第189回国会 2015年4月15日文部科学委員会
「学校統廃合は過疎化招く」
文科相、小規模校を支援 衆院委で畑野議員
日本共産党の畑野君枝衆院議員は15日の文部科学委員会で、地方の小規模学校統廃合は過疎化を招き、政府の掲げる「地方創生」にも反することになるとただしました。下村博文文科相は「学校をつうじて地域おこしをしていこうというところには、しっかりと応援していきたい」と答弁しました。
畑野氏は、「地方創生」で政府が、「地方の人口減少に歯止めをかけることが喫緊の課題」と掲げていることに言及。子育て世代の移住をすすめるためにも「学校がそこにあることが重要だ」と述べ、学校がなくなれば人口流出に歯止めがかからなくなる危険に直面すると述べました。下村氏は、統廃合だけでなく小規模校を存続する選択肢もあると述べ、「市町村の選択を尊重し、支援していきたい」と表明しました。
畑野氏は、山梨県で同じ人口規模の2市を調べたところ、強引に学校統廃合をすすめているA市では2006年から今年2月までに263世帯も減少し、学校統廃合をしないことにしたB市では1413世帯も増えたことを紹介。
統廃合しないより、する場合の校舎改修費の補助が優遇される仕組みになっていることをあげ、「小さい学校を残して頑張ろうという自治体の支援をしっかりするべきだ」と求めました。
文科省の小松親次郎初等中等教育局長は「地域の活性化を図る方策のひとつとして、子育て世帯の支援を推進することが重要だ。地域コミュニティーの核としての学校の役割を重視しつつ、魅力ある学校づくりをすすめる」と述べました。
2015年4月16日(木))付け「しんぶん赤旗」より
【会議録】
○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
前回、三月二十七日の当委員会で、学校統廃合が強引に進められているという問題を取り上げて、改善を求めました。ところが、ちょうどその日に山梨県のある市の保護者の方から、きょう、学校統廃合の説明会が開かれたのですが、余りにも強引過ぎます、このままでは地元から学校がなくなってしまいますという訴えが私のところに寄せられました。その日、地元の保育園の園長さんも納得できませんというふうに発言をされたそうなんですが、もうこれ以上の説明会は開きませんと打ち切られたそうなんです。
そこで、きょうは再度、学校統廃合について質問をいたします。
このケースも調べてみましたら、手続が大変強引だと言わざるを得ません。住民、保護者への意見を聴取しないで学校統合の実施計画が決められましたのは二〇〇六年のことです。今回訴えのあった地域で住民、保護者への説明会というのは、何と八年後の二〇一四年六月ということで、余りの遅さに教育委員会も、済まなかったと言われたそうです。
ところが、その後の十月の保護者への説明会では、進め方に納得ができないと発言した保護者の方たちに教育委員会の幹部職員の方が、あなたたちにこの地域が動かせるんですかと一喝された。その後、保護者の皆さんも物が言えなくなりまして、保護者の方から、こういう言い方をされるというのは道義的にも問題があるのではないかというふうに訴えておられるわけなんです。
下村文部科学大臣は、前回の私の質問に対して、「保護者や地域住民の十分な理解と協力を得ることなど、地域とともにある学校づくりの視点を踏まえた丁寧な議論を行うことが重要」だと述べられました。丁寧な議論が必要だという国の方針を「もっと積極的に周知してまいりたい」と答弁されました。大事だと思うんです。ところが、そういう答弁をされたそのときに、今述べたような事態が引き続き起きているわけです。
そこで私は、この際、手続についてもっと丁寧に、わかりやすく伝えることのできる、何か簡潔な文書を出すことが必要ではないかと思います。適正配置の審議会が答申を出す前、そして出した後、さらに、教育委員会が実施計画をつくる前、そしてつくった後というふうに、節目節目に住民や保護者の意見をよく聞く、一方的に決めない、そういうことがよくわかるようにすることが必要だと思いますが、下村文部科学大臣、いかがですか。
〔委員長退席、萩生田委員長代理着席〕
○下村国務大臣 学校統合の適否の検討に当たっては、学校が地域コミュニティーの核としての性格を有することを踏まえ、保護者や地域住民の十分な理解と協力を得るなど、御指摘のように、丁寧な議論を行うことが重要であると思います。
そのために、国の方でも手引をつくり、その手引で明示し、また、さまざまな工夫の例も示しているところでもあります。
実際にどのようなプロセスで住民の理解や協力を得るかは設置者である市町村が主体的に判断するべき事柄ではありますけれども、文科省としては、各市町村において、丁寧な議論を経て、地域コミュニティーの核となる魅力的な学校づくりが行われるよう、文科省がつくりました手引の趣旨、それからその内容について、引き続き、さまざまな機会を捉えてわかりやすく説明に努めてまいりたいと思います。
