第189回国会 2015年3月20日法務委員会
選択的夫婦別姓急げ
衆院法務委 畑野氏、法相に迫る
畑野君枝議員は20日の衆院法務委員会で、夫婦同氏規定など民法にある差別規定について、最高裁判断を待つまでもなく政府として早急に差別をなくすための民法改正案を国会に提出するよう求めました。
夫婦同氏規定と女性のみにある再婚禁止期間の規定は憲法違反として国に損害賠償を求めた2件の裁判が最高裁大法廷で審理されています。上川陽子法相が最高裁の判断を注視したいと答えたのに対し、畑野氏は、国連の女性差別撤廃条約批准(1985年)後の国の方針を具体的にあげ、「夫婦同氏など民法の差別規定を見直すというのが大前提」だと述べました。
畑野氏は、2月に国連の女性差別撤廃委員会の委員長に、日本の林陽子委員(弁護士)が選出されたことにふれ、「国連から民法にかかわる差別撤廃の改善勧告を受けている状況を変えるべきだ」と指摘しました。
「世界で夫婦同氏を法律で義務付けている国が日本以外にあるか」との畑野氏の質問に、深山卓也民事局長は夫婦が同一の姓を名乗ることを「義務付けているのは日本しかない」とのべました。
畑野氏は、結婚するカップルのいずれかが自らの氏名保持権を放棄するか、それともそれぞれの氏を保持して婚姻届を出さないかの「二者択一」を迫られる現実を訴えました。上川法相は「現行制度では二者択一だ」とのべ「選択的夫婦別姓制度で、婚姻後も従来の姓を使用するという新たな選択肢ができる」と答えました。
( しんぶん赤旗 2015年 3月21日付 )
【会議録】
○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
ことし二月十八日、夫婦同氏、夫婦同姓の規定と、女性のみにある再婚禁止期間の規定が憲法に反するとして国を相手に損害賠償を求めた裁判で、最高裁は審理を大法廷に回付いたしました。
そこで、上川法務大臣の御認識について伺いたいと思います。
○上川国務大臣 御指摘いただきました二つの事案ということでございますけれども、最高裁判所の大法廷に回付されたということでございます。
選択的夫婦別氏制度の導入及び女性の再婚禁止期間の短縮につきまして、我が国の家族のあり方に深くかかわるものであるということでございますし、また、国民の間にもさまざまな御意見があるものというふうに考えております。
最高裁判所がどのような判断をするかということにつきまして、注視をしてまいりたいというふうに思っております。
○畑野委員 そう言われて長い期間がたちました。
そもそも、夫婦同氏、夫婦同姓の規定と、女性のみにある再婚禁止期間の規定の見直しについては、法務大臣の諮問機関である法制審議会が一九九一年から五年をかけて議論し、中間報告を出したり国民からの意見を公募したりして合意形成を図り、一九九六年二月に答申をした民法改正法律案要綱の中に盛り込まれていたものです。
それに先んじて、一九八五年に日本は国連女性差別撤廃条約を批准し、国内行動計画を策定し、一九九一年の新国内行動計画に、男女平等の見地から、夫婦の氏や待婚期間、女性のみにある再婚禁止期間のことですけれども、そのあり方を含めた婚姻及び離婚に関する法制の見直しを行うことと定めたわけでございます。当時、このようなタイミングで法制審議会が審議を始めたということで、民法改正の論議というのは、憲法や条約の理念に沿って見直すということが出発点であったと言えます。
この二月に、国連女性差別撤廃委員会の委員長に日本の林陽子委員が選出されました。先頭に立って女性差別撤廃を行う委員長に日本人が選ばれたということでございます。日本の差別撤廃について関心が高まっていくと思いますし、きょう、実はこの同じ時間に、国会の院内で国連ウィメン日本協会などを初めとして集会を開いておりまして、国連ウィメン本部人道部長らとともに林陽子女性差別撤廃委員会委員長が御挨拶をされているということでございます。
上川大臣はどのように思われますか。
○上川国務大臣 林陽子弁護士でございますけれども、委員長に御就任ということで、心から祝福をしたいというふうに思っております。
第六十回の女子差別撤廃委員会ということでございますけれども、その前にも委員として御活躍をされていらっしゃいました。また、国内におきましても女性の地位向上等につきまして大変活発に活動していらっしゃったということで、その意味では、大変深い識見と、同時に行動力もお持ちの方というふうに承知をしているところでございます。
