第189回国会 予算委員会 2015年2月23日

小中全学年で35人学級を/畑野氏に首相「さらに努力」/衆院予算委

 日本共産党の畑野君枝議員は23日の衆院予算委員会で、質問に立ち、安倍政権で停滞している35人学級の計画的実施を求めました。安倍晋三首相は「35人学級実現へ向け努力したい」と前向きに答弁しました。
 畑野氏の質問は11年ぶり。衆院では初めてです。国内外の研究結果を示しながら、「40人学級に戻せ」という財務省の主張を「とんでもない暴論だ」と批判。下村博文文部科学相は「学校を取り巻く環境が複雑になるなか、教員が子どもの指導に専念できる環境が重要だ。〝40人学級に戻せ〟というのは文部科学省の考えや教員など現場、保護者の声に相いれない」と答えました。
 畑野氏は、全国PTA協議会、教職員組合、校長会など教育関係団体、全国知事会が要望していることを紹介し「少人数学級の実現は国民の声だ」と強調。安倍首相は「教員が一人ひとりの子どもにきめ細かく対応できるよう必要な検討を進める」と答えました。
 現在、全都道府県が独自に少人数学級の拡大に取り組み、10県が中学3年生まで実施しています。畑野氏は「自治体が努力している。今こそ国が法律に基づいて35人学級を制度化すべきだ」と要求しました。
 畑野氏は、法律改正をして小学2年で実施した場合16億円、毎年度1学年ずつ35人学級を拡大するには最大139億円の国庫負担額でできると指摘(表)。さらに公立小学校1年生で35人学級を制度化する義務教育標準法改正が自民党を含む全会一致で成立し、付則で国に財源確保を求めていることを示し、重ねて安倍首相に「35人学級の推進を決断すべきだ」と迫りました。安倍首相は「全会一致の重みもかみしめながら、1年生、2年生で35人以下学級を実現した。さらに35人学級の実現に向けて、努力をしていきたい」と述べ、中学までの全学年で35人以下学級の実現を目指す意向を示しました。

少人数学級
 2011年から法律で、31年ぶりに編成基準が改善され、小学校1年生の35人学級が実現。2年生は法定化されず、毎年の予算措置で行われています。財務省は昨年秋、「35人学級に政策効果はない」などとして「40人学級に戻せ」などと主張しました。
                       (
2015年02月24日付 しんぶん赤旗より転載)

【会議録】 

第189回国会 予算委員会 2015年2月23日

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
 私は、一九九八年から六年間、国会で少人数学級の実施を求めてまいりました。二〇一一年に、小学校一年生で三十五人学級が法律によりやっと実施されました。それまでの四十人学級が改善されたのは、実に三十一年ぶりのことです。
 ところが、昨年の秋、財務省が、小学校一年生の三十五人学級さえ四十人学級に戻せと言い出しました。こんなことは許せません。私を国会へ再び送ってくださいと訴えて、このたび、衆議院議員として送っていただき、国会へ戻ってまいりました。
 財務省は、昨年の財政審議会財政制度分科会で、小学校一年生の三十五人学級に政策効果は認められない、四十人学級に戻すべきではないかと言いました。こんな乱暴な議論はありません。少人数学級の効果は、世界でも日本でも、多数の研究データで実証されています。
 文部科学省の委託を受けた東京大学の少人数教育に関する調査研究事業という報告書、これですけれども、日本での教育効果を実証した結果、少人数学級の場合、子供同士の学び合いがより深まって、学習指導の姿がより効果的なものへと変わるとし、米国における八百六十本の研究の整理を行った結果、学級規模縮小の効果の存在が実証されていると述べています。
 下村文部科学大臣、財務省が、少人数学級の政策効果はない、小学校一年生を四十人学級に戻せという議論について、どのようにお考えになりますか。
下村国務大臣 今まで以上に学校を取り巻く環境が大変に複雑化また困難化し、教員に求められる役割も拡大する中、教員が授業など子供への指導により専念できる環境をつくるということが必要だと思います。そのときに四十人学級に戻すとの主張は、文部科学省の考え方や、あるいは学校現場、また保護者の声とは全く相入れないものであります。
