神奈川県の黒岩祐治知事が県民の生活や社会活動に欠かせない全ての県有施設や補助金の廃止・削減をめざして暴走しています。県民が積み上げた財産を一気に壊す“自治体リストラ”計画に反撃が始まっています。(13日付赤旗より転載)

10月7日神奈川臨調抗議

(写真)県営住宅の存続を訴える加藤なを子市議(右から4人目)と党善行支部の人たち=7日、神奈川県藤沢市

黒岩知事は9月27日、「緊急財政対策案」(表参照)を発表し、県施設や補助金を大幅に廃止・削減する方向を打ち出しました。

リストラ計画表

対策案は、乳牛育成牧場などについて廃止を含めて検討し、県立公園、武道館、診療所などは市町村・民間への移譲を含めて検討するとしています。重度身体障害者施設などは指定管理者制度の導入を、近代美術館などはそれぞれ集約化を検討します。県営住宅は団地の集約・統合、縮小・廃止などで見直す方針を打ち出しています。

また補助金272件(約341億円)も廃止・削減を含めた見直しを考えます。小児医療費助成制度なども見直し対象です。

大企業に奉仕

対策案のベースになったのは黒岩知事がつくった外部調査会「神奈川臨調」(座長・増田寛也元総務相)の意見。神奈川臨調は5月、県施設の原則全廃や補助金の凍結・見直しを求める方向を突然、示しました。

黒岩知事は「県財政は破綻直前だ」と財政難を強調する一方で、「削ったお金で経済のエンジンを回していく」と言っています。

県民サービスには、県の財産や税金を極力使わず、規制緩和を進める政府の「総合特区制度」を活用し、大企業のもうけ口をつくるために使うというわけです。

抗議の座り込み行動などを行ってきた神奈川労連の水谷正人議長は「黒岩知事は呼び込み型の経済政策を掲げる一方、住民の福祉増進、雇用創出を図るという自治体本来の役割を投げ出しています。県内経済の活性化に必要なことは福祉、防災など県民の暮らしや中小企業を重視する政策を行うことです。世論と運動を大きく広げ、黒岩知事の暴走を止めたい」と言います。

撤回求め運動

県民の交流、学習の場でもある県民センターの利用者は、いち早く守る会を立ち上げ、「県民センターをなくさないで」と署名運動を行いました。県議会からの批判もあり、建物は存続させることができました。

「しかし」と同会事務局の高浦福子さん(県母親連絡会事務局長)は話します。

「県は他の県機関を県民センターに集約するなどを狙っています。これを許せば、会議室の使用料値上げや、会議室や無料のスペースが少なくなるなどサービスの後退をまねきかねません。センターの機能の存続・充実を求めて、引き続き頑張ります」

県内経済と地域社会を支える中小企業を支援する中小企業制度融資事業費補助金は、廃止・統合などの見直しが検討されます。県商工団体連合会は補助金削減の中止を求める陳情書への賛同を呼びかけ、神奈川オートバイ事業協同組合、横浜青果商業協同組合、県中華料理業生活衛生同業組合など58団体が名を連ねました。

神商連の小川裕之常任理事は「中小企業金融円滑化法の終了を控え、県が融資事業補助金を廃止し、融資を受けられなくなれば企業への貸しはがしの圧力が強まるでしょう。補助金削減は絶対に許しません」と怒ります。

市町村も懸念

県のリストラ計画には、市町村も「強い懸念」を表明しています。藤沢、鎌倉、大和、三浦の4市議会は意見書を可決し、県施設や補助金を廃止しないことなどを求めました。県議会第3回定例会に提出された関連の陳情は、40件にのぼります。

日本共産党県委員会は対策本部を設置し、県営住宅存続を求める署名などで対話と共同を進めています。また図書館、博物館などを訪ねて館長らと懇談。県民に問題を知らせるチラシ200万枚を作り、配っています。

財政難を誇張 大企業優遇見直しこそ

河野幸司前党県議の話 県の対策案は2013、14年度で1600億円の財源不足が生ずると推計しています。しかし、その根拠となっている県の中期財政見通しは、地方交付税制度を無視し、歳入を小さく、歳出を大きくして意図的に財源不足額を誇張し、財政難をあおっています。法人事業税などの県税収入が減り、県財政は厳しくなっていますが、黒岩知事が言う「破綻直前」は大げさです。

財源不足と言うのなら、雇用や税収の効果が上がっていない「インベスト神奈川」(研究所などの建設に県が助成金を出す制度)による大企業への助成金を中止し、自動車専用道路整備の凍結を行い、財政基金なども活用して対応すべきです。