第189回国会 2015年4月17日法務委員会
SNSも盗聴対象
衆院法務委 畑野議員追及で判明
フェイスブックやLINE(ライン)など、若者の間で広く利用されているSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を警察が盗聴(傍受)の対象としていることが17日、日本共産党の畑野君枝衆院議員の法務委員会での質問で明らかになりました。
この日、畑野議員は「(警察が持つ)電子メール傍受機器は、フェイスブックやラインなど、SNSのさまざまな通信手段の盗聴は可能なのか」とただしました。警察庁の露木康浩官房審議官は「SNSについては、法律上、傍受できる通信に該当するので、警察庁としては技術的にも可能になるよう努めている」と答弁しました。
また、警察庁は今年度までに電子メール傍受機器を19式、予算額で約2億8700万円で購入してきたことを明らかにしました。
畑野議員は「メールは、詳細で多量の情報のやり取りが可能だ。令状が認めた範囲に限定して傍受することが技術的に可能なのか、疑念を持たざるをえない」と指摘しました。
さらに畑野議員は、盗聴の要件緩和と対象拡大を盛り込んだ刑事訴訟法等の一括法案について「審議入りすべきでない」と強調しました。また、警察庁の塩川実喜夫官房審議官は、日本共産党の緒方靖夫国際部長(当時)宅の盗聴事件への警察の関与を否定する、従来の警察庁答弁を繰り返しました。
畑野議員は緒方氏の妻、緒方周子さんの手記を紹介し、盗聴による人権侵害を告発。「認めもしない、謝罪もしない警察の権限を拡大することは到底、認められない」と批判しました。
( 2015年4月18日(土)付け「しんぶん赤旗」より )
【会議録】
○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
まず、無戸籍の問題について伺います。
二〇一四年七月三十一日に、事務連絡「戸籍に記載がない者に関する情報の把握及び支援について」が出されました。その調査を受けて、毎月統計を出されていますが、現時点で無戸籍の方が何人いらっしゃると把握されましたか、伺います。
○深山政府参考人 無戸籍の方の数ですけれども、三月十日現在の数字ですが、五百六十七名の無戸籍者を把握しております。これは、法務局において、市区町村の窓口を通じて無戸籍者の存在に関する情報を集約したものですが、未報告の市区町村もあることから、暫定的な数字ではございます。
○畑野委員 四月十日でもまた出るということですよね。
その中で、自治体の話がございましたが、無戸籍の情報を保有している自治体の状況を伺いたいと思います。また、この間、報告を提出した自治体、そして未提出の自治体についても伺います。
○深山政府参考人 先ほどと同じ本年三月十日現在の数字ですが、全市区町村、これは千八百九十六ございますが、そのうち千八百七十一、全体の約九八・七%ですけれども、から情報提供がありまして、そのうち三百二十五の市区町村、全体の一七%が無戸籍者の情報を保有しているという回答でございます。
したがいまして、全市区町村のうち、法務局に対して情報を提供していない市区町村は全国で二十五ございまして、比率にすると約一・三%でございます。もっとも、これらの二十五の市区町村についても情報提供の働きかけをこの間行っておりまして、今後は情報提供がされる見通しが立っているところでございます。
○畑野委員 ということで、無戸籍という情報を保有している自治体は一七%ということでした。把握を進めていただいていると。当初二百人という状況から、現在五百六十七人、さらに四月段階でまた新たな把握の状況が出ると思うんですけれども、まだ氷山の一角というふうにも言われております。
無戸籍の実態を把握するために徹底した調査が必要ですけれども、どのような調査をされていらっしゃいますか。
○深山政府参考人 先ほど委員もお触れになりましたけれども、昨年の七月三十一日に、無戸籍者の存在を把握するための担当課長通知を出しておりまして、この通知によって調査を行っておりますが、その方法は、まず、市区町村や児童相談所などが業務の過程で無戸籍者の存在を把握した場合には、市区町村の戸籍担当者がその情報の伝達を市区町村内で受けます。市区町村の戸籍担当者は、次に法務局にその情報を提供する。法務局においてそれを集約いたしまして、さらに、法務局が月一遍、これを法務省に定期的に報告するという形で調査を進めております。