 全国的に定着した小学校一年生の三十五人以下学級につきましては、今御指摘ありましたが、子供たち一人一人に目が行き届くきめ細やかな指導や、思考を深める授業づくりが一層可能となる、あるいは教員と児童との関係が緊密化するとともに、家庭との緊密な連携がより可能になるといったような調査結果が出ております。子供たちの学習意欲の向上や、きめ細やかな指導による学力の向上にとって効果があるものというふうに考えております。
畑野委員 下村文部科学大臣からも、効果があるという話でございました。四十人学級、到底、戻すな、認められないということでございました。
 私は、三十五人学級の実施で教育現場がどのように変わってきたのかということを伺ってまいりました。
 神奈川県横浜市の小学校の先生からは、二〇一一年に三十五人学級が実施され、小学校一年生で三十六人の学級が十八人学級に二つに分けられました。そうすると、子供たちが落ちついて、教員もその影響を受けてゆっくり子供の話が聞けるようになりました。この子はここがわからないが見えてくる。困った人は手を挙げてね、先生が助けてあげるよといつも言えました。一人ずつ発表する場面でも、周りの子は待てるようになりました。なぜなら、自分も順番が回ってきて発言できることがわかっているからです。給食も早く配膳でき、ゆっくり食べることができます。ほかの学年の四十人学級の子供が休み時間に来て、先生、ここに来るとほっとすると言っていますという話を伺ってまいりました。
 これは、全国の保護者、教育関係者にも共通する声だと思います。
 二〇一〇年、文部科学省の教育関係団体ヒアリングでは、三十人学級または三十五人学級に見直すべきとの意見が大勢を占めたとあります。
 少人数学級を求めた団体について、主な団体名と、そして何団体だったのか、下村文部科学大臣に伺います。
下村国務大臣 二〇一〇年に実施した、今後の学級編制及び教職員定数の改善に関する団体ヒアリングにおきまして、少人数学級の推進を要望した団体は、全国知事会、全国都道府県教育長協議会、全国連合小学校長会、全日本中学校校長会、全国高等学校校長協会、日本PTA全国協議会など、二十七団体中二十三団体であります。
 残りの四団体は、特に要望していなかったというのは、例えば、全国へき地教育連盟、現状では既にもう少人数学級になっているとか、それから、全国養護教諭連絡協議会は、これは学級ごとの配置でない、きめ細かな、そういうことで、ほかの団体も、少人数学級の推進については賛同しているという団体であります。
畑野委員 安倍総理大臣に伺います。
 今、下村文部科学大臣からお話がありましたように、日本PTA全国協議会、全国都道府県教育委員長協議会、あるいは校長会、そして全国知事会も含めて、少人数学級への定数計画の策定と着実な実施を求めて声を上げておられます。
 総理、少人数学級の実施は国民的な声ではないでしょうか。安倍総理、どのように思われますか。
安倍内閣総理大臣 教育再生に向けて、教育の質を高めていく必要があると考えております。その上において、教職員等の指導体制の充実は重要であると考えています。
 このため、平成二十七年度予算では、子供たちが受け身ではなく主体的に考え探求する力を育てる授業、アクティブラーニング、そして教育格差の解消や特別支援教育の充実などさまざまな教育課程に対応するために必要な定数措置、九百人でありますが、これを盛り込むとともに、退職教員等の外部人材の活用を拡充することとしています。
 少人数学級については、現在、小学校一年、二年生の三十五人以下学級を実現しております。
 引き続き、教員が子供一人一人に対してきめ細かく対応し、より質の高い教育が実現できるよう、必要な検討を進めていく考えであります。
畑野委員 安倍総理も少人数学級について否定をされませんでした。必要な検討が必要だというふうにおっしゃいました。
 資料を配っていただきました。一枚目の表をごらんいただきたいと思います。
