第189回国会 2015年5月22日法務委員会
裁判所支部の増設を
畑野議員 日弁連要望ふまえ要求
畑野君枝議員は22日の衆院法務委員会で、全国の裁判所支部の新設・復活を強く求めました。
日本弁護士連合会と党との懇談会で出された要望を受け、畑野氏が実際に千葉県内の裁判所に足を運ぶなどして調査・懇談した内容を踏まえたもの。
畑野氏は、千葉・京葉地域の住民が裁判所に容易にアクセスできず、不利益を受けているとして「新設する必要がある」と強調しました。最高裁判所の中村慎総務局長は「(京葉地域からの新設要望は)重く受け止めるが、種々の要素を考慮して決めたい」と述べました。
( 「しんぶん赤旗」2015年5月24日付け )
【会議録】
○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
まず、地方裁判所の支部新設、復活について伺います。
地方裁判所の配置について、支部がないために、支部の新設、復活を求める声が全国にございます。日本弁護士連合会には、利用者から次のような声が寄せられています。
「千葉県の京葉地区(船橋市、市川市、浦安市)の人口は百二十万人以上なのに、裁判所支部がない。千葉市にある本庁まで出かけなければならない。」「和歌山県は県北東部に裁判所支部が設置されていない。橋本市やその周辺の住民は、裁判をするために往復三時間かけて和歌山市の本庁まで行かなければならない。」「新潟県では、かつて存在していた裁判所支部が四つも廃止され、近隣住民は不便を被っている。廃止された村上支部、柏崎支部、六日町支部、糸魚川支部を復活させ、住民の利便に応えるべきだ。」「京都府では、南部地域に裁判所支部がない。近年発展した地域であり、管轄人口の急激な増加を考えても、この地域に裁判所支部を設置すべきだ。」などの声です。
全国の裁判所支部の新設、復活をという声にどう対応されるつもりですか。
○中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
支部の配置を含めました裁判所の配置は、人口動態、交通事情、事件数の動向、あるいはIT技術の進展等も考慮しながら、裁判所へのアクセス、提供する司法サービスの質等を総合した、国民の利便性を確保するという見地から検討していかなければならない問題だと承知しているところでございます。
現在、委員御指摘のとおり、複数の地域におきまして、裁判所の支部設置の要望が出されていることは承知しているところでございます。
今申し上げました観点からいたしますと、直ちに新たな支部を設置したり、廃止した支部を復活させなければならないという状況にあるものとは考えておりません。
もっとも、今後とも、事件動向や、人口、交通事情の変化、IT技術等を注視しながら、必要があれば、支部の新設、統廃合を含めまして、裁判所の配置について見直しを行ってまいりたいというふうに考えております。
○畑野委員 それでは、これまでに裁判所支部を新設、増設した例がございましたら、御説明ください。
○中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
比較的最近の例を二例お答えいたします。
昭和四十七年に沖縄県が我が国に復帰したことに伴いまして、那覇地方・家庭裁判所の支部として、コザ支部、名護支部、平良支部、石垣支部の四つの支部が設置されました。コザ支部については、名称は今、沖縄支部と変更されております。
その次の新設でございますが、平成二年四月に全国的な地家裁支部の配置の見直しを実施いたしました際に、札幌地家裁苫小牧支部、横浜地家裁相模原支部を新設することを決定しました。なお、実際に開庁したのは、苫小牧支部が平成五年、相模原支部が平成六年でございます。
○畑野委員 最近の例から見ましても、二十数年がたつということです。
一昨日、私も、千葉家庭裁判所市川出張所、市川簡易裁判所に伺いました。地域の方は、例えば、御高齢の方が詐欺事件に遭って裁判所に行こうとすると千葉本庁に行かなければならず、とても苦労していると訴えておられました。
千葉県の京葉地区に裁判所の支部がないことで、住民の方が不利益を感じていらっしゃることは承知されていますか。
○中村最高裁判所長官代理者 平成二十六年六月に、市川市、船橋市、浦安市の各市議会で、支部の設置を求める意見書が可決されております。京葉地区は、人口が多い地域であるにもかかわらず、司法基盤が人的、物的に不十分、未整備であるという指摘がその意見書の中でされているということは承知しているところでございます。
○畑野委員 千葉県の京葉地区の実情をつぶさに考慮いたしますと、裁判所の支部そのものを新設する必要があると思いますが、いかがですか。
○中村最高裁判所長官代理者 先ほど御答弁させていただきました意見書については、裁判所といたしましても重く受けとめているところではございますが、先ほど答弁させていただきましたとおり、裁判所の支部の設置につきましては、種々の要素を考慮しながら決めていくということになると思います。