なお、法務局では、市区町村から情報の集約を受けるだけではなくて、無戸籍者に対して戸籍に記載されるための手続を案内するということも並行して行うこととしております。
○畑野委員 上川法務大臣に伺いたいんです。
実態把握をされていると思うんですけれども、こういうことではまだまだ、無戸籍の解決どころか、実態の把握というのを十分に進めることはできないんじゃないかと思うんですが、御認識はいかがでしょうか。
○上川国務大臣 この無戸籍の問題につきましては、国民の皆さんの、ある意味では、日本の国で生活をしたり、あるいは働いたり教育を受けたりという、非常に大事な、社会的基盤の前提になるものであるということでございますので、これはまさに人間の尊厳にかかわるということで、大変重大な問題であるというふうに、私も、就任当初から大変心を砕きながら取り組んでいるところでございます。
今、法務省の中での取り組みにつきましては民事局長から御報告をさせていただきましたけれども、一人でも多くの無戸籍の方にしっかりと権利を獲得していただくためにも、きめ細かな実態把握というのは大変大事なことだというふうに思っております。そして同時に、把握をした方に対しては、一日も早く戸籍をつくっていただくべく、一人一人の実情があるということでございますので、その方に寄り添ってしっかりとしたサポートをしながら、一日も早く戸籍を取っていただくべく、御案内を丁寧にさせていただくということを徹底してまいったところでございます。
そういう意味では、実態把握が非常に大事なことでございますので、月ごとに集計をするということでありますし、また、過去、無戸籍の方がいらっしゃるというふうにおっしゃった市町村の中でも、時間の経過とともにプラスされているというケースもございますので、まさに徹底した調査を継続してまいりたいというふうに考えております。
○畑野委員 そこで、伺いたいんですけれども、例えば、無戸籍の方が、母の元夫を父としないという戸籍の記載を求める場合に、裁判手続はどのようになっていますか。
○深山政府参考人 今の御質問は、母が離婚後三百日以内に出生した子についてのお話だと思います。この場合に、元夫を父としない戸籍の記載を求めるためには、御指摘のとおり裁判手続が必要でございます。それは大きく二つございまして、一つは、親子関係不存在確認の手続です。もう一つは、強制認知の手続でございます。
もう少し詳しく言いますと、このうち、親子関係不存在確認の手続というのは、子が母の元夫を相手として、法律上の父と子の関係がないことの確認を求める家事調停あるいは訴えを提起するということでございますので、元夫を相手にする手続でございます。
これに対して、二つ目に申し上げた強制認知の手続というのは、子供が、血縁上の父、実際のお父さんとされる人を相手方として、認知を子供の側から求める、やはり家事調停あるいは訴え提起ということですので、元夫はその手続の当事者ではないという違いがございます。ただ、強制認知の場合でも、裁判所で、嫡出推定が及ばない事情があることを認定していただく必要がございます。その立証のために元夫の関与を手続上求めること、これは裁判所の個々の事案における判断としてあり得るところではございます。
○畑野委員 上川法務大臣に伺います。
今話がありましたけれども、血縁上の父に対する強制認知と、それから母の元夫に対する父子関係の不存在確認などの手続、本当に複雑な手続が必要とされておりまして、無戸籍の方が手続の入り口のところで思いとどまってしまうという実態があるのではないかと思いますが、御認識はいかがでしょうか。
○上川国務大臣 まさに委員御指摘の状況があるというふうに理解をしているところでございます。
無戸籍の方の中には、どのような手続をとれば戸籍が取得できるのかということについてなかなかわからない、また、裁判手続をとること自体、ちゅうちょするというようなことがございます。
そうした意味で、法務省におきましても、先ほど申し上げたとおり、その方が発見された暁には、しっかりと寄り添う形で、丁寧に、戸籍取得を一日も早くしていただくということでございますが、それに全力で取り組むということが一点。