法務大臣としても、また一女性としても、大きな活躍を期待しているところでございます。
○畑野委員 上川大臣から励ましのお言葉がございました。
これまで、国連の女性差別撤廃委員会は、二〇〇三年の第四回、第五回報告書審査の総括所見で、婚姻最低年齢、再婚禁止期間、夫婦別氏選択などの差別規定の改正を勧告してまいりました。二〇〇九年の審査で、女性差別撤廃委員会は、「本条約の規定に沿うように国内法を整備するという義務に基づくべきであることを指摘する。」と述べています。
民法の規定について、国連人権機関からの勧告は、日本政府に対して一九九〇年代からどのように出されておりますか。
○深山政府参考人 今お話のありました、国際人権諸条約に基づく国連の各委員会から、我が国は、民法の規定を改正するよう繰り返し勧告を受けております。
多数ございますけれども、その一例は、今委員が述べられた女子差別撤廃委員会が平成二十一年八月に、「男女ともに婚姻適齢を十八歳に設定すること、女性のみに課せられている六カ月の再婚禁止期間を廃止すること、及び選択的夫婦別氏制度を採用することを内容とする民法改正のために早急な対策を講ずるよう締約国に要請する。」という勧告がされていますし、直近のものでは、自由権規約委員会が平成二十六年七月に、「「婚姻制度及び家族制度の基本的概念に影響を与える」おそれがあるとの根拠で、離婚後六ケ月間の女性の再婚を禁止し、男性と女性の婚姻年齢の相違を設定する、民法の差別規定を改正することを締約国が拒否し続けていることを懸念する。」とした上で、「締約国は、したがって、しかるべく民法を改正するための緊急の行動をとるべきである。」との勧告をしたものと承知しております。
○畑野委員 今お話がありましたように、国連人権機関からたびたび勧告されてきたというのは、女性差別や人権の問題であるからだと思うんです。国連から民法にかかわる差別撤廃の改善勧告を繰り返し受けているような今の状況を変えるべきだと思いますが、上川大臣の御認識を伺います。
○上川国務大臣 ただいま民事局長が答弁をしたとおりでございます。
女子差別撤廃委員会等から複数回にわたりまして勧告を受けてきたということにつきましては、承知をしているところでございます。
勧告につきましては、選択的夫婦別氏制度の導入等を含めまして、民法改正を行わないこと、このことが条約に違反しているというような解釈を前提にしているというふうにも読めますけれども、我が国といたしましては、民法改正を行わないことが直ちに条約に違反するものではないというふうに認識しているところでございます。
今後とも、女子差別撤廃委員会の勧告に対しましては、民法改正をめぐる我が国の状況について十分な説明をし、適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
○畑野委員 しかし、実際はどうなっているかというと、二〇一三年の人口動態統計で、九六・二%の女性が改姓しております。民法の規定は建前上は平等だとおっしゃるわけですが、しかし、現実は、女性が改姓することが当然視されている状況があるということだと思うんです。
同じ氏、同姓になることを望んでいる人も多いと思います。しかし、これまでの自分の氏名を名乗りたいと思っている人もいるわけです。そのような人たちにとりまして、選択肢を広げる、つまり、同姓にしたいという人にはそもそも何も不利益がないわけですから、さらにより広いニーズに応えることになるのではないかと思いますが、上川大臣の御所見はいかがでしょうか。
○上川国務大臣 委員御指摘のとおり、選択的夫婦別氏制度を導入したというふうに仮定したとするならばでございますが、夫婦の双方が婚姻後もみずからの氏を称することができるという新たな選択肢が設けられることになるということにつきましては、そのとおりだというふうに思います。
もっとも、選択的夫婦別氏制度を導入した場合でございますけれども、夫婦の間に生まれるお子さんについては、必ず夫婦の一方と異なる姓を称することになるということでございまして、我が国の家のあり方、家族のあり方ということにつきまして大きな影響を及ぼすことが予想されるという大変難しい問題でもございます。
こうした我が国の家族のあり方に深くかかわることでございますが、このことにつきましては国民の皆さんの間にもさまざまな意見があるということでございまして、その意味で、慎重に検討することが必要ではないかというふうに考えております。