現時点におきまして、現状の京葉地区の千葉本庁までの交通事情を鑑みますと、他の地域に比較した場合に不便であるという実情にあるとまでは言えないというふうに考えております。
いずれにいたしましても、最高裁といたしましては、今申し上げましたような観点から諸事情を注視いたしまして、必要があれば、支部の新設等を考慮していくということになろうと思います。
○畑野委員 家裁市川出張所で家事事件を新しく受けた件数というのは、本庁や支部と同規模になっているということもよくつかんで、対応していただきたいと思うんです。
裁判の迅速化法に基づいた第四回報告書で述べている支部のあり方について伺います。
○中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
第四回の迅速化検証の報告書におきまして、「各支部の規模や事件状況、社会経済状況の変動状況を始めとする地域環境等を勘案しながら、各地域における司法サービスの充実を図るための様々な方策について多角的に検討を進める。」ということが書いてあるところでございます。
この点につきまして、最高裁におきましては、現状でも同様の認識を持っておりまして、適正迅速な事件処理に支障を来すことのないように対応し、必要な体制整備に努めてまいりたいと考えております。
○畑野委員 地方における裁判所支部というのは、住民の皆さんが司法サービスを受ける一番身近な窓口であると思います。
労働審判などを初め身近な法律紛争を解決する場として、支部は国民の皆さんの司法サービスにとってとても重要な存在であるということですので、今おっしゃられた立場から、一層、司法サービスの充実のために、支部の新設、復活に向けて検討を進めていただきたいということを申し上げたいと思います。
次の質問に移ります。盗聴法、通信傍受法の問題を伺います。
電話、メール、公開されていないSNS、ソーシャルネットワークを他者から監視されない権利は、憲法二十一条二項、通信の秘密によって保障されておりますが、個人の秘密はプライバシーとしても保護されると考えられております。個人の秘密は、人が社会生活を送っていく上で大変重要な権利だと思います。
上川法務大臣に伺います。
現代の社会で、電話、メール、公開されていないSNSなど、他者とのコミュニケーションをとる手段は、個人の尊厳、人格的生存のために極めて重要な人権と考えますが、いかがお考えになりますか。
○上川国務大臣 委員御指摘の、電話、そして電子メール、あるいはソーシャルネットワークということで、技術が大変進歩する中で、多くのコミュニケーションの手段が広がっているところでございます。
いずれも通信の秘密に係る大変重要なものでございまして、そうした保障が及んでいるというふうに考えております。
○畑野委員 さらに上川大臣に伺います。
電話、メール、公開されていないSNSを盗聴、盗み見されることは人権侵害に当たるとお考えになりますか。
○上川国務大臣 通信の当事者のいずれの同意も得ないで通信を傍受するということについては、これは通信の秘密を制約するものであるというふうに考えております。
しかし、通信傍受法に基づいての通信傍受でございますが、厳格な要件と、そして厳格な手続のもとでのみ認められるもの、こういう中で、通信当事者の通信の秘密を不当に制約するものではなくて、憲法上も許容されるものである、こうした認識でございます。
○畑野委員 法律の二条の二項に、傍受とは、他人間の通信を、当事者のいずれの同意も得ないで、これを受けることと。これ自身が大きな問題をはらんでいると私は言っておきたいと思います。
そこで、次に伺いますが、きょうは、警察庁から提出されました資料を皆さんにお配りいたしました。ごらんください。
一枚目が電話傍受装置、二枚目がメール傍受装置でございます。これは私も初めて見ましたけれども、多分、新しい装置としては初めて公表されたのではないかと思います。特にメール傍受装置というのは私も初めて見ました。
伺いますけれども、この装置の開発にかかわっている会社はどちらですか。
○三浦政府参考人 電話傍受装置、またメール傍受装置、いずれにつきましても、これらの装置は、日本電気株式会社、NECから調達をしているところでございます。
○畑野委員 具体的な会社名も初めて伺いました。
電話、メール、公開されていないSNSを傍受する場合に、どのような装置、システムを使うのか。今、写真も出されましたが、少し具体的に、短く説明していただけますか。
○三浦政府参考人 まず、電話等の音声傍受につきましては、令状に記載された通信を事業者から受信し、アナログ音声のデジタル変換を行った上で、傍受装置本体において傍受を実施することとなります。
電話傍受装置の写真によりますと、こちらから見て手前左側に黒い箱が二つ重なっておりますが、上下に重なっておりますけれども、この上の小さな箱が音声変換装置でございます。
