不当な雇い止めから3年半。大手化粧品メーカー資生堂を相手に直接雇用を求める女性労働者たちが、生活や活動など多くの困難を乗り越え、たたかってきました。争議の勝利解決を必ず勝ち取ろうと、運動を広げています。(1月8日付赤旗より転載)
「解雇撤回にご協力ください」―。昨年12月下旬、全労連の宣伝で、東京・銀座に元気な声がひびきました。全労連・全国一般神奈川地本アンフィニ分会の池田和代さん、露木美香さんらの呼びかけに、ビラを受け取る女性たち。ピンクの横断幕に目をむけて、「資生堂がこんなことしているの?」「あんなにもうけているのに?」などと語りながら、「私も非正規雇用で、いつ切られるか不安です。がんばってください」と、激励も寄せられました。
池田さん、露木さんらが解雇されたのは2009年5月。資生堂が鎌倉工場(神奈川県鎌倉市)で化粧品製造を請け負っていた派遣会社アンフィニに減産を通告。アンフィニは池田さんら女性労働者22人を契約途中で解雇します。不当に降格・減給された露木さんら2人が組合に加入したと通知した直後、アンフィニは2人を解雇しました。
脱法目的
池田さんは8年5カ月間、露木さんは6年2カ月間勤め、解雇当時はともに製造ラインのリーダーでした。
鎌倉工場ではこの間、派遣会社が3回かわりました。池田さんらの雇用契約も変転し、04年の製造業派遣が解禁されるまでは偽装請負で、解禁後は派遣契約に。08年1月にアンフィニが名ばかりの請負会社になると、ふたたび偽装請負に戻されました。
請負は本来、アンフィニが設備をもって、生産のすべてに責任を負い、労働者に対する指揮命令も行うものです。しかし池田さんたちは、資生堂の工場で働き、資生堂社員の指示に従って、働いてきました。派遣を請負と偽る偽装請負です。派遣法では製造業派遣の受け入れ期間は3年とされますが、偽装請負では、こうした制限から逃れられます。
露木さんは、「出勤時間の1時間前には出て、残業もしてきました。誇りをもって働いてきたのに、資生堂はモノのように切り捨てました。怒りでいっぱいです」と話します。
資生堂の責任について、神奈川地本の恩田隆史書記長が指摘します。
「派遣・請負会社がかわっても働く労働者は変わらない。これは資生堂の協力なしにはできません。資生堂が本来、直接雇用すべき女性労働者を間接雇用で契約し続けたのは、解雇規制から逃れるための脱法目的ではないか」
非正規雇用でも契約更新を繰り返せば、期間の定めのない契約とみなすとする判決がでているからです。
違法認定
池田さんら7人は09年7月、アンフィニを相手に従業員としての地位確認などを求めて横浜地裁に仮処分を申請。同年10月に却下されたものの、12月には東京高裁で中途解雇は違法として賃金の一部支払いを命ずる決定が出されました。
しかしアンフィニは、一部賃金の仮払いには応じたものの、全面解決に応じず、資生堂も「関係ない」と責任をもって解決しようとしませんでした。このため10年6月、資生堂とアンフィニの両社を相手どり、正社員としての地位確認を求めて横浜地裁に提訴しました。
原告らは、間接雇用を続けた理由を明らかにするため、資生堂の前田新造会長(事件当時社長)の証人尋問を求めています。
資生堂は、「女性が働きやすい職場づくり」をアピールしてきました。「企業の社会的責任」(CSR)として04年9月、「組合結成と団体交渉権の実効化」「雇用と職業の差別撤廃」などを掲げる国連グローバルコンパクトへの参加を表明。10年9月には、「職場でのすべての女性・男性の公平な待遇」などを求める国際的なガイドライン「女性のエンパワーメントのための指針」に署名しています。
くやしい
しかし、池田さんが昨年6月の株主総会に出席し、「解雇の問題をこのままにしていいのか。原告たちへの雇用責任を果たしてほしい」と質問すると、資生堂の担当者は、「法的にも道義的にも会社に責任はない」と答弁したといいます。組合の申し入れにも、まともに対応していません。
原告の中には、夫が「非正規切り」に遭った人もいるなど、女性たちの多くが家計を支えてきました。いまはそれぞれダブルワーク、トリプルワークで生活しながら、たたかっています。
池田さんが語ります。
「正社員とまったく同じ仕事をし、正社員より難しい仕事もしてきました。正規・非正規という身分のちがいだけで、いつでも、理由もなく解雇される。本当にくやしいです。何としても撤回させたいです」