○畑野委員 本当に現場が混乱しないように、丁寧な議論というふうに、その趣旨を徹底するというふうにおっしゃられましたけれども、本当に混乱しておりますので、一目でよくわかるように、また、今そこが本当に真意がつかまれるように対処を進めていただきたいと思うんです。これは、教育をつかさどる文部科学大臣として本当にしっかり臨んでいただきたいと思います。今真剣に取り組まないと日本の教育が大変になってしまうということを強く申し上げたいと思います。
今回訴えに来られた方々の不安というのはいろいろあるんです、子育てのことですから、教育のことですから。そのうちの一つをここで訴えたいと思います。
それは、収入の格差、マイカーをどれぐらい持っているかの差が子供の通学に今後大きく響いていくということです。
もし学校が遠くなったらどうなるかということなんですが、行くときも大変なんですね、前回申し上げましたが。帰りもまた問題になります。親御さんが共働きで、祖父母の方がマイカーがないという家庭では、時間どおりの帰りのバスに乗らなくてはならない。少し残って友達と遊んだり学校の先生に相談するということができない。一方で、祖父母を含めてマイカーが四台ありますよという家庭では、四時とか五時とか、そういうふうに校庭で遊ぶことができるということもある。
あるいは中学校の部活の問題、早朝とか夕方とか土日とかいろいろその学校によってあると思うんですが、それでは交通手段をどうするかという問題も出てくる。部活に行くのだったら、一緒に近所の人に乗せてもらえばいいじゃないという話もあるかもしれませんが、一度や二度じゃない。それから、ほかの家庭には知られたくない、その家その家の事情があるということなんですよ。そういう気持ち、個々の御家庭の事情というのは、本当に私もわかります。
徒歩圏の学校をなくしてバス通学にするということは、こういういろいろな家庭の困難、子供たちやその家庭にこういう困難を強いることになるわけです。
私は、国として手引を出していますけれども、もっともっと当事者の、表にも言えないけれども、思いとしてあるそういう気持ちに立って考える必要があるんじゃないかと思いますが、いかがですか。
○小松政府参考人 お答えを申し上げます。
まず文部科学省では、学校統合によりまして遠距離通学となる児童生徒、お子様方の通学条件の緩和のために、一つは、スクールバスの購入、あるいは、交通費補助を行う地方公共団体に対する補助を行っております。
学校統合の適否を検討する上では、学校教育の直接の受益者である児童生徒の保護者の十分な理解や協力を得ながら進めることが重要という大臣からの答弁がございましたけれども、こうした考えのもとに、各地方公共団体におかれては、統合の場合には、その統合の学校の教育活動が円滑に行われるように、今申し上げましたような支援策も十分活用しながら、そのやり方を適切に検討していただきたいというふうに考えております。
○畑野委員 最寄りのバス停まで一・七キロ離れたところに住んでいる未就学児童が御入学するというケースがございまして、バス停まで歩いて四十分かかるんです。加えてバスの乗車時間というのは、これまで五分という短い時間だったんですが、閉校になると新しいところは三十分にふえる。だから、四十分足す三十分ということで一時間をはるかに超えるという、そういうさまざまなそれによるリスクが心配されているという話も伺いました。
そういうことを訴えて市と相談して、では、一キロ以上バス停まで歩く場合は特別に対処するという話がやっと市との話で出てくるんですね。
だから、個々の御家庭が本当にそういう事態に対応しなくちゃいけないという、また御負担がふえていくという状況があるということを申し上げたいと思うんです、簡単にはいかないと。
それで、この学校がもし廃校になりますと、学童保育がなくなる。遠くの統合先の学童保育に通うことになるんですけれども、その学童保育の終了に合わせてバスが出るわけでもないわけで、親がマイカーで迎えに行かなければならない。その費用も、ガソリン代で年間三万円かかると試算されているんです。
義務教育無償の原則に照らせば、こうした保護者負担はなくすべきではないかと思いますが、いかがですか。
○小松政府参考人 まず、御指摘の点につきまして、文部科学省で、学校統合によります遠距離通学となるお子様方の通学条件の緩和のために、スクールバスの購入や交通費補助を行う地方公共団体に対する補助を行っていることは先ほど御説明いたしました。
それに加えまして、御指摘のような点というのは、例えば、一つの場所に通われるお子様の数が少ない、スクールバスとかで定時になかなか対応ができない、こういった細かい点にも配慮すべきではないかということをさらに考えるべきだという御指摘だと受けとめます。
私どもの補助等について申し上げますと、そういった場合の、例えば通学用にタクシーを借り上げるというような経費などもこの補助の対象といたしております。