 全国の自治体で少人数学級が広がっています。全ての都道府県で独自に取り組まれ、中学校三年生まで少人数学級を実施しているのは、山形、福島、山梨、長野、静岡、和歌山、鳥取、岡山、山口、香川などです。それ以外も本当に努力をされていまして、自治体が頑張っているのです。
 今こそ、国が法律に基づいて三十五人学級を順次中学校まで制度化する時期に来ているのではないかと思いますが、下村文部科学大臣、いかがでしょうか。
下村国務大臣 御指摘のように、教育再生におきまして、教育の質を高めていく上で、教職員等の指導体制の充実を図っていくということは大変重要なことであるというふうに思います。
 現在も各自治体で、御指摘がありましたが、指導方法についてさまざまな取り組みが行われていたり、あるいは三十五人以下学級、少人数学級の体制をつくっているというところも出てきているわけでありますが、今後さらに、学校の実情を踏まえながら、各自治体の判断で、少人数学級やチームティーチング、また習熟度別少人数指導などを選択的に行っていただくことが、効果的なバックボーンとして、文科省も対応していきたいと思います。
 そのために、教員一人当たりの児童生徒数を下げていくことが重要であるというふうに考えておりまして、教員一人当たりの児童生徒数がOECD諸国平均と同程度に改善するよう、指導体制の充実を図ることを目指していきたいと考えております。
畑野委員 そこで伺いたいんですけれども、現在の小学校一年生を、さらに小学校二年生、三年生へと、順次三十五人学級を進めていく、これをやるべきだと思うんです。
 国民が望んでいる少人数学級は、それでは、どれほどの予算でできるのかということです。仮に、二〇一六年度、小学校二年生で三十五人学級を実施する場合、必要な教職員増は何人になりますか。下村文部科学大臣に伺います。
下村国務大臣 平成二十三年度に、義務標準法の改正によりまして、小学校一年生の三十五人以下学級の実施に必要な教職員定数として、四千人の定数改善措置を行いました。また、当時の試算では、同じく法改正による小学校二年生の三十五人以下学級の実施に必要な教職員定数は、四千三百人というふうに見込んでおります。
畑野委員 そうしますと、小学校二年生で三十五人学級を実施する場合は、教職員四千三百人の増になると見込まれてきたということです。
 少子化で子供の人数が減っております。同じ二〇一六年度、少子化によって教職員の定数は、それでは、何人減りますか。下村文部科学大臣、お願いします。
下村国務大臣 御指摘のように、現時点では、少子化に伴う教職員定数の自然減として、二〇一六年度、三千六百人の減を見込んでおります。
畑野委員 そうしますと、二〇一六年度に三十五人学級を小学校二年生で実施した場合、教職員は、四千三百人増に対して、少子化によって三千六百人減になるわけですから、差し引き七百人の教職員増で済むということになりますが、下村文部科学大臣、そういうことでよろしいですね。
下村国務大臣 はい。そういう計算になります。
畑野委員 わかりました。お答えになったように、実際に必要な教職員は七百人ということでございました。
 私、試算をいたしまして、小学校二年生の三十五人学級の国庫負担はどうかと。十六億円でできるという試算になります。
 それ以降ですが、三十五人学級を実施するために毎年四千人程度の教職員の定数増が必要と見込まれますけれども、一方で、少子化によって教職員の定数減があるということですから、それを引きますと、実際に必要な教職員数はどうなるかというのを試算して、その国庫負担額を資料にいたしました。文部科学省のデータをもとに試算したものです。二枚目にございます。パネルを用意してまいりました。
 二〇一六年度、小学校二年生で三十五人学級を実施した場合、必要な教職員増は七百人、十六億円ということです。ずっと、小学校二年生から小学校三年生、小学校二年生から四年生と毎年ふやしていくというふうにいたしましても、一番多いときでも、三十五人学級を中学校一年生まで実施する二〇二一年度、これが一番多い百三十九億円になります。その後、中学校三年生まで三十五人学級を実施する場合でも、二〇二三年度は、少子化で教職員の定数は大きく減ることが予想されて、五十六億円で済むということになります。
