立会人がいない状態で傍受することを認めるわけですよね。例えば、特定電子計算機の仕様を改ざんして、もう一本ラインを引いて通信データを聞き放題にするということは容易ではないかというふうに指摘する人もいるんです。
 この間、通信傍受施設を視察に行きましたら、先ほどお話があったデロイトトーマツ社からは、破られることのない暗号はあるのかという問いに、絶対ないとは言えない、今は大丈夫と思うけれども将来はわかりませんという話だったわけですね。当たり前ですよ。年金の問題だってそうだし、アメリカでもサイバー攻撃で二千二百万件の情報が漏れるという時代ですよ。
 通信傍受された通信データというのは、個人のプライバシーに関する極めて重要なデータです。この三のところを見ると、赤い線で、通信事業者の施設から直接捜査機関の施設に送られるということですけれども、その傍受データが送信されるときに、その途中に情報の流出の可能性というのはないんですか。
三浦政府参考人 警察におきましては、個人情報初め多くの機密情報を保有しておりますけれども、それらを取り扱う業務に用いるネットワークは、そもそもインターネットとは接続をしておりません。そのため、近時大きな問題となっている標的型メールやDoS攻撃等のセキュリティーリスクとは遮断をされているものであります。
 また、新たな方式による通信傍受では、ネットワークのインターネットからの遮断等、これらの措置を講じることに加えまして、送受信される通信傍受に係る情報それ自体にも強固な暗号化を行うことになっておりまして、セキュリティーについては万全を期しているところでございます。
畑野委員 万全を期すといっても、それも保証がない、通信データが流出する危険性が否定できないということは今の答弁でも明らかになったと思います。
 立会人をなくして特定電子計算機で通信傍受を行う方式では違法な通信傍受が行われる可能性が高いと私は言わざるを得ないんですが、上川法務大臣に伺いたいんですが、立会人をなくすことの危険性についての御認識はいかがでしょうか。
上川国務大臣 今回の法律案におきまして、新たに導入するということで、特定電子計算機を用いる通信傍受の実施の手続ということでケースを三つ追加する、こうしたことでございました。
 立ち会いや記録媒体の封印にかわりまして、暗号技術の進歩、こうしたものを最大限活用した技術的な措置、システムを開発して、そして適正な実施を確保するということで、立ち会いと記録媒体の封印を不要として傍受を行う、こうしたシステムをつくり上げる、これが前提になっているものでございます。
畑野委員 装置もない時点で機械の信頼性について断言するということは、全くの空論であるというふうに申し上げたいと思います。
 最後に、法案では対象犯罪が大幅に拡大をしております。したがって、傍受対象事案は大幅に増加することが予想されます。しかしながら、傍受禁止規定は従前のままになっております。現行法の十五条、法案では第十六条、医師、弁護士などを傍受してはならないという規定がありますが、報道関係者が入っていない、その理由をお示しください。まず、そのことを伺います。
林(眞)政府参考人 現行通信傍受法の第十五条、これにつきましては、医師や弁護士等の職にある者との間の通信については傍受をしてはならない旨を規定しておりますけれども、報道機関との間の通信については、傍受の禁止の対象とはしておりません。
 この理由でございますが、これは、通信傍受法第十五条は、刑事訴訟法の押収拒絶権あるいは証言拒絶権と同様に、依頼人との個人的な関係に基づいて個人の秘密を委託されることによって成り立つ特定の職業に対する信頼の保護を図るもの、こういったことから、報道機関による取材及び報道機関に対する情報提供は、原則、報道に資することを前提としたものでございまして、個人の秘密を委託されることによって成り立つ医師や弁護士と同一に論じることができないことが理由でございます。
畑野委員 きょう、資料の六枚目以降、この問題について法務省から資料をいただきましたので、添付させていただきました。
 これは、結局、法律じゃない。そして、通達ではいろいろと書かれております、適正な運用をされるようにと。しかし、通達に反する傍受がなされた場合でも、厳格な制裁、すなわち刑罰は捜査機関に科せられないということですか、法律でないので。
林(眞)政府参考人 一般に、通達というものに対しては、当然、職員としてはその通達に従う義務がございます。
 他方で、通達の違反の効果というものについては、それは直ちに刑罰とかそういったものが適用されるものではございません。
畑野委員 厳格な制裁がないと言われました。通達どおりに運用がなされるとは思えない。
 大臣、この点はいかがですか。
奥野委員長 上川大臣。もう時間が来ていますから。
上川国務大臣 報道機関等の通信傍受については禁止をするということで、通達によってそれを担保するということでございます。
 十五条に規定はないわけでありますけれども、先ほどの局長答弁のとおりの理由ということでありますが、通達によってこれを禁止するということでございます。
畑野委員 そうした曖昧な基準だということを申し上げて、撤回を求めて、質問を終わります。