こうした点も情報提供をよくしたいと思いますけれども、このような施策を活用しながら、保護者の方々の負担軽減を図ることができると思っております。
それからもう一つ、これは学校統合の場合に限らないんですけれども、各市町村が実施する遠距離通学対策に要する経費については、特別交付税の対象に入っております。この中で、これを活用して保護者の送迎に要する経費に補助をしているという事例もありまして、これも事業の対象となっております。
文部科学省としては、こうした諸施策を通じて遠距離通学に対する支援に努めていきたいというふうに考えております。
○畑野委員 設置者は自治体なんですけれども、義務教育の無償化というのは、憲法で保障された教育を受ける権利にとって極めて重要な事項だということで、さらに真剣な検討を行って必要な対策をとっていただきたいと思います。
次に内閣府に伺いたいんですが、政府は地方創生を掲げられています。私は、地方創生という名で自治体の再編や地方切り捨ての集約を行うべきではないというふうに思います。どこに住んでいても、教育や医療を初め必要な行政サービスを受けられるように、自治機能の再生をすることが必要だというふうに求めたいと思います。
それで、地方創生と掲げられる政府のその中に、地方の人口減少に歯どめをかけることが喫緊の課題だというふうにおっしゃっているんです。この点については、これは大事なことだと思うんです。
ただ、そのためには、地方の減少に歯どめをかける、若者たちの地方への移住の流れをつくる、そうした上で、学校がその地にあるということが当然大事だと思うんですが、政府としてのお考えを伺います。
○佐野政府参考人 お答え申し上げます。
地方の人口減少に歯どめをかけまして若者の地方移住を促進することは、地方創生を進めていく上で重要な政策課題の一つであることから、さまざまな施策を総合的に講じていく必要があり、その一環といたしまして、各地域においては、子育て世帯がみずからの子供を通わせたくなるような、魅力ある学校づくりを行うことが大変重要だというふうに認識しております。
このため、昨年十二月に閣議決定されましたまち・ひと・しごと創生総合戦略におきましては、「地域コミュニティの核としての学校の役割を重視しつつ、活力ある学校づくりを実現できるよう、学校統合を検討する場合や、小規模校の存続を選択する場合、更には休校した学校を児童生徒の増加に伴い再開する場合などに対応」いたしまして、「活力ある学校づくりを目指した市町村の主体的な検討や具体的な取組みをきめ細やかに支援する。」ということとしているところでございます。
政府といたしまして、この方針に従いまして、政府全体として取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。
以上です。
○畑野委員 両方とも、つまり、学校統合を行う場合も、統合しないで小規模校を維持する場合も、支援は行っていくということは、今内閣府からも、そして文部科学省の手引でも同じように言われているわけなんです。
ところが、その支援なんですけれども、統廃合に偏っているのではないかという疑問があるんです。
予算で大きな内容でいうと、施設の改修です。学校が古くなってきた、老朽化してきたという場合に、学校を統合したときと学校を統合せずに改修するときと、地元負担の割合は、自治体の割合はどうなるか伺います、文部科学省に。
○関政府参考人 お答え申し上げます。
公立学校の老朽施設の全面的な改修に関しましては、学校統合の有無を問わず、大規模改造事業として三分の一の国庫補助を行っておりまして、地方公共団体の負担割合は六六・七%となっております。
学校統合に伴い必要となる施設の改修についても、これまで、この大規模改造事業を活用してきたところでございますが、既存の施設の有効活用が一層図られるようにするという観点から、平成二十七年度より、既存施設を改修して、統合する学校の校舎等を整備する場合の補助制度を創設したところでございます。
新たな補助制度におきましては、二分の一の国庫負担の対象となる統合に伴う新増築と同様に、国庫補助を二分の一とするとともに、地方交付税措置を講じることとしておりまして、これにより、地方公共団体の実質的な負担割合は二〇%となるところでございます。
○畑野委員 要するに、校舎が古くなったら統合した方が得ですよと言わんばかりの誘導予算になっているんではないでしょうかと指摘したいと思うんです。
そこで、小さい学校を残して頑張ろうという自治体に対してきちんとした支援を行う必要があると思いますが、下村文部科学大臣、いかがですか。
○下村国務大臣 今後、少子化等のさらなる進展による学校の小規模化に伴い、児童生徒が集団の中で切磋琢磨しながら学んだり社会性を高めたりするのが難しくなるなどの課題が顕在化することが懸念されておりまして、教育的な観点から、こうした課題の解消を図っていくことは必要であると思います。