また、右側のパソコン様のものが傍受装置本体ということでございます。
さらに、写真中央手前に二つのドライブが並んでおりますけれども、傍受をした内容は、この二つのドライブによりまして同時に二つの記録媒体に、これはDVDでございますが、こちらに記録をされることになります。一つは、原記録として、傍受の実施の終了後等に立会人が封印をして、裁判官に提出をすることとなります。もう一つは、犯罪関連通信等に当たらない通信の記録を消去した上で、傍受記録として刑事手続に使用するということになります。
他方、二枚目のメール等傍受装置の関係でございますが、メール等の傍受につきましては、事業者からの送信データから令状に記載された通信のデータのみを抽出し、傍受を実施することになります。
傍受した内容は原記録に記録をされます。それを複製した媒体から犯罪関連通信等に当たらない通信を消去したものを、傍受記録として刑事手続に使用するものでございます。
写真上では、左側の黒い箱がデータの選別、抽出装置でございます。そして、中央の機器が記録装置でございまして、右側のパソコン様のものが傍受記録の作成装置ということになります。
○畑野委員 今、写真に基づいて説明をしていただきました。
次に、メール等というふうにおっしゃっていただいたので、私も、メール等傍受装置と、等をつけさせていただきますけれども、メール等傍受装置のスポット傍受、これについて少し教えてください。
どのようにやるのかというのは皆さんよく御存じでないわけで、また、インターネットを通じて全国の国民の皆さんも見ていらっしゃると思いますので、わかるようにお答えください。
○三浦政府参考人 メール傍受装置を用いてメール等の傍受を行う際には、令状に記載された傍受対象のメール等を選別した上でそのメール等を傍受することになるということは、先ほど申し上げたとおりでございます。
そして、選別されたメール等につきましては、その内容を複製した媒体を、例えばメール等の冒頭の一部に限って画面に表示をさせまして、またしばらくして一部を表示させるといったことを繰り返しながら、つまりスポット傍受と同様の方法で断片的に閲覧をしながら、犯罪関連通信に該当するかどうかという該当性判断を行うとともに、犯罪関連通信に該当しない通信についてはこれを消去して、傍受記録を作成するということになります。
○畑野委員 そうしますと、今御説明のありました傍受がなされた場合に、メール、公開されていないSNSの発信先、それから送信先、内容も全て捜査当局が認識することになるわけですね。
○三浦政府参考人 通信の形態はさまざまなものが生じているところでありまして、具体的な傍受や閲覧の方法について一概には申し上げられないわけでありますけれども、メール等の発信先や送信先の情報につきましては、犯罪関連通信に該当するかどうかの判断の必要に応じて、捜査当局において確認を行うということになります。
また、通信の内容につきましては、犯罪関連通信に該当するかを判断する際には、これに必要な範囲に限って閲覧等を行うこととしておりまして、結果として犯罪関連通信に該当しない場合には、その全体の閲覧等は行わないということになります。
○畑野委員 お認めになりました。
資料三枚目を見ていただくと、今の関連が載っているというふうに、これも警察庁からいただいた資料です。
この絵の中にも立会人という図があるんですけれども、電話傍受、メール傍受の際に、この立会人は同じ部屋で作業を見守るのですか。
○三浦政府参考人 立会人は、捜査員が傍受を行っている部屋と同じ部屋におります。
具体的には、通信事業者の施設の場所をお借りしているわけでありますが、同じ部屋におりまして、傍受のための機器に接続をする通信手段が傍受令状によって許可をされたものに間違いないか、あるいは、令状で許可された傍受の期間や時間が遵守をされているかなどの確認を行いまして、また、裁判官に提出をする原記録の封印を行う、そういったことを行っております。
○畑野委員 三枚目の資料なんですけれども、この一番下に指摘しておきたい言葉が書かれているんです。
「問題点」といって、「実施直前の要請、深夜・早朝の実施では立会人確保が困難であり、捜査上の支障大」「事業者施設以外では実施できず捜査体制の負担大」と書かれているんですね。これは、警察の都合しか考えていないことじゃないかと思うんです。
先ほども言いましたけれども、傍受とは何か。それは、他人間の通信を、その同意を得ないで受けるということなんですね。ですから、刑事訴訟法の使命である国民の人権を尊重する観点は入っていないと言わざるを得ません。
奥野委員長に申し上げます。
法務委員会として、きょうせっかく写真が出たんです、私たち、ぜひ現場に伺いたいし、そして、この立会人を含めて、どういう状況かということを調査していただきたいということを求めますが、いかがでしょうか。
○奥野委員長 理事会で検討させてもらいます。
○畑野委員 以上で質問を終わります。