さらに、実はホームページを改定いたしまして、どのような形で裁判手続等にアクセスすることができるかということについての必要な情報をできるだけわかりやすくホームページに記載するということであります。昨年の七月及びことしの三月、改定をさせていただいたところでございまして、そうしたものもぜひとも御利用いただきたいというふうに思うところでございます。
また、法務省におきましては、相談に来られた方に対しての丁寧な対応ということでございますので、そうした来られた方がどのような理由で戸籍がなかなか取得できなかったかというようなことも十分に把握をしながら、無戸籍者の解消に向けまして、寄り添ったサポートをさらにきめ細かくしていこうということで取り組んでまいりたいと思っております。
○畑野委員 早く親子関係をできるようにしていただきたいというふうに思うんですね。
それで、法務省が調査しているように、戸籍に記載したくない理由の第一に、夫の嫡出推定を避けるためという実態があります。これが理由全体の七〇%も占めているんです。
先ほども、実の父親を認定する強制認知でも、場合によっては、裁判官が、例えばDVをやった元夫を呼ぶなどという事態が生まれて、これはもう、呼ばなくてもいい状況なのにわざわざ呼んでくるとか、それで、本当に行きたくないというふうに女性が思われるということもあると伺っているんです。
夫の嫡出推定を避けるためという最も多い理由を見てみても、この問題というのは、民法七百七十二条による嫡出推定に係る問題ではないかと思うんです。
そもそも、親子を早く確定するための規定が、今、これだけ多くの無戸籍の方をつくっている。本当の父親でない元夫が戸籍に記載されることは、真実でない、不実の記載になるわけですね。だから、選ぶとしたら、不実記載か、それとも無戸籍か、どちらかにならざるを得ないという実態があると思うんです。
さらに、日本が締結している子どもの権利条約第七条、「児童は、出生の後直ちに登録される。」という子どもの権利条約にも違反するものだと思うんです。
そこで、上川法務大臣に伺いたいんですが、上川大臣は所信表明で無戸籍の問題について述べられて、「成熟した社会へ成長するための試金石として、無戸籍の解消に取り組んでまいります。」というふうにおっしゃっておられます。私も全くそのとおりだと思うんです。専門家の方たちに議論していただく必要があるんじゃないか、法務大臣が法制審議会に諮問をして、解決に向けて法制化への議論を進めるべきではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○上川国務大臣 先ほど委員の方から御指摘ございました嫡出推定制度についてということでございまして、そもそも、この制度でございますが、法律上の父子関係を早期に確定する、そして家庭の平和が脅かされる事態を防ぐことによって子の利益を図るということを趣旨とするものでございます。その意味では、制度が存在することによってもたらされている子の利益というのは、総体としては非常に大きいものというふうに考えております。
その上で、民法七百七十二条の改正ということで御指摘がございましたけれども、改正の要否、また改正する場合の制度設計ということにつきまして、さまざまな御意見がありますし、御議論もなされてきたことだというふうに思っております。今後は、国民的な御議論をしっかりと踏まえて、慎重にしっかりと検討していく必要があるというふうに私は思っているところでございます。
○畑野委員 明治時代につくられた法律で、子供を守るため、子供のための制度だというふうに思うんですが、しかし、今では医療制度やあるいはいろいろな制度が進んでおりまして、制度が実態に合わなくなっているということもあるというふうに思います。
無戸籍の子供を生み出している、これでどうして子供を守っていけるのかということですので、専門家の皆さんの議論も、国民の皆さんの議論も含めてですが、法制審にも諮問されて、改正に向けての議論をぜひ進めていただきたいということを申し上げておきたいと思っております。
次に、盗聴事件について質問をいたします。