○畑野委員 二〇一二年の内閣府の調査でも、二十代、三十代の女性の半数は別姓を容認しております。それから、ことし三月七日の日本経済新聞の調査では、二十代から五十代の働く既婚女性の七七%が選択的夫婦別姓に賛成しております。
世論も急速に変化しております。もちろん、女性差別撤廃委員会が、二〇〇九年の審査で、法改正しない理由に世論を挙げてはならない、世論調査の結果のみに依存するのではなくということで、人権問題に対して世論に委ねている日本の姿勢について言及をしているわけですが。
それでは、伺いたいと思います。
結婚しようとするカップルにとりまして、いずれか一方がみずからの氏名を保持する権利を放棄するか、それとも、双方がそれぞれの氏を保持して婚姻の自由を放棄するか、今の場合、二者択一をしなければならないという現状がございますが、上川大臣の御見解はいかがでしょうか。
○上川国務大臣 現行の夫婦同氏制度のもとにおきまして、今委員御指摘のように、当事者の一方がみずからの姓を放棄するか、あるいは婚姻の自由を放棄して事実婚を続けるという形での選択ということで、二者択一になっているという状況でございます。いずれかの氏を選択しなければならないという制度でございますので、ともに婚姻後も自己の氏をそれぞれ称したいと考えている場合につきましては、委員御指摘のとおり、婚姻をするということについて難しくなるという事態が生じ得るということについては、そのとおりだというふうに思います。
もっとも、婚姻後も旧姓を使用したいと考える方々のために、弁護士さんでありますとか公認会計士さんでありますとか、それぞれ士業におきまして、職務上旧姓使用が広く認められるようになるということでございまして、社会の認識というのも少しずつ進んできているのではないかなというふうにも思っております。
世論調査におきましても、通称使用のことも選択肢の一つとして取り上げるという形で、この動向につきましてもこの間フォローしてきているところでございますが、安倍政権につきましても、女性が輝く社会ということを目指しまして、国、地方、企業が一体となって、女性が活躍しやすい環境づくりということについて進めているということでございます。
こうして、社会生活上、また経済的な活動をする上で不便を強いられているような場合があるということについてはさまざまな御意見があるということでございまして、そういう意味で、旧姓使用、通称使用というところについて、関係省庁と力を合わせて前向きに検討してまいりたいというふうに思っております。
実は、法務省におきまして、最近の取り組みでございますが、商業登記簿の役員欄に、戸籍に加えまして婚姻前の氏をも記録することを可能とする旨の商業登記規則等の改正を行ったところでございます。ことし二月二十七日から施行されているというところでございます。
○畑野委員 それでは伺いますが、世界で、夫婦同氏、夫婦同姓を法律で義務づけている国は日本以外にありますか。
○深山政府参考人 法務省で把握している限りでは、現在、婚姻後は夫婦いずれかの氏を選択しなければならないという夫婦同氏制を採用している国は、日本以外にはございません。
○畑野委員 お認めになりました。この問題で世界は、国連の条約に沿って法律上の差別をなくす措置をとっています。とっていないのは日本だけだということでございます。
二〇一四年六月、日本学術会議が男女共同参画社会の形成に向けた民法改正を提言し、選択的夫婦別姓制度の導入、再婚禁止期間の短縮、廃止、婚姻最低年齢の統一を緊急に実現するよう、政府や国会に求めました。
長い間、悔しい思いをしてこられた方々がいらっしゃいます。五十年以上、事実婚や通称使用しながら法制化を待ち望んできましたという方たちです。その思いを上川法務大臣はどのように受けとめられますか。
○奥野委員長 質疑時間が終了していますから、簡単に、一言で言ってください。
○上川国務大臣 婚姻によって自己の姓を選択するということで、一つの姓になるということでございます。いろいろな考え方が国民の皆様の間にあるということでございます。これは、家族のあり方に関する大変重要な課題ということでございます。法制審議会におきましても答申が出されてきたということでございまして、これに係るさまざまな御意見を大切にしてまいりたいというふうに思っております。
○畑野委員 最後に一言。国が早急に法改正をすべきだということを求めて、終わります。