建設現場でのアスベスト(石綿)曝露(ばくろ)によって健康被害を受けた神奈川県の建設労働者と遺族が国と建材メーカーを相手に損害賠償を求めた訴訟の判決が5月25日、横浜地裁でありました。江口とし子裁判長は国と建材メーカーの責任を認めず、原告の請求を棄却しました。
原告側は、国は危険性を知りながら建築基準法の耐火構造などにアスベスト含有建材を指定・認定してきたと主張しました。
判決は、国の指定行為について、「石綿含有建材の使用を促進した面があったことは否定できない」としながら、「使用を強制するものとは評価することはできない」とし、建材メーカーについては、「共同不法行為が成立するということはできない」などと形式的な判断を下しました。
一方で、「国には、石綿被害に関する法律の充実、補償制度の創設の可否を含め、再度検証の必要がある」としました。
首都圏建設アスベスト訴訟統一弁護団、統一原告団、統一本部は同日、「『命あるうちの解決』を願う原告らの思いを踏みにじる不当極まりない判決」との声明を発表。地裁前では「不当判決」に「えー? 何でだよ」と悲鳴のような声がおこりました。
「くやしいの一点です」と話すのは首都圏建設アスベスト訴訟東京原告の伊藤忠男さん(74)。16歳からおよそ50年、塗装業に従事し、ビルや学校の工事で吹きつけアスベストを扱い、15年前に健康診断で肺気腫と診断されました。3年前から寝るときも酸素吸入のチューブを着けています。伊藤さんは「国や企業が早く使用禁止にしていれば治らない病気になることはなかった」といいます。
判決後の記者会見で、統一弁護団長の小野寺利孝弁護士は「加害者を免責し、被害者に受忍しろというありえない判決だ」と批判。控訴する意向を示すとともに、同様の訴訟で9月26日に判決が出る東京地裁での勝利に向けたたかい抜くと表明しました。
同日夕、原告団、弁護団と支援者は謝罪と救済を求めて被告企業のうち8社と交渉しました。交渉を拒否したニチアス本社(東京都港区)門前では、東京原告団副団長の塚本あけみさんが「大工だった夫の肺は軽石のようにかちかちになってしまいました。ニチアスは被害者に会って声をきくべきです」と訴えました。
この問題で、はたの君枝南関東ブロック比例予定者は6月2日の千葉土建主婦の会定期総会の挨拶の中で次のように述べ共に闘う決意を表明しました。「今回の横浜地裁の判決は本当にひどい内容です。そもそも被害者について判決ではほとんど触れられていません。いまや毎年500人を超える建設労働者が労災認定されているという大問題なのです。その規模はじん肺を超えて国内最大の労働災害です。9月26日の東京地裁判決で横浜の判決を覆す為に一緒に頑張りたい。また国政では、救済制度や基金をつくる事に、裁判闘争と併せ私も頑張ります」と述べました。