私は、一九八六年に起きた、当時、日本共産党国際部長の緒方靖夫宅盗聴事件に関する住民訴訟の原告として、盗聴事件の人権侵害の過程をつぶさに見てまいりました。いかに盗聴が、盗聴される本人はもとより、家族に対して多大な精神的ダメージを与えるものかをよく理解しております。
緒方靖夫さんは、緒方周子さんとの共著、「告発 警察官電話盗聴事件」で次のように述べられています。
わが家の電話線が枝分かれさせられて盗聴可能になっていることがNTTの職員の調査で明らかになった時の私の気持ちは、とても言葉では言い表しつくせないものだ。まさかと思いながらも、盗聴されていたことが明らかになったとき最初に思ったことは、あんな会話、こんな会話も聞かれていたのかという憤りと悔しさであった。あんたんたる気持ちに陥った。その無念さがいまでも蘇ってくる。コートなしでは耐えられない曇り空の寒い日、盗聴のアジトとされたアパート、メゾン玉川学園の通りの前で目眩のような気分に襲われたことをいまも思いだす。
また、緒方周子さんは次のように述べています。
「我家の電話が盗聴されている!まさか、冗談でしょ――これが、どうも事実らしいと夫から最初に聞かされた時の私の心情でした。」「そのうちNTTの方がうちの電話を使って「次長を出して下さい」「警察に連絡をした」などと話しています。「あー、やっぱり本当だったのだ。これは大変なことになった」と思ったとたん、背筋がゾッとしてきました。」
上川法務大臣にお伺いします。
まず、一般論として、盗聴という行為は、憲法で保障された基本的人権である通信の秘密、プライバシー権を侵害し、ひいては表現の自由をも侵害することにつながるものですが、上川大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○上川国務大臣 あくまで一般論ということでございますけれども、捜査機関による、通信の秘密を違法に侵害する盗聴ということにつきましては、憲法が保障する基本的人権を侵害するものであって、あってはならないというふうに考えております。
○畑野委員 ということでございます。
そこで、法務省に伺いますが、この緒方靖夫宅盗聴事件の概要について御説明いただけますか。
○林政府参考人 お尋ねの事件でございますが、神奈川県警に所属する警察官二名が、共謀の上、昭和六十一年十一月に、当時の日本共産党国際部長らが発受する電話の通信内容を盗聴しようとしたという電気通信事業法違反等の事件でありまして、東京地検におきましては、事件に関与していたと認められた警察官二名を起訴猶予処分にしたものと承知しております。
○畑野委員 近くのアパートに緒方宅の電話線を切断し引き込み、親子電話のような有線方式であったために、多数の証拠があって、東京地検特捜部により、神奈川県警公安警察官五名による犯行と特定をされた事件であります。
しかし、実際は、二人について電気通信事業法違反の起訴猶予など、全員が不起訴になっているんです。多数の証拠があるにもかかわらず、この検察の判断には私は憤りを覚えました。
この不起訴処分について、付審判請求に対する東京地裁の決定というのは、警察官が職務上の行為として電話盗聴を行ったことを認め、組織的行為と推認することができる、警察官において盗聴に成功したものと推認することも十分可能であると述べています。
また、東京第一検察審査会の議決では、不起訴処分は不当である、現場に消去した盗聴テープが残されたことから見て、常識的にも盗聴が成功したと見る方が自然であると、厳しく不起訴処分を批判しております。
それでは、本件についての認識を警察庁に伺います。
○塩川政府参考人 昭和六十二年当時、東京地方検察庁の捜査において警察官による盗聴行為の未遂があったと認められた、このことについては残念なことであるというふうに考えております。
今議員の方から、東京地方検察庁の捜査、またもろもろの裁判等についてのお話がございましたけれども、東京地方検察庁においては、この行為についての組織的関与は認定しておりませんし、また、国賠訴訟の判決等においても組織的犯行と断定したものではなかったというふうに承知しておるところでございます。
いずれにいたしましても、警察としては、違法な通信の傍受は過去にも行っておりませんし、今後も行うことはございません。