その際、学校の地域コミュニティーの核としての役割を重視する観点からは、学校統合により魅力ある学校づくりを行い、地域の活性化を図ることを選択する場合のみならず、地域の総力を挙げ、小規模校のメリットの最大化やデメリットの克服を図りつつ、学校の存続を図る選択肢もあると考えられ、文科省としては、市町村のいずれかの選択も尊重し、支援してまいりたいと考えております。
〔萩生田委員長代理退席、委員長着席〕
○畑野委員 実は、学校がそこにあるというのはすごく大事なことなわけですよ。
前回も問題にしたある町の問題でも、田舎暮らしに憧れて、公務員をやめて大都市から移住した若いお母さんがいらっしゃいました。引っ越し先を決めて、その決め手は何かというと、歩けるところに学校があったということなんですね。住んでみたら周りもよい人たちで、ここに根をおろしたいと思っていたやさきに廃校を聞かされたということです。いざ何かあったときにすぐ駆けつけられるところに学校がある、このことの安心が欲しいと切々と訴えていらしたわけです。
こういう人たちを裏切るようなことをしたら、政府が言っている地方創生、私たちはいろいろ問題があると思いますけれども、私たちは、地方の再生をする、活性化をするという立場ですけれども、しかし、そういうふうにおっしゃっていることにも反するんじゃないかと思うんです。わざわざ地方に移住をするのに、学校がない地域というのは選ばれないことになってしまうわけです。
それで、私は大臣にもう一回最後に確認をしたいんですけれども、資料を二枚つけさせていただきました。
学校がなくなれば人口流出に歯どめがかからなくなる危険がある。昨年、NHKが「廃校が招いた過疎」という番組を放送いたしました。その番組では隣の市と合併した町の事例が紹介されていて、かつての町にあった学校は、小規模校だからということで小学校も中学校も廃校したんです。それに伴って、急速に合併前の推計よりも大幅に過疎化が進んでしまった。それは、若い世代が予想以上にいなくなったことによるものだと言われております。番組では、市の地域振興課の職員が、学校が統合されまして、それを機に若い子育て世代の方々が出ていったとインタビューに答えているんです。
私は、今強引に学校統廃合を進めているA市、今申し上げた市です、A市と、それから、今後は統廃合をしないと言っているB市との世帯の推移を調べてみたんです。二〇〇六年度、ほぼ同じ人口だった二つの市なんですが、その当時とことし二月の推移を比べてみましたら、A市の方は世帯が減っているんです。二百六十三世帯減っている。B市の方はふえているんです。一千四百十三世帯ふえているんです。A市で自営業をされている若いお父さんは、地元の夫婦は、子供ができたらB市に引っ越すという話がちらほらあると言っているんです。
廃校が過疎を招く危険性というのをよく踏まえて取り組むべきだとこれは思うんですけれども、文部科学省、いかがですか。
○小松政府参考人 地域の過疎化につきましては、学校の立地のみならず、当該地域における経済、産業、福祉、交通などさまざまな要因が影響を与えると考えられますので、学校の統廃合が過疎化を招くと必ずしも言えないと考えられますが、一般論としては、地域の活性化を図る方策の一つとして、子育て世帯にとって魅力ある学校づくりを推進するということが重要だというふうに考えております。
今後の地域コミュニティーの核としての学校の役割を重視しつつ、少子化に対応した活力ある学校づくりを進めるという点では、先ほど内閣府からも御説明をし、かつ、手引などでも御説明はしておりますけれども、地域の総力を挙げて小規模校のメリットの最大化や小規模校のデメリットの克服を図りつつ学校を存続させること、それから、適切な通学手段を確保した上で学校統合も含めまして魅力ある学校づくりを行い、地域全体の活性化を図ることなど、さまざまな選択肢があってよいと考えられますので、文部科学省においては、その設置の判断を最終的にいたします市町村の選択を尊重する立場に立って、積極的な支援に努めていくという対応でまいりたいと思っております。
○畑野委員 最後に、資料をもう一つつけておきました。福岡県のある町の例です。これは、地域が若い人たちの移住ということでやっているんですね。山梨県にも、若い芸術家が引っ越してきて、本当にこの集落で頑張っていきたい、数十人がこの地域では適正規模だ、強引な統廃合はやめてほしいというふうに訴えておられるんです。
こういう、地域が頑張ろうということを文部科学大臣としてもしっかり応援していただきたいと思うんですが、最後にそれを伺って、質問を終わります。
○下村国務大臣 地域の活性化は、まさにそこにどんな人がいるかということだと思います。ですから、こういう学校を通じて地域おこしをしていこうというところについては、しっかり応援してまいりたいと思います。
○畑野委員 終わります。