JR東海が着工目指しているリニァ中央新幹線問題について8月21日付け赤旗記事「主張」を紹介します。

JR東海が、リニア中央新幹線の2014年度中着工をめざして環境影響評価などの手続きをすすめています。東京―大阪間を1時間強の「超高速」で結ぶことをうたい文句に9兆円以上の巨費を投じ、国民生活や日本経済、自然環境などに重大な影響を与える巨大プロジェクトです。問題は建設の是非について国民的議論が尽くされていないことです。関係する地方自治体の住民から疑問や中止を求める声が上がっています。将来に禍根を残す“見切り発車”は許されません。

要望も必要性もない計画

リニア中央新幹線(27年に東京―名古屋、45年に名古屋―大阪の開業予定)は、東京―大阪をほぼ直線でつなぐ新路線を建設し、超電導磁石の力で車体を浮上させた列車を時速500キロの猛スピードで走行させるという、従来の新幹線(時速300キロ程度)とはまったく異なる“未知の鉄道”です。

東京、神奈川、山梨、長野、岐阜、愛知、三重、奈良、大阪の9都府県が沿線ですが、80%以上がトンネルです。平野部でも地下40メートル以上の深いところを通ります。運転手は乗らず遠隔操作のため、事故や災害など緊急事態が発生した時の安全確保への不安を指摘する意見が続出しています。

建設費用はJR東海が全額負担します。しかし、JR東海は公共交通を担う公的企業です。リニア計画が失敗すればJR東海自体が経営難に陥り、現在運行中の東海道新幹線の保守・点検・改修などの安全費用にしわ寄せされ、在来線の廃止など利用者の足を奪いサービス低下につながる事態を引き起こしかねません。

リニア計画は国民の強い要望から生まれたものではありません。東海道新幹線の輸送人員はここ20年間ほとんど横ばいです。これから日本は人口減少にさしかかります。それにもかかわらず東京―大阪間の45年の輸送需要が現在の1・5~1・8倍にも増加する見込みはあまりにも楽観的すぎます。

巨費を投じてまで1時間半程度の「時間短縮」を国民が求めているとはとてもいえません。中間駅への移動などを含めれば現在とそれほど時間は変わらない場合もあります。中間駅建設予定地などで進む“リニア効果”を狙った開発計画に見通しはなく、自治体の新たな財政危機を招く恐れがあります。

もともと約40年前の計画をほぼそのまま推進していることが深刻です。大トンネル(22キロ)を建設する南アルプス地域は複雑な断層や構造線が走る地震多発地帯ですが、その危険についてまともな検証はありません。新幹線の3倍以上といわれる使用電力は、省エネ社会への転換が求められている時代に逆行するものです。

優先すべきことは違う

いま日本の鉄道事業で優先させるべきことは、南海トラフ地震などを想定した東海道新幹線をはじめとする既存鉄道の地震・津波対策です。長期間にわたって巨費を投じるリニア建設は、既存鉄道の耐震・老朽化対策などを進めるうえでの重大な障害にもなりかねません。

日本共産党は、大義がなく国民に負担と犠牲を押しつける危険をはらむリニア新幹線建設に反対し、計画の撤回を求めています。未来の国民にツケを回す愚挙はきっぱり断念すべきです。