○畑野委員 とんでもないことで、組織的行為と推認することができることを含めて、しかし、これも本当に不十分な結果ですよ。そもそも、このような事件が起きているということが、憲法で保障された基本的人権が捜査機関によってじゅうりんされる、そういうことを示しているじゃありませんか。
さらに、緒方宅盗聴事件に関する国家賠償請求事件についての判決はどのようなものだったか、簡潔にお示しください。
○塩川政府参考人 今議員御指摘の国家賠償訴訟の控訴審判決では、警察官である個人三名がいずれも県の職務として行ったものと推認することができると判示しておりますが、組織的犯行と断定した判決ではなかったというふうに承知しております。
いずれにせよ、警察としては、違法な通信の傍受は過去にも行っておらず、今後も行うことはございません。警察としては、適正に法を運用してまいりたいというふうに考えております。
○畑野委員 これもとんでもないことでございまして、国家賠償請求訴訟の東京高裁判決では、原告のプライバシー権のじゅうりんによる損害について、「憲法上保障されている重要な人権である通信の秘密を始め、プライバシーの権利、政治活動の自由等が、警察官による電話の盗聴という違法行為によって侵害されたものである点で極めて重大である」と指摘して、盗聴が行われたことを認定しております。
さらに、盗聴の性格について、「電話回線の傍受による盗聴は、その性質上、盗聴されている側においては、盗聴されていることが認識できず、したがって、盗聴された通話の内容や、盗聴されたことによる被害を具体的に把握し、特定することが極めて困難であるから、それ故に、誰との、何時、いかなる内容の通話が盗聴されたかを知ることもできない被害者にとって、その精神的苦痛は甚大」であるというふうに述べております。
さらに、「盗聴の期間中は、継続してこれらの通話が盗聴にさらされ、更には録音されていたことが推認されるのであるから、盗聴された通話の内容や盗聴されたことによる被害を具体的に証する証拠はないものの、その精神的な苦痛は極めて重大かつ甚大なものと認められる」として、盗聴がどれほど人権侵害になるかというのを明言しているんですね。
現在の通信傍受法ですが、これが持っている本質的な問題というのは、このような人権侵害の危険性があるということを強く申し上げておきたいと思うんです。
現在の通信傍受法について伺いたいんですが、これは、経緯を話すと長くなりますから、簡単に言いますが、一九九七年に法制審の要綱骨子案が出されて、地方議会の反対意見書を初め国民的な反対運動が起こりまして、そして一九九八年に法案として提出されましたけれども、これは継続審議になりました。
一九九九年に審議が再開されたときも、この衆議院の法務委員会の理事会では、慎重審議ということは合意されたわけです。ところが、その合意を踏みにじって、与党は、修正案も出したわけですね、本当に大変な中での強行採決だったと思うんです。私もそのときに国会におりましたから、よく覚えております。その結果、修正案では、対象となる犯罪を重大犯罪四類型に限定し、常時立会人を置くことに加えて、立会人が意見を述べるようにできたということも加わったわけです。
そこで伺いたいんですが、現在、電子メールに係る通信傍受令状が出された場合において、傍受を許可されたメールのみを記録するための装置というものを二〇〇一年度予算で配備したということでございますが、現行法ではメールの傍受が可能とされているんですけれども、それでは、具体的にどのような方法をもって実施されているのか、具体的な運用状況を御説明ください。
○露木政府参考人 お答えをいたします。
今委員の御指摘のとおり、平成十三年度、警察庁におきましては、十六式、予算額一億三千二百二十三万円でございますけれども、傍受装置の整備をいたしましたことに続きまして、平成十五年度にも、二式、予算額九千二百八十三万円、さらに、平成二十七年度、今年度でございますけれども、一式、予算額六千二百三十一万円、これはまだ計上という段階でございますけれども、整備をしてまいりました。