 私は、来年度から実施を強く求めたいと思うんです。文部科学省として、少なくとも、二〇一六年度の概算要求に、三十五人学級を小学校二年生以上で実施することを入れるべきではないかと思いますが、下村文部科学大臣、いかがでしょうか。
下村国務大臣 御指摘にもありましたし、また答弁でも、少人数学級が望ましいというのは、学習効果、成果からいって、そのとおりだと思います。
 ただ一方で、三十五人学級にするということだけでなく、今教育現場で、同じ授業をそのままするということではなくて、例えば課題解決型授業、アクティブラーニング、そういうことによる教育の質の向上を図るべきである。また、多様な人材を配置して、学校がチームとして教育力とか組織力を最大化するチーム学校、教員が本来いろいろな雑用をしていた部分をほかの事務系の方にシフトするというようなことも含めたチーム学校の推進とか、それから教育格差の解消、いじめ等への対応、また特別支援教育の充実など、個々の、個別的な教育課題にも対応しなければならない。
 一方、統廃合への支援とか、過疎地への、小規模校への支援とか、そういうこととあわせて、さらにスクールソーシャルワーカーも倍増しなくちゃいけない、これからふやさなくちゃいけない。それから、退職教員とか地域人材の、教員以外の外部人材も例えば二千人拡大して、多様な人材の配置充実によって学校全体としての指導体制の充実を図らなければならない。そういうような地方自治体からの要望も出ております。
 そういう意味では、御指摘のように、小学校一年生だけでなく二年生以降においても三十五人以下学級を目指すということも必要ですが、同時に、子供たちの学習意欲の向上とかきめ細やかな指導による効果ということを、トータル的にそれぞれの自治体、地域に応じた体制もとる必要があるのではないかというふうに考えますと、厳しい財政状況下の中で、授業の質向上や多様な取り組み、また、自治体の創意工夫を踏まえて、柔軟で効果的な定数改善を早急に進めていくことも必要である、トータル的な中で学校現場の成果、効果が上がる方法を考えていく必要があるのではないかと思っています。
畑野委員 チーム学校は当然だと思うんですよね。いろいろな対応が必要です。同時に、三十五人学級、これも進めればいい。やはり両方やっていく必要があると思うんです。学級編制の改善も当然全力でやるべきだというふうに思います。そういう点では、本当に、検討するということでは先に進まないわけです。ぜひこれを前に進めていただきたいと思うんです。
 それで、二〇一一年に、小学校一年生の三十五人学級の法改正をしたとき、これは全会一致でした。その附則の第二項に、「公立の小学校の第二学年から第六学年まで及び中学校に係る学級編制の標準を順次に改定する」などが言われて、政府に順次改定することを求めました。
 また、全会派で修正案が当時出されまして、附則の第三項に、「政府は、前項の措置を講ずるに当たっては、これに必要な安定した財源の確保に努めるものとする。」という言葉が加わりました。継続的に実施できるように、修正案趣旨説明によれば、財源の確保を政府に義務づけたというものでした。
 安倍総理大臣に伺います。全会一致で、国会で決まりました。自民党も賛成されました。みんなでつくった法律に書いてあるんです。三十五人学級の推進を国として決断すべきときではありませんか。いかがですか。
安倍内閣総理大臣 そうした全会一致ということの重さもかみしめながら、先ほど申し上げましたように、小学校一年生、二年生では実現をしているわけでございますが、さらに三十五人学級の実現に向けて鋭意努力をしていきたい、このように思っております。
畑野委員 さらに三十五人学級を小学校三年生以上というふうに安倍総理から御答弁がありました。
 本当に、スピード感を持って取り組むようにと、教育再生実行会議のいじめ問題等への第一次提言でも、総理は、少人数学級の推進という要望に対してお答えになっております。
 日本共産党は、三十五人学級、少人数学級の実現の一点で、全ての皆さんと力を合わせて、実際に実現させるために全力を挙げることを表明して、私の質問を終わります。