この機器によってどのようにメールを傍受するのかということでございますけれども、法的、技術的には二つほど考えられます。メールが電気的に通過する伝送路上において、傍受令状に記載された特定の通信手段に係るメールを構成するデータを選別して傍受する方式と、それからもう一つでございますけれども、サーバー等に設けられたメールボックスにおいて、当該メールを受信する都度、即時に当該メールデータを捕捉する方式というもの、二つほどが考えられるわけでございますけれども、現在の私どもの機器におきましては、前者の方式をとるということでございます。
○畑野委員 ちょっと加えて伺いたいんですけれども、令状の請求についてどうなっているかということと、それから、電子メール傍受機器を用いることによって、フェイスブックなどのSNS、それからLINEなど、現在使われているいろいろな通信手段については対応可能なのかということをあわせてちょっと教えていただけますか。
○露木政府参考人 まず、傍受のこれまでの実績でございます。毎年、国会に、傍受法に基づきまして報告をさせていただくことになっておりますけれども、その結果にもございますとおり、いずれも携帯電話による通話を傍受したものでございまして、それ以外の通信を傍受した事件はございません。
それから、SNSについてでございますけれども、先ほども申し上げたような個々のメール傍受機器によりまして具体的にどのような通信手段の傍受が技術的に可能となるのかということを明らかにいたしますと、犯罪者側に対抗措置をとられるというおそれもございますので、その点についてはお答えを差し控えたいと思いますけれども、ただ、お尋ねのSNSにつきましては、先ほど委員もおっしゃったように、法律上は傍受をすることができる通信に該当するものでございますので、警察といたしましては、法で認められた通信傍受が技術的にも可能となるように努めているところでございます。
○畑野委員 後者の方は否定をされませんでした。
昨今の通信手段の主流というのは、電話による会話から電子メールによる通信に移り変わろうとしておりまして、電子メール使用によって、通信の内容は、より詳細かつ多量の情報のやりとりが可能となっております。
ですから、電子メール傍受について、技術的にいっても、通信傍受令状によって権限を与えられた範囲内に限定することはできるのかということは、大変疑念を持たざるを得ないということです。
現在の制度では、立会人が必要とされております。このことは、手続の拡大に事実上歯どめをかけるということになってきたのではないかというふうにも思うんです。
ところが、通信傍受法を改悪しようということで法案が出されておりますけれども、憲法によって保障された通信の秘密、プライバシー権が侵害される可能性がさらに拡大されるということが明らかになってくるのではないでしょうか。上川法務大臣の御認識をお伺いします。
○奥野委員長 上川法務大臣、時間が来ていますから、短くお願いします。
○上川国務大臣 通信傍受法におきましての傍受についてでございますけれども、通信の当事者のいずれの同意も得ないで通信を傍受することにつきましては、通信の秘密、そして私生活上の自由を制約するものであるということでありますけれども、通信傍受法に基づく通信傍受につきましては、厳格な要件、手続のもとでのみ認められるということで、その意味では、通信当事者の通信の秘密、私生活上の自由を不当に制約するものではないということでございます。
新たに通信傍受法につきまして改正をお願いしているということでございますけれども、それにつきましても、重大な組織的犯罪につきまして、犯罪の高度の嫌疑があること、また、他の捜査方法によっては、犯人を特定し、犯行状況を明らかにすることが著しく困難であることなど、さまざまな厳格な手続要件を設けた上で、先ほど立ち会いということもございましたが、この間、十数年たっておりまして、技術的な進歩があるということでございまして、例えば暗号技術でありますとか、そうしたものを十分に踏まえた上で、立会人に匹敵する役割を技術的に果たすことができる、そういう想定の中でお願いをしているところでございます。
○畑野委員 終わりますが、先ほどの警察の、認めもしない、謝罪もしない、こういう方たちにさらに権限を拡大するというのは到底認められません。こういう法案を審議すべきではないし、また、一部可視化や司法取引などともまとめて出すということは、これは全く認めることはできないということを申し上げて、質問を終わります。